社長に聞くファーストキッチンの未来、チェーンの概念は変わるか

社長に聞くファーストキッチンの未来、チェーンの概念は変わるか

2017.04.19

前回前々回の記事では、ウェンディーズとのコラボレーションにより、ファーストキッチン(FK)という会社がどのように変わってきたかについて述べてきた。今回は、今後の方向性についてFK社長の紫関修氏に聞いた話をもとにまとめてみたい。

商品をどうしていくか

FKの商品戦略において、すでに始まっている施策としては、「高価格帯商品への挑戦」が挙げられる。ファーストフードのハンバーガーといえば300円台が一般的で、ファーストキッチンも同様だったのだが、すでに400円台のバーガーは販売中で、今後は500円台にもトライするとのことだった。これからの商品戦略で強化していきたいものとして、紫関氏が挙げたのは「高付加価値商品」と「チキンカテゴリー」の2つだった。

商品戦略について聞いた話で印象的だったのは、店のブランドを作るのはあくまで基幹商品だという言葉だ。季節の限定商品を定期的に投入し、“売上の山”を作る戦略を採用しているバーガーチェーンもあるが、ベースの売上を作るのは基幹商品、FKであればベーコンエッグバーガーだと紫関氏は語る。もちろん新商品の投入は続けるが、基幹商品をしっかり訴求することが、最終的にはブランド価値の向上につながるという考え方だ。

基幹商品の訴求が本筋だ

捲土重来の大阪進出

コラボ店の方は、FKの既存メニューにウェンディーズのバーガーを追加することで、自然な形で価格帯の拡大に成功した「極めて珍しいケース」(以下、かっこ内は紫関氏の発言)だという。さて、コラボ店の方で気になるのは今後の出店計画だが、現在は関西への進出を検討しているそうだ。

1970年代にウェンディーズの日本進出の契機を作ったのはダイエーだ。その本拠地であった関西には当時、ウェンディーズの店舗が数多く存在していた。長年のファンが存在する関西に、コラボ店として捲土重来で乗り込む計画だ。時期は2017年の夏頃、場所は大阪が候補となっているという。

店舗網の拡大にはフランチャイズも活用したいという。紫関氏によると、ハンバーガー業界のみならず、ファーストフード業界全体の話としても、これだけのブランド力と基盤を持ったチェーン店にフランチャイズとして参入できるチャンスは滅多にないそう。夢を持って外食に参入する「最後のチャンス」といっても過言ではない機会であり、フランチャイズで出店してみたいという声も届き始めているそうだ。

挑戦するにはちょうどいい規模感

最後に、紫関氏にFKとファーストキッチン・ウェンディーズを運営していく上での考え方を語ってもらった。

「FKはチェーン店だが、マクドナルドやモスバーガーなどと比べれば事業規模は小さい。しかし、この規模感は、何かに挑戦する上で強みとなる。この会社は、店舗の規模を考えるといろいろな挑戦ができる。面白そうであれば、試してみよう。でもダメだったら、すぐ引き返すことも、逆にこの規模だからできることだ」

「(ウェンディーズとのコラボで)今後は何が飛び出すか分からない。例えるなら、これは登山というよりも航海のようなものだ。何か目標を決めて、それに向かって登っていくのではなく、それぞれの社員が夢を持って船を漕いでいく。ウェンディーズという新しい船を手に入れたということだ」

ともすればファーストフードチェーンで中途半端な存在ともなりかねないFKの規模感を前向きに捉えている紫関氏

新しいチェーン店の在り方を示す存在になれるか

ウェンディーズのブランドを使って何をするかは、FKの社員一人一人に課せられた宿題だ。業績が下降していた時には挑戦できなかったことも、新たなブランドを手に入れ、業績が上向いてきた今なら試してみることができる。意識改革により主体性を取り戻しつつあるFKから、どんなアイデアが飛び出すのかが楽しみだ。

ウェンディーズ本社に対し、FKおよびファーストキッチン・ウェンディーズの知見から還元できることもあるはずだと紫関氏は指摘する。例えば、日本のように出店スペースが限られる市場で、良い立地に小さな店舗で効率よく展開し、高い坪あたり売上高を稼ぎ出すような手法は、世界展開するウェンディーズにも参考になるかもしれないというわけだ。

確かに、世界的にチェーン展開するウェンディーズが、シンガポールや香港など、出店場所が限られる地域に出店する際には、東京や大阪の事例がモデルケースになるかもしれない。場合によっては、ファーストキッチン・ウェンディーズというブランドでアジア市場の開拓に挑戦しても面白いだろう。

FK、ウェンディーズ・ジャパン、米国のウェンディーズ本社という3者が関わる日本のコラボビジネスは始まったばかり。確固たる成功を収められるかどうかは今後の課題となる。とはいえ、紫関氏からは同事業の舵取りを楽しんでいる様子が伝わってきた。少子化が進み、規模を追う方向性にも疑問が呈されるような時代に差し掛かる中で、飲食チェーンは一体どんな存在になるべきなのか。何か新しい将来像を提示してくれそうな存在として、ファーストキッチンの航海には今後も注目していきたい。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。