ワーゲンが小型車「ゴルフ」刷新、反転攻勢のカギを握るクルマが登場

ワーゲンが小型車「ゴルフ」刷新、反転攻勢のカギを握るクルマが登場

2017.05.25

独フォルクスワーゲン(VW)の日本法人であるフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)は、主力小型車「ゴルフ」を約4年ぶりに刷新し、発売する。輸入車のベストセラーとしての地位を長きにわたり堅持してきたゴルフも、昨年は排ガス不正問題の影響もあって、BMW「ミニ」にトップの座を明け渡したという経緯がある。VGJが反転攻勢のカギを握るクルマと位置づける新型ゴルフは、再び販売台数トップの座を獲得できるか。

新型「ゴルフ」

ハッチバック型コンパクトカーの先駆け

1974年に初代が登場したゴルフは世界的なベストセラーカーで、VWの累計生産台数は3300万台を超える。日本では1975年の発売以来、累計で85万台以上を売った人気車種だ。新型ゴルフ発表会に登壇したティル・シェアVGJ社長は、ゴルフはハッチバック型のコンパクトカーというジャンルを確立したクルマだと表現した。

「ゴルフ ヴァリアント」も刷新

ゴルフはモデルチェンジごとに各時代で最先端の技術を取り入れ、多くの人に新しい技術との接点を作ってきたモデルでもあるという。例えばアンチロック・ブレーキシステム(ABS)やエアバッグといった設備は、ゴルフが競合他社に先駆けて取り入れてきたとシェア社長は語る。

「デジタル化」と「トラフィックアシスト」が売り物

新型ゴルフは、7世代目となる現行ゴルフのマイナーチェンジ版ということになる。今回は、「ゴルフ」「ゴルフ ヴァリアント」「ゴルフ オールトラック」の全てが新しくなった。新型で導入となった技術はいくつかあるが、VGJが強調したのが「デジタル化」と「自動運転を見据えた運転支援システム」だ。

デジタル化の分かりやすい例が、ゴルフでは初採用となる「デジタルメータークラスター」だ。スピードメーターなどをグラフィックとして映し出す12.3インチの大型ディスプレイは、VWのカーナビゲーションシステムと連動して地図や経路を表示することもできる。

大型ディスプレイにスピードメーターを映し出すデジタルメータークラスター

運転支援システムで特筆すべきは、VWがコンパクトシリーズで初めて導入した渋滞時追従支援システム「トラフィックアシスト」だろう。これは、車線を逸脱しないようドライバーをアシストする「レーンキープアシストシステム」と、自動で加減速して先行車を追従する「アダプティブクルーズコントロール」を組み合わせたシステムだ。

トラフィックアシストは時速30キロ以上の走行時で、ドライバーがステアリングに両手を置いているという条件下でのみ使用可能。時速0~60キロの範囲で自動的に加減速を行い、先行車と一定の車間距離を保ちつつ、車線も維持する。これにより、渋滞走行時のドライバーの疲労軽減が図れるという。

7世代目ゴルフに新規技術が加わり、エクステリアデザインも変更となった今回の新型ゴルフ。価格設定も魅力の1つで、入門しやすい輸入コンパクトカーという立ち位置を確立しているゴルフだが、新型で価格は維持できているのだろうか。

戦略的な価格設定を実現

「250万円を切る戦略的な価格設定を実現した」。ゴルフ発表会に登壇したVGJ営業本部長の長谷川正敏氏は、ゴルフのエントリーモデルである「Golf TSI Trendline」の価格設定に自信を示した。新型ゴルフの価格帯は、ハッチバックのGolf TSI Trendlineが249万9000円で、最も値段の高い「Golf R Valiant」が569万9000円だ。

ゴルフの価格設定

エントリーモデルの価格は、7世代目ゴルフから据え置きとなっている。この価格設定についてVGJは、「国産車に乗っている人で、輸入車の検討を始めている方に買ってもらえる価格帯として意識」したという。ただし、エントリーモデルには新型ゴルフの特徴の1つであるトラフィックアシストが付いていないので、VGJがアピールする最新の技術を体感したいのであれば、エントリーモデルにオプションで「セーフティパッケージ」を付けるか、1ランク上のモデルを購入したほうが良さそうだ。

ヴァリアントおよびオールトラックの価格設定

新型ゴルフは反転攻勢の決め手となるか

VGJが2020年に向けた目標として掲げる「Road to 2020」。同計画によると今は反転攻勢の時期であり、2017年は商品を集中的に投入する年と位置づけられている。その目標に沿う形で、今年は1月にコンパクトSUVの新型「ティグアン」を投入し、4月にはVWで最も小さいクルマである小型車「up!」を刷新した。シェア社長によると新車は好調な売れ行きを示しており、2017年1月~4月のVGJの販売台数は前年同期比で増加しているという。

クロスオーバータイプの「ゴルフ オールトラック」

新型ゴルフはVGJの勢いを更に加速させる可能性を秘めるクルマだ。2017年の9~10月には、プラグインハイブリッド車(PHV)の「Golf GTE」と電気自動車(EV)の「e-Golf」も発売の予定。日本で電動車の市場を取り込むことができれば、販売台数は更に伸びるだろう。

日本自動車輸入組合(JAIA)がまとめた2003年から2016年までの統計を見ると、ゴルフは年間2~3万台を販売する人気の輸入車だ。モデル別の販売台数では、2003年~2015年はトップの座に君臨していたが、排ガス不正問題の影響もあってか、2016年はBMWのミニにトップを譲った。この年の販売台数はゴルフが2万3000台弱、ミニが約2万4500台だった。

「顧客満足度でリーディングインポーターを目指す」。VGJのシェア社長は、販売店との連携強化などで顧客との結びつきを強化し、満足度で評価を高めたいとの考えを示す。満足度が上がれば、台数はついてくるという考え方だ。しかし、ゴルフがベストセラーカーの座から陥落したことには悔しい思いもあったに違いない。

最新技術をアピールしつつ、最も安いモデルでは250万円を切る価格を実現した新型ゴルフ。発売が2017年5月29日であるため新車投入効果は半年分しか見込めないが、2017年暦年の販売ランキングではどのような位置につけるのかに注目したい。

ドコモ発表会の目玉は何? 主役になりきれなかった本当の主役

ドコモ発表会の目玉は何? 主役になりきれなかった本当の主役

2017.05.25

NTTドコモは24日、2017年夏新サービス・新商品発表会を開催した。「Challenge to Change」を標語に掲げ、新たな取り組みなどを紹介したが、本当の主役は何だったのか。

今回の発表会の標語は「Challenge to Change」

最も注目を集めたもの

今回の発表会を記者目線で捉えたときに、最も注目を集めたのが、新料金プラン「docomo with」だ。発表会の質疑応答、吉澤和弘社長の囲み取材を含め、そのほとんどがdocomo withに関する質問だった。逆にそれ以外に関するものがなかったというのが印象だ。

永続的に割引が適用されるdocomo with

docomo withは対応機種を定価で購入し、永続的に月額1,500円の割引きが受けられる料金プランで、対応端末を使えば使うほどに大きなメリットを享受できる仕組みだ。

前記事で述べたとおり、対応機種が2機種に限られる理由や新料金プランがドコモの戦略上何を意味しているのかを解き明かすことに時間がとられた発表会だったといってもいい。

意外だったのは、新端末に関することだ。Galaxy S8を初めとしたサムスン製端末の安全性など、改めて強調される発表会になるかと思いきや、サムスンに関する言及はほぼなく、質問さえ出なかった。むしろ、端末において重視されたのは、4KHDRでの表示が可能な「Xperia XZ Premium」のほうだったようにさえ感じる。

4KHDR対応の「Xperia XZ Premium」

Galaxyシリーズに関して、付け加えるとすれば、今回の発売にあたり、サムスン側がバッテリ等の検査を十分に行い(このあたりはホームページ上でも公開されている)、ドコモもその検査結果の妥当性を評価してもらったという説明員からの話が聞けたくらいだ。

eSIMは期待はずれ

端末でもうひとつ注目しておきたいのは、ドコモが提供するタブレットの「dtab」だ。dtabはeSIMに対応した端末だからだ。eSIMとは、通信キャリアの選択をソフトウェア上で選択可能にする仕組みで、従来のようにSIMカードを抜き差しすることなく、ユーザーは好みのキャリアを自由に選択できるのがメリットだ。

eSIM対応についてサラッとした説明だったのはワケがあった

ユーザーにはキャリア選択の自由度を高めるため、メリットは大きいが、ドコモにとっては契約者を簡単に失いかねない手段ともなる。思い切ったことをやってきたとも最初は思ったが、説明員に聞くと、eSIM本来の機能については制限がかかっており、キャリア選択はできないという。現状は、オンラインでdtabを購入したときの開通作業を遠隔から行える程度の機能に過ぎないようだ。

dジョブ周辺に注目

サービス系で注目したいのは今秋サービスが開始される「dジョブ」だ。どのメディアも注目していないが、その根本的な考えは大きなビジネスにもなりうるからだ。まずdジョブの概要について述べておこう。

仕事探しのプラットフォームを目指す「dジョブ」

dジョブは、アルバイト・派遣社員・正社員の求人情報から、データ入力、ライティングなどのクラウドソーシング、ウェブアンケートなどの副業的な「スマホワーク」までを網羅したプラットフォームだ。複数の求人サイトの仕事情報を集約掲載しているという。

提携求人サイトについては明らかにしていないが、ドコモの集客力を存分に生かすことが可能だ。また、スマホワークに対する報酬として、dポイントを活用するなどドコモのアセットを活用している。

興味深いのは、dジョブが生まれた発想についてだ。もともと、就職、転職などのライフステージに応じて、既存の企業のサービス、ドコモが提供する新たな価値を足し合わせ、プラットフォーム化したのだという。

人生における重要な局面、かつお金が動くところで考えると、結婚、住宅など別のキーワードも浮かんでくる。今後のビジネスの広がりが予測されるとともに、新たなプラットフォーマーの誕生という流れもありうるかもしれない。

発表会の主役、実は5G

さて、今回の発表会の標語は「Challenge to Change」である。その言葉に一番マッチするのは、ドコモの5Gへの取り組みだ。

5Gの特徴は、高速大容量、低遅延、多数端末接続であり、この特性を生かした新たなサービスを創出するには、ドコモの力だけでは無理だ。そのためドコモは"協創"という言葉を掲げ2020年以降に向けてビジネスを展開しようと考えている。

高速大容量、低遅延、多数端末接続をキーワードにパートナーと新サービスの"協創"にドコモは注力している

この考えを具現化したのが「5Gトライアルサイト」であり、パートナーと開発した有望なサービスの一端を一般の人たちが体験できるようにしている。

5Gを活用したフジテレビとの共同サービス「ジオスタ」。ジオラマ上にARでスポーツ選手を合成し、映像を投影するという

今回の説明会では、この5Gトライアルサイトの取り組みを多くのドコモユーザーに広めるとともに、ドコモはビジネスパートナーを広く募っていることも同時に伝えたかったのではないだろうか。そのために女優の中条あやみさんが登場するCMを披露したり、フジテレビとの5Gに関する取り組みなどを発表するなど、5Gの説明に多くの時間を割いていた。

多くのメディアは新料金プランの狙いや意図、そして、新端末の紹介をメインにしている観が強い。地味すぎるがゆえに、目立ってほしいとも思えた今回の主役。「ドコモは5Gで頑張っています」をドコモは一番伝えたかったのではないだろうか。

CMでの踊りを発表会の現場で再現。中条あやみさんがパフォーマーとともに登場した
実は10年連続赤字だったソニーのテレビ事業 どうやって復活したか?

実は10年連続赤字だったソニーのテレビ事業 どうやって復活したか?

2017.05.25

「テレビ事業は相当、筋肉質な事業に変革でき、収益性も安定してきた。今後は、勝負をかけていく市場を果敢に攻め、シェアを獲りにいくべきところは獲りに行く」――。

ソニーの平井一夫社長は、5月23日に行われた経営方針説明会で、テレビ事業の今後の方向性について発言。事実上、テレビ事業の復活を宣言してみせた。

2016年度のテレビ事業の営業利益率は5%に到達。3年連続での営業黒字を達成している。

「テレビ事業は長年にわたる赤字の状況から、安定した収益が見込める事業に変革を遂げた」と、平井社長は語り、今後は、「持続的な収益創出に挑む」との姿勢を明らかにした。

ソニーのテレビ事業は本当に復活したのだろうか。

売っても儲からない収益構造

経営方針説明会で、ソニーの平井社長は、2015年度からスタートした第二次中期経営計画の成果のひとつとして、テレビ事業の取り組みについて触れてみせた。その理由は2つある。

ひとつは、テレビ事業が、ソニーの業績回復の象徴的事業となっている点だ。ソニーのテレビ事業は、2004年に赤字に転落して以来、10年連続での赤字を計上。テレビ事業の10年間の累計赤字は、8000億円にも達していた。

「当時のテレビ事業は、ソニーにとって最大の課題事業であった」と、平井社長は振り返る。売っても儲からないという構造に陥っていたのだ。

だが、2014年度には、テレビ事業を分社化。構造改革の効果とともに、本社費用を30%削減したり、販売会社費用を20%削減したりといった効果もあり、テレビ事業が11年ぶりに黒字化。83億円の黒字に続き、2015年度、2016年度も黒字化した。

もうひとつの理由が、この業績回復において、ソニーのDNAに基づいた考え方によって事業変革を推進してきたことだ。

平井社長は、「私は、ソニーの創業以来のDNAでもある『規模を追わず、違いを追う』ということをキーワードに取り組んできた。これが、長年苦しんできた、テレビをはじめとしたコンシューマエレクトロニクス事業の再生につながっている」とする。

長年に渡り、プレイステーション事業を担当してきた平井社長が、テレビ事業に関わったのは、副社長時代の2011年4月に、コンシューマエレクトロニクス事業全般を担当したときからだ。この年、ソニーは、テレビ事業だけで1480億円の営業損失を計上。テレビ事業の赤字幅は過去最大となっていたタイミングだった。平井氏は、すぐに収益改善プランの策定に取り掛かり、2011年11月には、大きな戦略転換を発表した。

それまでのテレビ事業の基本的な姿勢は、量の拡大によって、コストをカバーし、赤字から脱却するというものだった。だが、平井氏が打ち出したのが、事業規模が半分以下でも損益を均衡させられる体制へと事業構造を変革するという、まさに180度異なった方針だった。実際、一時は、年間2700万台にまで引き上げた液晶テレビの販売計画は、2016年度実績で1210万台にまで縮小している。

「社内外から、その戦略で、果たして本当にテレビ事業の損益が改善するのかといったように、疑問視する声が多かった」と、平井社長は当時を振り返る。

ターゲットを絞り、規模を追わない

平井氏が取ったテレビ事業の基本戦略は、ターゲットとする顧客層を絞り込み、販売台数は、それに合わせた規模に縮小。それに応じて、販売会社の費用を含めた固定費を大幅に削減することでの再生だった。

また、テレビのなかで最も大きなコストを占める液晶パネルは、生産会社への出資を解消し、複数の企業からの機動的な調達を図る体制に転換した。具体的には、韓国サムスンと合弁で設立した液晶パネル生産のS-LCDを解消。また、スタートしたばかりだったシャープが大阪府堺市に建設する液晶パネル生産のシャープディスプレイプロダクトとの合弁も解消した。

まさに、規模を追わずに、業績回復につなげてみせたのだ。

高付加価値商品で違いを追う

規模を追わない一方で、ソニーがこだわったのは、「違いを追う」という点であった。

「ソニーは、音と映像にとことんこだわり、徹底的な商品の作り込みを行ってきた。4Kを中心とした大型画面の高付加価値商品に注力しており、ソニーの高画質技術の詰まったプロセッサーを組み合わせることで、有機ELテレビ、液晶テレビともに、他社の商品を凌駕する映像を再現していると自負している」とする。

実際、ソニーは、6月10日から国内で発売する4K有機ELテレビ「ブラビアA1シリーズ」に、同社独自の4K高画質プロセッサー「X1 Extreme」を搭載。さらに、画面自体を振動させて音を出力する「アコースティックサーフェス」を採用し、画面周辺に配置されるスピーカー部をなくしたこしとで、正面からはスピーカーやスタンドが見えず、まるで映像だけが浮かんでいるような佇まいを実現している。ソニーならではの違いを追った商品だ。

また、液晶テレビ「BRAVIA Z9Dシリーズ」は、100型のフラッグシップモデルが700万円(税別)という価格設定が話題を集めたが、これも音と映像に対するソニーのこだわりを表現するものだといえるだろう。

また、ソニーでは、Android TVを、重要な差別化ポイントにあげており、テレビの新たな視聴環境を提案。ソニーのテレビのインターネット接続率は70%と高く、さらに音声検索により、動画コンテンツを探し出す利用者が68%と、3人に2人に達している。受動型のテレビ視聴から、能動型のテレビ視聴へと提案を変えることに成功している。

平井社長は、ソニーの高付加価値商品が市場に受け入れられていることを裏付けるように、テレビの平均販売単価が上昇していることを示す。

「2014年度時点の平均販売単価は5万7000円、2017年度は6万7000円に上昇する見通しである」とする。

3年間で1万円の平均単価の上昇は、付加価値モデルへのシフトを示すものであり、特筆できる成果のひとつだといえよう。

平井社長は、「『規模を追わず、違いを追う』という施策は、いまから思えば事業運営にとっては、基本の施策とも言える。だが、私が信頼し現場を任せた事業トップがぶれずに強いリーダーシップを発揮してくれたこと、そして何より、社員たちが『ソニーのテレビを必ず復活させる』という強い想いで一丸となり、改革に真摯に取り組んでくれたことの成果だと考えている」と、黒字化への道のりを総括する。

ターゲットを絞った上、シェアをとりに行く

平井社長は、「こういった改革を経て、テレビ事業は相当な筋肉質の事業に変換できたと考えている」とする。だが、その上で、「今後の課題は、持続的な収益創出。シェアを獲りにいくべきところはとりに行くことも必要になる」と今後の方針を示す。

これまでは、テレビ事業においては、シェア拡大といった言葉を使わなかった平井社長だが、今回の経営方針説明では、明確に「シェア拡大」の取り組みを示して見せた。

ここにもテレビ事業復活の宣言が見て取れる。

だが、闇雲にシェアを追うことはしない。「規模はいたずらに追わない。どの地域でも、どの分野でも、商品点数を増やしてシェアを取りに行くことは考えていない。ターゲットを絞った上で、勝負をかけていく場所でシェアを伸ばしていく」とする。

具体的なシェア拡大のターゲットとしてあげたのが、アジア市場だ。「とくにインド市場は、ソニーブランドが支持されている市場である。ラインアップの強化と、強力なマーケティングによって、力を入れていく市場になる」とした。

機能面だけでなく、感性に訴える商品を目指す

ソニーのテレビ事業は、着実に回復基調にある。そして、営業利益率5%は、テレビ事業単独で見れば、決して悪い数字ではない。ただ、これまでの戦略は縮小均衡型の再生であり、今後、シェアを獲りに行くというギアチェンジは、これまでの取り組みとは大きく変化することになる。業績の回復によって、成長戦略の起点に立ったソニーは、今後、テレビ事業の次の姿を描くことになるはずだ。

そのキーワードを、平井社長は「KANDO@ラストワンインチ」としている。

通信業界では、かつてブロードバンドを家庭に引くための残りワンマイルの敷設に大きな課題があったことを、ラストワンマイルと表現。ラストワンインチは、それに引っかけたものだが、2016年後半に、平井社長が社内で使ったところ、社員からの反応がよかったことから、その後、気に入って、積極的に使っている言葉だ。

そして、KANDO(感動)は、平井社長が講演などでは必ず使う、平井ソニーのモノづくりを象徴する言葉である。

平井社長は、「中長期の持続的成長に向けては、ソニーが、コンシューマに向き合い、お客様に感動をもたらす『ラストワンインチ』の存在であり続けることが大切だと考えている。ソニーがお客様に、感動をもたらす場所は、お客様に最も近いところ、つまり「ラストワンインチ」である。機能面での圧倒的な差異化に加え、デザインや質感にもこだわった、お客様の感性に訴える商品を開発し、それを世界中にお届けする。ソニーはお客様の体験のインターフェースとなる商品をつくり続ける」とし、「4K有機ELテレビなどは、まさに、お客様のラストワンインチで感動をもたらすことができる、『KANDO@ラストワンインチ』を体現した商品と自負している」とする。

経営方針説明会で、「ソニーは、何の企業か?」と記者から問われた平井社長は、「ひとことでいえば、感動企業」と答えてみせた。今後のテレビ事業において、「規模を追わず、違いを追う」という基本姿勢を維持しながら、収益性を高めるための一手をどう打つのか。そして、そこに、テレビにおける次の「KANDO」をどう盛り込むのか。

「数年前には、コンシューマエレクトロニクスという産業そのものの将来性に懐疑的な見方があった。だが、私は、コンシューマエレクトロニクスにイノベーションはある。一歩も引かないと言い続けてきた」と平井社長。これは、ソニーの今後のテレビ事業にも当てはまる言葉だろう。だからこそ、平井社長は、テレビに対しても、KANDOという言葉を積極的に使い続けている。

年間5000万台規模のサムスン、年間3000万台規模のLG電子に比べると、1200万台というソニーの出荷規模は見劣りするが、それでいても存在感を発揮することは可能だろう。

2018年度以降の中期経営計画で打ち出される新たな成長戦略が、ソニーのテレビ事業の本格的な回復を、本当の意味で評価するものになりそうだ。