「LINEモバイル」はMVNOにどんな影響を与えるか

「LINEモバイル」はMVNOにどんな影響を与えるか

2016.04.19

LINEは、自らMVNO(仮想移動体通信事業者)となって「LINEモバイル」という通信サービスを今夏より提供する。月額500円でLINE上でのコミュニケーションに通信料がかからないのが大きな特徴となるようだが、LINEの参入はMVNOにどのような影響を与えるだろうか。

LINEがMVNOとして通信事業に参入

スマートフォン用のメッセンジャーアプリとして、日本で高い人気を誇るLINE。そのLINEに関する新しいサービスを発表するイベント「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」が、去る3月24日に開催された。このイベントの中では、LINEのオープン化や、LINEの電子マネーサービス「LINE Pay」の拡大やポイントプログラム「LINEポイント」の提供など、大きなサービスの発表が相次いだが、中でもひときわ注目を集めたのが「LINEモバイル」である。

発表内容によると、LINEモバイルは、LINEがMVNOとなって提供するスマートフォン向けの通信サービスになる。大きな特徴の1つは月額500円で利用できることで、通信速度や容量などは明らかにされていないものの、低価格でスマートフォンが利用できることが大きな訴求要素の1つとなるようだ。

LINEモバイルは月額500円で利用できるのが、大きな特徴の1つとなる

そしてもう1つの特徴は、LINE上でコミュニケーションを利用した時にかかる通信料が無料になることだ。LINE上でのチャットはもちろん、スタンプや画像、動画のやり取り、さらにはIP電話に至るまで、LINE上の多くのサービスが通信料無料で利用できるとのこと。仮に高速通信容量が上限に達した場合でも、LINEだけは快適に利用できるという。

LINEモバイルでは、LINEでのチャットやスタンプのやり取りだけでなく、IP電話利用時も追加の通信料がかからない

LINEモバイルはLINEだけでなく、FacebookやTwitter利用時の通信料が無料になるプランや、LINE MUSICなどの音楽サービス利用時の通信料が無料になるプランも用意する方針とのこと。これらは500円以上の料金がかかると見られるが、やはり低価格で利用できると見られている。

この他にもLINEモバイルでは、大手キャリアのみの対応となっていた、年齢認証による成人のID検索利用が可能になるほか、LINE上でサポートが受けられる仕組みも整えるとしている。LINEを起点として、安価で利用しやすいサービスを提供しようとしていることがわかる。

実は料金面のインパクトはあまり大きくない?

LINEの舛田淳氏は、LINEモバイルの音声通話は、LINE上のIP電話の利用を前提にするという発言をしている

だがLINEモバイルは、現時点では公表されている情報が少ないため、その良し悪しを判断するのが難しいのも事実だ。いくらLINEが無料で利用できるからとはいえ、500円の範囲内でどの程度のサービスが利用できるのかが明確でなければ、評価するのは難しい。

そこで現時点で公開されている情報から、500円の基本料でどのようなサービスが提供されるのかを、可能な限り推測してみたいと思う。そもそもLINEモバイルでは、LINEが利用できることが前提となっていることから、LINEの認証に欠かせないSMS機能は確実に搭載されることとなるだろう。

一方で、LINEの取締役CSMOである舛田淳氏は先のイベントにおいて、音声通話に関してはLINEのIP電話の利用を前提としている旨の発言をしている。そうしたことから500円の範囲内では、通常の音声通話は提供されない可能性が高い。

またLINEモバイルは、LINEの通信料を無料にすることで、他のネットサービスよりもLINEを積極活用してもらうことを前提としたサービス設計がなされるものと考えられる。加えて、月額500円という低料金で提供されることを考慮すれば、高速通信容量は1GB、あるいはそれ未満と見るのが妥当といえそうだ。

では、高速通信容量が1GBで、SMSが利用できるサービスがどの程度の月額料金になるのかを、他のMVNOのサービスで確認してみると、ケイ・オプティコムの「mineo」(ドコモプラン)で800円、ソネットの「0SIM」で750円、プラスワン・マーケティングの「FREETEL SIM」で639円、DMM.comの「DMMモバイル」で630円となっている。500円という価格はそれより100円近く安い値段となるが、思いのほか劇的な差はないと見ることができる。

LINEが無料で利用できる分確かにお得ではあるものの、既にMVNO同士の価格競争が激化していることもあり、LINEモバイルが料金面で大きな影響を与える可能性はそれほど高くないと考えられそうだ。

「LINEが無料」は他のMVNOが追随する可能性あり

LINEモバイルがMVNOに大きな影響を与えるとすれば、料金よりもむしろ、LINEが無料で利用できる点だろう。

特定のサービス利用時の通信料を無料にするサービスは、LINEモバイルのほか、ジュピターテレコムの「J:COMモバイル」や、プラスワン・マーケティングの「FREETEL SIM」「FREETEL SIM for iPhone」などで既に実施されている。前者であれば自社の動画配信サービス、後者であればLINEなどのメッセンジャーアプリや、App Storeの通信料が無料になる仕組みだ。

J:COMモバイルでは、自社の動画配信サービス「J:COMオンデマンド」利用時は通信料がかからない仕組みを用意している

だがこれらのサービスは、まだ市場シェアが大きくないこともあって、現在のところそうした仕組みが大きな注目を集めるには至っていない。しかしながら既に高い知名度を誇るLINEが、LINEを無料で利用できるサービスを提供するとなると、ユーザーに与えるインパクトは非常に大きなものとなるだろう。さらにLINEモバイルがヒットした場合、他のMVNOも同様に、特定のアプリやネットサービスだけを無料で利用できる仕組みを提供する可能性が高まってくる。

既に全てのネットサービスを定額で利用できる通信サービスを提供するMVNOはいくつか存在するが、その場合回線にかかる負担が大きくなり、通信速度が遅くなってしまうことからユーザーの不満を高めやすい。だが定額の範囲で利用できるアプリを特定のものに絞り込めば、回線の負担はそこまで大きくはならないだろうし、料金面以外で他社との差異化もしやすい。MVNOにとってメリットが大きいだけに、LINEモバイルが人気となれば、この仕組みを導入するMVNOは増えていくものと考えられる。

ただ、こうしたサービスが増えれば増えるほど、問題となってくるのが「ネットワークの中立性」と「通信の秘密」である。例えばLINEの利用が無料になるMVNOが多数派を占めた場合、LINE以外のメッセンジャーアプリが利用されなくなり、他のアプリとの競争を阻害し、LINEの寡占を生んでしまう可能性が高まる。また無料対象アプリからの通信かどうかは、ユーザーの通信を特定の手法で参照することにより、判断している。それゆえユーザーの通信をどこまで参照したらいけないのかという線引きがない状態で、こうしたサービスが広まってしまうと、なし崩し的に通信の秘密が失われてしまう可能性だってあるのだ。

こうしたさまざまな問題があるにせよ、LINEはMVNOとして最後発に近い立場だけあって、インパクトのあるサービス内容を打ち出してきたことは確かだ。それだけに、LINEモバイルの実際のサービス内容がどのようなものになるか、そして今回打ち出した施策がどこまで他のMVNOに影響を与えるのか、しっかり見届けておく必要がありそうだ。

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「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

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2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。