知られざる“老舗大企業”! コーニングの事業内容を追う

知られざる“老舗大企業”! コーニングの事業内容を追う

2017.04.20

1879年、米の発明家、トーマス・エジソンは電球を生み出した。以来、ランプに頼っていた生活は暗い闇夜から解き放たれ、現在にいたっている。このエジソンが発明した電球のフィラメントを覆う球体のガラスを「コーニング」という企業が製造した。

実はコーニングの創設は、エジソンの電球発明よりもさかのぼり、1851年である。つまり、創設以来166年の歴史を誇るアメリカ屈指の老舗企業だ。

100年以上の歴史を誇る企業は、日本に集中しており、世界最古といわれる「金剛組」(578年創業)も日本に籍を置く。国内に長寿企業が集中している理由はさまざまあるが、日本という国そのものが長く存続しているということが、その根拠に挙げられることが多い。

では、1776年の独立宣言により建国した若い国家、アメリカの長寿企業はどうか。実は意外と100年以上続いている企業は多い。日本に馴染みがあるところでは、デュポン(1802年)、プロクター・アンド・ギャンブル(1837年)、アメリカン・エキスプレス(1850年)といったところだろうか。コーニングは、そういった企業に準ずる長い歴史を誇る老舗企業だが、日本での知名度は前出の3社には遠くおよばない。

とはいえ、コーニングが手がけている各事業では、トップクラスのシェアを獲得している。

スマートデバイスでトップシェアのカバーガラス

もっとも我々の生活の近くに存在するのが「スペシャリティマテリアルズ部門」だ。いや、正確には同部門が手がけている「Corning® Gorilla® Glass」(以下、ゴリラガラス)である。コーニングという社名は知らなくても、ゴリラガラスという製品名にピンとくる方も多いのではないだろうか。

そう、もうすっかり手放せなくなったスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどのカバーガラスで使われている部材だ。世界で40以上のメーカー、1650種類以上ものブランドで使われ、ゴリラガラスを採用したデバイスは約50億台にものぼる。

つまり、洋服や腕時計、アクセサリーといった常に身につけているものを除けば、1日でもっとも触れている“部分”のひとつといえるのだ。いや、“指先で触れる”ということに限定すれば、スマホのガラスかキーボードのどちらかが1日でもっとも触れているもの、ということになるのではないだろうか。

さて、ゴリラガラスはサムスンやLGエレクトロニクス、HP、Lenovoなど、グローバルで展開しているベンダーに広く採用され高い存在感を示しているが、その歴史は意外に短い。

コーニングインターナショナル 石原修氏(左)と、コーニングジャパン 井上康之氏

コーニングインターナショナル 材料事業部 Corning® Gorilla® Glass 日本地区セールスマネージャー 石原修氏は「Corning Gorilla Glassは2006年に開発され、2007年から市場に投入されました。つまり、今年でちょうど10年になります」と話す。166年という長い歴史を誇るコーニングからしてみれば、もっとも新しい製品のひとつといえるだろう。だが、前述のとおり、スマホやタブレット市場の急成長に乗り事業拡大し、さらにはこの領域でトップシェアとなった。

また石原氏は「この10年のあいだに改良を重ね、現在は『第5世代』となっています」という。石原氏によると、第1世代・第2世代では薄型でも強度が高いことを追求。第3世代では「NDR」(Native Damage Resistance)を採用し、キズによる耐久劣化を抑制した。第4世代ではマーケットのニーズを探った結果、“割れにくさ”をさらに強化。そして、より過酷な「デバイス・ドロップ・テスト」に耐える第5世代へと進化した。

通常のガラスを鉄の棒で押し込むと、あっけなく割れた(左)。一方、ゴリラガラスでは結構な体重をかけても割れなかった

新たな分野への進出を図る

“より強く”“より薄く”といった部材そのものの性能向上のほかに、ゴリラガラスの活用領域の開拓にも乗り出している。そのなかでも期待が持てそうなのがクルマへの活用だ。 コーニングジャパン コーニングガラステクノロジー コマーシャルテクノロジー プロジェクトマネージャー 井上康之氏は「Corning Gorilla Glassは通常のガラスよりも耐久性に優れているため、薄くできます。結果、従来よりも30~40%、ガラス部分が軽くできます」と話す。つまり、ガラス部分を軽量化することにより車体重量が抑えられ、燃費向上やカーボン排出抑制につながるという。

問題はコストだ。通常ガラスよりも高価なため、普及車に採用されるのはまだ先になるだろう。事実、エンジンと室内の遮音板にゴリラガラスを採用した「BMW i8」も、フロントガラスやリアウィンドウにゴリラガラスを採用した「フォードGT」も、“プレミアムカー”だ。ただ井上氏は「まずはこうしたプレミアムな領域で勝負していきたいです」と意気込む。

と、ここまで書くとゴリラガラスを擁するこの部門が同社の“稼ぎ頭”なのかと思うが、実はそうではない。

では、どの部門が牽引役なのか。せっかくなので、コーニングのおもな事業をザッと点描してみよう。

同社でもっとも売上高比率が高いのが「ディスプレイテクノロジー部門」(2016年部門別売上高比率37%)で、この部門ではディスプレイに利用されるガラス基板を製造している。次が「オプティカルコミュニケーション部門」(同31%)で、光ファイバケーブルが主事業だ。そして前出の「スペシャリティマテリアルズ部門」(同12%)、自動車用排ガス浄化用担体フィルタがメインの「エンパイロメンタルテクノロジー部門」(同11%)、「ライフサイエンス部門」(同9%)と続く。

コーニングが手がける事業のサンプル。左がガラス基板、右は光ファイバケーブル
左からスペシャリティマテリアルズのガラス類、自動車用排ガス浄化用担体フィルタ、ライフサイエンスが手がける製品

このうち、オプティカルコミュニケーション部門とライフサイエンス部門の担当者から話を伺えた。

コーニングインターナショナル 興梠貴治氏

まず、オプティカルコミュニケーション部門だが、コーニングインターナショナル 光通信事業部長 興梠貴治氏が対応してくれた。

「コーニングは1970年に低ロスタイプの光ファイバを開発し、光通信インフラの礎を築きました」と、興梠氏は切り出した。ネット社会となった現在、国際通信や国内の基幹通信は光ファイバが支えている。すでに、光ファイバによる通信インフラの整備は終局となっているが、新たな需要が生まれてきているという。それがデータセンターなどの配線だ。 ICT業界では、合い言葉のように「IoT」というキーワードが使われるようになった。“モノのインターネット”により収集されたビッグデータを、保存・分析するのがデータセンターだ。データが増えれば増えるほど、端末やサーバー間の送受信速度が重要になってくる。コーニングが提供する光ファイバは、将来的に400GB/秒のデータ送受信に対応しており、ビッグデータ時代のデータ送受信のインフラとして準備を整えている。

山中教授も使用する理化学用機器

コーニングインターナショナル 豊島恭氏

ライフサイエンス部門については、コーニングインターナショナル ライフサイエンス事業部長 豊島恭氏が解説してくれた。

豊島氏によると、同部門の主軸は、細胞培養などに使われる理化学用の器具だという。ライフサイエンスというと、“人々の健康”を支える食事や薬というイメージが強いが、それよりももっと上流の“研究”という分野での必需品を提供している。iPS細胞の開発に成功した京都大学の山中教授も、同社の器具を使っているという。

面白いのは、この部門で「PYREX」(パイレックス)というガラス器具を扱っていること。パイレックスといえば食器などのキッチン用品で有名だが、その領域はすでにコーニング以外の企業に譲渡されている。コーニングが扱うのは、パイレックスのビーカーやフラスコといった、いわゆる“理科の実験”で使うような器具だ。

理科の実験を行った小学生のときには気づくはずもないが、スマホの表面ガラスに触れるずっと以前に、コーニングの製品を触っていたことになる。

さて、同社の主事業をザッと紹介してきたが、複数の分野でトップクラスのシェアを誇る。惜しむべくは、日本での知名度の低さ。試しに筆者のまわりの人や、よく行く飲食店のスタッフに「コーニングっていう会社知っています?」と、20人ぐらいに問いかけたが、「知っている」と答えたのはわずか2人。その2人とも、ICT業界で長く取材を続けてきた記者であるから知っていて当然だ。BtoB向け事業が中心なので仕方ないとはいえ、企業規模や長い社歴にしては、コーニングの“知られざる”ぶりは、次元がちがうようだ。

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

2019.03.22

Googleマップが壊れた? 3月21日以降、表示がおかしい

地図のダウンロード機能でゼンリンと決裂したか?

新しい地図は機械学習で地図データ生成という指摘も

Googleマップの表示がおかしい。3月21日頃から、Googleマップの不具合を訴える声が各所で相次いでいる。道路の表示や建物の位置が正確でなかったり、地形すら間違っている場所もある。Googleマップにいったい何が起こったのか。

地図データの提供元がゼンリンではない?

Googleマップの日本地図データはこれまで、地図データで国内大手のゼンリンから提供を受けていた。両社の契約状況は公開されていないが、少なくとも不具合が発生している現在のGoogleマップ上からは、以前までは記載されていたゼンリン社の権利表記が消え、「地図データ (C)2019 Google」へと変更されている。

Googleマップからゼンリン社の権利表記が消えた

Google社は今月のはじめ、今後「数週間以内」に、日本のGoogleマップをアップデートすると予告していた。このアップデートでは、特にダウンロード可能なオフラインマップを追加することに注目が集まっていた。オフライン環境でもダウンロード済みの地図を利用できる便利な機能だが、地図データの契約上の課題があり、日本のGoogleマップでは制限されていた機能だからだ。結局、両社は契約の課題を解決できず、ゼンリンが地図データ提供から降りてしまったことが、今回の不具合の原因と見られる。

新しい地図は使い物になるのか?

現在のGoogleマップは、Googleが新規開発した自社製の地図データを利用しているようだが、いまだに不具合が報告され続けている状態状態であり、混乱が収束する目途は見えていない。

なお、この新しい地図は、航空写真で山脈の陰部分が湖になっていたり、並木の多い道路が公園になっていたりする間違いや、ほかにも交差点に面したコンビニエンスストアの駐車場が道路と語認識されていたりすることから、航空写真をもとにした機械学習や、スマホ位置情報の移動軌跡から地図データを生成しているのではないかと指摘されている。

航空写真では山の陰になっている部分が、川と湖になってしまっている
地図では鎌倉街道から大栗橋公園を抜ける道があるが、実態はただの公園広場だ。スマホ位置情報の移動実績をもとに道と認識したか?

新しい地図の仕組みや改善の見込みについては、Google側のアナウンスを待つほかないわけだが、GoogleマップはAndroidの標準地図として利用されており、影響を受けるユーザーがあまりにも多い。他の地図サービスを駆逐して大きな影響力を持っているのだから、責任も伴うはずだ。

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ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。

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