“釣られた魚”の心境!? 「クリックベイト」記事対策の現状

“釣られた魚”の心境!? 「クリックベイト」記事対策の現状

2017.05.26

ニュース配信アプリが、その存在感を強めている。かくいうマイナビニュースもこうした複数のアプリ事業者と提携し、コンテンツ配信に協力してもらっている。しかし、ますます勢いをみせるニュース配信アプリだが、課題も少なからずある。

今回、お話しをうかがったのは、情報キュレーションサービス「グノシー」と無料ニュース配信アプリ「ニュースパス」を運営するGunosyだ。前者は社名を冠しているとおり、同社の基幹サービスで、1,900万ダウンロード。後者はKDDIとの共同事業で、2016年6月から提供された若いサービスだが、すでに200万ダウンロードに届いている。

Gunosy 共同創業者 開発本部 データ分析部 東京大学大学院 工学系研究科 客員研究員 博士 関喜史氏

Gunosy 共同創業者 開発本部 データ分析部 東京大学大学院 工学系研究科 客員研究員 博士 関喜史氏は、「弊社の事業モデルの特徴のひとつとして“編集者”“記者”がいないということが挙げられます」と切り出す。つまり、配信するコンテンツは提携する600以上の媒体から収集し、アルゴリズムにより掲載するものを選別。その際、カテゴリ分類やSNSでの話題度、実際にユーザーにどのくらい読まれているのかなどで記事がスコアリングされる。

こうした掲載プロセスのため、コンテンツを選別するアルゴリズムの精度が重要になってくる。特にセンシティブに対応しなくてはならないのが、「フェイクニュース」や「クリックベイト」と呼ばれるコンテンツだ。

ウソで塗り固められた「フェイクニュース」

関氏は、この両者について解説してくれた。まずフェイクニュースだが「話題になりそうな事象があたかも本当に起こったかのように書かれた記事のことです」という。つまり、文字どおり“ウソのニュース”のことである。

イギリスのEU離脱を問う国民投票の際、フェイクニュースがSNSなどで拡散し、投票結果に影響したともいわれているし、米大統領選ではあらぬスキャンダルが流された。日本でも熊本地震の際に、“猛獣が逃げ出した”とする内容のフェイクニュースが拡散し、逮捕案件にもなった。こうした問題を受け、主要メディアによる協議会設立の動きがみられ、フェイクニュース対策のルールづくりが急がれている。

関氏は、「こうしたルールが徹底されればフェイクニュースはある程度防げるでしょう」と話す。そして何よりも「フェイクニュースはいわゆる“捨てサイト”でしか使えませんから、読者から恒常的な信頼を得ることはできないでしょう」とも指摘する。個人が拡散するSNSはともかく、“確かなソースサイト”として存在しなくてはならないニュース媒体では、フェイクニュースは淘汰されるというワケだ。

一方、クリックベイトは「ウソではないけれども、PV獲得のために“過剰”なタイトルなどを使って集客する記事」(関氏)のことで、フェイクニュースとは異なる問題だという。過剰なタイトルで読者の興味を喚起し、リンク先をクリックさせる。そこに掲載された記事は確かにウソとはいいきれないが、期待していた内容とは異なっていた……という記事のことである。

こうした記事は“読み足りない”“何かモヤモヤする”“だまされた気分”といった心境を読者に生じかねさせない。つまり、クリックベイトが多用されているニュースサイトは、結果的に読者の信頼を損ねることになる。

関氏は「クリックベイトは情報配信プラットフォームに不利益をおよぼす可能性があります」と指摘する。アルゴリズムで掲載記事を選定している以上、その精度によってはクリックベイト的な記事が掲載されることも考えられる。そうしたことが続けば、結果的にアプリのアンインストールにつながる恐れがある。

Gunosyとしては、ユーザーにアプリを長期間快適に使用してもらうためにも、アルゴリズムの改善に取り組んでいる。だが、掲載された記事内容は“ユーザーの主観”によって、クリックベイトなのかそうでないのか判断されるという難しさがある。関氏は“クリックベイトは何か”を知ること、離脱や記事のスクロール速度など、中長期的なユーザー行動の観測データを蓄積・分析する試みが今後必要になるという。

Gunosyのオフィス。この事業所では100人超のスタッフがおり、およそ半数がエンジニアだという

クリックベイトのおもな事例

では、クリックベイトにはどんな事例があるのか。Gunosyによると「誤読誘発型」「画像想起型」「過剰表現型」に分類できるとする。

誤読誘発型は、たとえば「石原さん、交通事故か!?」というタイトルの記事が載れば、多くの人が今をときめく女優の事故に思考を結びつけやすい。ところが記事を読むと“気象予報士の石原さん”だったという場合だ(石原さとみさん、石原良純さん、変な例にお名前を拝借してすみません)。

画像想起型は、「あの国民的アイドルが本気グラビア!?」というタイトルとともに、衣服が確認できないトリミングでサムネイル画像を掲示。実際にその記事を開くと、タレント事務所が用意した普通の「宣材写真」だったという場合が当てはまる。

過剰表現型は、「マイナビ入居ビル崩壊序曲!?」というタイトルだが、フタを開けてみれば“トイレのドアが壊れた”とか“床のパネルが数枚はずれた”とか、到底“崩壊”には結びつかない内容だった場合を指す。

では、なぜこうしたクリックベイトが目立つようになったのだろうか。前出の関氏は「ネットの広告技術が進化し、PVに応じた広告収入を得られる仕組みが定着したからでしょう」と話す。2000年台前半までは、一定のPVに対し定額の広告料をクライアントに請求するのが一般的だった。だが、アドネットワークの進化により、多くのニュース媒体がPVに応じた広告収入を得るようになった。収益を上げるため、より読者が集まりそうな記事、つまり、クリックベイトが増えていったのではないかと分析する。

書き手、つまり編集者や記者の意識も変わっていった。一度、クリックベイト的な記事で多くのPVを獲得した場合、次に記事を作成する際に“あおり”に対する抵抗感が薄れてしまっていく。もちろん、すべての書き手がそうではないが、一部の記者がエスカレートしてしまったことも考えられる。

こう聞くと、クリックベイトは最近の問題のように思えるが、古くから似たような手法は存在している。たとえばスポーツ新聞。紙面の折り方や販売ラックへの陳列の仕方により、ショッキングな記事見出しになることがある。近年では「ノーバン始球式」といったタイトルをよくみかけるようになった。

ただ、クリックベイトを肯定するわけではないが、紙面の折り方はある意味、エンターテインメントにまで昇華した感はあるし、“ノーバン”はプロ野球シーズン開幕を告げる“風物詩”ともいえなくもない。どちらも“あおり”がユーザーにある程度容認された、希有な例といえる。

さて、クリックベイトの“クリック”はそのままの意味。“ベイト”は日本語で“エサ”を表す。ルアーフィッシングでは、小魚の形をした疑似餌がベイトと呼ばれている。そして日本では、強いあおりで読者を集めることを古くから“釣り記事”という。言葉が生まれた国は違っても、どちらも釣りを想起させる表現になっていることに「オモシロイ」と感じた。ただ、かくいう筆者は、魅力的なタイトルにさんざん釣られてきた“クチ”で、もし魚だったら“もうこの世にはいない”であろうが……。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。