客単価がカギに? 新商品「グラン」で見えてきたマクドナルドの今後

客単価がカギに? 新商品「グラン」で見えてきたマクドナルドの今後

2017.04.14

先日、ビーフ系の商品としては8年ぶりとなる新商品「グラン」を発表した日本マクドナルド。このハンバーガーからは、業績を回復させつつあるマックが、次の目標として何を成し遂げようとしているのかが見えてくる。

マックの新商品「グラン クラブハウス」

商品戦略の行方は

マックが掲げる今年のテーマは「おいしさ向上宣言」。2017年に入ってから、同テーマに沿って発表された商品を振り返ってみると、第1弾はプレミアムローストコーヒー、第2弾はしょうが焼きバーガーの「ヤッキー」、そして第3弾がクラブハウス、てりやき、ベーコンチーズの3種を揃える「グラン」だ。

グランのキーワードは本格肉厚ビーフとふわふわバンズ。期間限定商品ではなく、レギュラー商品としてメニューに加わった。

マックにおいて、多くの顧客を抱えるボリューム商品として数字を見込める(単価の高い)商品は「ビッグマック」だけだった。同社の業績を見ると、来客数は一定の伸び率を見せており、単価アップが次なる目標となってきそうだ。

ホームページに記載されたメニュー表には、グラン3種とビッグマックが最上段に並ぶ。グランの単品価格は390円と490円。そこには単価を上げたいというマックの思いが見てとれる。

グランは単品で「クラブハウス」が490円、「ベーコンチーズ」と「てりやき」が390円という価格設定だ。ちなみに「ビッグマック」は380円

客数の改善が顕著

先ごろ発表されたマックのセールスレポートによると、2017年3月の既存店売上高は前年同月比16.5%の増加。売上高もさることながら、その売り上げに大きく貢献したと思われる客数の伸び率は同12.2%増だった。

マックにとって2015年度1~3月期は思い出すのもつらい時期であったことだろう。客数に注目すると2015年1月は前年同月比28.5%減、2月は19.1%減、そして3月は23.5%減である。

戦略的店舗閉鎖など、負の遺産を清算し終わったとされる2017年1月の客数は前年同月比11%の増加。2月は10.5%増、そして3月は12.2%増と連続して2桁の伸びを達成した。昨年と比較した場合、3月の伸びについては「ギガベーコンてりたま」という季節限定のニューフェイスが来店客の増加に大きく貢献したとみることができる。数字を見る限り、マックは反転攻勢に入っているようだ。

そして登場したグラン。ここ数年は、新商品といっても「味付けを多少変えただけ?」「はさむ具材の組み合わせを変えただけ?」という商品が多かったが、グランは久しぶりの新商品と呼べそうな仕上がりである。

新商品投入はベストタイミング?

グラン登場の一報を聞いて、「なぜ今頃?」と思った方もいるかもしれないが、このタイミングには実はしっかりとした根拠があり、客数の伸びを横目でにらみながらの新商品投入だったと想定される。

2016年のセールスレポートをよく見ると、1月と2月は前年同月比で客数が2桁の伸びを示しているが、3月以降は1桁台が続く。10月と12月は2桁台の伸びとなっているが、10月は「月見バーガー」、12月は「グラコロ」という大型季節商品を含んでの結果だった。つまり、季節商品がなければ、客数の伸びは見込めなかったかもしれないのだ。季節限定商品だけでは客数の回復、ひいては売上高の増加が困難な状態であったと強く意識させる数字だった。

来客数がある程度は見込める状態になった今こそ、売上高をきっちりと稼ぐための次の一手、つまりは単価アップが見込める高付加価値商品の投入が必要だった。客が戻ったタイミングで、マックは客単価を上げる戦略に打って出たというわけだ。

ハンバーガーだけで単価は稼げない。ビッグマックだけでは選択肢が限られる。繰り返しになるが、客数が見込める今だからこそ、マックは昨年のように失速するわけにはいかないと考え、客単価を上げる方向に進んだのではないだろうか。2017年3月に発売した期間限定商品「ギガベーコンてりたま」が好評を博したことにより、この勢いをつなげるために新商品を投入したという流れも背景にはあるだろう。

グラン投入で基幹商品を強化

グランはマックが1年前に発売した「クラブハウスバーガー」から発想して作った新商品だ。クラブハウスバーガーの発売後、マックは特製ビーフとバンズでボリューム感を詰め込んだ「ギガ ビッグマック」(期間・店舗限定)を発売したこともあるが、従来のパティを増量しただけの商品では、客単価を上げることは困難だ。ましてや季節商品や期間限定商品を定期的に投入するだけでは、全体の売り上げを維持・底上げすることは難しい。

グランにインスピレーションを与えた「クラブハウスバーガー」。この商品をもとにマックはグランを開発した

基幹商品がしっかりと売れていること、これが大前提だ。いわゆるベース商品が顧客の支持を得て、基本の売り上げを確保(担保)してこそ、戦略商品である季節商品の存在が光ってくるというわけである。

高価格帯商品を充実させるのであれば、取り扱う商品に見合った店舗を用意する必要がある。閉鎖とリニューアルが続いたマックの店舗戦略はどのような状況だろうか。

リモデル店舗に見るマック新時代

マックの近年の取り組みでは戦略的な店舗閉鎖が世間の注目を集めたが、実は店舗のリモデルも並行して進んでいる。以前はカフェ風の店舗や新型デザイン店舗など、マック目線による店舗展開が主流であったが、最近の店舗改装において最も強く感じる変化は、基本戦略である「QSC+V」(クオリティ、サービス、クレンリネス、バリュー)が効率よく浸透し、機能しているということだ。レストランは食事をするところであるが、以前の店舗は「食事をする環境」にはほど遠かった。

来店客からよく耳にするのは、テーブルやトイレのクレンリネスが向上しているという感想だ。スタッフの見回り頻度が増加するなど、店舗のリニューアルに伴い、マックが大幅に清潔な空間に変わってきたことは私も感じている。

以前とは印象が違うマックの店舗

ネット環境の整備で滞在時間に変化も

また、ネット環境の変化も店舗空間の改善に大きく貢献しているようだ。従来は会員制の公衆無線LANサービス「BBモバイルポイント」のみに対応していたが、このサービスはプロバイダーに料金を支払えば時間無制限でネットに接続できるため、客の滞在時間の長時間化につながったり、滞在客同士が電源コンセントを取り合うなど、来店客に不公平感を抱かせる原因ともなっていた。

2016年に登場した「マクドナルド FREE Wi-Fi」は、この不公平感を見事に是正している。例えば接続時間には1時間という制限があるため、客は自前のネット環境を用意しなければ、店舗で1時間を超えてネットを使うことができない仕組みになった。

店舗環境の変化はそれだけではない。リニューアル後の店舗をのぞいてみると、カウンタータイプの座席が大幅に増加し、電源コンセントはカウンター席の各所に設置されている。4人席の座席が固定されているため、家族連れからはベビーカーを収めるスペースが取れないことについて不満も出ているが、マックの店舗改装が着実に進んでいるのは確かだ。

グラン発表会の冒頭、日本マクドナルド代表取締役兼CEOのサラ・エル・カサノバ氏は、店舗体験の向上について熱く語っていた。味だけでなく、居心地の良い空間と清潔な環境も、マックが掲げるQSC+Vには欠かせない要素となる。

客足が戻り、店舗の改装も進む中で新たな高付加価値バーガーを投入するマック。同社の復活に拍車がかかるかどうかが焦点だが、グランには追い風も吹いているようだ。

外食に対する支出は増加の見通し

2017年4月6日に内閣府が発表した「消費動向調査」によると、3月の消費者態度指数(暮らし向きや収入の増え方に関する調査結果)は、前月比で0.7ポイント上昇の43.9%であった。また、2017年4~6月期の「サービス等の支出予定」のうち、「レストラン等外食費」の項目を見ると、「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値で、前年同期がマイナス20%だったところ今期は同17.4%と少しだが上昇した。つまり、レストランなどでの外食に対する支出意欲は上向いているのだ。

「安くなければ売れない」デフレ期を脱却し、価格相応の価値を持つ商品であれば売れる時代に入りつつあるのが今の状況だとすれば、生き残る権利を手にすることができるのは、価格に見合った価値を持ち、消費者に理解され、支持される商品だけということになる。マックが8年ぶりに発表したビーフの新商品グランは、果たして価格相応の価値を消費者に認めさせ、見事に看板商品の座を射止めることができるだろうか。

グランは看板商品に育つか

また、グランの販売推移は、同業他社にとっても気になる指標になることだろう。低価格が当たり前のハンバーガー業態にあって、グルメバーガー勢ではなく、低価格路線の王道を歩んできたマックが価格を上げようとする試みが、消費者にどのように受け止められるのか。マックが行う定番商品の拡充は、他社にとっては気がかりでもあり、大いなる「脅威」となる可能性も秘めている。

先週末の新聞にはグランのクーポンが折り込み広告として挟まれていたが、グラン「クラブハウス」単品で20円引きの470円、セットで50円引きの740円という割引き価格は、試しに1度は行ってみようという気にさせる程度の効果はあったと思う。客足が戻ったタイミングで、ビッグマックより上位の価格帯に属する新商品を発表したマック。業績を戻しつつある同社にとって、客単価向上の成否は完全復活の可能性を考える上での重要な材料となる。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。