プレミアムバーガーとは一体? カールスジュニアに聞く日本市場攻略法

プレミアムバーガーとは一体? カールスジュニアに聞く日本市場攻略法

2017.05.17

外資の参入が相次ぐなど、話題の絶えない日本のハンバーガー業界。中でも、日本から一度は撤退し、2016年に再上陸を果たしたカールスジュニアは、独特の立ち位置で戦略的な市場開拓に取り組む面白い存在だ。社長に話を聞いたので、2回に分けてお伝えしたい。今回は商品戦略、とりわけ価格設定についてだ。

カールスジュニアジャパン代表取締役社長の渡邉雅人氏

食の宝庫から日本に進出

カールスジュニアは1941年に南カリフォルニアで誕生したバーガーチェーン。カリフォルニアは気候に恵まれ、広大な土壌から生み出される農産物や、2つの海流が交わる海で獲れる豊富な漁業資源でも知られる。「米国でうまい食事や飲み物は?」と聞かれても浮かぶものは少ないが、カリフォルニアには数多く存在する。カールスジュニアの生まれ故郷であるカリフォルニアは、食の宝庫といっても過言ではない。

日本には1989年に進出するも一度は撤退。2016年3月には秋葉原に再上陸1号店をオープンし、同年10月にはショッピングモール「ららぽーと湘南平塚」に2号店を開設した。この4月には自由が丘駅のすぐ近くで3号店の営業を開始している。

カールスジュニアの提供スタイルは、基本的にハンバーガーとドリンク、そしてポテトのセットだ。特筆すべきはフリードリンク、いわゆるドリンクバーが基本となっていること。ボリューム満点のバーガーに加えて、ドリンクのおかわりが可能であることは、若者世代に限らず大きな訴求ポイントとなる。

カールスジュニアの基本的なセット。画像は自由が丘店の期間限定商品「スーパーマッシュルームシックバーガー」だ

カールスジュニアで面白いのは、価格帯が独特であることや、10年で150店を出店すると公言していることなど、いろいろある。自由が丘店の内覧会で、カールスジュニアジャパンの渡邉社長に話を聞くことができたので、同社のポジショニングや戦略などを語ってもらった。

ファストフード業界における立ち位置

「ファストフードは二極化の価格構成でした。低価格の業態と、グルメバーガーに代表されるような、高価格・高品質を売りにする業態に二分されていたのです」。渡邉社長によるファストフード業界の分析だ。「その中間帯に登場した新しい存在」(以下、かっこ内は渡邉社長)というのが、カールスジュニアの立ち位置だ。下にはマクドナルドやモスバーガー、上には個人商店を含むグルメバーガー勢がひしめいているが、その中間には意外にも空白地帯があった。

カールスジュニアの価格設定。例えばオリジナルシックバーガーの3分の1ポンドは単品で850円で、レギュラーサイズのポテトとドリンクを付けるコンボはプラス490円だ

今まで、中間価格帯に軸足を置いたチェーンはほとんどない。低価格帯を売りにするチェーンが単価アップを狙い、期間限定商品などの展開を試みているが、基幹商品として、中間価格帯で勝負できるまでには至っていない。

だいたい1000円台で、顧客に「コスパがよい」と思ってもらえるような存在。そんなカールスジュニアを渡邉社長は「グルメバーガーではなく、プレミアムバーガー」だと語る。ちなみに、日本再上陸から現在までの業績を聞くと、数字は明かしてもらえなかったが「内部目標はクリアしている」との話だったので、カールスジュニアのビジネスモデルは、ある程度は日本市場にフィットしているらしい。

サイズダウン商品で集客力アップへ

ハンバーガー業態が二極化していることは先に述べた通りだが、カールスジュニアはプレミアムバーガーの立ち位置を維持しつつ、低価格帯にメニューを拡げることで、新たな顧客を獲得しようと目論んでいる。商品力、高級感はそのままに、サイズダウンすることによる価格の低減である。

カールスジュニアの標準価格帯は、オリジナルシックバーガー(3分の1ポンド)コンボで1340円である。ここに、1000円前後の価格帯で提供することのできる商品(ジュニアシリーズという)を追加することを検討中だ。クーポンなどで割引を設定すると、元の価格に戻すことが困難となり、結果として通常価格に下降圧力が加わってしまう。サイズ変更による価格設定の変更(拡大)は、妥当な戦略なのではないだろうか。

ボリュームが特色のカールスジュニアだが、サイズダウン商品の導入も検討中とのこと(画像は「チーズスーパースター」)

サイズダウン商品の追加により、リピーターの来店頻度を上げられる可能性もある。ボリュームが売りの1つであるカールスジュニアは、満足感が高い分、頻繁に利用するにはヘビーすぎると思われている節がなきにしもあらずだった。そこに低価格のサイズダウン商品が登場すれば、より普段使いがしやすい店になる。これにより、ファンの来店頻度が上がるかもしれないのだ。

重要なのは来店頻度

かつて「プチぜいたく消費」がもてはやされた時代があった。デフレ期であっても、安いだけではなく、少しでもおいしいものを手軽に食べたいという需要があり、各業態が顧客の要望に応えるべく努力を重ねた。消費者に認知され、また受け入れられる商品を提案することができた企業は、今でも業績を維持している。

景気が回復基調にあることは日銀短観(3月調査)にも見て取れる。調査によれば、個人消費関連の業種で景況感が改善しているのだ。しかし、経済の回復が、そのまま外食業界、とりわけファストフード業態全体に好調をもたらすとは限らない。消費者が魅力を感じる商品をラインナップし、手に取ることのできる価格を設定できているかどうかが試される。

特に外食産業においては、年に数回の大型需要を取り込むことよりも、1度の利用額は定額(少額)でも、顧客の来店頻度を高めることが重要とされる。わかりやすい表現に置き換えれば、ファンの開拓やリピート客の獲得が、業績に直結するのだ。二極化しているファストフード業態において、中間価格帯に挑むカールスジュニアの戦略には、顧客だけでなく同業他社も注目している。

次回は同店の出店戦略にお伝えしたい。日本再上陸にあたり、10年で150店とぶち上げた出店計画は、現在も進行中なのだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。