GLMと旭化成のコンセプトカー「AKXY」から考える電気自動車の未来

GLMと旭化成のコンセプトカー「AKXY」から考える電気自動車の未来

2017.05.24

総合化学メーカーの旭化成が、電気自動車(EV)のコンセプトカー「AKXY(アクシー)」を発表した。自動車業界にとっては従来、クルマの部材を納めるサプライヤーの1社に過ぎなかった旭化成が、どうやってクルマを作ったのか。その立役者は京都のGLMという企業だ。同社が推進する新たなビジネスモデルは、クルマづくりの概念を変えるかもしれない。

「Asahi Kasei ×(かける) You(顧客のこと)」から命名された旭化成のコンセプトカー「AKXY」。SUV型のEVという珍しいスタイルだ。発表会には旭化成グループキャンペーンガールの大伴理奈さんも駆けつけた

旭化成のコンセプトカー作りを支えたのは

自動車メーカーが、実際に走行可能なコンセプトカーをモーターショーなどに出展するのは珍しくない。しかし、それ以外の企業が、AKXYのような走れるコンセプトカーを製作する例は多くない。そこに、旭化成の自動車事業への強い思いが表れている。

AKXY発表会に登壇した旭化成・常務執行役員兼高機能ポリマー事業本部長の吉田浩氏は、自動車事業で「2025年に3000億円の事業規模を目指す」と述べた。旭化成は2016年4月に発表した中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」において、2025年度に売上高3兆円を目指すという目標を掲げている。自動車事業の3000億円というのは、全社売上高の10分の1に相当する野心的な数字だ。自動車事業は中期経営計画の基本戦略である「収益性の追求」「新事業の創出」「グローバル展開の加速」のうち、新事業の創出に関わる。

AKXYに乗って登場した旭化成の吉田常務

その重要な戦略を象徴するコンセプトカーの製作に協力したのが、GLMだ。

新しいビジネスモデル構想を持つGLMに注目

GLMについては以前、4000万円のEVスーパーカーを発表したことをこの媒体でもお伝えしている。この記事では、EV用プラットフォームを他社に提供する新たなビジネスモデルの可能性について触れているが、その続報ともいえるのが、今回の動きである。

今回のAKXYは、GLMによるプラットフォーム事業で公になった第1号案件だ。GLM取締役の田中智久氏は、「これまでにも、EVプラットフォームを利用して頂いた例がないことはありませんが、弊社の名前を表に出していただきながら、共同開発ということで公に発表していただくのは、今回のAKXYが初めてになります。この話は、旭化成様からアプローチしていただきました」と、いきさつを語る。GLMの技術力が、大手企業の旭化成の目に留まったのだ。

なぜEVだったのか

発表会場でAKXYの説明を行った旭化成・オートモーティブ事業推進室長の宇高道尊氏は、「コンセプトカーを製作するうえで、未来志向で我々も学んでいきたいと考え、一緒に取り組むことのできるパートナーを探していました。GLMはエネルギッシュで、かつエモーショナルな会社であり、新しいビジネスモデルを生み出すなど、柔軟性のある会社として声を掛けさせていただきました」と述べた。

ベンチャー企業として精力的かつ情熱的であるのは当然だが、EV事業において新たなビジネスモデルを考えている、すなわち、EVプラットフォームを提供するという構想を持っていることが、共同開発を申し入れた大きなきっかけであることを、宇高氏は発言に含ませた。

もう1つ、AKXYというコンセプトカーが、なぜEVであるのか。ここも重要な視点といえる。次世代車の枠組みでは、もはや標準車的な位置づけにあるとはいえハイブリッド車(HV)があり、昨今はプラグインハイブリッド車(PHV)も注目を集めている。さらには、未来を見据えた燃料電池車(FCV)も、日本においてはトヨタ自動車と本田技研工業が販売にこぎつけている。

なぜ旭化成はEVでコンセプトカーを作ったのか

EVを選んだ点について旭化成の吉田常務は、「時代はエコロジーと燃費であり、そのなかで市場性を考えた場合、いつという時間の捉え方はいろいろあるかもしれないが、台数が増えていく流れにあるのはEVで、未来志向で考えた回答がEVとなった」と答えている。

国内のマスメディアの報道では、あいかわらずEVに対し、航続距離が短いなどの課題を抱えているといった、従来型の概念を枕詞に使う例があとを絶たない。しかし、未来志向で新規事業を展開する、旭化成のような大手企業の現実的な回答は、EVであることが明らかになったのだ。

EVシフトを加速させるのはどんなクルマ?

EVで先行した三菱自動車工業や日産自動車に後れを取ったものの、トヨタとホンダも、米国カリフォルニア州のZero Emission Vehicle(ZEV)規制の強化や、中国のNew Energy Vehicle(NEV)規制を視野に、今は全力でEVの開発を急いでいる。

とはいえ、現時点で消費者の目に触れるEVの存在は限られている。ただし、三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」の中古車が出てくるようになり、次第に公道でEVを見かける機会が増えているのも事実である。また、EVの走行距離は着実に延びてもいる。

こうした中、先頃の決算記者会見の場において日産の西川廣人社長は、「EVのパイオニアとして、リードしていく姿勢に変わりはない」と発言した。年内に発売となる新型リーフに触れただけでなく、中国での小型EVについても、今後は追い上げていくと語った。もちろん、リーフを含めた、より大型のEVについても「これから需要が高まると予測しており、負けない自負はある」と答えている。

国内ではガソリンスタンドの減少が急速に進み、地方における移動手段の確保をどうするかが喫緊の課題となっている。そこに手ごろな価格のEVが投入されれば、自宅や仕事先でクルマを充電することで、これまで通りに日常生活を続けていくことが可能になるかもしれない。だが、そういう要望に応えられるEVは、まだ存在しないのが実態だ。

そこに、GLMのプラットフォーム事業がフィットする可能性がある。

走る・曲がる・止まるを担保するGLMのノウハウ

かつて、EVが急速に脚光を浴びた1990年代後半には、モーターとバッテリーで動くEVであれば、家電メーカーなどの新規参入も容易なのではないかとの声が上がったことがある。だが、クルマづくりはそう簡単ではない。動くかどうかではなく、ちゃんと走り、曲がり、止まることができるという自動車の基本性能が確かでなければ、安全に公道を走ることはできないのである。

GLMは「トミーカイラZZ」の電動化によって、スポーツカーの走行にも耐えうる基本性能を実現してきた。その上でGLMの田中取締役は、「GLMの強みは、何社ものサプライヤーとのつながりを持ち、各社で何ができて、何ができないかをよく分かっているところです。また、公道を走るための認証取得などの知見もあり、それが7年やってきた我々の成果です」と語っている。

「トミーカイラZZ」

また、プラットフォームの提供についても、「トミーカイラZZのプラットフォームをそのまま、小型車やSUVなど他の車種に使いまわすのではなく、それぞれの車種の要望に合わせて、最適な仕様で提供するという意味です」と述べた。

公開されている写真などから見るトミーカイラZZのEVプラットフォームは、まさにスポーツカー向けであり、あたかもレーシングカーのモノコックやサスペンションを見るようだ。なにしろ、トミーカイラZZを設計した解良喜久雄氏は、レーシングカーデザイナーである。それを、このまま他の車種に使うわけではないと、田中取締役は話すのである。

GLMが「G4」の発表会で展示していたプラットフォーム

その上で、プラットフォーム全体で提供するだけでなく、個々の要望に応じた部品単位での対応もできるという。相談や依頼に応じて、GLMは幅広い回答を用意できるというわけだ。

環境対応を急ぐ中国メーカーも注目?

こうしたGLMの新しい取り組みに対し、国内ばかりでなく、中国や東南アジアからも問い合わせが届いているという。なかでも大気汚染が深刻で、NEV規制を推進しており、また原子力発電への投資が著しい中国においては、EV導入を精力的に進めようとする現地自動車メーカーや新規事業者の間で、GLMの存在感が大きくなっていると想像することができる。

一方、国内では、やはり原価を抑えた手ごろなEVがどこまで実現できるかが課題だ。原価について田中取締役は、「それぞれの案件に応じて、材料を変更するなど原価低減の相談にも応じられるようにしたい」と語っている。

大手自動車メーカーは、グローバルな視点でのEV構想を持つ傾向にあるが、国内において私は、“100km100万円の軽EV”という構想を、あらゆる機会をとらえ提唱している。そのような日常の実用に足る身近なEVの登場を待つ声は、実際に多く届いてもいる。それを実現できる可能性を、GLMのEVプラットフォーム提供事業は支えてくれるかもしれない。

ただ、それを実行する意欲と資金力を持ち、GLMと共同歩調を取れる新規事業者が登場するかどうかは未知数だ。そこは期待しつつ、注意深く見守っていきたい。

ジャニーズ初・バーチャルアイドルユニットが登場、二次元と三次元は融合できるか<br /><br />

ジャニーズ初・バーチャルアイドルユニットが登場、二次元と三次元は融合できるか

2019.02.19

ジャニーズ事務所がバーチャルアイドル企画を発表

二次元のキャラを三次元のアイドルが演じる

二次元と三次元は融合できるか?

ジャニーズ事務所から「バーチャルアイドル」が誕生し、その意外性に注目が集まっている。

嵐やV6、KAT-TUN、Kis-My-Ft2など、これまで活躍してきた同事務所のアイドルたちは、改めて言うまでも無く皆、生身の人間だ。だが2月19日に発表された「Johnny’s×SHOWROOM 『バーチャルジャニーズプロジェクト(VJP)』」に関して言えば、それは異なる。

同プロジェクトは、SHOWROOMで行うライブ動画配信が主軸。表に立つのはバーチャルキャラクターで、キャラクターの声を担当する演者(キャラクターボイス:CV)として、ジャニーズ事務所のアイドルが配役されているという座組みだ。

プロジェクト第一弾として今回発表されたのは、関西ジャニーズJr.内ユニット「なにわ男子」の藤原丈一郎さんと大橋和也さんがCVを務めるキャラクター。この企画を若手の登竜門として考えていることが伺える。

クールな雰囲気の「海堂飛鳥(かいどうあすか)」(CV:藤原さん)と、元気なイメージの「苺空星空(いちごやかなた)」(CV:大橋さん)。キャラクターを手がけたのは、ニコニコ動画などで高い人気を誇る楽曲、動画制作チームHoneyWorks(ハニーワークス) のイラストレーター・ヤマコさん

また、会見当日の夜から、両キャラクターの動画配信がスタート。「海堂飛鳥」の配信は21:30から、「苺空星空」の配信は22:15から開始となっており、続けて見ることのできるスケジュールだ。発表に驚き、関心を持った人たちがその熱量のまま、今夜の配信に集まることが予想される。

これまではWebサイトではアイドルの写真は非掲載、電子書籍ではシルエットのみ掲載というケースもあるなど、インターネット対応には消極的だったジャニーズ事務所だが、2018年3月にはYouTubeに公式チャンネル「ジャニーズJr.チャンネル」を開設するなど、その姿勢は変化しつつある。

今回の企画に関して、「最新技術でジャニーズの新時代を切り開く」(プレスリリースより抜粋)としており、その気概の感じられる、非常にスピーディーな企画進行だ。ジャニーズがインターネット技術の潮流に関心を示していることを象徴する事例とも言えそうだ。

これまでにもあった二次元×三次元の試み

影響力が非常に大きなジャニーズ事務所による企画ということで注目を集めている本企画だが、これ以前にもキャラクターとアイドル(俳優)をコラボレーションさせた女性向け企画は存在する。アニメ・マンガ原作の脚本を若手俳優が演じる「2.5次元舞台」は、キャラクターを生身の俳優が演じるという点で、やや類似性はあるだろう。

それ以上に近いのは、バンダイナムコとアミューズが企画したメディアミックス作品「ドリフェス!」(2016年開始)。キャラクターのCVにアミューズの若手俳優を起用したという点で、今回の座組みに近いものがある。

活動の中で「5次元アイドル」(2次元のキャラクターと3次元の俳優を合わせた造語)を標榜し、ゲームアプリやTVアニメでキャラクターのCVとして出演した俳優たちが劇中歌を歌い踊るライブを行うなど、“次元の壁”を行き来する活動を行ってきた。2018年10月に開催された武道館ライブをもって活動に区切りをつけるとアナウンスされたが、今も根強いファンを抱えるコンテンツだ。

「顔が見えない」ことに不安の声も

ジャニーズのような「三次元」のアイドルを長年輩出してきた事務所が、あえて「二次元」の要素を含むバーチャルアイドル企画を立ち上げたのは、HoneyWorksのファンはじめ二次元を愛好する人たちへのアプローチによるファン層の拡大、そしてファンとアイドルの交流機会の創出が狙いと考えられる。

動画にコメントをつけ、アイドルが返事をするというやりとりは、これまでライブで受ける「ファンサ」(観客に向けてアイドルがアクションを行うこと)が主体だったアイドルとファンの関係に変化をもたらすかもしれない。

ただ、バーチャルアイドルが表に立つと当然ながら、ジャニーズアイドルの顔は見えない。ジャニーズJr.として活動し、ユニット化、そしてデビューという既存の路線とは大きく異なる本企画に対し、ジャニーズファンからはSNS上で不安の声も上がっている。

「二次元」と「三次元」、どちらか一方で構わないという人がいるのも事実ではあるが、相乗効果によって新たな魅力を創出する、あるいはこれまで知らなかったもう一方の魅力を発見する機会になることも考え得る。新たな化学反応を起こすことができるか、今後の展開に注目したい。

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2019.02.19

ホンダの八郷社長が記者会見

英国生産終了の理由は「シビック」の生産体制?

欧州でのブランド強化に注力

「ホンダ、英国工場を閉鎖」と日本経済新聞が報じた2月19日の夕刻、ホンダの八郷隆弘社長が記者会見を開いた。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を受けての動きかと思われたが、八郷社長によれば本件とブレグジットは「無関係」であり、今回の決断は「グローバルにおける生産配置と生産能力の適正化」を図るためのものだったという。

会見に臨むホンダの八郷社長。会見のメインテーマは「事業運営体制変更」だったが、質疑応答では英国工場について多くの記者が質問した

次期「シビック」の生産体制が決め手に?

英国・スウィンドン市にある「ホンダオブザユー・ケー・マニュファクチュアリング・リミテッド」は、ホンダが1985年に設立した工場だ。現在は約3,500人の従業員を抱え、主に「シビック ハッチバック」を生産している。ホンダは今回、同工場での生産を2021年中に終了すると発表。さらに、トルコの工場では「シビック セダン」の生産を2021年中に終了すると決めた。

なぜ、英国工場を閉鎖するのか。八郷社長によれば、ホンダは四輪車の生産能力について世界的に見直しを進めており、現状、年間540万台の能力(2018年暦年の稼働率は約97%)を、2021年末には同510万台あたりまで引き下げる方向で動いている。その一環として今回、英国での生産を終了させるそうだ。年産510万台体制になれば、ホンダでは工場の稼働率が100%を超える見通しだという。

英国工場では年間16万台程度のシビック ハッチバックを生産しているそうだが、そのうち、65%は英国およびEU以外の地域に輸出しており、55%は北米向けとなっているのが現状。そんな状況の中、ホンダはシビックの次期モデルを世界のどこで作るか検討し、北米で売れているものは北米で作るという決断を下した。今後、英国およびEU向けのクルマは中国や日本などで作って輸出する。

現行型「シビック ハッチバック」

日EU経済連携協定(EPA)により、日本から英国およびEUに送るクルマの関税が撤廃となれば、確かに、わざわざ現地でクルマを作る必要はなくなるのかもしれない。環境問題への対策を急ぐ中国では、ホンダを含む自動車各社が環境に配慮したクルマのラインアップ拡充を急いでいるが、中国と同じく環境規制が厳しさを増す欧州に向けては、中国で(大量に)作ったクルマを輸出するというのも、見方によっては理にかなっている。ここ最近のホンダは欧州事業で苦戦していたが、これを機に「もう一度、欧州でホンダブランドを強化したい」と八郷社長は意気込む。

今回の決定にブレグジットが及ぼした影響について、報道陣からは何度も質問が出たが、八郷社長は一貫して「ブレグジットは考慮しなかった」と答え続けた。合意なき離脱となるのかどうか、ブレグジットの行き着く先はいまだ不透明という情勢だが、ホンダとしては、英国工場で部品の調達が滞る懸念があるため、同工場で4月に生産調整を実施する予定だという。

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