新たな武器はウェンディーズ! ファーストキッチンに聞く逆転の筋書き

新たな武器はウェンディーズ! ファーストキッチンに聞く逆転の筋書き

2017.04.17

1980年に日本に参入し、その後30年間で約100店舗まで拡大したウェンディーズ。運営会社とのフランチャイズ契約の終了に伴い、惜しまれながら1度は日本から撤退したが、創設者デイブ・トーマス氏の愛娘「Wendy」をあしらったロゴを覚えているファンも多いだろう。そのウェンディーズとのコラボで、新たな店舗展開を進めるのがファーストキッチンだ。両社によるコラボについて、ファーストキッチン社長の紫関修氏に話を聞いた。

※全3回に分けてお届けします

コラボ店のテストで手応え、合併の流れに

まず、両社がコラボを始めた経緯についておさらいしておきたい。再上陸後のウェンディーズを運営していたウェンディーズ・ジャパンとファーストキッチン(FK)は以前から面識があったが、両社で検討を重ねた結果、まずはウェンディーズファンの多い六本木でコラボ店「ファーストキッチン・ウェンディーズ」をテスト展開する流れになった。

もともとウェンディーズだった六本木の店舗を移転してコラボ店にしてみると、同店の売上は前年比160%を記録。続いてテスト展開した上野浅草口店も前年比130%と好調に推移した。協議を重ねた末、2016年5月にはFKの株式をウェンディーズ・ジャパンが取得する事で合意・契約。紫関氏は2016年9月にFKおよびウェンディーズ・ジャパンの社長に就任した。

ファーストキッチンおよびウェンディーズ・ジャパンで社長を務める紫関修氏。日本マクドナルドOBで、フレッシュネスバーガーの前社長という経歴を持つ

買収劇の実態は

ファーストキッチン・ウェンディーズは、ウェンディーズの本格的なハンバーガーと、FKの強みであるポテトやパスタなどのサイドメニューが同時に楽しめる店舗だ。2017年3月30日現在で東京と神奈川に計14店舗を展開する。ちなみに、FKとして営業している店舗の数は現状で135カ所。ここで、この2つの店舗の違いについても押さえておきたい。

FKのハンバーガーは、業界のボリュームゾーンとなっている300円台が主体。例えば基幹商品のベーコンエッグバーガーは320円だ。立地は駅前、ショッピングセンター内が中心で、商品はバーガーのほかサンドウィッチ、パスタ、デザートなどを揃える。ファーストキッチン・ウェンディーズのハンバーガーは、「ウェンディーズバーガー」で490円、「イベリコベーコネーター」で750円という価格設定だ。

「ファーストキッチン・ウェンディーズ」のメニューと価格設定はこんな感じだ

前に経緯を説明した買収劇は、厳しい事業運営を余儀なくされていたFKをウェンディーズが吸収し、日本進出の加速を図ったように見受けられた。だが、紫関社長の受け止めは違う。ハンバーガーという同じ商品を扱う両社の合併は異例だが、互いの強みを組み合わせれば、「面白いビジネス」(以下、かっこ内は紫関氏の発言)を展開できるというのが同氏の考えだ。

コラボ店への模様替えが早かった理由

まずは、紫関氏から聞いた話を総合し、FKの強みを分析してみたい。

強みで1番に挙げられるのが40年の歴史だ。FKの創業は40年前の1977年。業界的に見ても老舗の部類に入る。早くスタートを切ったチェーン店の特色として、FKの既存店舗は立地が良い。駅前や繁華街などにある既存のFKに、ウェンディーズのハンバーガーを追加するだけで、コラボ店を素早く展開することが可能だったのだ。

FKの調理設備に、ウェンディーズのハンバーガーがマッチしたことも、コラボ店の素早い展開に役立った。FKで使っているフラットグリルという設備で、ウェンディーズのバーガーにも対応できたのだ。コラボ店への模様替えが、調理設備の入れ替えを伴うと費用は膨れ上がるわけだが、ファーストキッチン・ウェンディーズは投資額を抑えて出店できるのが特徴だ。

六本木交差点の北西側(国立新美術館などがある方)に位置する「ファーストキッチン・ウェンディーズ六本木」

直火焼きが自慢の店舗などで使っているパティの焼成設備に比べると、フラットグリルはスペースをとらないという特色がある。FKをコラボ店に模様替えする際、キッチンスペースを拡げずに済むことは、1坪あたり売上高が重要な指標となるファーストフード業界では見逃せないポイントだ。

歴史に基づく企業イメージの定着と知名度の高さもFKの強みだ。FKの名を知らないという人は少ないだろうし、取り扱い商品や価格帯も大方は想像がつく。

競合他社がひしめくファーストフード業界に身を置いてきたFKにとって、厳しい事業環境の中で磨かれた人材も、今は会社の財産となって息づいている。人材育成・人材確保が業界共通の課題となっている中、FKは人材の流動性が極めて少ない環境にあるという。人材の流動性が低いということは、企業風土やフィロソフィーを共有した人材がそのまま成長していることを意味する。

まとめると、FKの強みは歴史、立地、人材だ。外資系の外食チェーンが日本に進出する場合、課題となるのは場所と人の確保だと紫関氏も語っていたが、日本再上陸を果たしたウェンディーズにとってみても、FKの強みは魅力的に映ったのだろう。

ウェンディーズのブランドをいかに活用するか

今回、ウェンディーズとのコラボを始めたことは、FKの持つ強みをさらに磨き上げる効果があると紫関氏は語る。両社の合併は、一方が飲み込まれたというよりも、両社が持つ強みの相乗効果を狙っているものだと思える。FKとファーストキッチン・ウェンディーズという2つのビジネスモデルが同時進行し、しのぎを削っているという印象を受けた。

今回のコラボビジネスにあたって、ウェンディーズからマニュアルが届いたり、先方のオペレーションを押し付けられたりすることはなかったという。米国のウェンディーズ本部は、「(コラボで)何ができますか?」と聞いてくるほど柔軟な姿勢を示しているそうだ。

この話を受けてFK側が考えたのが、「(店舗数で)世界3位のウェンディーズというブランドをどういかすか」ということだった。

ウェンディーズは世界29の国と地域で6,515店舗を展開するハンバーガーレストランチェーン(2014年度実績)だ。FKはウェンディーズに買収されたわけだが、考え方を変えれば、ロイヤリティを支払う代わりに、世界的なウェンディーズというブランドを活用できるようになったともいえるわけだ。

ごく簡単な例を挙げると、立地は良いのに業績で苦戦していたFKの店舗をコラボ店にするだけで、人が集まる場所にウェンディーズのハンバーガーを投入することができてしまう。紫関氏の話を聞いていると、ダブルネームでの出店はコラボの始まりに過ぎず、今後はさまざまな施策が出てきそうな印象を受けた。ウェンディーズはマーケティング、商品開発、店舗展開などについて前向きな話ができる、「非常にサポーティブ」な会社なのだという。

ファーストキッチン・ウェンディーズの看板商品「ウェンディーズバーガー」

FKがなくなる日は来る?

今回の合併では、コラボによって店舗が全て変わってしまうのか、FKという業態がなくなってしまうのか、という点が気になるところだった。

結果として、コラボが始まった現在も、FKとして営業している店舗は存在する。紫関氏は全てをコラボブランドで展開することは考えていないという。なぜなら、同じチェーンであっても地域によって求められる要素は異なるからだ。駅前の立地でも、ビジネス圏と住宅圏では顧客の層は同じではない。

コラボビジネスであったとしても、先方から言われた通りに動けばよいのではなく、自分達が何をできるか、自分達の店舗をどう変えていくのかといった点、つまり、FKの自発性、自主性を大事にしていきたいと紫関氏は語る。

業績が下降していたFKが、ウェンディーズとの合併により救われたというよりも、むしろウェンディーズのブランドを活用し、FKがいかにして自社の強みを磨き上げていくかというのが焦点となる今回のコラボビジネス。店舗数135店のFKだけに、巨大ファーストフードチェーンと規模で勝負するのは難しいが、この規模でありつつ、世界的なチェーンを持つウェンディーズと組んだことは、独特の仕掛けを可能にする。今回の合併により、FKの新しいステージが幕を開けたのだ。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。