格安通信はまだ安くなるか? 接続料の下落でMVNOに起こること

格安通信はまだ安くなるか? 接続料の下落でMVNOに起こること

2017.04.10

MVNOの料金を決める上で重要な要素の1つとなる、キャリアからネットワークを借りる際に支払う接続料。その2016年度に適用される接続料が3月31日に発表され、従来より一層下落したことが判明したが、それに伴ってMVNOの料金は下がるのだろうか。

ソフトバンクの接続料が大幅に下落

"格安"にスマートフォンを利用できるとして注目が高まっているMVNO。そのMVNOの料金を決める上で重要な要素を占めるのが、回線を借りる大手キャリアに支払う「接続料」だ。接続料が下がればMVNOの料金も一層下がる可能性があることから、接続料の見直しには毎年注目が集まっている。

大手キャリアの接続料は基本的に、ネットワーク設備にかかる費用をトラフィックで割ることによって算出する仕組みである。今年も3月31日に、大手キャリアが2016年度に適用するパケット接続料、つまりデータ通信の接続料が明らかにされている。

多くのMVNOは、ネットワークの自由度が高い「レイヤー2接続」という接続方法を採っていることから、そのレイヤー2接続に関する接続料を確認すると、NTTドコモが前年度比14%減の674,818円、KDDIが10.6%減の858,335円、ソフトバンクが17.6%減の948,803円となっている。今年も3社揃って接続料が低減傾向にあることが分かる。

しかしながらその下落率を過去と比較してみると、下落幅は年々低下傾向にあることが分かる。一方で、接続料が最も高いソフトバンクだけは、2016年度に大きく落ち込んでいるようだ。なぜソフトバンクだけ接続料が大きく下がっているのかというと、実は昨年、接続料を求めるのに用いる算定式を、総務省が見直したことが大きく影響している。

携帯大手3社のパケット接続料(レイヤー2接続)の推移。各社とも下落傾向にあるが、その下げ幅は年々小幅になりつつある。ただしソフトバンクだけは大きく下げていることが分かる

総務省の施策後も料金格差はあまり縮まらず

昨年10月から11月にかけて、総務省は「SIMロック解除義務化」「端末の実質0円販売の事実上禁止」など、これまで打ち出してきた施策の成果と動向を振り返るべく、ICT安心・安全研究会が実施した「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を実施した。その中で「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」が設けられ、接続料の見直しに関する議論も同時に進められていたのだ。

総務省は昨年開催した「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」で、接続料の差を縮めるための見直しを進めていた

見直しの理由は、接続料が最も安いNTTドコモと、最も高いソフトバンクとの間に1.5倍もの差があったため。価格差が大きいことから、MVNOが借りる回線の大半が、接続料の最も安いNTTドコモに集中してしまっていることを、総務省はかねてより問題視していたのだ。

そこで同ワーキングチームでは、算定式に用いる「適正な利潤」を算出するために用いる、「β」という値の求め方にばらつきがあったのを統一化し、さらにβの値にも大きな差が付かないよう制限を設けるよう取り決めがなされた。その新しい算定式が今回適用されたことにより、最も高かったソフトバンクの接続料が大きく下がったわけだ。

とはいうものの、NTTドコモとソフトバンクの接続料の差は依然として1.4倍あり、あまり差が縮まったという印象はない。加えてNTTドコモとKDDIの料金差を見ても、元々算定式に用いる値がある程度統一されていたこともあって、差は従来とほとんど変わっていない状況だ。

確かに最近では、日本通信がソフトバンクのMVNOとなり、安価なデータ通信サービスを提供するなどの取り組みが進められている。だが接続料の差が影響してか、NTTドコモのMVNOのサービスと比べ料金が高めなことから、ソフトバンクのSIMロックがかかったiPhone/iPadで利用できるという以外のメリットを見出しにくい。

それゆえ今回ソフトバンクの接続料が大きく下がったといっても、同社のネットワークを借りるMVNOが増えるとは考えにくい。大半のMVNOがNTTドコモの回線を利用するという傾向は、当面変わることがなさそうだ。

接続料の下落はMVNOの料金値下げに直結しない

とはいえNTTドコモの接続料も下がっているのだから、MVNOは現状の料金やサービスを維持していれば、コストが減少し利益が上がることとなる。それだけに期待されるのは、接続料の下落によって各MVNOのサービスの料金が一層安くなるのではないか? ということだ。

だが正直な所、その可能性は低いと筆者は見る。MVNO同士の競争激化によって各社の基本料金は既にかなりの水準まで下がっており、大半のMVNOが"薄利多売"の状態に陥っているからだ。加えて最近では芸能人を起用したテレビCMを打ったり、実店舗を構えたりするなど、大手キャリアの如くコストをかけた施策を展開するMVNOも増えており、その多くが赤字覚悟で競争を仕掛けているものと考えられる。

またMVNOの競争相手はMVNO同士だけではない。ソフトバンクのワイモバイルブランドや、(厳密にはMVNOなのだが)KDDI傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」など、資金面でも強力な後ろ盾があるキャリア系のサブブランドとの競争も熾烈になってきていることから、MVNOには今後一層、競争力を高めるための資金を必要としている。

それゆえもしこれ以上基本料を下げ、さらなる値下げ競争を仕掛けてしまえば、MVNOの業界全体で自らの首を締めてしまうことにもなりかねない。それだけに、接続料が下がった分の利益は値下げではなく、自らの競争力を高めるための施策に活用されると考えられそうだ。

そうした競争施策によって、セット販売によるサービスや端末のラインアップが拡大したり、SIMを即日開通できる実店舗が全国に増えたり、サポートの充実度が高まったりするなど、MVNOのサービス向上が進むことは十分考えられる。接続料低下による直接的なユーザーメリットはあまりないかもしれないが、間接的に何らかのユーザーメリットを生む可能性は高いといえそうだ。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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