フォルクスワーゲンが小型車up!を刷新、不思議なクルマの独特な戦略

フォルクスワーゲンが小型車up!を刷新、不思議なクルマの独特な戦略

2017.04.28

フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)は小型車「up!」を刷新し、販売を開始した。フォルクスワーゲン(VW)で最も小さいクルマであるup!は、軽自動車のように見えて分類上はコンパクトカーの部類に入る不思議な存在。誰向けの商品なのかが気になった。

フォルクスワーゲンの新型「up!」

小さいけれどフォルクスワーゲン

up!の売り文句は「小さいけど、しっかりフォルクスワーゲン」。コンパクトで軽量だが、VWブランドを冠する以上、安全性には一切の妥協を許していないというのがアピールポイントだ。新型up!の発表会に登場したVGJのティル・シェア社長によると、up!のサイズ感は都会で乗るのに最適だが、高いボディ剛性と走行安定性を兼ね備えているので、長距離でも快適にドライブできるという。

サイズは全長3610mm、全幅1650mm、全高1495mm。カラーはベーシックな白と黒を含む計7色から選べる。パワートレインは3気筒の1リッターエンジンで、オートマチックモードとマニュアルモードを自在に選べるツーペダルマニュアルトランスミッションの5速ASGを採用している

「ピープルズ・カー」を標榜するVWが、up!でこだわったポイントは気軽に使える車であることだ。シェア社長は気軽に使えるクルマに不可欠な要素としてコネクティビティを挙げ、up!がVW純正インフォテイメントシステムである「Composition Phone」を搭載していることをアピールした。このシステムにより、普段から使っているスマートフォンをクルマと簡単につなぐことができるという。

専用アプリ「maps + more」を使えば、ナビゲーションや走行データの表示といった機能が利用できる

初代「up!」が日本に登場したのは5年前のこと。購入者の比率は女性がやや多く、年齢層としては年配の方が過半を占めているという。では、今回の2代目up!は誰に向けたクルマなのだろうか。

年齢層は上と下、セグメントは1つに絞らず

「最も小さいVWであるup!は、若い人のエントリーカーとしての役割を担うと同時に、ダウンサイザー、つまりは快適性や効率を求めて、大きめのクルマ(上のセグメント)からコンパクトカーに乗り換える人の、品質に対する高いニーズも満たすことができる」。シェア社長の言葉から分かる通り、新型up!が狙うのは、年齢層でいえば上と下の両方ということになる。

発表会には新型up!に試乗し、街中での走りやすさを実感したというモデルの矢野未希子さんも駆けつけた。隣はVGJのシェア社長

では、見た目が軽自動車のようで、実態はコンパクトカーの部類に入るup!は、どちらの市場で勝負するのだろうか。「VWユーザーになっていただけるならば全ての顧客がウェルカムだ」とシェア社長は答えていたが、つまりは1つのセグメントに絞らず、幅広い客層に商品を訴求したいとの考えなのだろう。

up!には3つのグレードがあり、価格設定は158万7000円から193万8000円となっている。この価格帯では、軽自動車およびコンパクトカーとの競合は避けられないし、維持費は軽自動車よりも高くつく。どちらの市場もライバルが多いので、おそらく拡販は一筋縄ではいかないだろう。このサイズ感のクルマを欲しがる人に対し、up!のデザインやVWブランドならではの安全性などが響くかどうかが焦点となる。

up!から始まる顧客との長い付き合い

若い客と年配の客の両方を狙うup!の販売戦略は、顧客との長い付き合いを望むVWの考え方を端的に表している。まずはup!や「ポロ」でVWとの接点を持った顧客が、そのうち「ゴルフ」やミニバンに乗り換え、ダウンサイジングを考えるタイミングで再びup!などの車種に戻る。これがVWにとって理想の流れだ。

up!はフォルクスワーゲンの“入り口”としての役割を担う

この4月はメルセデス・ベンツ「GLA」とアウディ「Q2」の新車発表会にも足を運んだのだが、そこで見たのは、両社が客層の若返りを図ろうとする姿だった。おそらくVWにとっても、ユーザーの若返りは重要なテーマとなっている。up!で若者にアピールし、顧客の人生に早い段階でVWブランドを登場させることが、長期にわたって安定的なビジネスを続ける上では重要な要素となるのだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu