狙うは意外な巨大市場、ネスレ日本が“抹茶”を推している理由

狙うは意外な巨大市場、ネスレ日本が“抹茶”を推している理由

2017.03.16

ネスレ日本が2017年3月1日より、新サービス「ネスレ ウェルネス アンバサダー」を開始した。コーヒー、キットカットに続く第3の事業で、“抹茶”がその主役だという。なぜ抹茶なのか。そして新サービスによる同社の狙いは何か。

なぜ抹茶なのか

2~3兆円ともいわれるサプリメント市場に参入

なぜネスレ日本は抹茶を第3の柱に位置づけるのだろうか。1つには、抹茶商品に関して同社に大きなアドバンテージがあるためだ。

「キットカット」は世界100カ国以上で展開しているブランドで、抹茶味は日本土産としても人気だ。また、コーヒーマシン「ネスカフェ ドルチェ グスト」も世界80カ国、累計3,000万台を販売しており、カプセルをセットすれば簡単にコーヒーやラテ、抹茶などの飲み物を楽しめる、いわば抹茶ビジネスのインフラ的な存在だ。メイド・イン・ジャパン食材が世界的に注目されるなかで、ネスレ日本が抹茶を第3の柱とするのには、十分な裏づけがあるようだ。

しかし実は、ネスレ日本が抹茶を打ち出すのにはもっと大きな理由がある。巨大な健康食品市場を抹茶で開拓しようというのだ。先日の事業戦略発表会でネスレ ウェルネス アンバサダーについて語ったネスレ日本・代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏は、サプリメントの市場規模を現状で1兆6,000億円と分析し、そのうち2~3兆円に拡大する可能性があると予想。この市場に抹茶で参入したいという考えを示した。

ネスレ日本の高岡CEO

抹茶を手軽に、健康作用も

同社ではまず、抹茶にあると言われる健康作用に着目した。ネスレ日本の調べによれば、抹茶には「ポリフェノール」が緑茶の約2倍含まれる。また、緑茶と違い、粉にひいた茶葉そのものを飲む飲料のため、茶葉の食物繊維のほか、ビタミンA、D、E、Kといった脂溶性ビタミンも合わせて、そのまま摂取できるという利点がある。

なお、ポリフェノールとは植物の色素に含まれる成分で、抗酸化作用を持つことから、5大栄養素や食物繊維に次ぐ重要な栄養素として研究が進められてきている。コーヒーや緑茶にも多く含まれ、ネスレ日本によると、日本人ではコーヒーから摂取している人が約47%、緑茶から摂取している人が約16%だという。

一方で、日本人のポリフェノール摂取量は理想的と言われるより少なく、さらに緑茶の消費量がペットボトル飲料を含め、20年前に比べ約20%減少してきているという。そこで、「抹茶をもっと手軽に飲めるようになればよい」という発想が出てくるわけだ。

健康食品としての可能性を秘める抹茶。次に問題になるのが、販売方法だ。飲料メーカーをはじめとする大手企業がこぞって参入する健康食品市場だけに、「(抹茶を)健康食品やサプリメントとして発売しても、過当競争に巻き込まれるだけ」(高岡氏)だからだ。

では、同社は健康食品市場でどのようにして勝ちにいくのか。

得意の“アンバサダー”制度を抹茶でも展開

2016年の業績では、グループ全体を上回る成長率を達成しているネスレ日本。成長の理由として同社が挙げているのが、「顧客の問題解決」および「プレミアム&Eコマース」である。

例えば、コーヒーマシンにコミュニケーション機能を持たせた「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタi」は、核家族化で浮かび上がって来た「1杯だけおいしく淹れるのは面倒だし大変」、「離れて暮らす家族が心配」という顧客の問題に対応。2016年10月の発売から約2カ月で10万台超を販売するなど、注目を集めた。

また過当競争への対応策としては、「量を追わなくても、プレミアム化で利益を伸ばすことができる」(高岡氏)高級チョコレートの市場に参入するため、キットカット専門店「キットカット ショコラトリー」を2014年に開始。国内8店、海外3店を展開し、ブランド価値を向上させたうえで、さらに2015年11月からはEコマースを始めている。

さて今回、同社が抹茶作戦の皮切りとして大々的に発表した「ネスレ ウェルネス アンバサダー」では、以上2つの実績から同社が導き出した「勝てる方程式」を遺憾なく採用している。すなわち、「ITとの連動による(サービスの)パーソナライズ化」、「個々の会員に、問題に応じたアドバイスをすることによる付加価値の向上」、「Eコマースによる広範囲への商品提供」だ。

ITとの連動で健康チェック

サービスの大きな特徴は、ITとの連動で、補うべき栄養素をアドバイスしてくれることだ。具体的には、同サービスの会員になると「ネスカフェ ドルチェ グスト」を無料で借りられる。さらに専用のウェブサイト上で、食事内容や生活習慣に関する質問に答えていくと、不足しがちな栄養素が割り出され、それらの栄養素を含む「ネスレ ウェルネス抹茶」の専用カプセルを提案してもらえるのだ。

食生活などから会員の不足しがちな栄養素を割り出し、各人に適したカプセルを送る仕組み。例えばネスレ ウェルネス抹茶「ブルー」にはカルシウムやマグネシウムなどが入っているし、「レッド」には鉄や亜鉛などが含まれる、といった具合だ

サービスの料金は、ネスレ ウェルネス抹茶のカプセルが15個で1,350円。ドルチェグスト専用のブレンドコーヒーや抹茶のカプセルが16個入りで800~900円強といったところなので、値段としては1.5倍ほどだ。

そのほか、ウェブサイト上では脳エクササイズゲームもプレイすることが可能。「脳の若さを保ちたい」というニーズにも対応している。この脳エクササイズゲームは、臨床データに基づき科学的に証明された世界トップクラスのトレーニングであり、ネスレが独占使用権を取得したものだという。

抹茶を選んだ大事な理由

「なぜ抹茶なのか」ということでは、意外かつもっともな理由もある。それは味だ。「いろいろな飲料を試したが、抹茶が一番まずくならない。健康のために『まずい』と言いながら飲む時代ではない。続けてもらうためにも、おいしいことは必須」と高岡氏は語る。つまり、各種ビタミンやグルコサミンといった栄養素を加えると、どうしても飲み物として成立しない味になってしまう。抹茶はもともと渋み、苦みを楽しむ飲み物であるため、栄養成分の味を緩和しつつ、おいしく仕上げることが可能というわけだ。

抹茶はネスレが顧客に届けたい栄養素を乗せる「キャリア」(高岡氏)のような役割を果たす。顧客に抹茶の飲用を習慣づけるうえで、おいしさは重要な要素だ

しかし、食品のみならず、「健康」に関わる商品の市場で避けて通れないのは、「怪しさ」をいかに回避するかという問題だ。まず医薬品ではないので、効果効能をうたうことはできない。また、多くは臨床データによる裏付けがないため、本当に身体によいものなのか、お金を払う価値があるものなのか、消費者にとっては分かりにくい。名の知れたメーカーでも、著名人やタレントに「私も飲んでいます」と言わせる広告戦略で顧客を集めているのが現状だ。

しかし、今回の「ネスレ ウェルネス アンバサダー」では、ポリフェノールという、すでにある程度知られた栄養素に着目したこと、また、必須ビタミンやミネラルを主体とする抹茶カプセルを扱っている点で、「怪しさ」というイメージからは逃れられていると言えるだろう。

また、サイト上の健康チェックはゲーム感覚で気軽に行うことができ、ニュースの占いをチェックするような感覚で、日々、自分自身の健康を振り返ることができる。会社に行けば、コーヒーマシンを囲んでの会話のネタにもなりそうだ。このようにカジュアルな感覚で行える部分は生活の中に取り入れやすい。

もともとは「健康」イメージの強い企業

ではネスレ ウェルネス アンバサダーの反響はどうだろうか。具体的な数字は社外秘とのことだが、2017年3月1日のスタート以降1週間で、会員への応募は目標値の倍になったという。

ネスレはグローバルにおいて、「栄養、健康、ウェルネス」という目標を第一に掲げている。もともとベビーフードの会社であり、海外ではベビーフードで圧倒的なシェアがあるため「健康」イメージとの相性はよいと言えるだろう。しかし、日本では「コーヒー」の知名度が先行しているので、ともすれば健康とは相容れないイメージがある。今回の抹茶作戦は、ネスレ日本の企業価値を転換する契機となるかもしれない。

あなたが頼んだからやったんですよ!

企業戦士に贈る「こむぎのことば」 第3回

あなたが頼んだからやったんですよ!

2019.05.22

「こむぎこをこねたもの」が企業戦士にエールを送る連載

頼まれた仕事をやったのに怒られるという理不尽に遭遇したら……

上司から頼まれた仕事をやって、翌日持って行ったら「何でそんなことをやっているんだ」と怒られた……。まさに「これぞ理不尽」という出来事です。

自分の言ったことを忘れてしまっている人、いますよね。

仕事をやらなくて怒られるのは仕方がないですが、頼まれたことをしっかりやったのに怒られるなんて、たまったものではありません。

口頭での指示ではなく、メールやチャットなどの履歴に残るやり取りであれば、このようなストレスも軽減できるかもしれませんが、徹底するのはなかなか難しいものです。

「今日のあの人」は「昨日のあの人」と同じ人ではないかもしれない。今日頼まれたことを、明日の相手が覚えているとは限らない。諸行無常の世の中です。

どうにかして理不尽な仕打ちをしないよう変わってほしいものですが、他人をコントロールしたり、変えることができないのもまた事実。自分の言ったことを忘れて信頼関係を崩すのも、自分の発言に責任を持とうと心がけるのも、その人自身の問題です。

あなたがまずできるのは、その上司と同じことをしないように、自身の行動を正すことでしょう。

また、相手もたくさんの仕事を抱えていて、たまたま頼んだことを忘れてしまっていただけかもしれません(だからといって怒るのはやりすぎですが……)。人間、何もかも完璧にこなすことはできませんから、あなたに頼まれた仕事ですよと伝えたうえで、たまたまのミスには寛容でありたいものです。

しかし、そうは言っても「仏の顔も三度まで」。あまりに同じことが重なるようなら強く指摘したほうがいいかもしれません。

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2019.05.22

「就活ルール廃止」で就活はどう変わる?

「20代の転職相談所」運営会社の社長に直撃!

「社会人デビューは30歳からでいい」の真意とは

2021年、「就活ルール」が廃止されます。

これにより、現行の「3月に採用広報を解禁」「6月に選考解禁」「10月に内定交付」といった取り決めがなくなり、通年採用が実施されるようになります。

――しかし、この件について「就活に混乱をもたらす」といった報道もしばしばなされています。実際、就活を控える学生からは「具体的に何が変わるのかイメージが湧かないので、どう動けばいいのかわからない」といった不安の声も聞こえてきました。

「就活ルールの廃止」は、これからの就活をどう変えるのでしょう。そして、就活を控えた学生は今、何をすべきなのでしょうか。

1万人を超える若者の転職・就職を支援してきた20代向けの転職支援サービス「20代の転職相談所」などを運営するブラッシュアップ・ジャパン 代表取締役の秋庭洋さんに、「就活ルール廃止で変化すること」について聞くと、話は「20代のキャリア論」にまで及びました。

ブラッシュアップジャパン 代表取締役の秋庭洋さん。1967年大阪生まれ。リクルート勤務、人事コンサルティング企業の役員を経て2001年9月にブラッシュアップジャパンを設立。就職・転職支援サービス「いい就職ドットコム」「20代の転職相談所」を運営しているほか、関西学院大学、武蔵野大学でキャリア開発科目の講師を務めるなど、若年層の雇用のミスマッチ解消に取り組んでいる

「就活」を取り巻く環境が急変している

――本日は「就活ルールの廃止」が、就活生にとってどのような影響をもたらすのか、ということを聞きたくて伺いました

秋庭:なかなか壮大なテーマですよね。3日間くらいかけて話してもいいですか? (笑)

――そこをなんとか1時間ほどでお願いします! 

秋庭:話せるかなぁ (笑)。

まぁ結論から先に申し上げますと、「『就活ルールの廃止』によってこれまでの就活が大きく変わるわけではない」というのが、私の考えですね。

そもそも、これまでの就活ルールを定めてきた一番の理由は、選考のスケジュールを定めることによって「採用活動の足並みを揃えること」でした。でも、実際にはその決まりを全社が必ずしも順守しているわけではなく、それはあくまで強制力のない「紳士協定」に過ぎなかったわけです。

2020年卒の就活スケジュール早見表 (出典:マイナビ2020)

――たしかにそれは、私が就活する際にも経験しました(筆者は2016年に就活を経験)。3月よりも早い段階で、大々的に「選考」とは言わずに「面談」という形で振るいに掛ける企業があったり

秋庭:正直、そういう企業は多いですよね。経団連に加盟する企業の中でもフライングするところがあり、これまでのルールはあまり意味をなしていなかったとも言えます。

そもそも、経団連に加盟している企業は1400社ほど(経団連加盟企業は2018年5月31日時点で1376社)で、日本の全企業数のほんの数パーセントにすぎないということも知っておきべきことです。

――何故今になって就活ルールが廃止されるのでしょう?

秋庭:現在の就活状況において、そのルールがあるために「不利な立場に追いやられていた企業」が多くあったことが大きな要因の1つです。

就活を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しました。少子化が進み、人材の確保が難しくなっていくことに加え、人材採用のグローバル化が進んでいます。多くの企業で人手が不足し、明らかに今、就活生は「売り手市場」にいます。

そうした状況で、 “そもそも経団連に加盟していない”新興のIT企業や、外資系企業などは、ルールに縛られることなく、早期から採用活動を行うことができていたんです。いわゆる「青田買い」ですね。

一方で、経団連に加盟する企業は「ルールを順守している」フリをしなければならず、大っぴらに学生とは接触することができません。つまり、優秀な人材獲得の競争で遅れをとることになります。そこで、仕方なく「採用を前提としないインターンシップ」という建前のもと、就活前の大学生と接触せざるを得ないという、おかしな状況に陥っていたわけです。

「就活ルール廃止」の影響を受けるのは、一部の人だけ?

――具体的に、2021年からの就活はどのように変化するのでしょうか?

秋庭:そうですね。これからの新卒採用のスタイルは、スポーツにたとえるならば「プロ野球型」から「Jリーグ型」に近いものになると思います。これまで経団連が定めていたルールは、「フライングはダメ」「抜け駆けもダメ」というプロ野球のドラフト会議のソレに近いものでしたが、外資系企業の手法はJリーグのソレに近いものでした。

前者は採用対象者に接触する時期や選考の方法など、最低限のルールが存在しますが、後者はまったくの自由競争。極端なことを言えば、「学生という身分で働いてもらっても構わない」とすら考えている企業もあります。

これまでの日本における就活の現場は、両者が混在していた状態でした。それが就活ルールの撤廃で、前者のルールがなくなる、と捉えるとよいでしょう。

ただ、ここで考えるべきは、一口に「学生」「企業」と言っても、本当はもっと細分化して見ていく必要がある、ということです。あくまで今お話ししたのは、就活生全体の1~2割にあたる極めて優秀な「トップリーグ」にいる学生を取り巻く話です。またはそういう学生を是非とも採用したい、と考えている企業の話だけといえます。

実際には、残り7~8割の一般学生や一般企業においては、「就職戦線が早期にスタートして長期化する」ということ以外、さほど大きな影響はないと思います。

ただ、多くの学生が入社を希望する「人気企業」の採用活動がひと段落しないことには、就職戦線はいつまでたっても終息しません。そういう意味においては、トップリーグの採用戦線が「いつ始まるか」よりも「いつ終息するか」の方が重要なポイントだとも言えるでしょう。

しかし、たとえスタート時期が早くなっても、終息する時期はおそらくこれまでとあまり変わらないと思います。いくら通年採用といっても、卒業の直前まで人気企業が採用数を確保できずに採用活動を継続している、なんてことはまずあり得ないでしょうから。

就活は「プロ野球型」から「Jリーグ型」へ

20代をすべて「就職活動期間」にあててもいい

――ルールが廃止される2021年以降に就活を始める学生は、どういう考えを持って就活に向かうべきなのでしょう?

秋庭:まず伝えたいのは、「就活の長期化」をネガティブに捉える必要はないということです。むしろもっと「就活がもっと面白くなる」とポジティブに捉えてほしいと思っています。

当たり前のことですが、時間が増えれば、できることが増えます。現行の就活ルールでは、限られた時間の中で就職先を決める必要がありました。就活が長期化することで、例えば、インターンシップに使える時間が増えます。実際に興味がある会社で働いてみることで、そこにどういう社員がいて、どういう社風なのかを実際に自分の肌で感じることもできるでしょう。その情報を得た上で、入社するか否かを判断できるわけです。

就活の長期化は、企業と就活生のミスマッチの減少にもつながりそうです

――それでは最後に、就活を控えた学生にアドバイスをお願いします

秋庭:これは就活生に関わらず、すでに就活を終えた学生や、社会人になったばかりの方々にも共通することですが、「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない」という考えを持ってほしいと思います。20代全部を使って就職活動をする、そんな気持ちで行動すれば良い、というのが私の考えです。

たとえ正社員として企業に勤務していても、それは「長いインターンシップにすぎない」といった感覚で、いろんな業界・仕事・人・価値観に触れてください。

そこで感じたことを踏まえて、いよいよ30歳で社会人デビューする。その考えを持っていれば、多少の失敗があっても、「いい勉強になった」程度に捉えられます。そして、30代で軸足を確かにできる場所を見つけて、迷いなくスタートダッシュを切れたら大成功、くらいに考えるといいのではないでしょうか。

「一度入った会社でなんとか成功しないといけない」と考えると、窮屈でしょう。転職をけしかけるつもりは毛頭ありませんが、「転職は大変」「せっかく入った会社を辞めていいのか」という考えに固執しすぎる必要もありません。

「人生100年時代」という言葉もあります。たった数年でも、世の中の「働く」を取り巻く環境は大きく変わります。働き始めれば、自身の考え方も変わることでしょう。ガチガチにならず、気楽な気持ちで、「20代の就職活動」に向かって行ってもらえれば、と思います。

――ありがとうございました

「20代でイキナリ自分に合った仕事や職場など見つからない。社会人デビューは30歳からでいい」
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