リコー「過去の経営との決別」を宣言する新社長の秘策は?

リコー「過去の経営との決別」を宣言する新社長の秘策は?

2017.04.13

リコーは、4月12日、2019年度を最終年度とする第19次中期経営計画を発表した。2017年4月1日付で、社長に就任した山下良則氏が陣頭指揮を執る新体制での新たな経営方針となる。

その山下社長が、最初のスライドで示したのが、「過去のマネジメントとの決別」であった。

「成長を阻害する遺産や前例は、聖域を設けず見直す」とし、「RICOH再起動」を宣言してみせた。

リコー 代表取締役社長執行役員兼CEOの山下良則氏。山下社長は最初のスライドで「過去のマネジメントとの決別」を示す

山下社長が打ち出す「RICOH再起動」では、トップダウンでやり抜く「構造改革」、事業を絞り込み、他社が嫌がるような勝てる戦略展開を徹底する「強みを軸とした成長事業の重点化」、ステークホルダーの信頼を再構築するための「結果を出す実行力と責任」を柱に掲げる。

「社内外に対して、リコーの経営に対する評価、中期経営計画に対する期待をヒアリングしたが、厳しい意見が寄せられた。リコーの存在が疑問視されるという声さえも聞かれた。社長就任前から経営陣の一人として経営を担っていたものとして、自己否定から取り組む覚悟で進める」とした。

新社長 5つの暗黙の了解を見直す

そして、過去の経営に対して、手厳しく評価する。

「成功体験やオフィスプリンティング事業のリーディングカンパニーという自負から、市場を直視しない自分本位の戦略立案、戦略展開となっていた」と指摘。「コスト構造の抜本的転換を先延ばしにしていたこと、事業ポートフォリオの選別が徹底しておらず、利益がでない、将来性が描けていない事業を止めずに継続したこと、サービスなどの成長事業も、顧客ニーズや自社の強み、競争戦略の視点が弱く、結果として総花的であったことがみられた。また、中期経営計画の目標を達成できないのは、一部の事業や機能において、責任範囲と役割、権限が不明確な部分が存在し、経営に問題があったといわざるをえない」と、具体的な問題点を示してみせた。

「市場環境や顧客を直視し、やるべきことを確実に実行することで、ステークホルダーの期待に応える経営により、信頼を回復する」と、体質改善に強い意思をみせる。

そして、「長く染み着いていた5つの原則を見直す」と意気込む。

リコーには、「マーケットシェア追求」、「MIF(複合機の設置台数)拡大」、「フルラインアップ」、「直売・直サービス」、「ものづくり自前主義」という市場規模拡大を前提とした「5つの暗黙の了解」(山下社長)があった。

リコーは、1990年までは、国内を中心に、MIFを積み上げ、アフター収益を確保。この実績をもとに、新規顧客を獲得し、既存顧客には、アナログからデジタルへの転換、モノクロからカラーへの転換などを進めてきた。さらに、国内成功モデルをベースに、買収によって海外展開を加速。14年連続の増収増益を達成し、2007年度には最高益をあげている。だが、2008年度以降、リコーの稼ぎ頭であるA3MFPの市場鈍化が進んだこと、A4MFPやLPが拡大したものの、サービス事業の利益率や金額が減少。市場規模拡大を前提とした戦略が成り立たなくなってきた。

市場規模の拡大を前提とした戦略が成り立たなくなるようになった

「需要台数が横ばいのなかで、MIF獲得のための価格競争に売価下落が継続し、各社のカラー化も一巡し、カラー機への置き換えによる規模拡大は困難。しかも、モバイルの浸透やインフラ環境の変化により、働き方が多様化し、ペーパーレス化が加速しており、アフターサービスによる収益に大きな影響を及ぼすことになる。5大原則を利益重視の観点で抜本的に見直す必要がある」と語る。

今回の中期経営計画の基本姿勢もこうした市場変化を捉えたものとしている。

中期経営計画3つの基本プラン

2017年度からスタートする第19次中期経営計画では、具体的な財務目標として、最終年度となる2019年度までに、構造改革効果で累計1000億円以上、2019年度の営業利益で1000億円以上、3年間のフリーキャッシュフロー(ファイナンス事業を除く)で1000億円以上を目指す。構造改革効果の内訳は、コスト構造改革で450億円、業務プロセス改革で550億円。「構造改革は、いいところは継続しながらも、聖域は設けない。だらだらやるのではなく、早期の効果実現を目指し、施策の前倒しを進める。2017年度には構造改革をやりきるつもりで取り組む」と述べた。

RICOH再起動をベースにした中期経営計画の基本プランは、「構造改革」、「成長事業の重点化」、「経営システムの強化」の3点だ。

市場を直視し、リコーを再起動させるという

構造改革については、「これまでの構造改革では、コスト削減が中心となっていたが、今回の構造改革は、収益構造を変えるものになる点が大きく異なる」と前置きし、「過去にも構造改革はやってきたが、計画は立てたものの、あとは現場に任せきりということもあった。また、置き去りにされている施策もあった。これまでのリコーは、アフター収益で稼いでいたが、これを見直し、事業を細分化することで稼ぐエリアを広げる。また、不採算案件や不採算のMIFがあり、そこを縮小していく。手間をかけている作業をなくすことで本社の固定費削減にも取り組む。同時に、2020年度以降の第20次中期経営計画で成長する事業の種を捲くことにも取り組みたい」とした。

さらに、ものづくり自前主義の見直しと、直販および直サービスの見直しにも乗り出す姿勢を明らかにする。生産拠点の統廃合や消費地拠点の役割の再定義、自社開発機種の絞り込みによる開発費の削減に取り組む。

とくに米国地域においては、「直近の課題である」と位置づけ、現在、8割を占めている直販体制を見直し、ディーラーとの協業強化、インサイドセールスを利用した営業生産性の向上、バックオフィス人材の削減に取り組む考えを示した。

そのほか、新機能を搭載した機種を拡充することで、保守プロセス改革にも着手。「メーカーである技術力を活用し、新たな仕掛けを搭載することで、顧客のダウンタイムの削減とサービスエンジニアの生産性向上を図る。これを活用することで、2019年には20~30%の生産性向上を図ることができる」という。

なお、カメラ事業については、先頃、約100億円の減損損失を発表し、今後の動向が注目されていたが、「360度カメラのTHETAは、これを軸にサービスを追加することで、事業の立て直しを図る。また、個人向けカメラからは撤退はしないが、機種の品揃えは一部縮小することになる」とし、カメラ事業撤退の一部報道を否定した。

成長事業の重点化では、「自社の強みを再定義し、絞り込んだ上で、その強みに立脚して成長する」とし、「オフィスにおいては、全世界130万社、MIFでは400万台の実績が強みであり、これをプラットフォームと考え、その上に、ワークフローソリューションを提供する。経費精算や議事録作成を簡単に行えるソリューションなどを提供し、ワークフローのデジタル化を進める。一方で、プリンティング技術の強みを生かして、オフセットからデジタルへの移行を進める商用印刷、作像システムや産業プリンタにおいてIJ技術を生かす産業印刷、高速印字プロセス技術に強みを持つサーマルレーザープリンティングに力を注ぐ。事業体制についても、事業の軸を強化し、成長分野に重点投資する」などとした。

経営システム強化については、「これまでリコーは、ステークホルダーに約束したことを守ってきていない。理由はいろいろあるが、実行力に問題があったのは事実だ。いまは、結果につながる責任体制が必要である。私が直接、推進、管理する体制とし、トップダウンでの改革の断行を進める。また、体制の見直しにより、事業軸でのPDCA管理と結果責任の徹底も図りたい」とした。

リスクに対するリバイバルプランを策定

中期経営計画の見通し前提も、これまでとの違いを感じることができる。

「これまでの改善努力を続けただけでは、2019年度には、約500億円規模の赤字になるというリスクシナリオを想定し、そこからリバイバルプランを策定した」(山下社長)というのが基本姿勢だ。

リスクをチャンスに!

「オフィスのマシン売価およびアフター売価の下落が継続するほか、商用印刷での企業内印刷の減少などがリスク要素になる」と語る。

実は、昨年、為替影響によって、海外向け製品は値上げを行い、それを最終価格に転嫁した。「転嫁できたのは30~40%の顧客に留まった。だが、見方を変えれば、30~40%の顧客はそれを受け入れてくれた。出来たことを増やしていくということが必要である」と、山下社長は語る。

リスクをチャンスにつなげるという発想も、山下社長体制における基本姿勢になりそうだ。

山下社長は、さらに中期的に目指すリコーの姿についても言及し、新たなバリュープロポジションメッセージとして、「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」を掲げることを発表した。

「これまでのオフィスを対象にしたビジネスから、現場(ワークプレイス)に対するビジネスを新たな成長機会と捉え、モノ+コトだけでなく、そこにアナリティクスを加えていく。人に焦点を当て、個人、組織に活力を与えたい」とした。

リコーが新体制で挑む中期経営計画は、常識や前例にとらわれず、リコーの体質を抜本的に変えるものになる。そして、山下社長は実行力と結果にこだわる姿勢を示した。そして、2017年度中には、その成果を見せたいと意気込む。山下社長が宣言するようにスピード感を持った改革ができるかどうかが注目される。

なお、同社では、2018年4月には、未来の方向を示す長期ビジョンを発表する予定だという。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。