マックは本当に復活した? 通期決算から見えてきた現状

マックは本当に復活した? 通期決算から見えてきた現状

2017.03.03

2016年12月期決算では3期ぶりに経常損益を黒字に戻した日本マクドナルド。新メニューラッシュなどが功を奏したのか、鶏肉偽装問題で減った客足も回復基調を示し、それが確実に業績に結びついている。ここで気になるのは、マックの復活が“本物”なのかどうかだ。

経常損益は3期ぶりの黒字

まず2月9日に発表された2016年12月期決算の内容を振り返ると、連結売上高は2,266億4,600万円(前期比19.6%増)、直営店舗とフランチャイズ店舗の売上高を合計した全店売上高は4,384億8,800万円(同16.4%増)だった。連結営業利益は69億3,000万円(前期は約234億円の赤字)、経常利益は66億1,400万円(同259億円の赤字)となっている。既存店売上高は5期ぶりの前期比増、経常損益は3期ぶりの黒字化を達成した。

コラボ施策も話題に

2016年12月期の好調を支えた要因として同社は、「美味しいメニューのご提供、お客様にもご参加いただける楽しいプロモーションの企画、店舗改装、人材への投資によるおもてなしサービスの向上など、お客様を第一に考えて行った様々な取り組みが相乗効果を発揮した結果」としている。

実際、2016年の各種取り組みはシナジー効果を発揮し、数字を上向かせることに成功した。商品戦略としては「名前募集バーガー」や「グランドビックマック」で始まり、「エグチ」や「バベポ」など略語の商品を登場させて話題を博した。

「妖怪ウォッチ」、「リオデジャネイロ オリンピック」、そして社会現象まで引き起こした「ポケモンGO」など、コラボ戦略も大いに功を奏した。快適な店舗作りに向けては「マクドナルドFREE Wi-Fi」を導入。顧客の声を聴くための「KODOアプリ」と併せて、ネット環境は格段に進歩した。

数字上は通期で前年を凌駕

折しも日本マクドナルドが1971年に銀座1号店をオープンしてから45年という節目の年でもあった。月次動向で2017年1月の速報値を見ると、全店売上高は2015年12月から14カ月連続の前期比プラスを達成。つまり、数値上は2016年通年で前年実績を上回ったことになる。

決算発表の席でカサノバ氏は、「3つの要因によって結果を出すことができた」と語った。具体的には第1に顧客第一の取り組みによる効果、第2に会社、従業員、サプライヤーの全員が結束して取り組んだ成果、第3に顧客の支えが結果につながったという。

売上高向上の要因としては、単価アップが大きく寄与している。

クーポンの多発が招いた不公平感

単価アップに至るまでには紆余曲折があった。マックは以前、来店者の増加を狙って、駅前や店舗付近でやみくもにクーポンを配布していた時期がある。この施策は確かに来店者の増加につながったが、一方で客単価の減少も引き起こしてしまった。また、クーポンの有無による価格差により、来店客に不公平感を抱かせてしまった側面もある。

また、ファンの来店促進を狙って、アプリに格安のクーポンを多量に配信したことも同様の結果を招いた。レジ前で紙のクーポンを手にする顧客や、スマートフォンの画面を操作している光景が以前は多く目についた。

価格の適正化は成功?

売上高を向上させるための方策としては、単価アップ、来店者数アップ、リピーターの維持・増加、新規顧客の獲得が一般的だ。単価を上げ過ぎると、顧客は嫌悪感を抱いて他店へと流出してしまう。顧客が納得できる妥当な値上げを模索することは、実は難しい。

クーポン戦略や価格設定など、ファーストフードの雄ならではの難しさもある

そこで、マックはまず、一気に単価を上げた。その後、顧客の反応や他社の動向を見ながら、単価の引き下げ調整を行った。ファンから非難の声も上がるなか、マックは価格を流動的に操作しながらも、結果として、最適な金額帯のデータを蓄積していった。

スマホアプリやモバイル環境の整備により、顧客の声を素早く拾い上げる仕組みを構築できたことも顧客の考えを知る一助となった。KODOがその代表例だ。このアプリは店内のモバイル環境下でなければ送信できない仕組みだが、一方で素早く顧客の反応を汲み取ることができる。従来の特典はファンという多数に配信されていたが、KODOの導入により、「お客様の声」を寄せてくれた特定多数に配信することが可能な仕組みへと進化した。

店舗閉鎖の費用的負担は

今回の決算内容では、前期と大きく異なった部分がある。店舗閉鎖にかかる経費の計上だ。前期まで戦略的に店舗閉鎖に取り組んでいたことはIR情報からも読み取れる。通常の閉鎖と合わせると、前期は153の店舗を閉めている。この経費は意外に大きな金額だった。

ちなみに、店舗の閉鎖にはプラスの側面もある。その1つが店舗の賃貸借契約時に預託する敷金の返還だ。マックの店舗は、そのほとんどが賃借物件である。個人の賃貸借契約でも敷金は発生するが、店舗物件であれば、敷金の金額は膨れ上がるケースがある。これが一部であれ戻ってくる。プラス面の2つ目は、店舗を維持するために必要なイニシャルコストが発生しなくなることだ。ともあれ、店舗の戦略的閉鎖にコストがかかるのは間違いない。

今期の戦略的店舗閉鎖はどうかというと、決算短信を見る限り、今期は関連費用が発生しないようだ。戦略的閉店は2016年でほぼ完了したという。

店舗戦略としては、昨年末の2,911店舗をおおむね維持するらしい。新規開店は10~15店舗、閉店は20~30店舗、そして店舗改装は350~400店舗での実施を計画している。閉店は主に、店舗の賃貸借契約終了に伴うものと説明があった。

戦略的閉店はほぼ完了した

2017年12月期における業績予想は全店売上高4,580億円、連結営業利益90億円、連結経常利益85億円としている。既存店の売上増を5%と控えめに見積もりながらも、かなり強気の数字に見て取れる。

不採算店舗の閉鎖が業績にプラス

異物混入事件を受け、一時は客足が遠のいていたマック。顧客としては、行きたくとも行けなかったというのが妥当な見方ではないだろうか。

戦略的店舗閉鎖の影響により、駅前や街中で、マックがある普段の風景が変化したことは記憶に新しい。ある店舗は、ドトールコーヒーショップなどのカフェ業態に転換した。また、全く異なる業態に転換した店舗もあった。“マックロス”なる言葉も生まれた。

マックの決算発表は、13カ月以上営業している店舗の数値を基準にしている。このことは、戦略的店舗閉鎖が終わって14カ月以上が経過すれば、不採算店舗のマイナス影響がなくなるため、業績が落ち着いた水準になることを意味する。

数年前までの業績には、営業を継続していた不採算店舗の数値が含まれている。2015年1月の業績は大きく落ち込んだが、その数字は当時のマックの窮状を如実に表していた。

不採算店舗を整理したら、数値が上向いた。これは自然な結果であり、上向かなければ店舗閉鎖という戦略が機能していないことの証左ともなる。決算を見る限り、またカサノバ氏の説明でも補足された限りにおいては、現在営業している店舗においては、各種問題を起こした以前の水準にまで売り上げは回復してきているようだ。

様々な施策の効果もあり、以前の勢いを取り戻しつつあるように見えるマック。今期も好調を維持できるかが今後の焦点だ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。