目前に迫る自動運転社会、グランドデザインを描くのは誰か

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第1回

目前に迫る自動運転社会、グランドデザインを描くのは誰か

2017.04.11

いま自動車業界で最もホットな話題は何かと聞かれると、「クルマの電脳化と電動化」と私は答えている。電動化は単純な電気自動車(EV)だけを指すのではなく、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)や水素燃料電池車(FCV)、あるいは今売れている日産自動車のコンパクトカー「ノート(NOTE)」のシリーズ・ハイブリッド「e-POWER」も含まれる。電動化はF1レースやル・マン24時間レースなどでも使われる技術なので、もはやハイブリッドは特殊な技術ではなくなってきている。

ということで、従来の内燃機関(エンジン)がすぐになくなることはないにしても、次世代のクルマはモーターで駆動することが主流になることは間違いない。それでは、クルマの「電脳化」についてはどう考えればよいのだろうか。

立場によってさまざまな自動運転の捉え方

自動車は誕生してから130年も経つが、ずっとドライバー(人)が責任を持って安全運転してきた。その文脈には「走る楽しさやスタイリングのかっこよさ」も含まれているが、単に移動手段としての存在ではなく、クルマは人々を熱狂させる「何か」を持っているのである。

この「何か」については後々レポートするつもりだが、運転が人からコンピューター(AI=人工頭脳)に代わったとき、愛好家達はクルマへの愛着を感じなくなると心配する人もいる。自動運転にはユーザーによってさまざまなニーズや期待があるだろう。

1920年代のベントレー 自動運転など考えなかった時代(出典:テクノメディア)

自動運転をめぐる動きは急速に活発化してきているが、米国ではグーグルなどのIT企業が、一気に完全自動運転を実現する戦略を打ち出した。慌てたのは100年も前からずっとクルマを作り続けてきた伝統的な自動車メーカー達だった。たとえば日本のトヨタ自動車など大手メーカーは、従来から実用化してきた運転支援システムをさらに進化させることで、自動運転の扉を開こうとしている。しかし、IT企業は一気に山の頂上を目指している。

完全自動運転には、事故軽減や環境問題への貢献など大きな社会的意義があるものの、課題も山積しており、実現するのは決してたやすい道のりではない。ドライバーが運転するクルマと自動運転車が混在したとき、道路上の交通の制御はうまくいくのか、事故の責任はどうなるのかなど、議論する課題は実に多い。

社会はどう感じているのか

自動運転の実用化にむけて、日本では政府と産業界が一体となって実用化を推進するプロジェクトが進んでいる。実は私も、内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)の1つのテーマである、自動走行推進委員会のメンバーとして3年前から議論に参加しているのだが、最近は技術領域だけではなく、社会受容性が大切であることを痛感するようになってきた。自動運転はいったい誰のために、何のために利用するのだろうか。ここが肝心なポイントだと考えている。

ここに面白いアンケート調査がある。全米自動車協会(AAA)が調べた自動運転に対する市民の声が興味深い。

-自動運転車に恐怖を覚えた人 78%

-運転支援に期待する人 59%

つまり、コンピューターに運転を任せる心の準備はできていないことが分かるが、不安感が高まると思う人の内訳は、ベビーブーマー世代(1945~1964年前後生まれ)60%、X世代(1960~1970年代生まれ)56%、ミレニアル世代(1980年代~2000年ごろの生まれ)41%となっている。若い人ほどテクノロジーを信頼しているわけだ。

各種センサー ミリ波レーダーとカメラ(出典:メルセデス・ベンツ)

また、私が調べたアンケートでは次のような意見も聞けた(2016年度内閣府SIP主宰の市民ダイアログ)。

-運転もしないで単に移動するためだけのクルマに意味があるのか

-いや、面倒な運転が要らないクルマが早く欲しい

-時々運転できて、疲れたら運転を代わってもらえるなんて素敵だ

-事故が起きたとき、誰が責任をとるのか

-人のミスには寛容だが、機械のミスは許さないだろう

-倫理的問題はどうなのか

-サイバーセキュリティは大丈夫なのか

-グ―グルのようなIT企業が主導権を握るのか

回答者の年代や運転経験、あるいは職業やライフスタイルの違いでさまざまな意見がでてくる。こうした疑問や懸念を丁寧に議論し、説明し解決しなくてはならないだろう。

場所と用途の限定で多様化? 自動運転の使い方

「誰のために、何のために?」という大義を考えるとき、交通事故を例にするとわかりやすい。交通事故の原因は、95%以上がヒューマンエラーだと言われている。しかし、このヒューマンエラーには脇見運転やスマートフォンを操作しながらの運転に加え、歩行者側の油断に起因するものも含まれる。だから人のミスというよりも、無謀な運転や安全意識が欠落した行動も事故の原因となっているのだろう。

ルールや罰則を厳格化しても、人間は厄介な生き物なので、見つからなければ「やっちゃえ」と安全運転への意識が欠落する。だが、コンピューターに運転を任せると、規律正しく、決められたルールに従ってクルマを運転するので、かなり事故が減るだろうと期待される。例えば自動ブレーキが普及するだけで、衝突事故はかなり減らすことができそうだ。

IT企業が考えているような「完全自動運転」には時間が掛かるかもしれないが、場所と用途を限定すれば、数年後には実用化できそうな感じもする。コンパクトなEVにAIを組み合わせれば、過疎地で高齢者が自由に移動できるモビリティが実現できそうだし、こうしたシステムは、都市の中心部を走るタクシーとして利用するとロボットタクシーも可能となる。

目の前にある乗用車が自動化する方向性もあるのだが、地域や用途を限定することで、自動運転は多様化するかもしれないのだ。

メルセデス・ベンツの未来の自動運転車コンセプトカー「F015」(出典:メルセデス・ベンツ)

人を運転から解放? 真の自動運転とは何か

現在、乗用車としては「ドライバーが前方を監視し、安全運転の責任を持つ前提として、前後(加速と減速)とハンドル操作などが部分的に自動化する高度運転支援(レベル2)」が認められているが、自動運転が本来、人を運転から開放することを意味するなら、レベル3以降からが真の自動運転と呼べるのである。レベル2までは、運転以外の他の作業をすることが道路交通法で許されていないので、自動運転と呼ぶことは言い過ぎかもしれない。

このように、自動運転は生まれたばかりの新生児のような立ち位置なので、何ができるのかという機能は日進月歩で進化している。こういった状況も見ながら、自動運転の現状と展望についての連載を進めていきたいと思う。

著者略歴

清水和夫(しみず・かずお)
1954年、東京都生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活動を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通。著書は日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』、ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。内閣府SIP自動走行推進委員の構成員でもある
メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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