なぜ今、次世代のモバイル通信方式「5G」が必要とされているのか

なぜ今、次世代のモバイル通信方式「5G」が必要とされているのか

2017.03.08

いま、携帯電話業界で急速な盛り上がりを見せている「5G」。5Gは現在主流のモバイル通信方式「4G」と比べ、一体何が違っているのだろうか。また5Gを実現する上では、どのような課題があると考えられるだろうか。

4G全盛の今、なぜ5Gが必要とされているのか

ここ最近、携帯電話業界で「5G」に対する取り組みが急速に拡大している。国内の事例を見ても、ソフトバンクが昨年より「5G Project」と打ち出し、5Gの要素技術を用いて通信環境を改善する取り組みを進めているほか、NTTドコモも今年5月より、東京スカイツリーなどで5Gを体験する取り組みを進めていくとしているなど、各社が急速に5Gに関連した施策をアピールしている。

そもそも5Gとは何かというと、現在主流の「4G」と呼ばれるLTE-Advancedなどの通信方式の、次の世代となるモバイル通信方式のこと。第5世代の通信方式ということで「5th Generation」、つまり5Gと呼ばれているわけだ。

とはいえ現在のところ、多くの人は現在の4Gの通信環境に対し、それほど大きな不満を抱いているわけではないだろう。100Mbpsを超える通信速度を実現している4Gであれば、スマートフォンで動画や音楽など、比較的大容量のコンテンツを扱うサービスであっても満足できるレベルで楽しめる。にもかかわらず、いま5Gが必要とされている理由は、モバイル通信の利用の変化によって起きる"多様化"に対応する必要があるからだ。

従来の通信方式はあくまで、個人が所有する携帯電話の進化に合わせる形で改良が進められていった。だが最近では、モバイル通信の利用そのものが、携帯電話以外へと広がる傾向にある。その一例として挙げられるのが「IoT」だ。

あらゆるモノがインターネットに接続するというIoTの時代を迎えた時、そのインターネットに接続するネットワークとして、ケーブルなどの引き回しが不要で利便性が高い、モバイル通信回線が多く用いられると考えられている。だが現在の4Gのネットワークでは、IoTで想定されるような非常に多くのデバイスを、同時に1つの基地局で接続することはできない。IoTに対応するためには、従来より多くのデバイスを同時接続できる、新しい通信方式が必要になってくるわけだ。

IoT時代を迎える今後、1つの基地局に対し、従来よりもはるかに多くのデバイスを同時接続できる性能が必要になってきている

業界全体で5Gへの機運が高まりつつある

そしてもう1つ、5Gで求められている要素に「低遅延」がある。通信の遅延が少ないということは、手元の操作がダイレクトに通信先へと反映されることにつながる。それゆえ遠隔地から手術をしたり、車やドローンをコントロールしたりするなど、今後重要となってくるネットワーク経由での遠隔作業を実現する上で、低遅延が強く求められているのだ。

そしてもちろん、従来の正当進化ともいえる高速・大容量通信も、5Gでは欠かせない要素の1つだ。デバイスの進化に伴い、4Kの映像配信やVR(仮想現実)など、従来より多くのデータ通信容量を必要とする新しいコンテンツが、今後大きく増えることが予想される。そうしたコンテンツを快適に利用する上でも、さらなる高速・大容量通信の実現が必要とされているのだ。

5Gではデバイスや利用の多様化に合わせ、4Gより一層の高速・大容量通信や多接続、低遅延を同時に実現する通信方式となる

このように、モバイル通信を利用するデバイスやシーンが今後一層広がると予想されることから、それらに対応するべく従来より一層の高速・大容量通信、低遅延、多接続などを実現するためにも、新しい通信方式である5Gが必要とされているのである。

5Gの標準仕様はモバイル通信の標準化団体である「3GPP」によって2015年より進められている。当初は2018年に一部の仕様が、2019年に残りの仕様が完成し、それを受ける形で商用化が進められるとされていた。実際日本では、NTTドコモが2020年の東京五輪に合わせて、5Gの一部仕様を用いる形で商用サービスの提供を開始することを打ち出している。

だがここ最近、通信業界では世界的に5Gに対する関心や機運が急速に高まってきている。実際今年2月には、NTTドコモやKDDIなど国内外のキャリアや通信機器ベンダー22社が共同提案を実施。5Gの標準仕様をより早期に策定するよう提案がなされていることから、5Gの仕様策定や商用サービスの導入が、従来より早く進むと見られている。

大きな課題はキラーデバイス・コンテンツの不在

5Gの導入に熱心なのは日本だけではない。より熱心なのは中国や韓国で、韓国では2018年に実施される平昌冬季五輪を目指して5Gの試験サービスを開始する意向を示しているほか、中国でも最大キャリアのチャイナモバイルが、やはり2018年に5Gの試験導入を打ち出している。

当初は5Gに積極的な事業者が限定されていたため、スケジュールの遅れが心配されていた5Gだが、業界全体での関心の高まりによって、技術やスケジュール面での課題は解消に向かっているといえそうだ。だが一方で、より大きな課題となっているのがユーザー側、つまり5Gの利用を促進する、明確なコンテンツやサービスが存在していないことである。

確かに5Gは、IoTやVR、遠隔医療などさまざまなニーズに応えるべく設計されているが、それらが本格的に普及するのは、5Gの導入よりもやや先のことになると見られている。一方、現在スマートフォンを利用している人達は4Gの環境で十分満足していることから、あえて5Gのサービスやコンテンツを積極的に利用する動機が乏しい。

4Gの時はスマートフォンという明確なキラーデバイスが存在したため、関心も高く普及も急速に進んだ。だが現在の動向を見る限り、5Gの導入を迎える2020年前後に明確なキラーデバイスやコンテンツが存在しているわけではなく、ユーザーの関心が高まりにくいことが、5Gの普及を妨げることになると考えられる。

そうした懸念は過去の通信方式、具体的には「3G」導入時の動向からも見えてくる。3Gは音声通話からデータ通信へと、今後携帯電話の利用が大きく変化することを受けて開発された通信方式であったが、NTTドコモが世界に先駆けて商用サービスを開始した2001年頃は、携帯電話でデータ通信を積極的利用する人自体まだ少なかった。そのため3Gへの移行はスムーズに進まず、追随するキャリアも2年近く現れないなど、NTTドコモは先行者利益を全く得られず苦渋を味わったという経験がある。

技術やスケジュール面での課題がクリアされた5Gにとって、いま必要とされているのは、ユーザーが明確なメリットを感じることができる、デバイスやコンテンツをいかに早急に生み出すかであるといえそうだ。

3Gの反省を生かしてか、NTTドコモは東武鉄道と連携し、東京スカイツリータウンで5Gを活用したサービスを検証するなど、5Gのコンテンツ・サービス開発を積極的に進めている
新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。