10Gbpsを超える5Gの高速・大容量通信がなぜ必要なのか

10Gbpsを超える5Gの高速・大容量通信がなぜ必要なのか

2017.03.10

次世代のモバイル通信方式「5G」では、LTEの1000倍となる10Gbpsもの高速通信を実現するとされている。それだけの通信速度を実現するにはどのような技術が用いられるのか。また普及に向けた課題はどこにあるのだろうか。

主目的は増大するトラフィックへの対処

現在、携帯電話業界で標準化が進められ、国内では携帯大手各社が2020年の商用サービス導入を目指している、次世代のモバイル通信方式「5G」。現在主流の4G(LTE-Advanced)と比べ大幅な性能の向上が見込まれているが、中でもやはり注目されるのは、通信速度の高速・大容量化である。

5Gは現在、標準化作業の真っ最中だが、その目標性能はLTE-Advancedの1つ前の方式である「LTE」の、およそ100倍となる10Gbps以上とされている。日本の大手3社の通信速度を確認すると、現在は理論値で600Mbpsを超える程度が最速値となっていることから、それよりはるかに高速な通信速度を実現しようとしていることは理解できるだろう。

また通信速度の実測値に影響する通信容量も、LTEの1000倍以上に設定されていることから、同時に多くの人が高速通信をしても速度低下の影響を受けにくくなる。大容量化が進めばビット当たりの通信コストも下がりやすくなるし、都市部のような混雑した場所での高速化にもつながりやすいことから、5Gの恩恵は大きいといえよう。

NTTドコモが打ち出す5Gの目標性能。通信速度はLTEの100倍、通信容量は1000倍を目指すとしている

だが冷静に考えると、現在のスマートフォンで動画などの大容量コンテンツを視聴する分には、4Gの通信速度でも十分だと感じることが少なくない。通信コストを下げてほしいというニーズはあるだろうが、これ以上通信速度を上げることに、あまり意味を感じない人も少なくないのではないだろうか。

にもかかわらず、なぜより高速・大容量の5Gが必要とされているのかというと、スマートフォンの利用が今後も増え続け、通信トラフィックが増え続けると考えられるからだ。確かに今よりスマートフォンを積極利用する人が増えなければ、現状の4Gでも問題はないかもしれない。だが今後はより多くの人が、スマートフォンでリッチなコンテンツを利用するようになるだろうし、コンテンツを提供する側も通信速度の高速化に合わせて、4K映像やVRなど、大容量を活用したコンテンツ提供を進めてくるだろう。

そうした場合、現状の4Gではいずれ通信容量が上限に近づく、あるいは上限を超えてしまうという事態が起き、通信速度が劇的に遅くなったり、ネットワークに障害が発生してしまったりと、さまざまなトラブルが起きる可能性が高まってくる。実際2020年には、モバイルの通信トラフィックが2010年の1000倍に達するとの予測もあり、そうした時代に備えるためにも新しい通信方式が必要とされているわけだ。

高い周波数帯の活用で高速通信を実現

だが、LTEの100倍もの通信速度と1000倍もの容量を実現するのは決して容易ではない。3G、4Gの時はキラーとなる新技術の導入によって通信速度の向上が図られてきたが、5Gでは高速・大容量を実現する決定的な技術がなく、さまざまな技術や要素の組み合わせによって通信速度の高速化・大容量化を図ろうとしているのだ。

中でも大きな影響を与えると考えられるのが、新しい周波数帯の利用だ。現在の3Gや4Gに用いられている周波数帯は3GHzより下の帯域が多く用いられており、中でも1GHzより下の、遠くに飛びやすいとされる「プラチナバンド」と呼ばれる帯域が重宝される傾向にある。だが周波数が低い帯域は、既に携帯電話だけでなく、他の無線通信などにも用いられていることから、一層の高速・大容量通信を実現するには限界がある。

そこで5Gでは、新たにより上の帯域、具体的には6GHz以上、さらには20GHzを超える帯域の活用なども検討されている。周波数が高い帯域は他の通信などにあまり用いられておらず、高速・大容量通信を実現する上で必要な、広い帯域幅を確保できる。それゆえ高い周波数帯の活用が、5Gでは重要な鍵を握っているわけだ。

5Gでは一層の高速化を実現するため、6GHzや28GHzなど、従来使われていない、広い帯域幅を確保できる周波数帯の活用が検討されている

しかしながら電波は周波数が高いほど、建物の裏などに回り込みにくく、直進性が強いことから扱いづらいというのが定説だ。そこで5Gでは、高い周波数の電波を、プラチナバンドのように面的に射出して広いエリアをカバーするのではなく、特定の端末を狙って射出する「ビームフォーミング」という技術を用いることで、端末に電波を届ける仕組みを採用している。

NTTドコモと主要基地局ベンダーによる5Gの実証実験デモより。5~70GHzを超える高い周波数帯の電波を、ビームフォーミングによって端末に直接射出することで高速通信を実現

だがビームフォーミングでは、端末の動きを常に把握して追随する必要があるのに加え、隣り合う基地局と電波が直接重なり合うわけではないことから、移動中に接続する基地局を切り替える「ハンドオーバー」などの制御が、従来より難しくなるという課題を抱えている。そうした問題を、基地局間を協調するなどさまざまな技術を用いることで解消しようとしているのだ。

短期的視野で見ると課題が多い

高い周波数帯を有効活用する上で、もう1つ重要な技術となるのが「Massive MIMO」だ。これは100~200といった非常に多くのアンテナ素子を用いることで、1つの基地局から多くの端末に対して同時に電波を射出できる技術だ。

Massive MIMOを用いて1つの基地局から同時に多くの電波を射出することで、基地局当たりの容量を増やすことが可能になる。しかもビームフォーミングでは複数の端末で電波を共有するのではなく、個々の端末に直接電波を届けることから、その分高速・大容量を維持しやすい。

実際、ソフトバンクは昨年、20GBもの大容量を月額6,000円から利用できる「ギガモンスター」を導入した際、傘下のWireless City Planningが運営するTD-LTE互換のAXGPネットワーク(ソフトバンクでは「Softbank 4G」として使用)に、Massive MIMOを導入。これによって通信容量を10倍に拡大し、大容量通信が増えても快適な通信ができる体制を整えている。

ソフトバンクはMassive MIMOの導入によって、AXGPネットワークのネットワーク容量を10倍に拡大できたとしている

他にもさまざまな技術を導入することで、5Gの高速・大容量化が実現すると見られている。確かに中長期的に見れば、トラフィック解消や大容量コンテンツの利活用など、5Gの導入による高速・大容量化の恩恵は大きいと考えられるが、短期的視野で見ると課題は非常に多い。

先にも触れた通り、現在は多くのユーザーにとって、4Gの通信速度で十分満足できる環境となっている。それゆえ積極的に5Gを利用する理由に乏しく、5Gへの端末買い替えなど移行が進まず、5Gの導入がトラフィック解消につながっていかない可能性がある。

しかも現在では、総務省が端末の実質0円販売を事実上禁止し、大手キャリアの過度な販売奨励金を抑制したことから、高性能な端末の買い替えが鈍くなってきている。端末を大幅に値引くキャリアの販売手法に対し、長い間批判の声が多かったのは事実だが、一方でそれがユーザーの旺盛な買い替え需要を生んで新しい通信方式が急速に普及し、都市部・地方を問わず高速通信ができる、世界有数のモバイル通信ネットワークの構築にもつながったというメリットを生み出した側面もあるのだ。

だが今は、総務省施策によってインフラ面での好循環が働きにくくなってきており、ユーザーメリットの少なさと合わせて、5Gに対応した端末の普及がこれまでよりも進みにくくなると予想される。5Gによる高速・大容量通信を早期に普及させるためには、インフラや技術以外の部分での工夫が求められるところかもしれない。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

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2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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