函館と青森が打ち出す周遊観光! 北海道新幹線で変わる北国の旅

函館と青森が打ち出す周遊観光! 北海道新幹線で変わる北国の旅

2016.04.15

北海道新幹線が開業したタイミングを捉え、函館、青森、弘前、八戸の4都市が旅客誘致で手を組む。この4都市を「青函圏」という言葉でくくり、同エリアを周遊する旅を打ち出してエリア全体で集客を図る。北国の桜が見ごろを迎えるゴールデンウィークを前に、絶妙なタイミングで立ち上がるキャンペーンの効果は。

観光客10%増に向けて

函館市と青森市の間では、津軽海峡を隔てながらも古くから交流があり、青函トンネル開通から1年後の1989年には、「ツインシティ(双子都市)提携」を締結して経済、観光、文化などの関係を深めてきた経緯がある。新幹線開通のタイミングを捉えた今回のキャンペーン「青函圏周遊博」では、東北新幹線沿線の八戸市と、新青森駅から特急電車で25分の弘前市を巻き込み、青函圏の回遊を前面に打ち出した旅客誘致を進める。

青函圏周遊博のアンバサダーに就任した石原良純氏。北海道新幹線の開通は、首都圏と函館を線で結ぶだけでなく、函館、青森、弘前、八戸という魅力ある都市群を面として打ち出すチャンスだと青函圏周遊の可能性に期待を示した。気象予報士としての顔も持つ同氏によると、東北の桜前線は順調に北上しているそうだ

キャンペーンの内容としては、まず4都市を網羅するモニターツアーを実施し、その様子を「東京ウォーカー首都圏版」で報告記事として紹介する。5月には旅行会社に働きかけて、4市を周遊する旅行商品の造成を図る。エリア内の飲食店、宿泊施設、観光施設などで使えるクーポンも発行する。

青函圏の旅行者数は2013年度で約2,100万人。周遊博の実施などを通じ、この数字を8~10%程度伸ばしたいというのが4市の目標だ。

函館を巻き込み観光客の獲得を目指す青森県

北海道新幹線の話題では、首都圏~函館間のアクセス向上について語られることが多いが、価格と所要時間を考えると、同区間における航空機の優位性は依然として高そう。新幹線開通の恩恵を享受できるのは、むしろ津軽海峡を抱える青函圏の各都市だという気がする。

北海道新幹線の開業により、青函圏周遊の利便性が高まった(画像提供:青函圏観光都市会議)

青函トンネルを通る特急電車だと、青森市~函館市間は約2時間の行程だった。新幹線は新青森駅と新函館北斗駅を約1時間で結ぶ。青森県側の3都市にとってみれば、今が函館を巻き込んだ旅行プランを打ち出す絶好のチャンスといえる。

観光キャンペーンの注目は八戸市?

北海道新幹線の開通により、最も大きな恩恵を受けるのは八戸市かもしれない。青函圏周遊博の発表会に登壇した八戸市の小林眞市長によると、産業都市・水産都市としての顔を持つ同市は、市外から流入する人の数こそ多いものの、訪問者は大半が仕事目的で、市としても観光客の誘致には積極的に取り組んでこなかった経緯があるという。

青函圏周遊博を通じて、八戸市では観光資源の掘り起しが進む可能性がある。青森県は全部で3つの国宝を有するが、その全てが八戸市に集まっていることを考えてみても、同市には観光地としての伸びしろが多分に残されているような印象を受ける。

八戸市にとって、青函圏周遊博は観光都市としての足場を築くチャンスだ。写真は同市で夏に開催される「八戸三社大祭」の山車

見逃せないインバウンドの動向

青函圏では外国人旅行者の動きも活発化する見通し。韓国、中国、台湾との直行便が就航する函館空港が玄関口として機能すれば、青森県側でも外国人旅行者の流入が期待できる。

函館市では外国人旅行者が増えており、外国人宿泊客数は2009年度の12.7万人が2014年度には約35万人まで拡大している。2015年度の集計結果は出ていないが、函館市では50万人程度まで増加したという手応えを得ているとのこと。函館を訪れる外国人旅行者が、青森方面を旅程に組み込むかどうかに注目したいところだ。函館空港と同様に、韓国、中国、台湾との直行便が就航している仙台空港が、青函圏を含む東北地方の南の玄関としての役割を果たすことも考えられる。

北海道新幹線の開業に合わせて、北海道旅客鉄道(JR北海道)と東日本旅客鉄道(JR東日本)が用意した外国人旅行者向け商品も、インバウンド獲得を狙う青函圏にとっては追い風だ。新幹線と特急電車を含め、両社エリア内なら乗り放題となるフリーパス「Jr East-South Hokkaido Rail Pass」は、外国籍の利用者だけが購入できる。利用期間は6日間で、海外で購入する場合は大人(12歳以上)1枚2万6,000円と割安感がある。寄り道が多くなる鉄道の周遊旅行には最適な商品だ。

国内外からの観光客の玄関口となる函館市が近くなったことで、青森県側の3都市は多くの恩恵を受けることができそうだ。では、青函圏周遊を打ち出すことにより、函館市が得られるメリットとはなんだろうか。

ますます重要性が高まる函館のポジション

北海道南部(道南地方)の玄関口である函館市は、これまでも観光地として確固たる地位を築いてきているわけだが、北海道新幹線の開業により、その地理的な優位性はますます高まっていきそうだ。青森県へのアクセスが向上したことで、函館市は北海道旅行と青函圏周遊という南北両方向の旅を提案できる立ち位置を獲得した。道南地方と青森県を円で囲うような観光エリアを想定した場合、その円の中心地点に位置する函館市は観光ハブとして発展する可能性を秘める。

函館市の観光部に話を聞くと、青函圏周遊促進事業には同市と青森県側3市の補完関係を強化する効果も期待できるという。異国情緒が魅力の函館市には、裏を返せば日本文化を前面に押し出せるような観光資源に乏しいという側面があった。青森には「弘前城」、「ねぶた祭」、「津軽三味線」など、分かりやすく「和」を感じられる場所や文化が豊富に存在する。距離的には近いが、文化的には違いのある函館と青森のコントラストも、青函圏で活用すべき重要な観光資源といえるだろう。

春の観光シーズンが最初の試金石に

エリア内に弘前城と五稜郭を抱える青函圏にとって、北国で桜が見ごろを迎える4月下旬から5月上旬にかけての時期は、周遊博の効果を測るうえで最初の試金石となるだろう。青函圏周遊博では桜を巡るモデルコースとして、八戸市の三八城公園、青森市の合浦公園、弘前市の弘前公園、函館市の五稜郭公園の4カ所を2泊3日で回るルートを提案している。

桜の名所が豊富な青函圏。弘前城(写真左)では石垣修理のため、期間限定で天守の位置が変わっている。岩木山を背景に桜と天守を同時に撮影できるのは、天守が元の位置に戻る5年後までだという。五稜郭(写真右)では高さ107mのタワーから桜を見下ろすことが可能だ

青森市の八甲田山、弘前市の白神山地、函館の夜景など、観光資源を豊富に抱える青函圏の周遊ルートは色々と考えられる。夏には「弘前ねぷたまつり」と「青森ねぶた祭」を組み込んだ旅行プランが盛り上がりそうだ。

2030年度末までを目指す北海道新幹線の札幌延伸が完了すれば、新函館北斗駅は同路線の終着駅たる地位を失うため、観光地としての立ち位置にも何らかの影響を受ける可能性がある。延伸完了までの十数年という期間は、函館市にとって多くのリピーターを確保するチャンスだ。函館を訪れる人が増えることで、周遊客の流入が期待できる青森県側の3都市にとっても、この期間は観光都市としての発展を目指すうえで正念場となるだろう。

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人に見せたくなる

モノのデザイン 第1回

人に見せたくなる"つなぎ目のない"洗濯機 - ドラム式洗濯機「Cuble」(前編)

2016.04.14

パナソニックが昨年11月に発売したななめドラム式洗濯機「Cuble」。表面に凸凹がない、洗練されたデザインで注目を集めている。洗濯機というのは、これまでドラム式に限らず機能性訴求が優先で、デザイン性は二の次といったイメージがあった中、この傾向に一石を投じたのが本製品だと言えよう。

Instagramに投稿したくなる「洗濯機」

「『Cuble』を買った方が、Instagramなどに、写真をアップしていらっしゃるんです」。Cubleのデザインを担当したパナソニック アプライアンス社 デザインセンターの太田耕介氏は、同機種の象徴的なエピソードとして、InstagramをはじめとしたSNSへの投稿を挙げた。

パナソニック アプライアンス社 デザインセンター 太田耕介氏

「今まで、洗濯機を買ったことをSNSで写真をシェアし、友達に知らせる…みたいな現象はあまりなかったと思うので、既存の洗濯機とは異なる形で、Cubleに関心を持っていただいたのだと実感しています」(太田氏)。

Cubleのデザインの特徴は、つなぎ目のないフラットで直線的な形にある。"キュービックフォルム"と呼ばれる独自のデザイン。「つなぎ目を極力排したシンプルでフラットなデザインは、すき間が少ないため、同時に汚れを溜まりにくくし、メンテナンス性を高める役割も果たすんです」と太田氏。見た目の美しさはもちろんだが、"機能美"が詰まった結果でもあるという。

そんなこだわりの結果からか、20万円台後半というドラム式洗濯機の中では高価格帯の製品ながら、9月に発表した直後から300台近い予約申し込みを受けたほどの反響だったという。

「Cuble」は「ドラム式洗濯機」としては珍しい、四角で継ぎ目のない外観となっている

隠す存在から、見せるモノへ

「ドラム式洗濯機の新しい提案」というかたちでスタートしたCubleの開発の始まりは、約2年前まで遡る。パナソニックによると、現在のドラム式洗濯機の主流となっている丸みを帯びたデザインは、同社が2003年に発売した"ななめドラム"が源流となっているのだとか(ちなみに、これが世界で初めてのななめ式だそうです)。これは、ドラム槽をわずかに斜め後方へ傾けることで、洗濯物の出し入れのしやすさと節水性を高めることを実現したものだ。「ドラムの傾きを強調する曲線形状にすることで、一目で機能性などがお客様に伝わるデザインにする」(太田氏)ことを重要視してきたという。これ以降他社も追随し、日本におけるドラム式洗濯機は曲線的なデザインがスタンダードになっていったそうだ。

しかし、発売から10年ほどを経たあたりで、ドラム式洗濯機の機能はある程度のレベルの高さにまで達し、定着。当初は30度まで傾いていたドラム槽も、現在では10度の傾きで十分な性能を発揮できるようになっていた。

パナソニック社内では「機能性がある程度高まってきた中、洗濯機も今までの形でいいのか?」という機運が高まり、これまで機能性が重視され、洗面所で"隠す"というイメージがあった洗濯機の新たなスタイルを提案するプロジェクトが開始されたといい、それがCubleの誕生につながったとのことだ。

Cubleを開発するにあたり、デザインコンセプトとしてまず意識されたのが、"空間との調和"だという。「最近のサニタリー空間は、シンクなどをはじめフラットなデザインが増えてきています。そこで線を揃えていくことで、スッキリさせられると考えました。しかし、単に四角くするのではなく、凹凸や隙間を徹底的になくし、シンプルな箱を目指すことにしました」と太田氏は振り返る。

太田氏による製品スケッチ

しかし、デザイン性を求めながらも、もう一方でポリシーとして掲げられていたのは、「機能性を犠牲にしたり、妥協したりしない」ということ。そこで従来からの"ななめドラム"の使い勝手を守りながらも、本体の外観を大きく変えていくというのが使命だった。つまり、中身のドラム槽を10度に傾けた状態のままで、本体を水平垂直な形状にするという決して容易ではない挑戦だ。

これまで丸かったものを四角くする

"空間との調和"を生み出す一方、”機能性を犠牲にしない”デザイン。それを掲げて開発されたCubleにおいて、これまでのドラム式洗濯機にはなかった構造上の大きな革新は、"フルオープンドア"と名付けられたドアの採用だ。

従来のドラム式洗濯機では、扉はドラム槽の投入口の部分を切り取るように、丸い形のものが取り付けられている。一方、Cubleでは、本体の前面が全体的にパネルになった四角い扉を採用している。

この大きな構造の変化は、機能性においてもさまざまな利点をもたらした。例えば、ヒンジ部分を本体の外側に取り付けることができるため、ドアを前に大きく開くことができる。これにより投入口前のスペースをドアがふさがず、作業空間を広く確保できるため、洗濯物が出し入れしやすくなった。また、すき間が少ないフラットな表面は手入れもしやすいというメリットも生み出す。

Cubleの特徴のひとつである「フルオープンドア」

Cubleでは扉を全面的なパネルにしたものの、ドアの真ん中には"クリアウィンドウ"という、中が覗ける丸い"窓"の部分を設けている。太田氏によると、これは洗濯機の"エンターテイメント性"を意図したものとのこと。

「ユーザーの方の中には、洗濯機が回っている状態を見たいという声もあります。中が見えることで、洗濯に対するユーザーのモチベーションを上げられるのではないか。そう考え、あえて中を見せるために透明な強化アクリル板を採用しました」と話す。

Cubleをはじめとするパナソニックのドラム式洗濯機の特徴のひとつに"即効泡洗浄"という機能がある。高い水圧により洗浄液を泡状にして衣類に降り注ぎ、洗浄力を高めるための機能だが、「この泡が外から見えることで、"嫌々行う家事"から"楽しい"ものへと洗濯に対するイメージをポジティブに転換したかった」とのことだ。

とはいえ、これまでの洗濯機と異なるデザインの実現は、一筋縄ではいかなかったという。後編では、Cubleが直面した課題と、その突破口となった意外な製品について語られる。

AIを活用、新生Facebookメッセンジャーは何を変えるか?

AIを活用、新生Facebookメッセンジャーは何を変えるか?

2016.04.14

Facebookは米国時間4月12日に開発者イベントF8を開催した。Facebookの長期ビジョンが基調講演のテーマとなったが、そのなかで、最も重要かつ大きな変化を遂げそうなサービスがメッセージアプリの「Facebookメッセンジャー」(以下、メッセンジャー)だ。

大きく変わろうとするFacebookメッセンジャー。変化は何をもたらすか

Facebookは、メッセンジャーのプラットホーム化を2015年のF8から進めており、これまではメッセンジャーでのコミュニケーションに、面白いビデオや画像を付加・投稿できるアプリ連携の手段などを提供してきた。対して、2016年のアップデートは、メッセンジャーをビジネスプラットホームに変えよう、というアイデアだ。

会話の自動化でビジネスが進む

"メッセンジャーをビジネスプラットホームにする"という取り組みは、モバイルにおける非常に多くの物事、すなわち、我々の生活そのものを大きく変えていく可能性を秘めている。

企業は、Facebookユーザー個人との間でメッセンジャーを介したコミュニケーションができ、情報提供やサービス提供、コマースなどが実現できる。ユーザーも、メッセンジャーさえスマートフォンに入っていれば、アプリを見つけてインストールする必要がなくなる。

そして、もうひとつ。メッセンジャーのビジネスプラットフォームでは、企業はこれまでのように、ユーザーから届いたメッセージ、一件一件に、人力で対応する必要がなくなる。Facebookが披露した「Bots for Messenger」で、自動会話エージェントを作れるようになるからだ。

この自動会話エージェントとはどのようなものか。基調講演において披露されたSpringというコマースサイトのデモを例に挙げてみよう。

Springの事例。チャットボットとのやりとりでは商品情報を掲示して「購入する」「同様の商品を見る」「質問をする」といった選択肢を表示。メッセンジャーからのアクションを可能にする

Springとのメッセージを開くと、「今日は何をお探しですか?」と取扱商品のカテゴリーの選択肢をボタンで表示する。完全な自由作文に加えて、あらかじめボタンで用意することで、ユーザーからの返答を受け、会話することができるのだ。

また、絞り込まれた商品や天気の週間予報など、複数のアイテムを横スクロールで表示するカルーセルも用意された。企業が持っているサービスを、定型的に、メッセンジャーのチャット内で利用できるインターフェイスへと進化したのだ。

チャットボットを活用したサービスを数多くの企業が提供する

メッセンジャーアプリの変化とは

メッセンジャーは現在、1対1もしくはグループのコミュニケーションツールになっており、音声やビデオ通話をサポートし、画像やアニメーション、絵文字なども添付できるコミュニケーションプラットホームへと急速に進化した。ユーザー数は9億人で、毎月10億通のメッセージが流通する。このメッセンジャーをビジネスプラットホームに変化させる意義は2つある。

月間アクティブユーザー9億人のメッセンジャーをビジネスプラットフォームに変える意義とは?(画像:Facebookニュースルームより)

1つは、アプリなしでのモバイルの体験の実現だ。これまで、スマートフォンで企業がサービスを提供する際、まず考えるのが専用アプリだった。モバイルウェブよりも体験を作り込むことができ、ホームスクリーンにブランドのアイコンが表示され、エンゲージメントを高める役割も担ってきた。

ところが、必ずしもアプリのダウンロードとアカウントの作成が、ユーザーにとって快適な作業ではない。特に新興国では、以前として2Gの通信速度と少ないストレージのスマホが使われており、アプリのダウンロードや端末内への保持は、苦痛ですらある。

メッセンジャーのビジネスプラットホーム化は、これまで当たり前だったスマホ体験をよりライトなものに変えることで、ユーザーの負担を極限まで下げることができるだろう。

2点目は、Facebookのビジネスにおける影響力の拡大だ。企業のメッセンジャーアカウントは、Facebookページにひもづく。メッセンジャーでのビジネス展開を強化するには、企業のFacebook活用の拡大が不可欠であり、企業もユーザーも、より長い時間Facebook上で過ごすことになる。

モバイルでの広告や決済などが主力となってきたFacebookにとって、プラットホーム内での滞在時間の拡大は、売上自体を拡大させる最もわかりやすい変化といえる。

人工知能ボットへの過度な期待よりは……

2016年の1つのトレンドに、人工知能を活用したチャットボットがある。チャットボットは昔からあり、Twitterなどで利用されている自動応答システムがイメージしやすいだろう。そこに人工知能の要素を取り入れたのが、最新のチャットボットだ。

Facebookも、メッセンジャー向けに、より賢いチャットボットに鍛え上げるオプションを用意しており、メッセンジャー内で人間同士の自然なコミュニケーションが可能になることも期待される。

だが、従来のチャットボットは、実用性が低く、人工知能が活用されたところで、チャットボットが本当に役立つのか、と懐疑的に見る人もいるだろう。そのあたりについては、現段階ではまだ評価はしづらいが、筆者はこう考えている。従来型のチャットボット、つまり、単純な定型の会話でも、役立つ場面がたくさんあるのではないかということだ。

今回のフェイスブックの取り組みは、会話インタフェースを、好む人々のために、新たなビジネスの手段を提供したことの方が重要だ。

例えば天気予報アプリであれば、位置情報を送ったらその場所の天気を返す、という簡単なインタラクションで十分機能する。おそらく、天気アプリをインストールしたり、Google検索をするためにブラウザを開くよりも、友人との会話のついでに、ボットに位置情報を送るほうが10秒以上早く目的を達成できる。モバイルの世界で、秒単位の効率化がユーザー体験にとって重要なのだ。

また、前述のコマースの例でも、パターンから外れてしまい機械学習が必要な会話がすぐに必要だとは思わない。自社で揃えている商品のカテゴリ、サブカテゴリ、価格帯を選んでもらえば、おすすめの商品を提示できる。もし特定の商品が欲しければ、そのキーワードを話しかけて貰えば、検索結果を返せば良い。

まず重要なことは、人工知能以前の話だ。つまり、顧客が、自分たちのビジネスに何を期待し、どのような手順を用意すれば良いか。これを考えて、シンプルな会話のパターンに落とし込むことが重要なのだ。パターンから外れることは、今まで通り、実際の人が対応すれば良い。その経験を通じて、パターンを増やしていけばよいのだ。

このように考えると、メッセンジャーにおけるチャットボットの活用法は、数多くある。人工知能の活用したチャットボットの評価が高ければ、さらに大きな飛躍も期待される。Facebookのチャットボットを通じた新しいインタフェース。その今後に注目していきたいところだ。

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