人型ロボットはビジネスに役立つか - Pepper導入事例から考える

人型ロボットはビジネスに役立つか - Pepper導入事例から考える

2017.03.13

ソフトバンクロボティクスとソフトバンクは共同で、人型ロボット「Pepper」のビジネス向け展開を強化している。人型ロボットがビジネスに与える影響は、果たして投資を正当化するほどのポジティブなものなのだろうか。2月に開催された「Pepper World 2017」の基調講演で紹介された導入事例から考察してみよう。

Pepperの導入目的は大別して3タイプ

Pepper World 2017の基調講演において、ソフトバンクの榛葉淳専務は、これまで約2000社に導入されてきたPepperの導入目的を、サービス、セールス、PR、の3つに大別する。

Pepperの導入目的の大きな三本柱と説明を行う榛葉淳専務

サービスとは、店頭での案内や受付といった業務をPepperに担当させている事例のことだ。従来人を割り当てていた業務をPepperに割り当てることで、業務効率化とコスト削減を目指すパターンとなる。

セールスは、そのままズバリ、Pepperに接客・販売を任せている例だ。これはコスト削減だけでなく、売上アップにもつながっているという。3つの導入目的のなかでは最もアクティブな用途だといえる。

PRについては、Pepperを店頭での広告・PRに使っている例だ。Pepperという最先端のロボットをPRに使うことでブランドの認知度を向上させる効果を期待するわけで、ある意味最もパッシブ(受け身)な使い方といってもいいだろう。

いずれも、ある程度自律的に行動でき、音声認識による会話やタッチディスプレイを備えたPepperに向いた用途ではあるが、単体購入で約140万円、3年レンタルの「Pepper for Biz」で月額5.5万円というコストを正当化するだけのメリットは出ているのだろうか。もう少し具体的な内容を見てみよう。

案内業務はPepperの得意分野

まずはサービスについてだ。Pepperを店頭の案内などに利用している例は非常に多く、最近は様々なところで見られる。一見、高度なパフォーマンスを持つPepperの活用としては少々もったいなくも感じられてしまうこともあるが、実態としてはどうなのだろうか。

全国に約450店舗を展開する回転寿司チェーンの「はま寿司」では、一部の店舗において、店頭の受付にPepperを利用した実証実験を展開している。繁忙期などは片付けと接客をスタッフに任せるのが大変であり、それゆえにPepperを活用しようという発想だが、もともと回転寿司というのは、外食産業の中では装置産業に近いとも言えるものであり、人がやっているサービスをロボットに任せること自体にはさほど抵抗がなかったようだ。

はま寿司の導入目的

はま寿司の田邊公己営業本部長は、導入時の心配事として、「人類は本格的にロボットに案内されたことがない」ことを挙げた。Pepperの案内に対して最初は顧客も心配そうだったが、そこは店員がフォローしたり、前の客がやっていることを見て真似てみることで、すぐに受け入れられてきたという。結果として評判は非常に高く、小さい子供や中高生だけでなく、大人でも退店時に「Pepperくん、ごちそうさま」と声をかけていく人がいるという。

残念ながら、はま寿司ではPepperのコミュニケーション機能をオフにしているため、こうした声かけには対応できていないのだが、今後は待合中の顧客とのコミュニケーション、アイドルタイムを利用した店頭プロモーション活動、カメラ機能などを活用し、同社が持つ顧客データと連動させた顧客管理・マーケティング活動にも利用したいとしている。また、車椅子の利用や、2BOXにわかれて座りたい団体客が来た場合など、状況が複雑な場合への対応が課題であるとした。

ロボットのセールスには押し売り感がない

セールスについては、ソフトバンク仙台六丁の目店・ショップディレクターの濱田茜子氏から導入状況が説明された。同店ではPepperをユーザーへの会員登録の呼びかけや、新商品、新サービスの説明に利用している。濱田氏によれば、プリペイドカードの「ソフトバンクカード」の成約数は、Pepper導入前と比べて1日あたり2.1倍、中には5倍以上の成約数を記録した日もあるという。

ソフトバンク接客No.1グランプリの2016年東北代表でもあり、まさに「接客のプロ」である濱田茜子氏からもPepperの効果にはお墨付きが与えられた

濱田氏はPepperによる成約数の向上について、「人間だとどうしても『押し売り感』が出てしまって心理的ハードルが上がるが、Pepperなら警戒されることなく、ユーザーが受け入れてくれる」と分析。今後はPepperがより多くの商品を提案できるように用途を広げていきたいとした。

また、全国に1万2000店舗以上を展開する家電量販店の最大手であるヤマダ電機でも、2016年からPepperを販促ツールとして活用する実証実験を進めている。この中で、Pepperに商品説明やクーポン発券を行わせたところ、1日あたりの売り上げが導入前の3倍以上になるなど、顧客のエンゲージメント率(接客的な反応を示す割合)は着実に高まっており、Pepperの販促・マーケティングツールとしての効果を実感しているという。

一方で、比較的高額な商品になると人間の接客の方が効果を発揮しているという。ロボットが接客に当たっている場合、押し付けがましさがないぶん、低額なものはすんなりと受け入れてしまうのかもしれないが、ある程度高額なものについては、まだまだ対人の説明の安心感、信頼感のようなものが強く作用するのだろう。

PRについては、ユニクロ(外国人観光客向けに多国語での案内)やJR東日本(SNSと連動して観光施設の来場者の写真をツイートする)での運用例が紹介されていた。いずれもPepperと、その背後にあるWatsonなどのシステムをうまく連携させた高度で効果的なPRシステムだと言えるだろう。

これまでの導入事例よりもちょっと高度な活用事例も紹介された

個人的にちょっと怖さも覚えたのは、ボーリング/アミューズメントスペース運営のRound 1の導入事例だ。同社は店頭にPeppprを設置して、同社のスマートフォン用アプリの宣伝を表示しながら「電話番号を教えて!」とコールさせ続けたところ、店頭で50件以上の電話番号を取得できたという。ロボットを使うことで心理的なハードルが下がるのはいいが、普通なら教えないような電話番号のようなパーソナルな情報まで教えてしまうようでは下がりすぎだ。Pepperは思ったよりも強力に顧客の懐までググっと迫ることができるのかもしれない。

人型ロボットへの心理的抵抗は低い

Pepperに限らず、人型ロボットを受付やサイネージ代わりに利用する事例は増えているが、こうした運用をしているところにその反応を尋ねると、概ねポジティブな感想が返ってくる。

現時点では物珍しさも強く作用しているとは思われるが、少なくとも日本では、アニメやSF、映画などでロボットという存在に対する認知度は十分広まっており、その働きぶりを「健気」「かわいい」という感覚で受け入れられる人の割合が、「仕事を機械に任せてけしからん」と感じる人よりも随分多いということなのだろう。ロボットは接客系ビジネスにおいても十分有効であると断言してしまっていいだろう。

Pepperの導入事例では、もちろん選りすぐった成功事例ということもあるだろうが、概ねポジティブな反応が返ってきている。一方で、店頭や店の片隅で俯いたまま電源も入れてもらえないPepperの姿もあちこちで散見するようになっており、具体的な計画性もなく、一時の話題性だけで導入したところでは持て余している例も多いように見受けられる。ロボットは強力なツールだが、単体ではやはり限界があり、効果的に利用するには業態に見合った用途と、その用途にあったシステムによるバックアップが必要になるということだろう。

ソフトバンクロボティクスでは、Pepperに独自の動きや対応をさせるための簡易プログラミングツール「Pepper Maker」などを発表しているほか、サービス、セールス、PRの各分野に役立つアプリも多数開発している。こうしたツール・アプリ類を活用し、いかに業態に向いたロボットの使い道を考えつくか。すでにロボットは単なる客寄せパンダではなく、活用期に向かって本格的に取り組みが必要な時期になっていくだろう。

Pepperの動きや会話パターン(シナリオ)を組み立てる「Pepper Maker」。ブラウザ上で動作し、Pepper単体でも設定ができる
メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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