アウディが小型SUV「Q2」発表、“型破り”なクルマは若者に売れるか

アウディが小型SUV「Q2」発表、“型破り”なクルマは若者に売れるか

2017.04.27

アウディジャパンはコンパクトSUVの新型車「Q2」を2017年6月に発売する。これまでのアウディとは路線が異なるデザインや299万円からの価格設定など、明らかに若年層の開拓を意識した戦略的なクルマだ。そして、実際に売れそうな気がするクルマでもある。

アウディの新しいコンパクトSUV「Q2」

あえて遊びの要素を入れたデザイン

「Q」から始まるアウディのSUVシリーズに新顔が登場した。Q2は全長4200mm、全高1530mm、全幅1795mmの小型SUV。立体駐車場も使えるので、都会暮らしには嬉しいサイズ感だ。排気量は1.0リッターと1.4リッターの2種類を用意。新車発表会に登壇したアウディジャパンの斎藤徹社長によると、販売のメインは1.0リッターモデルになる見込みだ。

直噴システムと過給器を装着したガソリンエンジン(TFSI)は、実際の排気量以上の動力性能を発揮するという。Q2はライバル車に比べ200キロの軽量化に成功しており、走りは軽快で燃費も良いと斎藤社長はアピールした。

注目すべきは「ポリゴン」をテーマとするデザインだ。斎藤社長によれば、アウディは機能美を徹底的に追求し、シンプルながら隙のないデザインを特徴とするが、Q2には、あえて遊びの要素を入れ込んでいるという。

特徴はスクエアでエッジの効いたボディデザイン。正面から見ると、大きな八角形のシングルフレームグリルが目を引く。アウディのグリルは、車種が違っても似たような感じだと指摘されることもあるそうだが、Q2のグリルは同社で初採用となるデザインだ。

斎藤社長によると、Q2のデザインは「独自のフィロソフィーを持つアウディだからこそ可能な意図的な型破り。高度な調和の中の異端」だそう。グリルも印象的だ

299万円から買えるアウディのSUV

もう1つの注目ポイントは299万円から405万円という価格設定だろう。もちろんオプションの内容によって変動するのだが、アウディブランドで、流行のSUVを税込み299万円から買えるというのは、やはりインパクトがある。

Q2のグローバルコンセプトは「#untaggable」。タグ付けできない、1つのイメージではくくれない、といったような意味だが、これを日本市場では「#型破る」という造語で表現する。価格設定もデザインも確かに“型破り”なアウディの新型車。このクルマが背負う使命を斎藤社長の言葉から探った。

アウディで最も若い客層を狙う

「ターゲットはアウディユーザーの中で最も若い年齢層だ」。斎藤社長はQ2で開拓したい客層をこう語る。想定しているのは、30代から40代前半の独身、カップル、ヤングファミリーといった顧客。自身が選択するものに強いこだわりを持ち、情報感度が高く、クリエイティブな思考・ライフスタイルを追求する人たちに選んでもらいたいそうだ。

Q2の発表会に登場したアウディジャパンの斎藤社長。「#型破る」は日本市場におけるマーケティングコンセプトだ

30~40代と聞くと「若年層の開拓」という言葉と少し矛盾する感じもするが、アウディの既存ユーザーは40~50代が中心らしいので、Q2はやはり顧客層の若返りを狙ったクルマだといえる。メルセデス・ベンツが先日マイナーチェンジしたコンパクトSUV「GLA」も若者向けをアピールしていたが、プレミアムブランドにとっては、顧客の平均年齢を引き下げ、将来のビジネスの基盤を構築することが急務となっているようだ。Q2は30~40代の顧客に「アウディのブランドを浸透させるというミッション」(斎藤社長)を背負っている。

新たな量販車種に育つ可能性も

Q2はアウディの新たな量販車種に育つ可能性も秘めている。同社で最も売れている「A3」と同等の価格帯であり、A3ではカバーできていないSUV市場に訴求できるクルマだからだ。斎藤社長は2017年のQ2の販売台数を2500台と見積もっていたが、これは発売日である6月中旬から半年間の数字で、1年間をフルに販売できる来年はうまくすれば倍増するかもしれない。

発表会にはダンサーが登場。会場にはDJブースも設えられた。このあたりも若年層を意識した演出なのだろう

Q2の購入者としては、半分弱はアウディからの代替で、残りの6割くらいは他社からの乗り換えを想定している。他社から乗り換える6割のうち、3分の2くらいは国産者ユーザーの流入になるというのが斎藤社長の見立てだ。

アウディというブランドで、価格設定も戦略的。そして流行のSUVとくれば売れそうな気もするのだが、当然ながら、コンパクトSUV市場の競争は熾烈だ。購入を検討する人は競合車の存在も気になるだろう。

ライバルひしめく小型SUV市場

Q2と競合しそうなクルマは多い。輸入車でいえばメルセデス・ベンツ「GLA」がいるし、サイズ感からいえばBMWの「MINIクロスオーバー」あたりと迷う人も出てくるかもしれない。国産メーカーであれば日産自動車「ジューク」やマツダ「CX-3」が思い浮かぶし、先日フルモデルチェンジを遂げたスバル「XV」も強敵なのではないだろうか。

このようにライバルも多い市場だが、アウディがブランニューモデルとして型破りな小型SUVを投入してきたところからは、新しい顧客とコミュニケーションを始めたいという同社の強い意思を感じる。国産車ユーザーでも頑張れば手が届く価格で、若い人にはファーストカーにもなりうると斎藤社長が語るQ2。狙い通りの日本デビューを果たせるかどうかに注目したい。

ベンチャーの最小単位「シーズ」を育む日本橋の新拠点

ベンチャーの最小単位「シーズ」を育む日本橋の新拠点

2017.04.27

東京の再開発が活発化している。これは、2020年の五輪開催を見据えた動きともいえる。こうした状況を踏まえ、折あるごとに都内の再開発現場を取材してきた。その取材先である三井不動産や三菱地所、森ビルなどのデベロッパーは同じことを口にする。

それは「デベロッパーはオフィスビルやレジデンスなどハード面だけを整備するだけではなく、そうした建物に入居する企業や人、いわばソフト面を育むことが大切」というもの。各社で言葉や表現は異なっていても、おおよそ似たような内容を各デベロッパーの担当者は話す。

三井不動産によるベンチャー支援の取り組み「31VENTURES」もそうした施策のひとつだ。ベンチャーの育成や海外企業の日本進出を支援している。

さて、そのベンチャーだが、「シーズ」→「アーリー」→「ミドル」→「レイター」といったように成長段階によって分類される。シンクタンクやベンチャー・キャピタルにより呼び方が異なったり、分類数が増えたりする場合はあるが、上記の4段階がポピュラーなところだろう。そしてIPO(新規株式公開)を果たしたり、大企業に買収されたりすることで「EXIT」となる。

フロア規模が拡大した「Clipニホンバシ」

Clipニホンバシが居をかまえるビル

当然、成長段階によって従業員数が異なり、必要なオフィススペースも違ってくる。31VENTURESは、そうしたベンチャーの規模に合わせたオフィス支援を行っているのが特徴。そしてベンチャーの最小単位ともいえる「シーズ」向けのコワーキングスペースとして「31VENTURES Clipニホンバシ」(以下、Clipニホンバシ)が用意されている。

さて、このClipニホンバシだが、2014年4月に開設され、起業を目指す-多くのユーザーに利用されてきた。そして2017年4月、移転し新装オープンした。

この移転により、セミナースペースの収容人数がそれまでの最大50名から、100名へと拡大。ワークスペースも60席から90席に増やされた。千葉県・柏市にある「31VENTURES KOIL」と入館用ICカードが共通化され、ClipニホンバシとKOIL双方のユーザーがどちらの施設も利用できるようになった。

そして何よりも、建物の雰囲気が明るくなった。コレドのあいだを貫く日本橋のシンボルともいえる仲通りと広々とした江戸通りに面し、さらにガラス面積をふんだんにとったことで、フロア内はとても明るい。

移転前のClipニホンバシを拝見させていただいことがあるが、ビルの入り口がわかりづらく、“雑居ビル”然とした建物だった。エレベーターなどは、まさに雑居ビルのそれ。とはいえ、イノベーションを生み出すのは建物ではなく“人”。施設が入居する建物を批評するなと、反論されてしまいそうだ。

三井不動産 ベンチャー共創事業部長 菅原晶氏(左)。右はアクセルスペース 代表取締役 中村友哉氏。中央にあるのが小型人工衛星「GRUS」のモックアップだ

さて、Clipニホンバシの移転を披露する記者会見において、「オヤッ!?」と思うようなゲストがあった。三井不動産からベンチャー共創事業部長 菅原晶氏が出席したのは当然のことだが、超小型人工衛星の開発で知られているベンチャー企業、アクセルスペースの代表取締役 中村友哉氏も姿をみせた。

Clipニホンバシが入居するビルは3階建てだが、1FはClipニホンバシ、そして2F・3Fにアクセルスペースが居をかまえるのだという。そのため、この記者会見に中村氏が参加し、アクセルスペースの取り組みなどについて語った。

ちなみにアクセルスペースは、50機の超小型人工衛星を打ち上げ、それらのデータを組み合わせた全球毎日観測プラットフォーム「AxelGlobe」(アクセルグローブ)を2022年までに構築するのだという。

日本橋としてはこぢんまりしたビル

話をもとに戻そう。このビルは3階建てと前述したが、ここで少し疑問がわく。日本橋といえば三井不動産の“本丸”ともいえる場所。三井タワーという高層ビルがそびえ、コレドといった商業・オフィスビルが集積している。そんな土地柄にあって3階建てとは、こぢんまりし過ぎているのではないか。

「お茶の水」と名づけられた畳の打ち合わせスペース。脚をくつろげる場所があるのはうらやましい

この疑問に対し菅原氏は「以前からアクセルスペースさんから『オフィスが手狭になったので移転先を探してください』と頼まれていました。しかも『一刻も早く』とのことです。これ以上高いビルを建てるとなると建設に時間がかかるので、この規模になりました(笑)」と話す。

この話が本当なのか冗談なのかはさておき、三井不動産にも利がある。それは旧Clipニホンバシが手狭になっていたこと。事実、以前取材させていただいた担当者に聞くと「移転前のClipニホンバシではユーザーを収容しきれなくなっているそうだ。フロアを拡張したClipニホンバシに移転することは、新たなシーズが生じる際に、物理的な“場所”がないという障害を防ぐことにも通じる。

さて、31VENTURESでは、大企業とベンチャー企業の共生を目指し、新たな事業の創生を促すという。大企業の資本力とベンチャーの発想力、そして両者をかけあわすことによる意外な事業……日本橋から新たな産業が生み出されるのが楽しみだ。

日本郵政が4000億円の減損計上、豪トール買収の何が問題だったのか

日本郵政が4000億円の減損計上、豪トール買収の何が問題だったのか

2017.04.26

日本郵政は2016年度決算で4003億円の減損損失を計上する。2015年に6200億円で買収した豪州の物流企業「トール」の業績が悪化し、同社の損益見通しを見直した結果としての措置だ。日本郵政の連結最終損益は、3200億円の黒字予想が一転して400億円の赤字に転落。果たしてトール買収の何が問題だったのか。

減損計上を発表する会見に詰め掛けた報道陣。もともと広い部屋ではないが、日本郵政本社ビルの会見室からは人があふれた

減損計上の背景は

トール(Toll Holdings Limited)の事業内容は、①豪州国内物流事業、②国際フォワーディング事業、③コントラクト事業の3つに区分できる。フォワーディングとは物を運ぶ際にさまざまな手続きなどを一括して請け負うサービスのこと。コントラクト事業とは荷主企業から物流業務の一部あるいは全部の委託を受ける事業で、サードパーティロジスティクス(3PL)とも呼ばれるビジネスだ。日本郵政による買収決定時の資料を見ると、トールはアジアパシフィック地域で高いプレゼンスを持ち、多国籍企業経営の経験も豊富なのだという。

トールの営業損益は、資源価格の下落と中国・豪州経済の減速で悪化した。収益性低下は主に豪州国内物流事業の不振が原因だが、国際フォワーディング事業の損益も赤字だという。

トールは景気拡大期に100件を超すM&Aを行って成長を遂げた企業だが、バックオフィスやオペレーションなどの統合が不十分で、ITシステムや組織が重複するなど、固定費の比率が高いという弱みがあった。豪州が景気減速期に入り、コスト競争力の低さというトールの弱みは顕在化し、高い固定費が同社の利益を圧迫した。

巨額の減損計上に結びついたトールの買収。日本郵政は今後、トールをどうするつもりなのだろうか。

今後、トールをどうするのか

減損計上を発表した会見で、トールを“高値づかみ”したことを率直に認めた日本郵政の長門正貢社長。同氏が買収決定時に社長だったわけではないが、当時の判断として、豪州経済の見通しに甘さがあったという見方については否定しなかった。トール買収で「不幸だった」点は、「高い買い物」だったことと「トールが豪州の企業であったこと」だと長門氏は語った。

記者会見に臨む日本郵政取締役兼代表執行役社長の長門正貢氏

今後、日本郵政はトールをどうするのか。長門氏は海外展開に注力する日本郵政の姿勢は「いささかも変わらない」とし、トールは海外展開の中核であり橋頭堡であり続けると断言した。トールの改革としては、2017年1月に経営陣を刷新しており、今後は2000人の人員削減などリストラを進め、同社を「筋肉質」な企業にしていくという。

そもそも、日本郵政が海外の大型買収案件に手を出した背景には、総合物流企業として発展していくためには、国内市場だけを相手にしていたのでは成長余地が乏しいとの判断があった。「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」で利益の大部分を稼ぎ出す日本郵政グループだが、国内の郵便市場が縮小を続けるなかで、「日本郵便」の成長の場として海外に目を向け、トールの買収に踏み切った形だ。

トール買収の際は、シナジー効果の見えにくさを懸念する声もあったという。日本郵政は今後も、海外事業の拡大に向けて国内外でM&A案件を検討していく様子だが、今後のM&Aでは、シナジー効果が明確化されているかどうかに厳しい視線が集まりそうだ。