ムダな会議は減るか? KDDIとシスコが働き方改革でタッグ

ムダな会議は減るか? KDDIとシスコが働き方改革でタッグ

2017.04.14

KDDIとシスコシステムズは共同で、シスコのビジネスコミュニケーション統合クラウドサービス「Cisco Spark」の販売について協業していくことを発表した。協業を通じて働き方改革を推進していくというが、両社が見据える働き方とはどのようなものだろうか。

シンプルで使い易いビデオ会議システムを提供

両社の協業は、具体的には7月からKDDIを通じて「Cisco Spark」および「Cisco Spark Board」の販売などを行なっていく。

「Cisco Spark」は2015年にスタートしたクラウドサービスで、「コーリング(通話)」「メッセージング」「ミーティング」の3つの機能を柱にしている。KDDIはSparkのクラウドPBX機能をKDDIの音声通話基盤と連携させる機能を提供する。

これによって企業は固定電話回線や宅内電話交換機(PBX)などの設備なしに、インターネット回線だけで内線電話や外部との通話環境が実現でき、その際に050で始まるIP電話ではなく、03などの市外局番で始まる現在の固定電話番号をそのまま利用できる。両社は主に中堅~中小企業市場をターゲットにこうしたシステムを提案していくという。

既存の固定回線用の電話番号がそのまま使えるというのは、こうしたIP電話的なサービスとしては大きなアドバンテージになる

「Cisco Spark Board」は今年1月に米国で発表された、オールインワン型の会議システム。55型と70型の4Kディスプレイに4Kカメラ、スピーカーフォン機能などを搭載し、ホワイトボード機能や無線プレゼンテーション機能、ビデオ会議機能などを提供する。従来のビデオ会議ではカメラやディスプレイ、マイクなどを個別に用意して複雑なセッティングが必要だったが、Spark Boardではシンプルな構成の機器に統一できる。

また参加者はスマートフォンやPC用のCisco Sparkアプリを使ってSpark Boardにアクセスし、ホワイトボードに書き込んだり、ファイルを共有することもできる。一度Spark Board上に登録されれば、Cisco Sparkアプリを使ってリモートアクセスすることも可能だ。

巨大なタブレット風スタイルのSpark Board。同時に二人が書き込めるタッチパネルを採用しており、Cisco Sparkアプリをインストールした各端末とは音波で自動的にリンクする仕組み
Cisco Sparkアプリ自体は無料で配信されており、外部の人間がSpark Boardを利用する場合も、アプリだけインストールしてあればいい

Spark Boardの価格は販売を担当するサービスプロバイダーにより異なるが、目安としては50万円台~で、一括買取とサブスクリプションモデルの支払い方法が用意される。利用にはCisco Sparkへの登録が必要となる。

このほか、大型テレビなどのディスプレイと組み合わせて利用するビデオ会議システム「Cisco Spark Room Kit」と「Cisco Spark Room Kit Plus」も提供開始される。これは5Kカメラとスピーカー、外部マイク、をセットにしたもので、顔認識と音声認識による自動フレーミングなどが利用できる。価格は50万円台から。

同時に5人前後の小規模なビデオ会議を前提とした「Spark Room Kit」。顔認識で常に適切なフレーミングが維持される。15人程度の大人数のビデオ会議もサポートする「Spark Room Kit Plus」もある

会議の時間を減らして労働効率をアップする

今回の協業では、ビデオ会議システムを中心として労働環境を改善し、政府が推進する働き方改革を実現することを目的としているという。発表会では日本企業において、会議などのコミュニケーションが労働時間の約37%をも占めており、各社とも会議時間の改善が労働時間の短縮や仕事効率の改善につながると認識していることが紹介された。

筆者も経験があるが、会議中に別な仕事をしている人の割合も大きい。会議そのものが大きな時間の無駄遣いともいえる

特に、会議の準備やまとめなどはデジタルな手段に落とし込めるのに、会議自体はアナログなまま開催されていることが多く、生産性も低い無駄な時間であると断じ、この部分をデジタル化して効率化を高めるのがCisco Sparkの目的であるとしている。

この点、Spark Boardは単体のホワイトボードとしても機能し、資料を配信するための共有ストレージが利用できたり、スマートフォンなどから簡単にアクセスできるなど、内部の会議に利用する上でも便利な機能が用意されており、確かに会議の効率を高める上で有効であるように思われた。

また支店や工場など遠隔地とのビデオ会議についても、Spark BoardおよびSpark Room Kitの手軽なセットアップと高品位な映像・音声は好ましいものに思われた。KDDIの東海林崇執行役員常務からは、Cisco Sparkというシステム自体の音声品質が回線環境に依存せず高い水準が保たれていることが指摘されていたが、聞き取りやすさというのはリモート会議の大きな弱点であるだけに、さすがはネット会議システムで業界をリードするシスコシステムズの製品だと思わせられる。

Cisco Sparkの音声品質は回線速度やレスポンスを問わず一定水準を保っており、Ciscoの長年のノウハウやチューニング技術の高さが伺える

価格と機能拡張に期待

早速日本でもこうしたシステムを導入して会議環境の刷新を、といきたいところだが、ターゲットとなる中小企業は、こうしたシステムを導入すれば効率が改善することはわかりつつも、約50万円~という導入費用がネックになりそうだ。たとえばSpark Boardに、もう一回り小さい40インチ程度で、解像度もフルHDに抑え、導入費用が20万円前後の低価格モデルがあれば、日本の中小企業にも導入しやすいのではないだろうか。

また、システム全体で見ると、外部サービスなどと組み合わせて機能を拡張する余地がほしい。特にビデオ会議については、音声認識で自動的に会議ログを残す機能(せめて録音する機能)や、外国語の自動翻訳機能(先日Skypeが実装しているが、Windows Azureの機能としても利用可能)などを組み込めるようになれば実用性が高い。こうした拡張機能についても将来的な対応を期待したい。

中小企業向けの営業基盤が強いKDDIとビデオ会議製品の雄・シスコシステムズがタッグを組んだことで、ともすれば民生品を流用していたような企業向けビデオ会議市場について、大きな転換期となる可能性がでてきた。目論見どおり日本企業の会議の時間を減らして生産性の向上・労働環境の改善へと繋げるられるか、両社の奮闘に期待したい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。