実は10年連続赤字だったソニーのテレビ事業 どうやって復活したか?

実は10年連続赤字だったソニーのテレビ事業 どうやって復活したか?

2017.05.25

「テレビ事業は相当、筋肉質な事業に変革でき、収益性も安定してきた。今後は、勝負をかけていく市場を果敢に攻め、シェアを獲りにいくべきところは獲りに行く」――。

ソニーの平井一夫社長は、5月23日に行われた経営方針説明会で、テレビ事業の今後の方向性について発言。事実上、テレビ事業の復活を宣言してみせた。

2016年度のテレビ事業の営業利益率は5%に到達。3年連続での営業黒字を達成している。

「テレビ事業は長年にわたる赤字の状況から、安定した収益が見込める事業に変革を遂げた」と、平井社長は語り、今後は、「持続的な収益創出に挑む」との姿勢を明らかにした。

ソニーのテレビ事業は本当に復活したのだろうか。

売っても儲からない収益構造

経営方針説明会で、ソニーの平井社長は、2015年度からスタートした第二次中期経営計画の成果のひとつとして、テレビ事業の取り組みについて触れてみせた。その理由は2つある。

ひとつは、テレビ事業が、ソニーの業績回復の象徴的事業となっている点だ。ソニーのテレビ事業は、2004年に赤字に転落して以来、10年連続での赤字を計上。テレビ事業の10年間の累計赤字は、8000億円にも達していた。

「当時のテレビ事業は、ソニーにとって最大の課題事業であった」と、平井社長は振り返る。売っても儲からないという構造に陥っていたのだ。

だが、2014年度には、テレビ事業を分社化。構造改革の効果とともに、本社費用を30%削減したり、販売会社費用を20%削減したりといった効果もあり、テレビ事業が11年ぶりに黒字化。83億円の黒字に続き、2015年度、2016年度も黒字化した。

もうひとつの理由が、この業績回復において、ソニーのDNAに基づいた考え方によって事業変革を推進してきたことだ。

平井社長は、「私は、ソニーの創業以来のDNAでもある『規模を追わず、違いを追う』ということをキーワードに取り組んできた。これが、長年苦しんできた、テレビをはじめとしたコンシューマエレクトロニクス事業の再生につながっている」とする。

長年に渡り、プレイステーション事業を担当してきた平井社長が、テレビ事業に関わったのは、副社長時代の2011年4月に、コンシューマエレクトロニクス事業全般を担当したときからだ。この年、ソニーは、テレビ事業だけで1480億円の営業損失を計上。テレビ事業の赤字幅は過去最大となっていたタイミングだった。平井氏は、すぐに収益改善プランの策定に取り掛かり、2011年11月には、大きな戦略転換を発表した。

それまでのテレビ事業の基本的な姿勢は、量の拡大によって、コストをカバーし、赤字から脱却するというものだった。だが、平井氏が打ち出したのが、事業規模が半分以下でも損益を均衡させられる体制へと事業構造を変革するという、まさに180度異なった方針だった。実際、一時は、年間2700万台にまで引き上げた液晶テレビの販売計画は、2016年度実績で1210万台にまで縮小している。

「社内外から、その戦略で、果たして本当にテレビ事業の損益が改善するのかといったように、疑問視する声が多かった」と、平井社長は当時を振り返る。

ターゲットを絞り、規模を追わない

平井氏が取ったテレビ事業の基本戦略は、ターゲットとする顧客層を絞り込み、販売台数は、それに合わせた規模に縮小。それに応じて、販売会社の費用を含めた固定費を大幅に削減することでの再生だった。

また、テレビのなかで最も大きなコストを占める液晶パネルは、生産会社への出資を解消し、複数の企業からの機動的な調達を図る体制に転換した。具体的には、韓国サムスンと合弁で設立した液晶パネル生産のS-LCDを解消。また、スタートしたばかりだったシャープが大阪府堺市に建設する液晶パネル生産のシャープディスプレイプロダクトとの合弁も解消した。

まさに、規模を追わずに、業績回復につなげてみせたのだ。

高付加価値商品で違いを追う

規模を追わない一方で、ソニーがこだわったのは、「違いを追う」という点であった。

「ソニーは、音と映像にとことんこだわり、徹底的な商品の作り込みを行ってきた。4Kを中心とした大型画面の高付加価値商品に注力しており、ソニーの高画質技術の詰まったプロセッサーを組み合わせることで、有機ELテレビ、液晶テレビともに、他社の商品を凌駕する映像を再現していると自負している」とする。

実際、ソニーは、6月10日から国内で発売する4K有機ELテレビ「ブラビアA1シリーズ」に、同社独自の4K高画質プロセッサー「X1 Extreme」を搭載。さらに、画面自体を振動させて音を出力する「アコースティックサーフェス」を採用し、画面周辺に配置されるスピーカー部をなくしたこしとで、正面からはスピーカーやスタンドが見えず、まるで映像だけが浮かんでいるような佇まいを実現している。ソニーならではの違いを追った商品だ。

また、液晶テレビ「BRAVIA Z9Dシリーズ」は、100型のフラッグシップモデルが700万円(税別)という価格設定が話題を集めたが、これも音と映像に対するソニーのこだわりを表現するものだといえるだろう。

また、ソニーでは、Android TVを、重要な差別化ポイントにあげており、テレビの新たな視聴環境を提案。ソニーのテレビのインターネット接続率は70%と高く、さらに音声検索により、動画コンテンツを探し出す利用者が68%と、3人に2人に達している。受動型のテレビ視聴から、能動型のテレビ視聴へと提案を変えることに成功している。

平井社長は、ソニーの高付加価値商品が市場に受け入れられていることを裏付けるように、テレビの平均販売単価が上昇していることを示す。

「2014年度時点の平均販売単価は5万7000円、2017年度は6万7000円に上昇する見通しである」とする。

3年間で1万円の平均単価の上昇は、付加価値モデルへのシフトを示すものであり、特筆できる成果のひとつだといえよう。

平井社長は、「『規模を追わず、違いを追う』という施策は、いまから思えば事業運営にとっては、基本の施策とも言える。だが、私が信頼し現場を任せた事業トップがぶれずに強いリーダーシップを発揮してくれたこと、そして何より、社員たちが『ソニーのテレビを必ず復活させる』という強い想いで一丸となり、改革に真摯に取り組んでくれたことの成果だと考えている」と、黒字化への道のりを総括する。

ターゲットを絞った上、シェアをとりに行く

平井社長は、「こういった改革を経て、テレビ事業は相当な筋肉質の事業に変換できたと考えている」とする。だが、その上で、「今後の課題は、持続的な収益創出。シェアを獲りにいくべきところはとりに行くことも必要になる」と今後の方針を示す。

これまでは、テレビ事業においては、シェア拡大といった言葉を使わなかった平井社長だが、今回の経営方針説明では、明確に「シェア拡大」の取り組みを示して見せた。

ここにもテレビ事業復活の宣言が見て取れる。

だが、闇雲にシェアを追うことはしない。「規模はいたずらに追わない。どの地域でも、どの分野でも、商品点数を増やしてシェアを取りに行くことは考えていない。ターゲットを絞った上で、勝負をかけていく場所でシェアを伸ばしていく」とする。

具体的なシェア拡大のターゲットとしてあげたのが、アジア市場だ。「とくにインド市場は、ソニーブランドが支持されている市場である。ラインアップの強化と、強力なマーケティングによって、力を入れていく市場になる」とした。

機能面だけでなく、感性に訴える商品を目指す

ソニーのテレビ事業は、着実に回復基調にある。そして、営業利益率5%は、テレビ事業単独で見れば、決して悪い数字ではない。ただ、これまでの戦略は縮小均衡型の再生であり、今後、シェアを獲りに行くというギアチェンジは、これまでの取り組みとは大きく変化することになる。業績の回復によって、成長戦略の起点に立ったソニーは、今後、テレビ事業の次の姿を描くことになるはずだ。

そのキーワードを、平井社長は「KANDO@ラストワンインチ」としている。

通信業界では、かつてブロードバンドを家庭に引くための残りワンマイルの敷設に大きな課題があったことを、ラストワンマイルと表現。ラストワンインチは、それに引っかけたものだが、2016年後半に、平井社長が社内で使ったところ、社員からの反応がよかったことから、その後、気に入って、積極的に使っている言葉だ。

そして、KANDO(感動)は、平井社長が講演などでは必ず使う、平井ソニーのモノづくりを象徴する言葉である。

平井社長は、「中長期の持続的成長に向けては、ソニーが、コンシューマに向き合い、お客様に感動をもたらす『ラストワンインチ』の存在であり続けることが大切だと考えている。ソニーがお客様に、感動をもたらす場所は、お客様に最も近いところ、つまり「ラストワンインチ」である。機能面での圧倒的な差異化に加え、デザインや質感にもこだわった、お客様の感性に訴える商品を開発し、それを世界中にお届けする。ソニーはお客様の体験のインターフェースとなる商品をつくり続ける」とし、「4K有機ELテレビなどは、まさに、お客様のラストワンインチで感動をもたらすことができる、『KANDO@ラストワンインチ』を体現した商品と自負している」とする。

経営方針説明会で、「ソニーは、何の企業か?」と記者から問われた平井社長は、「ひとことでいえば、感動企業」と答えてみせた。今後のテレビ事業において、「規模を追わず、違いを追う」という基本姿勢を維持しながら、収益性を高めるための一手をどう打つのか。そして、そこに、テレビにおける次の「KANDO」をどう盛り込むのか。

「数年前には、コンシューマエレクトロニクスという産業そのものの将来性に懐疑的な見方があった。だが、私は、コンシューマエレクトロニクスにイノベーションはある。一歩も引かないと言い続けてきた」と平井社長。これは、ソニーの今後のテレビ事業にも当てはまる言葉だろう。だからこそ、平井社長は、テレビに対しても、KANDOという言葉を積極的に使い続けている。

年間5000万台規模のサムスン、年間3000万台規模のLG電子に比べると、1200万台というソニーの出荷規模は見劣りするが、それでいても存在感を発揮することは可能だろう。

2018年度以降の中期経営計画で打ち出される新たな成長戦略が、ソニーのテレビ事業の本格的な回復を、本当の意味で評価するものになりそうだ。

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メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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