カメラが有効な入力手段に、「Google Lens」が拓くモバイルの可能性

カメラが有効な入力手段に、「Google Lens」が拓くモバイルの可能性

2017.05.23

グーグルは、5月17日より、本社キャンパスの隣にある屋外劇場で、年次開発者会議を開催した。基調講演でグーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏が披露したのが、Google Lensだ。GoogleアシスタントとGoogleフォトでの活用を開始し、その後、対応製品を拡げていく計画だ。アプリ内で呼び出して活用する技術プラットホーム、という位置づけと見られる。

Google Lensとは?

基調講演で示された活用例を挙げていくと、Google Lensによって何が起きるかが分かる。

例えば、Googleアシスタントからカメラを起動し、ユリの花に向けると、花の名前の候補を挙げてくれる。Wi-Fiのネットワーク名とパスワードが書かれたステッカーにカメラを向けると、スマートフォンに、そのWi-Fi設定が読み込まれ、自動的に接続を済ませてくれる。街を歩いているときに、通りに並ぶ店にカメラを合わせると、その店の名前や評価を画面内に表示する。

11分9秒からGoogle Lensの機能が紹介されている

ここで行われていることは、カメラで入力された画像やビデオの画像認識であり、同時に認識した画像の意味を解析し、適切な結果を返したり、設定を行ったり、検索を行ってくれるのだ。

こうした機能は、いくつかの、インターネットに接続されたスマートフォンを持っている我々の生活における「困難」を解決することになる。

本稿で挙げた3つの事例以外にも、カメラを通じてイベントチケットの予約ができるなどの活用法もある(画像:Google Official Blog5月17日投稿より)

まず1つ目の例では、目の前の花について詳しく知りたくても、その花の名前が分からなければ、詳しい情報にたどり着くことができなかった。目の前の物体から検索する仕組みは、今まで知り得なかった情報にたどり着く新たな手段を提供した。

またWi-Fiの設定の例は、今まで一度人の目で確認して、スマートフォンのキーボードを通じて入力していた、非常にミスの起きやすい状況を解決してくれるものだ。しかも、Google Lensは、目の前にあるランダムな文字列が、Wi-Fiの設定情報だと理解し、スマホをネットワーク接続に導いてくれている。

3つ目の例も、非常にスマートフォンらしい機能だ。スマートフォンのGPS等による位置情報によって、その人がどこにいるかは分かる。そしてどちらを向いているのかもわかり、画像認識をサポートすることで、カメラに映した店の情報を適切に表示している。これも、いちいち店の名前を調べて入力する手間から解放されている。

カメラによるモバイル活用が一気に花開く

カメラは、キーボード以上に素早く快適で直感的な、スマートフォンの入力手段、と評価することができる。Wi-Fiパスワードの文字列を入力ミスして、はじめから入力しなおす経験をしたことがある人なら、その価値はすぐに分かるはずだ。

スマートフォンのカメラを活用したAR環境の実現は、4月に開催されたフェイスブックの開発者会議「F8」でも同様の発表があった

フェイスブックは、AR活用について、情報表示、デジタルオブジェクト、装飾という3つの分類を示し、開発者向けにプラットホームを開放している。Facebookがソーシャルメディアであり、AR活用も、よりコミュニケーションや楽しみに重点を置いた内容であるという印象を受けた。

フェイスブックがARの活用を進めるのは「情報表示」「デジタルオブジェクト」「装飾」の3つ

これに対して、グーグルは、より日常的かつ実用的なカメラによるAR活用の提案を行っている。スマホのカメラが、写真やビデオの撮影以外に多用されるモバイルコンピューティングの姿は、2017年に一気に普及することになると考えられる。

音声アシスタントに続き、グーグルの強みが表れる

Google Lensで実現していることを見ると、既視感を覚える。ARにおけるフェイスブックに対するグーグルの構図は、音声アシスタントデバイスにおけるアマゾンに対するグーグルの構図に見えるからだ。

音声アシスタントデバイスについては、今回のGoogle I/Oでも基調講演で触れられており、Google Homeのより多くのデバイスのサポートや、日本を含む各国への拡大がアナウンスされた。

このカテゴリでトップを走っているのはAmazon Echoだ。ちょうど先週、Amazon Echo Showという7インチディスプレイを搭載する新モデルが発表されされ、音声・ビデオ通話やビデオ再生のサポートが紹介された。搭載する人工知能Alexa向けのアプリ「Skill」は1万を超え、スマートホームのハブとして台風の目となっている。

Google Home(画像:Google Home紹介ページより)
Amazon EchoとEcho Dot(画像:アマゾンプレスリリースより)

しかし、両方試した筆者は、盛り上がるAmazon Echo・Alexa以上にGoogle Homeの方が評価が高い。Echoは確かにたくさんのアプリが揃っているが、それを追加しないと賢くなってくれない。これに対して最初から実用的なのがGoogle Homeだったからだ。

Google Homeに何か訪ねると、正しく言葉を認識してくれれば、あとはGoogle検索で得られる情報や知識を話してくれる。既に構築しているウェブ上の知識グラフが利用できる強みを最大限に生かした存在なのだ。

Google Homeは声で、これまで蓄積してきた知識グラフを利用するが、Google Lensは画像をきっかけに、この知識グラフを活用する。この元となるデータの有無が、フェイスブックやアマゾンよりもグーグルの優位を作り出しているのだ。

文字入力しない未来が訪れる?

グーグルの一連の発表から透けてくるキーワードは「実用性」だと感じた。Google LensもGoogleアシスタントも、「スマートフォンがある我々生活」を、様々な日常的場面で解決してくれている。このことは、フェイスブックが提案する「何か新しいことを実現するAR」以上に、インパクトと拡大・普及する力を備えている。

未来のスマートフォン体験を考える際に、我々はもう、画面の中のキーボードでタイピングしなくても良くなるかもしれない。前述のように、マイクによる音声認識とカメラによる画像認識の技術を磨いてる様子が、Google LensとGoogleアシスタントから透けて見えるからだ。

今日、AndroidスマートフォンやiPhoneで利用できる音声入力を試してみると、精度は既に実用レベルに達している。メッセージを送ったり、SNSに書き込むなど、自分が何か発信したい場合、キーボードを使わなくても対応できる。認識速度についても申し分ない。 そして今回のGoogle Lensは、声に続いて、文字入力以外の新たな入力方法の実現を披露した。しかもただ認識するだけでなく、人がやろうとしていることを先回りして提示したり、解決したりする「アクション」まで面倒を見てくれる点だ。

こうした技術的背景が実現した今こそ、グーグルが一度取り下げているメガネ型デバイス、Google Glassに価値が生じるのではないだろうか。ぜひ、Google Lensを実装するGoogle Glassを実現してほしいものだ。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。