「ZenFone」のエイスース、なぜ日本のスマホ市場で成功できたか

「ZenFone」のエイスース、なぜ日本のスマホ市場で成功できたか

2017.04.15

パソコンだけでなく、スマートフォンの分野でもSIMフリー市場で上位を争うなど、日本で高い存在感を示している台湾のASUS(エイスース)。スマートフォンメーカーとして見れば後発であり、世界的にもまだ規模が大きいわけではない。にもかかわらず日本で成功している理由はどこにあるのだろうか。

SIMフリー市場でトップシェアを争うエイスース

台湾のエイスースといえば、パソコンのマザーボードで高いシェアを獲得するなど、パソコン関連のパーツや、パソコン自体を手掛けるメーカーだ。日本でも安価なタブレットからハイエンドのノートパソコン、さらにはゲーミングPCなど、幅広いスタイルのパソコンを提供し、一定のポジションを獲得していることで知られている。

だがここ数年で、日本における同社の評価は大きく変化しており、従来より一層より大きく注目される企業となっているようだ。その理由はスマートフォン市場への進出にある。 エイスースは2014年にスマートフォン「ZenFone 5」を発売し、日本のSIMフリー市場に本格的に参入を果たしたのだが、それ以降、SIMフリー市場で急速に高い人気を獲得。その後も「ZenFone 2」シリーズや「ZenFone 3」シリーズなどを次々と日本市場に投入し、高い人気を獲得しているのだ。

元々はパソコンメーカーとして知られていたエイスースだが、最近はSIMフリー市場の人気によって、スマートフォンメーカーとして知られるようになった

実際エイスースは、中国のファーウェイや、「FREETEL」ブランドのベンチャー企業、プラスワン・マーケティングなどと並んで、SIMフリー市場でトップを争うポジションを獲得。現在ではパソコンメーカーとしてよりむしろ、スマートフォンメーカーとして知られる存在となりつつあるようだ。

だが世界第3位のスマートフォンメーカーであるファーウェイ、自身で通信事業を手掛けることで端末の販路を拡大しているプラスワン・マーケティングと比べると、エイスースの特徴や強みは弱いようにも感じる。にもかかわらず、なぜエイスースは日本で高い人気を獲得できているのだろうか。

「ZenFone 5」での日本向けローカライズで人気を獲得

その理由は、日本のスマートフォン市場へ本格参入するに当たり、最初に投入した「ZenFone 5」にあるといっても過言ではない。ZenFone 5自体は台湾をはじめ世界的に展開していたモデルだが、それを日本市場に投入するにあたって、エイスースは独自のカスタマイズをいくつか加え、高い評価を得たのである。

その1つは周波数帯だ。SIMフリースマートフォンはMVNOのSIMを挿入して利用されることが多く、MVNOの多くはNTTドコモの回線を借りている。そしてZenFone 5は、NTTドコモが使用している周波数帯の1つである800MHz帯(バンド6/バンド19)に対応していたのだ。

NTTドコモはこの帯域を、主に地方や山間部を広くカバーするのに用いている。だがこの帯域は日本以外ではあまり使われていないことから、海外製のスマートフォンの大半は、当時この帯域に対応していなかった。

実際、SIMフリー市場に先に参入していたファーウェイなど多くのメーカーは、2015年半ばまではバンド6/バンド19に非対応の端末しか投入しておらず、地方に持っていくと快適に利用できなくなってしまうという理由から、評判を落としていたのだ。

だがZenFone 5は、最初からバンド6/バンド19への対応を打ち出したことで、SIMフリースマートフォンの中でも「日本全国で安心して使える」という安心感をもたらし、ユーザーだけでなくそれを販売するMVNOなどからも高い評価を得ることができた。周波数帯で日本を重視する姿勢を見せたことが、ZenFone 5、ひいてはその後のエイスース製端末の評価に大きく影響したわけだ。

エイスースが日本市場への本格進出に当たり、最初に投入した「ZenFone 5」。NTTドコモの800MHz帯に対応したことが高く評価され、多くのMVNOで取り扱われるなど人気となった

さらにもう1つ、日本で利用する上で必須の日本語入力に関しても、ZenFone 5は日本で高い実績を持つジャストシステムの「ATOK」を採用したのである。端末自体はグローバルモデルそのままながら、それまでSIMフリー市場では軽視されていた、日本向けのローカライズ対応を徹底したたことが、スマートフォンメーカーとしてASUSの人気を高める大きな要因となったことは確かだろう。

グローバルの戦略が日本市場にもマッチ

だがエイスースが人気を獲得した理由はもう1つあると考えられる。エイスース全体のスマートフォン戦略が、日本市場の動向と丁度マッチしていたことも、日本で成功を収めた大きな要因だといえる。

エイスースはスマートフォン市場参入当初、性能はあまり高くないながらも端末の質感は高く、リーズナブルな端末の提供に力を入れてきた。ZenFone 5も性能は当時のミドルクラス相当であり、ボディも金属ではなく樹脂製であるなど低コスト化に苦心する要素が多く見られたが、一方で日常的な利用には十分な性能を備えており、質感を高める加工を施すなどして、価格以上の価値を打ち出す工夫が多くなされていたのだ。

そしてZenFone 5が登場した2014年頃、日本ではSIMフリースマートフォンが「格安」に利用できるMVNOの通信サービスとセットで利用するものとして注目されたこともあり、価格の安さが強く求められていた。そうした市場環境の中、ZenFone 5は比較的低価格ながら高い完成度を誇っていたことから、高い評価を獲得できたといえる。

だがここ最近、通信サービスとSIMフリースマートフォンをセットで販売し、大手キャリアのように2年間の分割払いで購入できる仕組みを導入するMVNOが増え、高額なスマートフォンを購入しやすくなってきた。そのため多少高額であっても、高性能・高機能な端末を選ぶユーザーが増えてきており、ファーウェイの「P9」のように比較的高額なSIMフリースマートフォンがヒットするケースも出てきている。

一方でエイスースもスマートフォン事業の好調を受ける形で、従来のミドル・ローエンドに注力する戦略から、昨年にはラインアップを広げ、ハイエンドモデルも提供するなど新しい戦略を取るようになってきた。実際、昨年9月に日本で発表された「ZenFone 3」シリーズは、自ら「性能怪獣」と呼ぶほど高い性能を誇るハイエンドモデル「ZenFone 3 Deluxe」をラインアップに揃えている。

そうした日本市場の変化と、エイスースの戦略変化がマッチして起きたのが、日本でZenFone 3 Deluxeが一時受注を停止するほどの人気となったことだ。ZenFone 3 Deluxeは最も高いモデルでは8万円以上と、SIMフリースマートフォンではiPhoneに匹敵する高額な値付けがなされていたのだが、それでも高い性能を求めるユーザーの強い関心を集めて人気を獲得。市場におけるエイスースの存在感を一層高める契機となっているのだ。

「性能怪獣」と呼ばれたZenFone 3 Deluxe。特に5.7インチモデルは有機ELディスプレイに高性能CPU、そして2300万画素のカメラを搭載するなど高い性能を誇る

日本市場に向けた積極的なローカライズと、日本市場にマッチしたグローバル戦略。この2つが日本におけるASUSの人気要因となっているといえそうだ。それだけに、ASUSがSIMフリー市場でトップシェアを確固なものにし、なおかつ一層利用者を増やすためには、グローバルの戦略と歩調を合わせながらも、いかに日本市場の動向に合わせ続けられるかが求められる。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。