日本橋から新産業を! 熱気あふれるベンチャー支援の現場

日本橋から新産業を! 熱気あふれるベンチャー支援の現場

2016.04.20

福徳神社の鳥居からオフィスビルを見上げる。日本橋には“伝統”と“新興”が同居している

東京・日本橋。諸説あるが、徳川家康による江戸開闢(かいびゃく)の際、“日本中”の大名が集められ、その労力により街道を整備し橋を架けたことから「日本橋」と名付けられたといわれている。東海道五十三次の起点として知られ、小判を鋳造した「金座」(現・日本銀行)があった場所としても有名。現在も三越デパートのお膝元であり、江戸時代から続く商店が並び、賑わいをみせている。そんな古くから東京の流通・経済の中心地として栄えてきたこの地区が、新たなビジネスを生む場ともなっている。三井不動産がベンチャー支援に加えて、企業同士のオープンイノベーション空間として運営する「Clipニホンバシ」がその現場だ。

ベンチャー育成に乗り出す三井不動産

Clipニホンバシは、日本橋地区に設けられた“コワーキングスペース”の名称。三井不動産が新産業創業に向け推進している「31VENTURES」の一施策だ。この31VENTURESには東京・霞が関や千葉県・柏市などにもベンチャー向け専有オフィスやコワーキングスペースが用意されているが、これらには数名~十数名規模のベンチャー企業が入居できるオフィスも併設されている。一方、Clipニホンバシは、個人起業家を対象にした施設がメイン。Clipニホンバシを訪れてみると、その個人の起業家たちの熱気であふれている。

三井不動産 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事 光村圭一郎氏

日本橋というと「日本橋三井タワー」や「コレド日本橋」といった最新のオフィスタワー、ショッピングセンターが並ぶ地域。個人起業家が事業の拠点にするには少々ハードルが高いのではないかと思ってしまう。だが、Clipニホンバシの立ち上げに携わった三井不動産 ベンチャー共創事業部 光村圭一郎氏は、そんな筆者の感想に対し「日本橋だからこそ独特のアイデアが生まれ、活発な事業になるのだと思います」と話す。

日本橋は最新オフィスやショッピングセンターが連なる一方、江戸時代からの老舗店舗も数多く残っている。多種多様な業態の企業・店舗が集まる街だからこそ、新たなアイデアが生まれやすいというワケだ。

文明堂のおやつカステラ。カステラに対する日々の需要の呼び起こしに成功した

その典型例が、文明堂が発売する「おやつカステラ」だろう。文明堂といえば1900年(明治33年)に創業されたカステラ製造・販売の老舗。1951年に日本橋に本店をかまえ、以来“街の顔”としての役割も果たしている。だが、カステラは“贈答用お菓子”という位置づけだったため、パッケージが大きくなりしかも高級路線に走らざるをえない。日々の需要に応える製品ではなかったため、一時期低迷した。その高級菓子を“おやつ感覚”で楽しめないかと企画されたのがおやつカステラで、この製品のマーケティングを手がけたのがClipニホンバシのベンチャーだったという。老舗企業の施策をベンチャーが手がける……これこそまさに日本橋ならではのコラボレーションといえる。

さまざまな企業が集まっていることに加え、立地の“良さ”も日本橋の強みだといえよう。日本橋の北側にはポップカルチャー、サブカルの集積地・秋葉原が、南側には多数のグローバル企業が本社をかまえる大手町がある。アイデア次第で“アキバ文化”を絡めたり、グローバル企業を巻き込んだりもできる。

プライベート・コンサルタントと打ち合わせをする北島千春さん(左)。“日本橋にもっと着物を!”をテーマにイベントなどを企画している。光村氏いわく「Clipニホンバシの象徴的人物」なのだそう

専属スタッフが多角的にサポート

Clipニホンバシは、単にベンチャーにフリーアドレス制のワーキングスペースを提供しているのではない。さまざまな施策をとおし、ベンチャーが手がける事業をサポートしている。その代表的な存在が「プライベート・コンサルタント」で、これは31VENTURESのスタッフが、あたかもベンチャー企業の専属コンサルのように課題解決や人脈・企業紹介などを行うというもの。事業のアイデアはあるのにどう動いてよいかわからないといった際に助言したり、悩みを聞いたりとサポートしてくれる。

また光村氏はこうも続けた。「16年4月1日よりClip ニホンバシをはじめ、霞が関や柏市などにある複数の31VENTURESオフィスの利用者を束ねた『31VENTURESクラブ』を設立しました。クラブ設立により、これまでClipニホンバシのプライベート・コンサルタントは、31VENTURESクラブ会員であればご利用できるようになりました。さらに31VENTURESではこのコンサルに加え『コミュニティマネージャー』も導入しています」。コミュニティマネージャーは、会員と会員をつなげて共同体を創り上げるのが役割。そのベンチャーに対し、どのような“つながり”が必要なのか模索し、提案する。Clipニホンバシの利用者は、プライベート・コンサルタントとコミュニティマネージャーによって多角的にサポートされるのだ。

さらに「水曜Clip」と呼ばれるイベントも開催されている。最先端の仕掛人と出会う「チラミセnight」、実績あるイントレプレナーと出会い、コラボの可能性に挑む「イントレnight」、プライベート・コンサルとともにアイデアブラッシュアップのプロセス体験ができる「コンサルnight」、ほしい人材をスカウトする力を磨く「エントリーnight」といったイベントをとおし、出会いとビジネス機会を創出している。このように、単にオフィス空間の提供だけでなく、人的支援が手厚いのが特徴だ。

事業内容が記載された付箋が壁いっぱいに貼られている。Clipニホンバシ利用者のいわば“所信表明”のようなもの(写真左)。イベント参加者の写真がズラリと並ぶ(写真右)。利用者の熱気が伝わってくる壁の装飾だ

この三井不動産が推進する31VENTURESのほか、三菱地所が主導する「EGG JAPAN」「グローバルビジネスハブ東京」など、デベロッパーはベンチャー支援に積極的だ。デベロッパーというと、土地を開発しオフィスビル・住宅を建て、街を創っていくのが主事業だが、こうしたハード面だけを整えても街の活性化は望めない。企業や事業、そして人というソフト面の育成も“街づくり”の大切な役割といえるだろう。

大江戸膨張! 東京再開発の現場

●日本橋から新産業を! 熱気あふれるベンチャー支援の現場
●虎ノ門再開発にみる“創業地”に込めた森ビルの強い想い
●33年越しの悲願達成! 再開発完了にわく新生“ニコタマ”の姿
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu