ピーチ、ANA子会社化の衝撃(1)企業価値5年で7倍に 投資リターン大きく

ピーチ、ANA子会社化の衝撃(1)企業価値5年で7倍に 投資リターン大きく

2017.03.01

ピーチ、ANA子会社化の衝撃(1)企業価値5年で7倍に 投資リターン大きく

 国内初の本格的な格安航空会社(LCC)であるピーチ・アビエーションがANAホールディングス<9202>の子会社となる見通しとなった。ピーチはもともとANAの新規事業として始まった会社だが、設立当初から外部の投資家を入れ、経営の自主性を保ちながら、低運賃や常識にとらわれないサービスを展開。同業他社が苦戦するなかで、急成長することに成功した。ピーチが生みの親であるANAと文字通りの親子関係になる今回のディールがどんな意味を持つのか。様々なステークホルダー(利害関係者)の立場から考察する。

 ピーチは2011年2月にA&F・アビエーションとして設立された。ANA、香港の投資家であるファースト・イースタン、官民ファンドの産業革新機構が33%、1000万円ずつ出資した。代表取締役最高経営責任者(CEO)にはANA出身の井上慎一氏が就任した。同年の11月に総額150億円の増資を実行。増資後の持ち株比率はANAが38.67%、ファースト・イースタンが33.33%、産業革新機構は28%に変化した。

ピーチの資本構成の推移

 ピーチは2012年3月に関西ー新千歳、関西ー福岡の各路線で運航を開始。現在は国際線13路線、国内線14路線の計27路線を運航する。ただ安いだけでなく、女性客を意識したピンク色の機体や制服、大阪名物であるたこ焼きを機内食として提供するなど「斬新さ」が話題を呼び、乗客数を伸ばした。

 ほぼ同じ時期に参入したLCCのジェットスター・ジャパンや、新興航空会社の「元祖」とも言えるスカイマークが苦戦を強いられるなかで、ピーチの業績は順調に拡大。2016年3月期の売上高は前期比29%増の479億円、営業利益は約2.2倍の61億円だった。ファンドが株主となっていることからピーチは新規株式公開(IPO)をするという選択肢も十分にあったはずだ。

創業5年で企業価値1000億円超に

 にもかかわらず、ANAとピーチはIPOではなく、M&Aの道を選んだ。ANAはファースト・イースタンと産業革新機構が持つピーチ株(合計で28.33%)を304億円で2017年4月に取得する予定。取得価格からピーチの現在の企業価値を試算すると1073億円となる。2011年11月の増資時の企業価値は150億円で、わずか5年あまりに7倍に跳ね上がった計算となる。

 株式の一部を売却した2社がどのくらいのリターンを得られたのか。両社の持ち株比率の推移などから推定すると、ファースト・イースタンが140億円程度、産業革新機構が120億円程度の株式売却益を計上するとみられる。しかも、両社は売却後もピーチの株式をそれぞれ17.9%、15.1%を保有しており、これらの株式の時価を計算すると、192億円、162億円となる。

 このように今回のM&Aディールは投資家に大きな利益をもたらした。いくらANAが関与していたとはいえ、LCCは成功するかどうかは未知数のリスクの高い事業であった。こうしたハイリスクの案件に事業会社だけでなく、海外投資家と国内ファンドが協調投資をするというのも珍しいスキームだった。

 参入障壁が非常に高い航空産業において、当初から100億円単位の資金を投入して国産のLCCベンチャーを育成する取り組みは一定の成功を収めたと言えるだろう。日本のベンチャー投資は、数多くの企業に少額の資金を分散投資していくスタイルが主流で、1社あたりの出資額は数千万円から数億円にとどまるケースが多い。ピーチの成功によって、社会的にインパクトが大きい分野に集中投資するようなベンチャー投資が広がることを期待したい。

文:M&A Online編集部

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu