【プラザクリエイト】プリントからモバイルへ 写真市場の変化にM&Aで対応

【プラザクリエイト】プリントからモバイルへ 写真市場の変化にM&Aで対応

2017.03.10

【プラザクリエイト】プリントからモバイルへ 写真市場の変化にM&Aで対応

 プラザクリエイト<7502>というとご存知ない方も多いかもしれないが、フォトサービスショップの「パレットプラザ」や「55ステーション」と聞くとお分かりになるかもしれない。同社は2016年9月現在、全国に500店舗近くを出店する企業である。フォトサービスショップを運営する一方で、移動体通信業者のキャリアショップ等も80店舗近く運営しており、リテールビジネスを展開している。しかしながら、同社のM&Aは小売店舗を対象としたものは少なく、むしろメーカーの買収が多い。このM&A戦略から見えてくる同社のビジョンについて考えたい。

【企業概要】米国の写真サービス店を日本に輸入

 プラザクリエイトは、大島康広氏が大学在学中の1984年に、写真撮影事業を始めたことに端を発している。カメラマンを志していた大島氏であったが、当時のアメリカで流行していたフォトサービスショップと同じような業態を日本に輸入して、「パレットプラザ」を出店することになる。これが大ヒットをして、FC店による展開も利用して事業を急速に拡大し、一時期は1,000店舗以上を展開した。現在はFC店を含めて500店舗以上を展開していて、同社の主力事業(プリント事業)となっている。また同社は、このプリント事業と並び、移動体通信業者のキャリアショップ等の運営をするモバイル事業を展開しており、プリント事業を上回る売上規模となっている。

【経営陣】大島氏を筆頭に少人数で意思決定

 創業者である大島康広氏が1988年の同社を設立して以来、代表取締役社長を務める。53歳。上場企業としては珍しく、取締役は大島氏を含めて計3名しかおらず、少人数の経営陣で迅速な意思決定ができる体制となっている。


【株主構成】大島氏が実質40%程度を保有

プラザクリエイトの大株主
氏名又は名称 所有株式数(千株) 持ち株比率(%)
中部写真 5,506 39.79
シンプレス・インベストメント・ビー・ブイ 2,400 17.34
富士フイルム 2,259 16.32
みずほ銀行 571 4.12
資産管理サービス信託銀行 332 2.40
大島 康広 216 1.56
プラザクリエイト従業員持株会 150 1.09
キヤノンマーケティングジャパン 150 1.08
浅沼商会 81 0.58
松田産業 80 0.58
11,747 84.90
2016年3月時点、有価証券報告書を元に作成

 中部写真は、大島康広氏がプラザクリエイトの前進として設立した会社である。実質的には個人保有分と併せて40%程度を、大島康広氏が保有していることになる。その他には、会社黎明期から提携をしていた富士フイルムが外部の法人としては筆頭株主となっている。

 なお、シンプレス・インベストメント・ビー・ブイとは2016年12月に資本業務提携を解消し全株式を自己株式として取得したため、同社は株主ではなくなっている。

【M&A戦略】デジタル化、モバイル化に対応

プラザクリエイトの沿革と主なM&A
年   月  内容
1984年9月 大島康広氏が学生時代に写真撮影業をスタート
1986年4月 「パレットプラザ」1号店出店
1987年7月 「パレットプラザ」のFC展開を開始
1988年3月 プラザクリエイトを設立
1990年5月 「パレットプラザ」100号店達成
1995年6月 「パレットプラザ」500号店達成
1996年12月 中部写真を通じて米国の感熱紙メーカーであるサイカラーの全株式を24億円で取得
1996年7月 ジャスダックに上場
1996年9月 米国のカメラメーカーであるビビター(売上高159億円)と、グループ企業で仏、香港、日本で販売をおこなう3社の全株式を40億円で取得し、完全子会社化
1996年12月 米国ピクチャービジョン・インクと合弁で、フィルム映像のデジタル化サービスを提供するフォトネットジャパン(現・ジグノシステムジャパン)を設立
1997年11月 会社更生手続き中で、フィルム、印画紙等の製造、写真映像関連商社、低価格DPEを展開するオリエンタル写真グループ3社の事業を、新設会社3社(合計出資額7億5,000万円)を通じて譲り受け
1999年1月 「パレットプラザ」1,000号店達成
2000年11月 ビビターと、海外の全額出資子会社5社の全株式を英領バージン諸島の投資会社に35億円で売却
2002年3月 ジグノシステムジャパンがジャスダックに上場
2003年3月 オリエンタル写真グループのうち、写真用品の卸売りをおこなうオリエンタル写真商事の全株式を1,000万円で売却
2003年8月 サイバーグラフィックス(旧オリエンタル写真工業)をMBOで売却
2005年8月 デジタルプリントサービスを提供するデジプリ(売上高4億円、営業利益▲8,000万円、純資産9,200万円)の株式69.1%を1億4,000万円で取得し、子会社化
2005年9月 パソコン関連製品のECサイトを運営するITエージェント(売上高15億円、営業利益9,400万円、純資産1億円)の全株式を5,000万円で取得し、完全子会社化
2006年4月 会社更生手続き中で、DPEショップを運営する55ステーションの第三者割当増資5,000万円を引き受け、完全子会社化
2007年4月 携帯電話販売事業をおこなうエス・エヌ・シーから、新設会社を通じて同事業(純資産7,200万円)を2億7,200万円で譲り受け
2008年4月 エフエム東京の公開買い付けに応じて、ジグノシステムジャパンの全株式20.94%を16億円で売却
2013年11月 Vistaprintグループに対して自己株式17.35%を割り当て、資本業務提携を実施
2014年2月 Vistaprint Distribution B.V. (VDBV) との合弁会社であるビスタプリントジャパンに、デジプリ事業(売上高3億6,200万円、営業利益3,800万円、純資産8,800万円)を譲渡
2015年7月 携帯電話販売事業をおこなうスリーエヌ(売上高9億9,100万円、営業利益700万円、純資産2,100万円)の全株式を取得し、完全子会社化
2016年12月 シンプレスジャパン(旧ビスタプリントジャパン、純資産22億円)の株式49%を、Cimpress Investments B.V.(旧Vistaprint Distribution B.V.)に対して、10億円で売却
2016年12月 Vistaprintグループから自己株式17.62%を8億8,900万円で取得し、資本業務提携を解消

 このように過去のM&Aを見てみると、プラザクリエイトのM&A戦略には、総合写真企業を目指して製造部門の内製化を進めるとともに、写真のデジタル化への対応を模索した2000年代前半までの時期と、小売店展開に軸足を移し始めた2000年代後半以降の時期があることが分かる。

 同社のM&Aは、1996年の上場前後に、感熱紙メーカーのサイカラーと、低価格のコンパクトカメラメーカーのビビターを買収したことからスタートしている。当時ビビターは、米国ウォルマート等の小売店を中心にコンパクトカメラを販売している一方で、日本では展開をしていなかった。既に日本で小売店網を構築していたプラザクリエイトは、ビビター商品の日本展開と、自社店舗の付加価値向上を、このM&Aで目指したことになる。またこれらの2社のM&Aは、写真のデジタル化への対応のために、デジタル技術に強みを持つ会社を傘下に収めるという側面も持っていた。しかしながら、結局、ビビター買収は失敗に終わり、2000年11月に売却することとなる。

 また、同年1996年には、米国ピクチャービジョン・インクと合弁で、フィルム映像のデジタル化サービスを提供するフォトネットジャパン(現・ジグノシステムジャパン)を設立している。同社は2002年に上場を果たすこととなり、現在はプラザクリエイトグループとは資本関係はないが、写真のデジタル化に対応した好例といえよう。

 このように、写真のデジタル化への対応をM&Aを通じて模索してきたプラザクリエイトであったが、2006年の55ステーションの買収を皮切りに、小売店展開にシフトをしていくこととなる。55ステーションはデジタル化への対応に遅れたことで業績が悪化していた企業で、パレットプラザを運営するプラザクリエイトがノウハウを提供することで立て直しを図ることとなった。

 55ステーションのようなフォトサービスショップの買収を進める一方で、2007年以降は携帯電話販売事業のM&Aを通じて、同事業に注力していくことになる。2000年代以降、J-PHONE(現ソフトバンク)の発売を契機にカメラ付き携帯電話が爆発的に普及したことに伴って、その時流に乗る形での参入である。

 2007年のエス・エヌ・シーから事業を買収し同事業に参入した後は、自社展開とM&Aを組み合わせて事業展開を図り、現在ではプリント事業の売上高を上回っている。

 プラザクリエイトのM&A戦略を2つの時期に分けて見たが、いずれも共通しているのは「写真」をコアとして、写真業界を取り巻く環境の変化に対応するためにM&Aを活用してきたということである。前半期は写真のデジタル化、後半期は写真のモバイル化への対応ということである。

【財務分析】自己資本比率が急低下

 ここで、プラザクリエイトの財務の変遷を辿ると、下記のようになっている。

 のれん比率を見る限り、M&Aを定期的におこなっているものの、財務への影響は軽微であることが分かる。

 一方で、自己資本比率は20%程度にとどまっており、直近2年間だけで10%以上自己資本比率が低下している。これは、プリント事業における既存店のリストラクチャリングとリニューアル、モバイル事業における新店舗の出店が影響している。写真プリント店のリニューアルに伴う休業損失や出店費用が響き、2016年3月期の営業損益は1億3900万円の赤字となった。ただ、一時的な費用計上により自己資本は低下しているが、売上高は大幅に増加しており、今後の巻き返しが期待される。


 次に、セグメント別の売上推移を見てみる。

 モバイル事業のセグメント情報を公開し始めたのが2011年3月期からであるため、2010年3月期以前は、同事業の売上高はプリント事業との合算表記となっている。

 セグメント別売上高の推移を見ると、会社全体での売上高はここ数年間横ばいである一方で、プリント事業が縮小傾向にあることが分かる。これはFC店を中心に、店舗が減少していることに起因している。同事業には商品売上高も含まれるため一概には言えないが、店舗当たりの売上高も減少傾向にあることが推察される。

 他方で、モバイル事業は2011年3月期に22店舗だったところが、2016年3月期には80店舗にまで拡大している。期中にも出店をしているので単純比較は難しいが、1店舗当たりの売上高も2011年3月期で1億4500万円程度、2016年3月期で1億3700万円程度と、昨今の厳しい事業環境からすると、堅調に推移していることが分かる。

 今後は、プリント事業を現在の規模を維持したままモバイル事業を拡大するとともに、両事業の融合、あるいは新たな事業の獲得・創出を目指していくことになるだろう。

【株価】ソフトバンクと提携を好感し急騰

 株価は2014年以降、アップダウンを繰り返しながらも、低調な動きを示している。やはり写真プリント市場の縮小が重荷となっているようだ。

 こうした中、2017年2月1日にソフトバンクを割当先とする自己株式の処分で、約4億円を調達すると発表した。今後、ソフトバンクとも連携して写真プリントとの複合型モバイルショップを拡大していく方針で、提携への期待感から株価も一時的に急騰している。自己株処分によってソフトバンクは発行済株式の10%を持つ第3位株主に浮上する。

【まとめ】モバイルも競争激化、次のM&Aに注目

 本業であるプリント事業のリストラを進める一方でモバイル事業は拡大傾向にあるプラザクリエイトであるが、モバイル事業も格安端末の登場等により競争環境が激化している。本業への投資で財務的な余力は徐々に失われているが、それ以上に今後の雲行きは決して良くない。これまでも時代の変化に合わせてM&Aを活用してきた同社にとって、M&Aは重要な経営戦略の1つとして考えられ、その動向に注目したい。


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。