新商品からみえてきたモスとマックの異なる路線

新商品からみえてきたモスとマックの異なる路線

2016.04.27

2016年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生した。その約28時間後、16日1時25分にもマグニチュード7.3を記録する最大震度7の地震を観測。熊本地方を中心に甚大な被害が発生し、現在も余震が収まらず、数多くの方々が避難生活を強いられている。

モスフードサービス 代表取締役会長兼社長 櫻田厚氏

4月25日、モスバーガーチェーンを展開するモスフードサービスは、都内で新商品発表会を行った。発表会の冒頭、挨拶に立った櫻田厚 代表取締役会長兼社長は、与えられた10分間のプレゼンテーション時間のほぼすべてを熊本地震についての説明に充てた。それによると、熊本県内21店舗のうち、完全休業は4店舗(25日現在)、残りの17店舗も営業時間を短縮したりメニューを絞ったりと、通常の営業はできていないという。

だが、「温かい商品を被災者の方に届けたい」という想いで迅速に対応。スピード感をもって支援にあたり、自身もこの発表会の翌日には熊本入りをすると語った。

モスの象徴的食材の危機

これほど今回の熊本地震に対し憂慮しているのは理由がある。熊本県はトマトの生産量が全国1位。季節により増減はあるが、モスバーガーで提供するトマトの4~5割を熊本県から調達している。トマトといえば同社のハンバーガーで使われている食材のなかで強いインパクトを顧客に与えている存在。そのことを考えると、今回の地震は深憂せざるをえない案件といえるだろう。

事実、櫻田会長兼社長は「もし、契約しているトマト農家に甚大な被害が生じたのなら、営業停止も視野に入れなくてはならない事態」と気が気でない様子をみせた。

新商品に戻ろう。同社は「既存商品の磨き上げ」「キャンペーン商品」「ターゲット対応」「医食同源」の4つをポイントに商品開発を進めたという(商品本部長 太田恒有氏)。なかでも既存商品の磨き上げとしてバーガーに次ぐ同社の柱、ホットドッグのソーセージを約25%増量することが、第一の注目点といえるだろう。

アボカドや減塩ドレッシングで健康を強調

モスフードサービス 商品本部長 太田恒有氏

次に気になるのは医食同源という言葉だ。これは日頃から栄養バランスの取れた食事を摂ることで病気を予防するという考えで、この思想をテーマに商品開発を進めたという。その結果、開発されたのが「アボカドチリバーガー」と「アボカドチリドッグ」の2商品。ともにアボカドという食材を強く打ち出した商品となっている。

ご存じのとおり、アボカドは“森のバター”と称されるほど栄養価が高く、ビタミンEを多く含んでいることから女性に人気の食材だ。これを国産レタスやトマト、大豆由来の植物性たんぱくを使った「ソイパティ」と組み合わせることで“健康的”というイメージを定着させるねらいがある。

左:アボカドチリバーガー、右:アボカドチリドッグ。ともに5月24日販売開始

そのほかにもサラダで使用する「和風ドレッシング」を減塩タイプにするとした。これにより従来品に比べ約25%塩分が抑えられるという。同社はカロリーハーフタイプのマヨネーズに順次変更していくと3月に発表したばかり。食材そのものだけでなく、調味料の分野でも“健康”を意識したメニューに変更していく予定だ。

さらに「ミートソース」や「テリヤキソース」などでも減塩の研究を進めており、「味に大きなちがいがなく減塩できるソースが開発できたら順次変更していく」(太田氏)と、医食同源のコンセプトに基づく開発・研究を進めていることを示した。

さて、小誌でもすでにレポートしたが、奇しくも4月21日に日本マクドナルドが新商品の発表を行ったばかり。両社の商品を見比べると、路線のちがいがみえてくる。 まずモスは、明らかに女性をターゲットにしたメニューづくりに軸を置いている。前述したアボカドを使った2商品のほかにも「アイスマンゴーティー」「玄米フレイクシェイク マンゴー」「やさしい豆乳スイーツ マンゴーロールケーキ」といった、やはり女性に人気の食材“マンゴー”を使用した飲料・スイーツを投入する。

左:アイスマンゴーティー、中:玄米フレイクシェイク マンゴー、右:やさしい豆乳スイーツ マンゴーロールケーキ

「弊社の顧客の65%が女性。そのため女性を強く意識したメニューを毎回考えている。だが、つくり上げたメニューは、結果的に男性にも受け容れてもらえる」(櫻田会長兼社長)という。

一方、日本マクドナルドの新商品「クラブハウスバーガー」は、「王道の商品と位置づけているので、広い層に向けたい。ハンバーガー好きな方すべてがターゲット」(日本マクドナルド マーケティング本部メニューマネジメント部上席部長 若菜重昭氏)と、広範囲の顧客をねらう戦略であることを強調する。4月に投入した期間限定の「グランドビッグマック」が久々の大ヒットとなり、この流れをクラブハウスバーガーでつなぎたい考えだ。

インバウンド客への対応は?

余談となるが両社のインバウンド対応についても触れたい。結果からいうと、両社とも対応は緒に就いたばかりという印象だ。日本マクドナルドは「(外国人客の増加について) 営業の数字に影響が出ているか、まだ統計は取れていない。外国人客へのサービスに関する対応については、外国人の多い店でメニューを英、中、韓で表記するなど、徐々にやっている」(コミュニケーション本部 PR部マネージャー 長谷川崇氏)と、店ごとの判断に拠った感じを受けた。

一方のモスは「外国人観光客のデータは取れていないので正確ではないが、以前は1%ぐらいだったのが4~5%ぐらいに伸びた感はある。いずれ顧客が外国人なのかPOSシステムに入力できるようにして分析したいが、中国人や韓国人の場合、見た目での判断は困難」(櫻田会長兼社長)と、外国人客への対応の難しさを語る。ただ、訪日外国人向けに4カ国語表記のメニューを用意したり、日本の通信事業者と契約していない端末でも接続できるWiFiを導入したりといった対応を進めており、マクドナルドよりも積極性がうかがえる。

マクドナルドは国際的なブランドなので、外国人が安心して入店できるというメリットがある。モスバーガーは東南アジアを中心に300店以上を展開しているが、やはり“日本のバーガー”として注目されやすく、マクドナルドとは別の意味で外国人の興味を喚起しやすい。いずれにせよ、青天井に増え続けるインバウンド客の取り込み策は急務といえる。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。