なぜこのタイミングでソフトバンクはT-Mobileとの合併を模索するのか

なぜこのタイミングでソフトバンクはT-Mobileとの合併を模索するのか

2017.05.16

日本経済新聞は5月11日、ソフトバンクグループが米携帯電話第3位のT-Mobile USAに対し、ソフトバンクグループ傘下で同第4位のSprintとの経営統合を提案すると報じている。折しも前日10日には2017年3月期の四半期決算を発表した際、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏が記者からの質問に対して可能性を探っている旨の発言をするなど注目を集めていた。2013年にスタートし、かつて米当局に阻止された合併案が、なぜいまになって再び息を吹き返してきたのか。このあたりの事情を整理してみる。

トランプ政権誕生が変えた米国の通信事情

5月10日の四半期決算会見でSprintとT-Mobileの合併の可能性について語るソフトバンクグループ社長の孫正義氏

3年近く前に終わったSprintとT-Mobile USA合併案が蘇りつつあることを2月中旬に最初に報じたのはReutersだ。同紙によれば、米連邦通信委員会(Federal Communications Commission: FCC)が周波数オークションを行っている期間中の合併交渉は禁止しているため、この時点ではまだソフトバンク側はT-Mobile USAの親会社である独Deutsche Telekomに対して打診は行っていないものの、同オークションの終了する4月中旬以降にソフトバンク側が動き出すのではないかとの関係者の声を報じている。

日経だけでなく、Bloombergも同様の動きを5月12日に関係者の情報として報じており、おそらく5-6月中には事態が一気に動くことになると予測される。

問題はなぜこのタイミングかという点だが、トランプ政権誕生が寄与したことは間違いない。通信行政のポリシーを決めるFCC会長は歴代の大統領の任期に合わせて任命が行われるサイクルを繰り返しており、前回2013-2014年のタイミングでソフトバンクによるSprintとT-Mobile USAの合併案を阻止したのは当時FCC会長のTom Wheeler氏だった。両社の合併で巨大企業が誕生し、米国の携帯通信キャリアがVerizon Wireless、AT&T、Sprint+T-Mobile USAの合併会社の3大キャリア体制となり競争が鈍ることを嫌っていたといわれる。 同じバラク・オバマ大統領の民主党政権下においてFCC会長だったJulius Genachowski氏も2011年にAT&TによるT-Mobile USA買収を阻止しており、巨大企業誕生を許さず競争状態を維持することがオバマ政権時代の基本方針だったようだ。

ソフトバンクが210億ドル規模の買収で傘下に収めたSprintは米国進出の足がかりとなるはずだったが、米行政に行く手を阻まれた

だが2017年になり、1月20日にドナルド・トランプ大統領が誕生して共和党政権となると、新たにFCC会長に就任したAjit Varadaraj Pai氏はこうした合併交渉に比較的寛容であり、業界再編が一気に進むことになるとの観測が高まっている。

典型的なものでは、AT&TによるTime Warner買収について「(無線通信に関して周波数の移動が発生しないようであれば)FCCの管轄外だ」として、買収阻止や審査などの何らかのアクションを起こす可能性を否定している。

米携帯電話業界は過去数年ほどは飽和状態が続き、新規顧客獲得も頭打ち状態となっている。一方で競合のために通信料金の引き下げ圧力が高まるなか、ネットワーク設備の維持と将来の5Gに向けた膨大な投資が必要となっており、利益を圧迫する傾向が明確になりつつある。そのため、AT&TのDirecTV買収やVerizonのYahoo!ビジネス買収にみられるように携帯キャリアがコンテンツやサービス方面の拡充を進めるなど、新たな収益源確保に向けた動きが進みつつあった。つまり、トランプ政権下では今回のSprintとT-Mobile USA合併だけでなく、買収・合併に関するさまざまな可能性が存在し、一気に業界再編が進むという観測が高まっている。

Sprintはむしろソフトバンクグループ成長の源泉とばかりに業績改善を訴える孫氏

合併が成功する可能性は

大企業の買収・合併に関するポリシーでは、このFCCのほか、米連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)による独占禁止法の観点から審査が進められる。おそらくFTCについてもトランプ政権下では同様のポリシーでの運営が行われるとみられるが、最大の障壁は合併後の経営プランの部分だと予想される。

2015年に続き、2017年に再び破産法を申請した米小売チェーンのRadioShack。2015年の救済時にRadioShack店舗でのSprint代理店業務を開始し、Sprintのキャリアショップの役割の多くを同店舗に依存する形となったが、2017年6月以降はSprint専業となる一部を除いてすべての店舗が業務を停止する。小売業界での逆風は、雇用創出をスローガンに掲げるトランプ政権においてソフトバンクの意向にどう作用するか。写真は2016年12月に撮影したもの

Reutersなどが指摘しているが、この種の大企業同士の合併では経営効率化のために人員削減が不可分であり、特に設備のメンテナンスやサービス人員配置のために大量の雇用を行っている通信キャリアの場合、合併により全米で少なくとも数千人規模のレイオフが発生すると予想される。米国での雇用維持と創出をスローガンに当選したトランプ大統領にとって、大規模なレイオフを伴う合併は許しがたいはずだ。

そのため、孫社長率いるソフトバンクとSprintがT-Mobile USAとの合併交渉を成功させるにあたっては、合併によるメリットをきちんと説明してFCCとFTCの了解をとりつつ、レイオフに関してトランプ大統領による横やりが入らないよう、細心の注意を持って合併プランを提唱することが鍵となる。

おそらく決して容易な話ではないが、少なくとも門前払いに近い形で提案を阻止された民主党政権時代に比べ、「0%が10%や20%」になるトランプ大統領の共和党政権のほうがはるかに成功の可能性が高いという状況だ。孫氏が決算会見で「さまざまな可能性を探っている」とコメントしたのは、ビジネスマンとして大きな可能性を秘めた合併提案に光を見出したのかもしれない。昨年2016年末に大統領選勝利後のトランプ氏をすぐに訪問して歓迎の意を示したあたりも、こうした潮目の変化を感じ取る同氏の感性の鋭さを感じずにはいられない。

いくつも待ち受けるハードル

ただ政治的な面や競合との買収・合併提案合戦に勝利したとしても、別のハードルがある。代表的なものが買収資金で、現在のT-Mobile USAの時価総額は550億ドル近辺と2013-2014年当時の合併交渉を続けていた当時と比べて2倍近くまで跳ね上がっており、ソフトバンクがSprint (Sprint-Nextel)を買収した200億ドル強の金額と比べても非常に高額だ。

おそらくDeutsche TelekomからT-Mobile USAの株式の一部を買い付け、Deutsche Telekomがマイノリティなステークホルダーになる一方、Sprintとソフトバンクグループで過半数の株式を保持して連結に組み入れる形での提案になるのではないだろうか。このようにT-Mobile USAを傘下に組み入れたとしても、加入者シェアではようやくVerizon WirelessやAT&Tに並ぶという水準で、決して有利なスタートではない。今後数年かけての競争のスタートラインに立ったばかりの段階だ。

T-Mobile USA株価の推移。2013-2014年当時と比較しても現状の時価総額は倍近い水準にある。米株式市場全体の高値傾向とT-Mobile自身の業績向上が背景にある(出典: Google)

5G整備の巨額投資もばかにならない。5G NR (Next Radio)では5GHzを超える高い周波数帯の電波をCA (キャリアアグリゲーション)で組み込み、高い通信速度を確保している。こうした電波は直進性が非常に強く、従来と比較してスモールセルでのカバレッジが重要となる。つまり用地確保や機器の配置、恒常的に行われるメンテナンスなど、より資金がかさむ可能性があるということだ。

一方で5Gは将来的なセンサーネットワークや自動運転制御など、さまざまなインフラでの活用が見込まれる分野であり、この分野への食い込みはソフトバンクグループにとっても米国での大きなビジネスチャンスとなり、是が非でも獲りにいきたいと考えているだろう。過去2年ほど、孫氏は決算会見でのSprintの業績報告についてコスト削減による経営効率化の話題のみに触れていたが、今年5月10日に行われた会見では皆が驚くほどSprintでの5G投資やネットワーク状況改善を饒舌に解説していた。Sprintの現状やこれからについて、すべてはこの同氏のモチベーションの高さが物語っているのかもしれない。

Sprintのネットワーク状況を改善する施策について、決算会見の場で長い時間をとって解説する孫氏
スモールセルを拡充するツールの活用法について解説を行う
特に屋内やオフィスビルの窓際に設置されるMagic Boxは屋内外の両方をカバレッジにする特徴を持っており、このネットワーク改善策の大きな鍵になるという
Magic Boxの設置例
これら施策を用いて米国でも特にネットワーク上のカバレッジで鬼門となっているニューヨークのマンハッタン等での試験結果と競合との比較
Qualcommとの提携によるB41 (2.5GHz)バンドでの5G (NR含む)対応について言及する孫氏。なお、5G NRとしては比較的周波数が低いバンドであり、特にカバレッジ拡大に効果を発揮するという
いつかは買いたい? 安東弘樹、アストンマーティン「DB11」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第17回

いつかは買いたい? 安東弘樹、アストンマーティン「DB11」に乗る!

2019.03.20

アストンマーティンのV8エンジン搭載車「DB11」に試乗

懐古趣味とは無縁、「DB」のデザインは現代の方がカッコいい

車中で「なぜ運転は楽しいか」を自問自答

日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会を訪れている安東弘樹さん。次に乗るのはアストンマーティンの「DB11」だ。憧れる人も多いであろう歴史ある英国製スポーツカーに、安東さんは何を思うのか。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

安東さんと「DB11」

エンジン信者ではなくとも感じる音のよさ

DB11はアストンマーティンのグランドツアラーで、安東さんが乗ったのは4リッターV型8気筒DOHCツインターボエンジン搭載モデル。最大出力は503hp、最大トルクは675Nmで、停止状態から時速100キロへの加速はわずか4秒という速いクルマだ。トランスミッションは8速オートマチック(AT)。オプションを含まないメーカー希望小売価格は2,278万1,177円となっている。

試乗した「DB11」のボディサイズは全長4,705mm、全幅2,060mm、全高1,290mm。車両重量は1,705キロだ

編集部(以下、編):なぜDB11に乗ってみたいと思ったんですか?

安東さん(以下、安):新しいアストンマーティンに乗っておかないと、という気持ちがありました。他のブランドのように試乗会というものが開催されないので、なかなか機会がありませんし。

先ほど、テスラの「モデルX」に乗りましたけど、その後にDB11に乗ると、電気自動車(EV)とは違う加速を味わうことができますね。どちらが好ましいというのはないですけど。

:EVとは違って、エンジン音に迫力がありますね!

:確かに、いい音だとは思います。ただ、エンジン音の信者ではないので、そんなにうるさくなくってもいいというタイプです。大きさより質、という感じでしょうか。

:クルマのキャラクターに合った音がしてほしい?

:そうですね。

室内の作りは、ドイツ車と比べると違いを感じます。ドイツ車だと、例えば革張りのダッシュボードなどは“パンッ!”て張っている感じですけど、こちらは、良くも悪くも作りが緩いというか、革の表面にうねりのようなものが見てとれますね。

:生命感を表現している、とかですかね?

:どうなんでしょうねー。

:乗り心地はいかがですか?

:ダイレクト感が伝わってくるような作りになっているのは分かります。ただ、ダイレクト感を作り手の側で、どのくらい味付けするのがいいのか……クルマって、難しいですね! メーカーが味付けの部分で競い合うのはいいことだと思います。

:2,278万円という価格については?

:……なぜか今、一瞬、安いって思いました(笑)。

多分、これが理由だと思います。先日、ポルシェジャパンのサイトでコンフイギュレーターを使って、最新のポルシェ「911 カレラ 4S」に、必要だと思うオプションを選んでトータルの価格を見積もったら、2,000万円を軽く超えました……。

DB11もオプションを加えたら、金額は跳ね上がるとは思いますが、ポルシェは3Lターボで最大出力450ps、最大トルク530Nmだったのに対して、DB11は4Lターボで503ps、675Nmだったので、それらを比較して、そう思えたのかもしれません。

「DB11」の価格を聞いて、一瞬だけ「安い」と思ったという安東さん

昔のクルマと今のクルマ、カッコいいのはどっち?

:アストンマーティンといえば、ボンドカー(映画「007」シリーズに登場するジェームズ・ボンドが乗るクルマ)のイメージはありますか?

:ありますねー! 一時はBMWになったりしてましたけど、アストンマーティンを復活させましたもんね。最近は、物語にとって必然性がないのに、ボンドカーを無理やり出している感じがあったんですけど、新しい作品ではアストンマーティンが大活躍してました。まあ、本来は目立ってはいけないスパイが乗るクルマではないですけどね(笑)

:「007 ゴールドフィンガー」に登場した初代ボンドカー「DB5」もカッコよかったですもんね!

:「ゴールドフィンガー」も見たんですけど、私に懐古趣味がないので、今のDB11の方がカッコいいと思います。DB5って、今のクルマに比べると、少し“ずんぐりむっくり”しているというか。

:純粋に、カッコよさで比べた場合、現行モデルの方に軍配が上がると?

:そうですね。ただ、日本車は残念ながら昔のクルマ、特に60年代~70年代の方が圧倒的にカッコいいですけどね。

純粋にカッコよさで比べた場合、初代ボンドカー「DB5」よりも試乗中の「DB11」に軍配が上がるというのが安東さんの感想

:アストンマーティンのイメージは?

:好きでした。歴代のクルマには、必ずマニュアルトランスミッション(MT)の設定があったので、乗りこなせたら格好いいだろうなとは思ってました。

:いつかはアストンマーティンを買いたいと思いますか?

:以前は思ってました。でも今は、乗って満足してしまったというか、「これが欲しい!」という感じではないです。スポーツカーの場合、どうしても、MT車にしか食指が動かないんです。DB11って確か、本国にもMTの設定はないですもんね。

:そうすると、現在の愛車であるポルシェ「911 カレラ 4S」を乗り換えるとしたら、どんな選択肢がありますか?

:“992型”の「911 カレラ 4S」()で、右ハンドルのMTって感じですかねー。

【編集部注】次に発売となる新しい「911 カレラ 4S」。つまり、同じクルマの新型をリピート購入したいということ。

:他のメーカーに候補はないですか?

「メガーヌ R.S.」(ルノー)のMTなんかいいですね!

もし、DB11がMTだったとしても、うまくスポーツ走行をする自信はないんですけど、日常でスポーツカーを楽しむという意味では、MTしか選択肢に入らないんです。

なぜステアリングを切っているだけで楽しいのか

:(箱根ターンパイクを走行しつつ)加速って、どうしても慣れてしまいますね。

:結局のところ、速いか遅いかということですしね。

:だとすると、もうテスラなどの電気自動車にはかなわないですもんね。そうすると、操作を楽しむとか、気持ちはそっちにシフトするわけで。

DB11は、トルコン8速ATもよくできていて、十分にいいクルマなんですけど、なんでしょう、どうしてかは分からないんですけど、ひょっとすると、そのうち飽きがくるかもしれないと思ってしまうんです。MTの運転だけは飽きないですからね(笑)

それにしても、こうやって右に左にステアリングを切っているだけなのに、「何が楽しいのかなー?」って、たまに思うこともあるんですけど、なぜだか楽しいんですよね。クルマに興味のない人には、「何が楽しいの? 危ないだけでしょ?」と思われるかもしれないんですけど。

クルマの運転って、興味のない人からすれば、場合によっては悪意がなくても法律的に罰せられるし、命の危険すらあるのに、何が楽しいのか理解できないでしょうね。ただ、なんなんでしょう、とにかく楽しいんですよねー! こういうワインディングロードを走らなくても、普通に、高速道路で制限速度内で走っていても、車窓の景色が変わっていく様子とか、大きな物体を自分で操る感覚が、たまらないです。

ステアリングを右に左に切っているだけで楽しいという安東さん

DB11に乗りながら、なぜクルマの運転は楽しいのかと自問自答を始めた安東さん。助手席から見ていると、その問答自体がすでに、楽しげに見えた。次に乗るクルマは、ポルシェを買い替える場合の選択肢として名前の挙がった「メガーヌ R.S.」だ。

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アウディが新型「A6」を発売、大攻勢の2019年は注目モデルが続々

アウディが新型「A6」を発売、大攻勢の2019年は注目モデルが続々

2019.03.20

8世代目に突入したアッパーミドルセダン「A6」

「アウディ クワトロ」のDNAを受け継ぐエクステリア

最新テクノロジーよりも大切なユーザー目線

アウディ ジャパンは新型「A6セダン」およびワゴンタイプの新型「A6アバント」を3月20日より発売する。車両本体価格は「A6セダン」が920万円~1,006万円、「A6アバント」が955万円~1,041万円。フルモデルチェンジを経たアウディ伝統のアッパーミドルセダン(おおよそ全長4,800mm以上のクラスの高級セダンで、いわゆるEセグメント)は、同社3シリーズ目となる電動車として登場した。

新型「A6」の発表会に登壇したアウディ ジャパン代表取締役社長のフィリップ・ノアック氏。A6は2019年3月20日から全国のアウディ正規ディーラーで販売する

アウディにとって3作目となる電動車

「A6」は1968年にデビューしたアウディのアッパーミドル(中大型クラス)セダンの流れをくむモデル。今作は初代モデル「アウディ100」から数えて8世代目にあたる。「アウディ100」と「A6」の両シリーズを合わせた累計販売台数は820万台。新型のグレードは、「A6セダン」「A6アバント」ともに「55 TFSI quarto S line」と「55 TFSI quarto debut package」の2種類だ。

「A6セダン」は「55 TFSI quarto S line」が1,006万円、「55 TFSI quarto debut package」が920万円
画像3:「A6アバント」は「55 TFSI quarto S line」が1,041万円、「55 TFSI quarto debut package」が955万円

アウディは「A8」「A7」に続き、新型「A6」に電動化技術を組み込んだ。同社は2019年に6車種のプラグインハイブリッド車(PHV)を導入し、2020年末までに合計12車種の電動パワートレイン車をラインアップする電動化戦略を掲げているが、A6の電化はその一環だ。

A6のパワーユニットは、いずれも3.0リッターV6ターボエンジンにマイルドハイブリッドテクノロジー(MHEV)を組み合わせる。この3.0リッターTFSIユニットは、最高出力340ps/5,200-6,400rpm、最大トルク500Nm/1,370-4,500rpmを発揮する。「A6セダン」が停止状態から時速100キロまでの加速に要する時間は5.1秒(欧州仕様参考値)だ。

「アウディ クワトロ」の遺伝子を受け継ぐエクステリア

発表会でノアック社長が「アウディ車にとって重要なメッセージ」と語ったのがデザインだ。2018年にフルモデルチェンジして登場した「A8」「A7」と同じく、新型「A6」も新たなアウディのデザイン言語を体現しており、「ピンと張った面、キリッと尖ったエッジ、目を引くラインなどが特徴」(ノアック社長)だという。

「A6セダン」のフロントマスク
ボディサイズは全長4,950mm、全幅1,885mm、全高1450mm、ホイールベース2,925mm。長いボンネット、ロングホイールベースなど、造形美が光るプロポーションとなっている

従来モデルよりワイドかつ低く配されたシングルフレームグリルに、フラットなヘッドライト。フロントマスクではエアスポイラーを備えた大型のサイドエアインテークも目を引く。サイドビューは先代モデルと比べて引き締まった印象。力強く張り出したホイールアーチ上の輪郭、長く伸びたルーフラインなど、「アウディ クワトロ」のDNAを受け継いでいることを確認できるポイントは随所で発見できる。

この新たなデザイン言語を読み解くのであれば、バランスのとれたエクステリアプロポーションでエレガンスさを、フロントマスクの造形でスポーティーさを演出している、といったところだろうか。

アウディが考えるユーザー中心の開発とは

「A6を日本市場に導入できることをとても嬉しく思うとともに、誇りに思います」と述べたノアック社長は、日本におけるアウディの戦略にも言及した。

アウディ ジャパンの戦略を語るノアック社長

最初に言及したのが商品攻勢だ。今回の新型「A6」に加えて、新型「RS4アバント」、アウディ ジャパン初のクリーンディーゼルエンジン搭載車となった新型「Q5 40 TDI クワトロ」を発表するなど、積極的な姿勢が目立つアウディ。2019年は今後も、ほぼ毎月、新モデルを投入する予定だという。アウディ初の電気自動車(EV)「e-tron」や新たなセグメントへの参入となる「Q8」など、注目度の高い車種も発表の時を待っている。

そして、ノアック氏が強調したのが、ユーザーを中心に据える「カスタマー・セントリシティ」という考え方だ。

「A6セダン」のコックピット。ドライバー正面とセンターコンソール上部、さらにセンターコンソール下部の3カ所に大型ディスプレイが設置してある

この言葉、ノアック社長は単なる顧客満足度の向上という意味では使っていない。その真意として同氏は、「アウディブランドは新しい技術を駆使し、新たな価値あるものを作り出していきます。ただ、アウディにとってテクノロジーは重要ですが、それ以上に大事なのは、お客様の視点です」と説明した。

どれだけ優れた技術であっても、ユーザーに必要とされなければ、それは不要な技術といえる。新型「A6」は最新のテクノロジーを搭載するが、快適性の向上やドライバーサポートアシスタントシステムの充実、安全性の高さなどは、いずれもユーザーに望まれる技術である。新型車が登場すると新たな機能に注目が集まりがちだが、重要なのは、その機能がユーザーの求めるものであるかどうかだ。

最後にノアック氏は、「今年は本当にエキサイティングな年になると思います。この1年をぜひ、アウディとともにお楽しみください」と語り、記者発表を締めくくった。

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