グーグルが「Android Go」で新興国開拓を進める理由

グーグルが「Android Go」で新興国開拓を進める理由

2017.05.23

グーグルは5月17日から、米国カリフォルニア州マウンテンビューで開催した年次開発者会議Google I/Oで、軽量版となるスマートフォン向けOS「Android Go」を発表した。

グーグルはこれまで、非常にベーシックなGoogle体験を実現するスマートフォン「Android One」を新興国などで発売しており、日本でも格安SIMとの組み合わせで、スマホ入門の層への訴求を行ってきた。

Androidの月間アクティブデバイスが20億を突破。Android Oneから仕切りなおして新興国開拓を進める(画像:Google Blogより)

しかし、Android Oneは当初の100ドル以下で快適に動作する、というコンセプトから外れ、OSやアプリの高機能化、そして端末メーカーの利益確保などの観点から、価格の上昇と高スペック化が進んでしまった現状がある。これを是正し、改めてベーシックなAndroid環境を構築し直そうという戦略を垣間見ることができる。

低スペックのスマホでもきちんと使えるAndroid Go

Android Goのコンセプトは、低スペックのスマートフォンでも、快適なスマホライフを実現できるようにすることだ。目安として、100ドル以下のスマホに多い1GB以下のメモリでも、十分快適に動作させる、という目標を実現する。ベースとなるのは、今回ハイエンドスマートフォン向けに発表されているAndroid Oとなる。

Android Goで注目すべきは、OSだけに留まらない環境作りだ。これには、動作速度だけでなく、アプリそのものの保存容量の縮小、データ使用量の削減が挙げられる。

例えば、既にリリース済みのYouTube Goでは、アプリの軽量化はもちろんのこと、Wi-Fi環境でビデオをダウンロードして再生する機能を揃え、低スペック、低データ通信量をYouTube体験にもたらしている。またブラウザであるChromeも最適化を行い、データ使用量の削減をはじめから実現させるという。

加えて、Google Playでも、軽量版のアプリを紹介する。

Facebook LiteやSkype Liteといった軽量版のほか、キャプチャではLINE Cameraも、軽量ながらカメラのエフェクトが楽しめるアプリとして紹介されている。データ使用量、バッテリー消費量、そしてアプリのサイズに気遣ったアプリが、新興国で受け入れられることを、開発者に対してもアピールしていくことになるだろう。

新興国に取り組むフェイスブックとグーグル

グーグルは今回のGoogle I/Oの基調講演で、Androidの月間アクティブデバイス数が20億台に達したことをアピールした。そしてAndroid Goは、「次の10億人」にフォーカスを当てた戦略的なプラットホームと位置づけている。

Androidを搭載する端末は時計、自動車、テレビ、パソコンなど様々(画像:Google Blogより)

グーグルは、YouTubeやGmail、Googleフォト、Chrome、Googleマップなどの各サービスが、10億ユーザー以上に活用されている点を挙げた。Android Goやこれに最適化されたアプリの提供は、各種サービスの利用者数の拡大を加速させ、足下のビジネスである広告プラットホームの持続的な成長をもたらすと考えている。

同じように広告のビジネスモデルを取るフェイスブックも同じアイデアだ。前述の軽量化アプリの例に挙げていたFacebook Liteや、Facebook Messengerのビジネス活用は、Facebook体験をより広い人々に提供するための手段となっている。

また、グーグルとフェイスブックは、インターネットの接続環境に乏しい地域に対する接続性を確保する取り組みも行っている。

グーグルのProject Loonは、気球によってインターネット接続を空から提供することを計画している。フェイスブックはInternet.orgの取り組みとして、ニュースや求人、健康、教育、コミュニケーションに関するデータ通信を無償化する「Free Basics by Facebook」や、太陽電池を搭載する無人飛行機Aquilaによる空からのインターネット接続に取り組んでいる。

インターネットに接続可能にし、サービスを利用可能にし、そうした人々を増やし続けることを、グーグルやフェイスブックの持続的成長の手段としている共通点を見出すことができる。

一方、アップルはどう取り組んでいくのか?

広告をビジネスモデルとするインターネットプラットホーム企業、グーグルやフェイスブックの共通点に対して、アップルの取り組みはどうだろうか。

アップルは今のところ、iPhone向けのiOSに軽量版を登場させたり、100ドルを切るiPhoneを販売するといった計画を見せていない。今のところ、そうした計画がすぐに具体化する可能性も低いと考えている。

アップルのビジネスモデル

アップルのビジネスモデルはグーグルやフェイスブックの広告モデルではなく、デバイス販売が主だ。アップルのビジネスの65%以上を占めているのがiPhoneの販売だ。

既に飽和状態にある先進国市場では、iPhoneの高性能化によって買替え需要を喚起し、長年使ってもらう事でより大きな保存容量を求めてもらい、結果的に平均販売価格の上昇を実現する戦略を採っている。

iPhoneの現在の平均販売価格は、2017年第1四半期決算で695ドルに達しており、多くの人々がより大容量、大画面のiPhoneを求めるようになったことを表している。

アップルはデバイス販売によって利益を上げるため、利益が出ないデバイスや、それらをターゲットとした軽量版のOSを作るメリットがないのだ。その結果、世界のスマートフォンビジネスの9割の利益をアップルが独占する状況を作り出している。

一方、新興国での市場拡大には、別の理由で、100ドルスマートフォンのリリースを行っていない。

現在iPhoneのラインアップには、399ドルの4インチスマートフォン、iPhone SEを用意しており、2017年3月の刷新で、内蔵する保存容量を倍増させ32GBとした。しかし、この価格は前述の100ドルスマートフォンの4倍だ。新興国向けとは言え、購買力のあるそうをターゲットにする戦略を崩していないのだ。

その理由は、新興国でのユーザー拡大のインセンティブには、App StoreやApple Musicといったサービス部門での売上拡大をゴールとしている点だ。

アップルはサービス部門だけで、四半期に70億ドルの売上を達成しており、前年同期比で15-20%の成長を続けている。新興国の中でも価格が高いiPhone SEが購入できるユーザーをターゲットとすることで、先進国市場と同じ端末販売とサービス利用による売上拡大のモデルを維持しようとしているのだ。

ビジネスモデルの違いから、新興国市場への取り組みやターゲットの違いを見せるグーグルとアップル。今後も、Androidの利用者数のシェア拡大は続いていくが、利益シェアの構造は、アップルが堅持していく体制が続いていくことになるだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu