【富士通】「虎の子」を使い切り、背水の陣でM&Aに挑む

【富士通】「虎の子」を使い切り、背水の陣でM&Aに挑む

2017.03.14

【富士通】「虎の子」を使い切り、背水の陣でM&Aに挑む

 今年1月1日に開かれた第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝で鹿島アントラーズに破れ、悲願の初タイトルを逃した川崎フロンターレ。その株主に名を連ねる富士通<6702>は国内最大手のシステムインテグレーターである。富士通は技術革新に合わせてM&Aも活用し、様々な事業に進出してきた。過去には海外企業買収で巨額損失を抱えたが、虎の子の優良子会社売却でなんとか体力を温存。技術力を磨いて再び世界に挑戦しようとしている。

【企業概要】富士電機の電話部門が設立母体に

 富士通は、富士電機製造株式会社(現・富士電機株式会社)から電話部所管業務(交換、伝送)を分離し設立された。元々、富士電機製造株式会社自体は川崎市でもかなり海沿いにあり、海の近くでは、湿気、さびの問題で、通信事業が難しいことや東京電機(後の東芝)との業務提携契約に起因し少し内陸の川崎市中原区に会社を新設した。

 以来、有線電話、無線、自動計算器、汎用機(企業向けの基幹PC)、コンピュータ、携帯電話、と、いわゆるシステムインテグレーターとして、常に時代の技術革新と共に歩み、また国内の最大手として、業界をリードし続けている。

 その生い立ちから、富士電機グループとして存在していたものの、富士電機が業績の悪化などの理由から徐々に株式売却を行い、1965年に保有率が50%を切り、グループ会社から事実上の独立を果たした。

 一方で、現在に至るまで筆頭株主は常に富士電機の為、関係性が途切れた、というわけではない。

 現在、富士通は国内関係会社97社、海外関係会社217社でグループ構成している。国内のみ取り上げたが、関係性は以下の通り。

富士通の主な国内関係会社
関 係      コード 関係会社名 株式保有比率(%) 売上高(百万円) 事業内容
連結子会社 - 富士通セミコンダクター 100 219,024 LSIの設計・開発・製造・販売
連結子会社 - 富士通テン 55 213,536 カーナビ,AV機器等の製造・販売
連結子会社 6967 新光電気工業 50.06 133,898 半導体パッケージの製造・販売
連結子会社 - 富士通周辺機 100 104,580 コンピュータ周辺機器の開発・製造
連結子会社 6945 富士通フロンテック 53.61 88,882 ATM,各種端末装置の製造・販売
連結子会社 3828 ニフティ 66.59 60,669 インターネット接続サービスの提供他
連結子会社 6955 FDK 72.58 49,044 電子材料,電子応用製品の製造・販売
連結子会社 6719 富士通コンポーネント 56.96 38,496 電子部品の製造・販売(持株会社)
連結子会社 4793 富士通ビー・エス・シー 56.45 31,264 ソフトウエアの開発・販売他
連結子会社 - 富士通九州ネットワークテクノロジーズ 100 16,078 ネットワークシステム機器等の開発他
連結子会社 - 富士通CIT 100 12,883 SCMシステムの開発・運用・保守
連結子会社 - 富士通総研 100 6,807 経済・経営等に関わる調査・研究他
連結子会社 - 富士通鹿児島インフォネット 65 5,807 ソフトウエアの開発他
連結子会社 - 富士通パブリックソリューションズ 100 4,637 ソフトウエアの開発・販売
連結子会社 - 富士通システムズウェブテクノロジー 100 2,422 Webシステムの開発他
連結子会社 - 富士通マーケティング・エージェント 100 1,452 IT教育の運営,人材派遣サービス他
持分法適用会社 6755 富士通ゼネラル 44.26 223,666 電気・電子機械等の製造・販売

 富士通はこの業界地位を、買収、合弁会社設立、持株の売却など様々なM&Aを積極的活用し、確立してきたと評価することができる。また、自社部門が独立したファナックや富士通テンなどの上場も、大きな資金調達の要因となったことに相違ない。

 富士通は現状、3つのセグメントで成り立っている。それぞれ、テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションという枠組みになっており、現状の売上比率は以下のとおりである。

 メインのテクノロジーソリューションは、企業・官公庁向けのシステムインテグレーションなど、ユビキタスソリューションはPCやスマートフォン向けの製造販売、デバイスソリューションは、LSIや電子部品等を取り扱っている。

 なお連結子会社のニフティについては、2017年4月1日付でニフティが持つインターネット接続サービスなどのコンシューマ向け事業会社とクラウドを中心とするエンタープライズ事業会社向け事業会社に再編し、コンシューマ向け事業会社の全株式を家電量販店のノジマに譲渡することを決定している。

【経営陣】田中社長、2015年に就任

 現在の田中達也社長は1980年に富士通入社。2015年6月に現会長の山本正巳氏からバトンタッチで社長に就任した。60歳。山本氏と田中氏が代表取締役となっている。

【株主構成】富士電機が11%を所有

富士通の主要株主
株主名称 保有株式数(千株) 持ち株比率(%)
富士電機 228,391 11.03
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 93,628 4.52
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 77,763 3.76
富士通従業員持株会 58,221 2.81
みずほ銀行 36,963 1.79
朝日生命保険相互会社 35,180 1.70
The Bank of New York Mellon SA/NV 10 32,993 1.59
ステートストリートバンクアンドトラストカンパニー505225 32,111 1.55
CBNY GOVERNMENT OF NORWAY 29,594 1.43
STATE STREET BANK WEST CLIENT TREATY 505234 26,862 1.30
合計 651,706 31.48
2016年9月末時点、四半期報告書に基づき作成

 富士電機が今も11%を持つ筆頭株主である。ほかは信託銀行など株主が分散している。

【M&A戦略】ITサービス、クラウドを強化

 富士通の行ってきたM&Aは以下の通りである。

年 月       内容
2003年 2月 システム向けプリンター事業を富士ゼロックスに譲渡
2003年 7月 フラッシュメモリ製造事業を米のAdvanced Micro Devices, Inc.に譲渡し、持分法適用会社化 (所有割合:60%→40%)
2003年 9月 富士通リースの株式を東京リース㈱(現:東京センチュリーリース㈱)に譲渡し、持分法適用会社化 (所有割合:60%→20%)
2005年 3月 Fujitsu Consulting*がアメリカのITサービス企業「Cendera Technologies」を買収
2005年 3月 Fujitsu Consulting がカナダのヘルスケアシステム企業「MOXXI Medical」に出資
2005年 4月 富士通日立プラズマディスプレイの株式を日立製作所に譲渡
2005年 4月 液晶デバイス事業をシャープに譲渡
2005年 6月 Fujitsu Consulting がアメリカのITコンサルティング企業「BORN Information Services」を買収
2006年 2月 Fujitsu Consulting がアメリカのITサービス企業「Greenbrier & Russel」を買収
2006年 2月 Fujitsu Consulting がカナダのITコンサルティング企業「GIM Risk Management」を買収
2006年 2月 Fujitsu Consulting がアメリカのITコンサルティング企業「Rapidigm」を買収
2006年 5月 Fujitsu Consulting がカナダのITコンサルティング企業「M3K」を買収
2006年 12月 Fujitsu ServicesがドイツのITサービス企業「TDS」を買収
2007年 4月 ジャパンケーブルネットホールディングスの株式をKDDI㈱に譲渡
2007年 9月 Fujitsu Consulting がアメリカのITサービス企業「OKERE」を買収
2007年 10月 Fujitsu New Zealand Limited がニュージーランドのITサービス企業「Infinity Solutions」を買収
2007年 10月 Fujitsu Services がスウェーデンのITサービス企業「Mandator」を買収
2007年 10月 Fujitsu Consulting がカナダのITコンサルティング企業「Promaintech Novaxa」を買収
2008年 2月 Fujitsu Consulting がカナダのITコンサルティング企業「Intelec Geomatics」を買収
2008年 3月 LSI事業を分社化し、富士通マイクロエレクトロニクス(現:富士通セミコンダクター㈱)を設立
2008年 12月 富士通オートメーションの株式をミヤチテクノスに譲渡
2009年 3月 Fujitsu Australia Limited がオーストラリアのITサービス企業「KAZ」を買収
2009年 3月 HDD用ヘッド事業を終息
2009年 4月 富士通が「Fujitsu Siemens Computers」(現:Fujitsu Technology Solutions)を完全子会社化 (所有割合:50%→100%)
2009年 4月 Fujitsu Consulting、Fujitsu Computer SystemsおよびFujitsu Transaction Solutionsの北米3社を統合し、 Fujitsu America, Inc.を設立 2009年 4月 Fujitsu Australia Limited がオ
2009年 4月 Fujitsu Australia Limited がオーストラリアのITコンサルティング企業「Supply Chain Consulting」を買収
2009年 4月 ユーディナデバイスの株式を住友電工に譲渡
2009年 4月 富士通メディアデバイスのコンデンサ事業をニチコンに譲渡
2009年 7月 山形富士通のHDDメディア事業を昭和電工に譲渡
2009年 8月 富士通ビジネスシステム(現:富士通マーケティング)を完全子会社化
2009年 10月 HDDドライブ事業を東芝に譲渡
2010年 1月 FDKが三洋エナジートワイセルおよび三洋エナジー鳥取の全株式を取得
2010年 3月 富士通メディアデバイスの通信デバイス事業を太陽誘電に譲渡
2010年 4月 PFUを完全子会社化
2010年 10月 東芝の携帯電話事業を取得
2012年 2月 Fujitsu Canada, Inc.がカナダのITサービス企業「Technology Management Corporation」を買収
2012年 4月 地域SE会社を統合・再編し、富士通システムズ・イーストと㈱富士通システムズ・ウエストを設立
2012年 8月 通信プラットフォーム事業を分社化し、アクセスネットワークテクノロジを設立
2012年 10月 富士通セミコンダクターの岩手工場をデンソーに譲渡
2012年 12月 富士通セミコンダクターのLSI後工程製造拠点を㈱ジェイデバイスに譲渡
2013年 4月 富士通がフランスのクラウドサービス企業「RunMyProcess」を買収
2013年 8月 富士通セミコンダクターのマイコン・アナログ事業をSpansion Inc.へ譲渡
2013年 10月 社会インフラ系SE会社を再編・統合し、富士通ミッションクリティカルシステムズを設立
2014年 4月 富士通モバイルフォンプロダクツを富士通周辺機㈱に統合
2014年 5月 Fujitsu ServicesがアメリカのITサービス企業「Globe Ranger」を買収
2014年 7月 パナソニックITソリューションズの株式を譲受し、富士通ITマネジメントパートナーに商号変更
2014年 7月 富士通セミコンダクターとオン・セミコンダクターが戦略的パートナーシップを締結
2014年 8月 横河医療ソリューションズに少数株主として資本参加
2014年 12月 富士通セミコンダクターのファウンドリ新会社(会津若松地区の200mm製造ライン)にオン・セミコンダ クターが少数株主として資本参加
2015年 3月 富士通セミコンダクターのファウンドリ新会社(三重地区の300mm製造ライン)にUMCが少数株主として 資本参加
2015年 3月 富士通セミコンダクターとパナソニックのシステムLSI事業の統合が完了し、ソシオネクストとして事業を 開始
2015年 8月 Fujitsu ServicesがイギリスのITサービス企業「Applied Card Technologies」を買収
2015年 10月 富士通テレコムネットワークス、富士通ワイヤレスシステムズを富士通に吸収合併 新設する富士通テレコムネットワークスにネットワーク製品全般の製造を集約
2015年 10月 富士通がフランスのソフトウェア開発企業「UShare Soft」を買収
2016年 2月 ノートPC、デスクトップPC事業を分社化し、富士通クライアントコンピューティングを設立
2016年 2月 携帯端末事業を分社化し、富士通コネクテッドテクノロジーズを設立
2016年7月 連結子会社のニフティを完全子会社化
2017年4月 ニフティのISP事業をノジマに譲渡(予定)
出所)富士通データブック2016年7月

 国内外を問わず、次々とM&Aを仕掛けている。買収だけでなく、売却も同時に進めているのが大きな特徴だ。

 2009年にコンデンサ事業をニチコンに、HDDドライブ事業を東芝に譲渡するなど、ハードウエアの部品関連事業は縮小傾向にある。2012年には半導体事業の工場、製造拠点の譲渡も行っている。ただ、携帯端末事業、パソコン事業は分社化をしながらも事業を継続しており、ハードのなかでも消費者寄りの事業を重要視している姿勢がうかがえる。

 一貫して強化しているのはソフトウエアや通信、クラウドコンピューティングの分野である。 2000年代半ばから後半にかけて欧米のITコンサルティング、ITサービス会社を矢継ぎ早に買収している。最近では、コンピュータ通信業界にいち早くから乗り出し、事業の屋台骨としていたニフティを2016年7月に100%子会社とし、その再編を行った。

 富士通はニフティのクラウド事業に着目し、自社の範囲外のISP事業は2017年4月にノジマへ売却という形で再編を行う予定である。

 また2015年のリリースではM&Aに1000億円の投資を示唆するなど、非常に積極的な姿勢が見て取れる。この積極的な姿勢を支えるのは既存の財務体質と、ファナックという自社子会社の中のメガヒットの隠し玉があったからこそである。

 ファナックは、富士通の計算制御部から独立した子会社で、山梨県忍野村に約50万坪の本社工場を持つ電気機器メーカーである。工作機械用NC装置において、世界で約50%、国内で70%にも達するシェア率を誇り、産業用多関節ロボットにおいても世界首位である。

【財務分析】ファナック株売却で損失吸収

 富士通の自己資本比率の推移を見るに、高い水準とはいいがたいもののある程度安定しているように見受けられる。大幅な赤字を計上することもちらちら見受けられるが、そのたび、ファナック株式を小出しに売却していき、有利子負債の圧縮要因、並びに業績の化粧としていた。

 具体的には、ファナックの株式につき度々に渡る売却を行っている。2003年9月発行済株式数の約4.59%を約554億円で売却、2003年12月には発行済株式数の約14.6%を1621億円で売却している。

 さらに、富士通においては、M&Aに伴う大きな失敗事例がある。1990年に行った、以前からの業務提携関係にあった英国ICLの案件である。

 当時、激化するコンピュータ業界の販売競争の中で、富士通として欧州エリアの営業を優位展開していくためには、拠点の確保が不可欠であった。当時、ICLは資金調達面で苦境を強いられており、競争に勝てるだけの研究開発費の調達が難しいとの判断に至った。

 結果として富士通は、欧州地域の展開加速の足掛かりとすべく、1890億円にてICL株式の80%を取得した。富士通は事実上、電算機分野で世界2位となり、IBMを追撃する体制を整えた。その後98年には完全子会社化。その後も富士通の欧州の拠点としてドイツ企業を買収するなどして累計投資額が3500億円を超えたが、業績は悪化していた。結局、07年3月期個別決算で2900億円の評価損を計上した。この際にも、ファナック株式を売却し、約700億円の調達をしている。しかし、その虎の子はこの2009年の売却で全て尽きることとなった。

【株価】業績改善で持ち直し

 株価は一時400円を割り込んだが、2016年夏ごろから持ち直ししている。国内ネットワークの増収効果やパソコンや携帯電話のコストダウン効果で業績が改善していることが背景にある。ニフティの完全子会社などの事業再編に積極的に取り組んでいることも株価の下支えになっているとみられる。

【まとめ】M&Aで戦うべきエリア明確に

 総じていうと、富士通は非常に積極的にM&Aに取り組んでいると評価できる。同社の事業領域は広く、あらゆる箇所でシナジー効果が見込める一方、先述のニフティにおいてのISP事業の売却を決定するなど、自社が戦うべきエリアというものが明確化されている。

 しかし、かつて5兆円あった売上高は現状は4兆円程度まで減っている。自社再編などの様々な施策をうっているものの、業績を成長軌道に回復させるには至っていない。

 一方で、かつて話題となったスーパーコンピューター「京」が再び世界一位に返り咲いたり、新たな分野である人工知能「zinrai」の研究開発を行ったりと、今後成長の見込まれる新規市場にも積極的に参戦している。同分野では、米IBMなどの存在感が大きいが、日本のシステムインテグレーターの雄として今後のさらなる発展に期待したい。


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部


ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第18回

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

2019.03.27

ルノーの5ドアハッチバック「メガーヌ R.S.」に試乗

やっぱりMT車が好き! 高性能モデルの登場に高まる期待

もしも(好きなように)クルマが買えたなら…安東さんの人生設計

安東弘樹さんに同行した日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会も、いよいよ最後の1台となった。残すはルノーの「メガーヌ R.S.」だ。愛車のポルシェ「911 カレラ 4S」から乗り換える候補の1台として、「ある程度は本気で」購入を検討しているというこのクルマを、安東さんはどう評価するのか。

MT車の日本導入を待って購入を検討?

「メガーヌ R.S.」は5ドアハッチバック「メガーヌ」の高性能モデル。「R.S.」はルノーのモータースポーツ活動を担う「ルノー・スポール」の頭文字だ。このクルマについては以前、モータージャーナリストの塩見智さんに試乗してもらったので、詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

「メガーヌ R.S.」に乗り込んだ安東さん

安東さん(以下、安):(乗り込んですぐ)ドアヒンジは多くの日本車と同じでプレスですね、開ける時に軽い感じがします()。(しばらく走って、高速道路に入りつつ)さすがはFF(前輪駆動車)、急加速すると暴れますね(笑)。

【編集部注】ドアヒンジとはドアとクルマをくっつけている部品のこと。ここの作りによってドア開閉時の重厚感、ひいてはクルマの上質感に差が出ると安東さんは語る。細かいポイントのようだが、ドアヒンジについてはマツダミニの取材でも話題になった。

編集部(以下、編):今回、メガーヌ R.S.に試乗してみたいと思ったのはなぜですか?

:すごく気になっていたクルマなのですが、まだ乗ったことがなかったので、どうしても今回、運転してみたかったんです。今回のクルマはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)ですが、MT(マニュアルトランスミッション)車を今、待っている状態です。ただ、急加速した時の“暴れん坊感”を体験してみて、いくら電子的に制御しても、FFには限界があるなとも感じました。じゃじゃ馬を乗りこなす、というところにカタルシスを感じる人もいるとは思いますけど。

「メガーヌ R.S.」のボディサイズは全長4,410mm、全幅1,875mm、全高1,435mm。価格は440万円だ

:MTだったら欲しいクルマですか?

:はい。もうすぐ、MTが日本に導入されるらしいのですが、欲をいえば、「メガーヌ R.S. トロフィー」というグレードを待ちたいです。R.S.は279馬力ですが、トロフィーは300馬力なんで。

:「待ちたい」っていうのは、真剣に購入を検討していて、待ち構えているという感じですか?

:うーん、ある程度は本気で考えているっていう感じでしょうか(笑)。次もポルシェ「911 カレラ 4S」に乗るのが理想ではあるんですけど、それこそ、私の稼ぎ次第というか、買えない可能性もあるので……。今の911は、乗り始めてから10年になりますし、乗り換えたいタイミングではあります。

:その乗り換え候補の1つが、「メガーヌ R.S. トロフィー」だというわけですね。ただ、素人なので分からないんですけど、最近の安東さんの露出ぶりを見ている限り、次もポルシェで大丈夫なんじゃないですか?

:どうでしょうねー、想像もできません(笑)。今回の確定申告で、どのくらいの税金を払わなきゃいけないのかにもよりますし。フリーになって初めての確定申告なので、正直、怖いです。

:この間の「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中のテレビ番組、安東さんは火曜レギュラー)で、「これから、税理士さんと話をする」っておっしゃってましたもんね(笑)

:いくらくらいの税金になるのか、それによっても変わってきます。ただ、フリーランスになってもうすぐ1年経ちますが、この収入では、新しい911には手が届きません(笑)

:本当ですか?

:今の911と同じように長期ローンを組めば、あるいは……。とは思いたいですが、新しい「911 カレラ 4S」を自分が乗りたい仕様で買うと、税金なども含めた乗り出し価格が2,200万円弱になってしまいます。日々忙しいのですが、薄利多売でやっているので、くどいようですが、本当に現状、購入は難しいです(苦笑)

1台はスポーツカーを所有しておきたいという安東さんだが、次に何を買うのかは将来の収入次第だそう。「メガーヌ R.S.」もMT車が気に入れば候補に入るようだ

:(メガーヌの走行モードを変更して)「レースモード」に設定すると、ESC(横滑り防止装置)がカットになるんだ……。自動ブレーキもオフになりますが、それは当然ですよね。サーキットを走っていて、前走車に近付くたびにブレーキが掛かったら、たまったものではないですから(笑)。このモードに入れても、そんなに乗り心地が硬くならないというか、不快感はないです。

法定速度で走っている限り、レースモードにする意味はあまりないでしょうけど、腕と環境が許せば、滑らせながら走ってみたいですね! MTだったら楽しいだろうなー。あと、パドルシフトは下まで伸びていて欲しいです。乗り始めてから、5~6回は空振りしてますから。

パドルシフトとは、指による操作でクルマのギアを上げ下げできる装置のこと。画像では分かりにくいかもしれないが、ステアリングの後ろに付いている
一般的にパドルシフトの操作部分は縦に長いが、「メガーヌ R.S.」のパドル(赤い十字マークが付いているところ)は上方向に長く、下方向に短い造形になっている。そのため、パドルの下の方を指で操作しようとして、何度か空振りしてしまったと安東さんは話しているのだ

:パドルシフトがステアリング連動式なので、コーナーを曲がっているときの操作も、少しやりにくいですね()。

【編集部注】パドルシフトには、ステアリングに連動して動くものと、ステアリングコラムに固定されているものがある。

:ステアリングと一緒にパドルシフトが動くのと、固定してあるのだと、どちらがいいんですか?

:メルセデスもそうですけど、ドイツ車はステアリングに連動して動く方が主流ですよね。ただ、ステアリングを切って(左右が)逆さまになっている時、パドルシフトの位置も逆になるので、どちらがプラス(ギアを上げる方)だか分からなくなることがあるんですよ。そこが難しいところで、だから「GT-R」(日産自動車)とかも固定式ですし、基本的にラリー用のクルマもコラム固定式ですね。

:ステアリングを切りまくるからですか?

:そうです。だけど、F1などのフォーミュラカーだと、ステアリングにシフトパドルが付いていて連動しますね。なぜなら、ステアリングを切っても最大で半回転ですから、左右の手を持ち替えないので、当然、その方が好都合です。

だから、このクルマ(試乗中のメガーヌ)は、ステアリングを大きく切っている時でも、シフト操作に迷わない事を優先させたんでしょうね。

:山道でヘアピンを抜ける時とかですか?

:そうですね。これ、好みは分かれると思います。

「メガーヌ R.S.」は1.8L直列4気筒16バルブ直噴ターボエンジンに電子制御6速ATのトランスミッションを組み合わせる

:このクルマ、小さいように見えて、幅が1,875mmもあるんですね。

:そう、結構あるんですよ。「Eクラス」(メルセデス・ベンツ)より幅が広い。

:メガーヌって、前のモデルまで3ドア(ハッチバック)が中心だったみたいですね。5ドアになって、見た目とかどうでしょう?

:このデザイン、僕は好きですね。先代よりも好きです。絶妙な“カタマリ感”があって、色もいい。シンプルなのに存在感があるという嬉しいデザインです。

:歴代のメガーヌ R.S.は、ニュルブルクリンクで素晴らしいタイムをたたき出してきたそうですが、そのあたりには惹かれますか?

:そこは、そんなに重視しません。ただ、メーカー同士が競い合ってくれる分にはいいんですけどね。ましてやFFですし、ちゃんと手なずけて走って、技術の革新というか、そういうところでメーカー同士が競い合ってくれているのは悪いことではないと思います。

:ただ、安東さんとしては、走りについては自分で確かめたい?

:そうですね。だから、こっちの方が数字が上だから買う、という感覚はありません。

:安東さんの頭の中にはクルマのスペックがたくさん入っていますけど、数字で比べて買おうというのではなく、ただ、好きだから頭に入っているだけなんですか?

:覚えようとしているんじゃなくて、スペック(諸元)表を見てると、自然に覚えちゃうんですよ。これ(試乗中のメガーヌ)だと、最大出力が279馬力ですよね?

:合ってます。

:それで、205kWじゃなかったでしたっけ?

:ごめんなさい、手元の資料にキロワットまでは書いてきてないです。

:206kWだと、280馬力になるんですけどね。

:……。

「メガーヌ R.S.」の最大出力は279ps(205kW)、最大トルクは390Nmだ。車両重量は1,480キロ

:数字的には見劣りしても、自分がいいと思えば買うというのが、安東さんのクルマ選びということですね。もし、次の911が何らかの理由で買えなかった場合は、メガーヌもアリだと思いましたか?

:MT車に乗ってみないと、何とも言えませんねー。急加速した時の暴れぶりを体験して、FFの限界は感じましたけど、MTなら、もう少し自分で制御できるかもしません。ただ、やっぱり楽しいクルマだなとは思いましたね!

:今回、たくさんの輸入車に乗っていただきましたけど、総評として、心に残ったのは?

:やっぱり、あの加速感も含め、テスラですね。何でも電気で動くので、後席のファルコンドアなんかが壊れたら目も当てられないとは思うんですけど、ただ、インパクトとしては「モデルX」になりますね。

もしも収入が激増したらどんなクルマに乗りたい?

購入を決めたメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」には、何年乗る予定ですか?

:今の「F-PACE」よりも早いペースで走行距離が伸びる可能性があるので、2年で7万キロあたりが見えてくると、乗り換えを考えるかもしれません(※)。まあ、2年後に私の収入がどのくらいになっているかにもよりますけど……。

【編集部注】ジャガーのSUV「F-PACE」とポルシェ「911 カレラ 4S」の2台を所有している安東さんだが、通勤に使っているF-PACEは走行距離が伸びてきている上、大柄なサイズの問題で駐車場を見つけるのが大変なので、これをメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」に乗り換える。サイズ的に駐車場が見つけやすい分、オールテレインの稼働率はF-PACEよりも高くなることが予想されるので、代替サイクルは早まるかもしれない。オールテレインが納車されるのは2019年5月の予定。その時点で、F-PACEには2年8カ月乗ったことになる。

:もし、収入がものすごく増えたら、所有するクルマの構成はどうしたいんですか?

:やっぱり「911」と、あとは「ヴェラール」(レンジローバー)のディーゼルエンジン車を買って、もう1台は小さいディーゼルエンジンのクルマで、それは「デミオ」(マツダ)なのか「ミニ」なのか分からないんですけど、そんな感じですかね。それか、プジョーの「308 アリュール」か……。

「308 アリュール」って、今までは税制的に中途半端な1.6リッターのディーゼルエンジンを搭載してたんですけど、それが1.5リッターになって、しかも、パワーアップしたんですよ。それに、何が嬉しいって、パドルシフトが付いたんですよ! 今までは上級グレードにしか付いてなかったんですけど。

プジョー「308 Allure」(アリュール)

:なるほど、収入が大幅に増えたら、クルマを2台にしておく必要もないですもんね。駐車場を借りて、3台持ってもいいわけで……。

:駐車場を借りるというか、3台のクルマを入れられる車庫が付いた家に建て替えるのが夢ですね。

:その可能性も、フリーになった今だと、高まってますよね。会社員でいるより、大きく稼げるチャンスがあるわけですから。

:そうですね、可能性は“ゼロ”ではないですね(笑)

:これも「バラいろダンディ」で聞いたような気がするんですけど、ある程度の金額を稼いだら、お仕事はやめるっておっしゃってましたよね? 好きなクルマに乗り続けられて、ご家族も安泰というような金額が貯まったとしたら。

:そうですね(笑)。3億円ほど貯まったら、やめると思います。家族を養えて、子供たちを学校に行かせられて、あとはクルマも、「ヴェイロン」とか「シロン」()が欲しいとは思わないので……。ポルシェのMTと、ヴェラールと、ミニか何かを所有して、スポーツ走行する時はポルシェ。長距離移動の時はヴェラール。そして、都内での仕事や移動の時は、コンパクトなディーゼルモデルか、電気自動車(EV)でもいいかもしれません。

【編集部注】どちらもブガッティのクルマ。1台で何億円もする。

:私の人生として、あと20年は責任があると思うんですよね。ただ、テレビ関係の仕事が続けられるとは思っていません。やっぱり、テレビの仕事って緊張するし、疲れますから(笑)。何より、ずっと私への需要があるとは思えません。

立て続けにクルマに乗った今回の取材も、かなりお疲れになったはずだと思っていたのだが……

他媒体が用意したクルマも含め、計11台の輸入車に立て続けに乗り、JAIA試乗会の取材を終えた安東さん。「仕事は疲れる」と言いつつも、メガーヌから降りるとすぐ、「ばらいろダンディ」の生放送に出演するため、試乗会の拠点となった大磯プリンスホテル(神奈川県)を愛車「F-PACE」で飛び出していった。

安東さんのコラムによれば、今回の取材はさすがにくたびれたものの、愛車を運転して帰ったおかげ(?)で、半蔵門(正確には東京都千代田区麹町)にあるTOKYO MXに到着する頃には、すっかり疲労感がなくなっていたというから驚きだ。

とにかく、多くのクルマに限られた時間で乗ってもらったので、時間配分がうまくいかず、弊紙では紹介しきれなかったクルマもある。具体的にはポルシェ「パナメーラ 4 E ハイブリッド」とBMW「X3 M40d」の2台なのだが、これらも安東さんが試乗を希望したクルマだったことに変わりはない。特に「X3 M40d」については、短時間の試乗ではあったものの、「もっと乗ってみたくなるいいクルマだった」とのコメントがあったことは、ここでお伝えしておきたい。

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メルセデス・ベンツ初の市販電気自動車「EQC」とはどんなクルマか

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2019.03.27

メルセデス・ベンツの電動化戦略、「EQC」で本格化

エンジン車にも通じるクルマづくりの作法

加速はスポーツカー並み! 航続距離は450キロ

メルセデス・ベンツ初の市販電気自動車(EV)「EQC」が今年、いよいよ登場する。2019年半ば頃の日本導入が噂されているが、一体、どんなクルマに仕上がっているのか。モータージャーナリストの清水和夫さんは以下のように解説する。

メルセデス・ベンツのEV「EQC」

メルセデスの電動化を包括する「EQ」ブランド

メルセデス・ベンツは2018年9月、スウェーデンのストックホルムにおいて、バッテリーだけで走る電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)「EQC」を正式に発表した。それまでも、各国の国際的なイベントでは、同社の電動モビリティを包括する「EQ」(イーキュー)というサブ・ブランドを発信してはいたが、いよいよ、本格的なメルセデスの電動車両がEQCから始まるのだ。

ここでは混乱を避けるため、電動車両の定義とメルセデスが採用する「EQ」というサブ・ブランドについて説明しておく。

「EQ」とは「電動化」にフォーカスしたメルセデスのサブ・ブランドであり、バッテリーだけで走るBEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグイン・ハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と呼ぶ。

このように、電動車両といっても、バッテリーとモーターだけで走るBEV、エンジン/バッテリー/モーターを組み合わせるプラグイン・ハイブリッド(PHVあるいはPHEVと略す)、あるいは、48Vを使う車両に見られるマイルド・ハイブリッドなど、クルマの在り方は多様化している。「〇〇社は20XX年までに全てのクルマを電動化する」というヘッドラインのニュースが世界中を駆け巡っているが、電動化の中身をきちっと理解する必要があるだろう。メルセデスの場合は「EQ」「EQ Power」「EQ Boost」の名前で整理している。

「EQ」ブランドのクルマたち

EQCは「GLC」相当のSUVをベースとするクルマだ。「Aクラス」相当のセグメントでBEVが登場すれば、「EQA」と呼ぶことになるだろう。

内燃機関はベンツの代名詞、EVはどう作る?

EQCの日本初公開となったイベントは、桜が咲く前の3月初め、メルセデス・ベンツのブランド発信拠点「Mercedes me」(東京・六本木)にて開催された。注目すべきは、メルセデス・ベンツ日本(MBJ)がEQCと家の電気をつなげる「EQハウス」という斬新なコンセプトで同車を発表したこと。EQCは自宅でも充電できるので、家との相性がよい。そこでMBJは、竹中工務店と組んで「EQハウス」という新しいアイディアを提案したのだ。クルマと家が電気でつながることを「V2H」(Vehicle to Home)と呼ぶ。日本では以前から取り組んできたシステムだ。

MBJと竹中工務店は、モビリティとリビングの未来の姿を具現化すべく、六本木の「Mercedes me」に体験施設「EQハウス」を設置した。ちなみに、「EQC」の展示はすでに終了している

ところで、EQCのカットモデルを見た時、面白いことに気がついた。EQCは「Cクラス」ベースのSUV「GLC」をベースとするが、BEVなのでエンジンとギアボックスが存在しない。そのスペースには、パイプ製のケージが設置されているのだ。パイプの内側にはフロントモーターとデフ(デファレンシャルギア)が置かれ、上部にはインバーターが配置されている。リアも同様にモーターとデフでリアアクスルが構成される。

エンジンがなくなる代わりに、「EQC」にはモーターとデフを納めたパイプ製のケージが入っている

バッテリーは床下のフロア内に格納することで重心を低く設定できる。と、ここまでは常識的なパッケージなのだが、衝突安全の剛体として、このパイプ製ケージにはエンジンと同じ強度を持たせてある。つまり、エンジン車と同じく、モジュールでデザインできるモデルベース開発(MBD)を取り入れているのだ。自動車業界で流行の手法は、EQCにも採用されていた。

EQCのボディサイズは全長4,761mm、全幅1,884mm、全高1,624mm、ホイールベース2,873mmとGLCに近いから、シミュレーションしやすい。性能を見ると、前後2つのモーターは合計で最大出力408PS、最大トルク765Nmを発生する。加速性能はV8ターボのエンジン車並みで、停止状態から時速100キロまでの加速は5.1秒と俊足だ。リチウムイオン・バッテリーの容量は80kWh。気になる航続距離は450キロとのアナウンスがあった。

「EQC」のボディサイズは「GLC」に近い。加速はV8ターボエンジン並みだ

EQCの試乗会は2019年5月に開催されるので、それまでは詳細なインプレッションをお届けできないが、スポーツカー並みの加速性能を誇るEQCは単なるBEVではなさそうだ。何か、もっとすごい仕掛けがありそうに思える。試乗会が楽しみになってきた。

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