ドローン時代の到来促進なるか、楽天が自動管制システム会社を設立

ドローン時代の到来促進なるか、楽天が自動管制システム会社を設立

2017.03.16

楽天と米AirMap社は共同で、自律制御ドローン向けの自動管制システム(UMT)を開発する「楽天AirMap株式会社」を設立する。ドローンが飛び交う時代を担う管制システムは、業界全体としても考えねばならない課題だ。

完全自律型ドローン

ドローン流通には欠かせない管制システム

冒頭では、楽天の執行役員兼新サービス開発カンパニーの虎石貴プレジデントが登壇。同社が昨年から「そら楽」のブランドでドローン流通に取り組み、世界初となるゴルフ場での商用空輸サービスを実現したことなどを挙げ、来たる超高齢化時代では一人では買い物にも出られない、アクセスを失う人が現れることを予見。無人ドローンによる流通は、アクセスを失っている人にも物流網を届ける重要なピースになることを示した。

「そら楽」では昨年5月~6月の限定で、完全自律型ドローンを使い、千葉県御宿町のキャメルゴルフリゾートで、ラウンド中にどこからでも軽食などをドローンで受け取れるサービスを展開した

現在は離島や山間部といった、ルート上がほぼ無人地帯での実験しか行われていないが、将来的には都市部をドローンが飛び交うことになる。ドローンによっては周辺を監視して緊急回避などの動作が取れるものもあるが、処理速度には限界がある。そこで、より安全なドローンのデリバリーに欠かせない技術として、ドローン同士のルートや高度、現在地などを把握し、制御する無人管制システム(UTM:Unmanned Traffic Management)の必要性を指摘した。有人の飛行機では管制塔の管制官からの指示で飛行機が航路を調整するが、ドローンの場合は人が乗っていないため、すべてコンピュータ上で処理するというわけだ。

そしていち早くドローン流通の時代を日本にもたらすため、米国のUTMベンチャーであるAirMap社と提携し、同社の技術を用いて日本にも本格的なUTMの誕生を目指すとした。

壇上で握手する楽天の虎石プレジデント(左)とAirMap社のベン・マーカスCEO(右)

続いてAirMap社のベン・マーカスCEOが登壇し、同社はDJIやインテルなど多くのドローンメーカーおよび周辺技術産業に対してUTMシステムを提供していることを紹介。ドローンの登場により、航空産業は現在、社会・経済に著しい影響力を与えていることからも、安全なインフラの確立が必要であるとした。

AirMapはオープンプラットフォームであり、ドローンメーカー系の採用例が多い

マーカスCEOによれば現在、同社のシステムを使って300万以上のドローンが管制下に置かれており、毎日10万フライト以上を制御しているという。同社の技術では、あらかじめ公園など大きな土地を持つ地権者にアクセスを取り、その中での飛行の可否や可能なルート、高度といった情報を収集。ジオフェンシングやドローンのリモート識別という形で衝突回避やルート決定といったソリューションを提供している。すでに米国では125箇所以上の空港や空域管理者が周辺空域の情報を提供しているという。

楽天AirMapの代表取締役CEOに就任した向井秀明氏によれば、日本では楽天AirMapが自治体や空域管理者などと連携して高精度な地図を作成し、日本国内向けのUTMとして提供していく予定だ。具体的なサービスの提供は2017年中旬を予定しているとのことだが、具体的なエリアや料金体系などは未定とのこと。すでに3月に入っているが、夏までには何らかのアナウンスがあると見ていいだろう。

情報はクラウドで管理され、登録されたドローンが危険な空域に入ったりすると、操縦者に対して警告メッセージが表示される

ホビードローンの世界にも普及が急がれる

2015年に航空法が改正され、ドローンの飛行には申請が必要になっているが、国土交通省に許可されたドローン飛行申請数は、2016年12月時点で1万件を越えており、今後さらに伸びることが予想される。政府は2018年をめどにドローンによる配送を可能にするべく、航空法の見直しなどを検討している。UTMはこうした規制緩和への必須条件となるため、スタンダードになることは大きな経済効果も生み出せることになる。

海外ではNASAが国際スタンダードを目指したUTMを開発中であり、欧州ではGUTMA、日本でも東京大学やNTTドコモ、JAXAなどがJUTM(Japan Unmanned System Traffic & Radio Management Consorcium:日本無人機運行管理コンソーシアム)という団体を設立しているなど、ドローン管制システムの構築は世界的な関心事となっている。

またベルギーのUniflyによるUNIFLY CONNECTやUniflyと提携したテラドローン社のTerra UTMなど、民間ベースのUTMも登場しており、標準化に向けた激戦区となっている。

楽天AirMapの参入により、また一つプレーヤーが増えることになるが、メーカー系の採用例が多いAirMapは一歩リードしているというところか。いずれにせよこうした自動管制システムが普及すれば、飛行ルートが明らかになっている商用ドローンの世界は安全性が格段に高まることは間違いない。

問題は、こうした自動管制システムをサポートしない古いドローンや、Wi-Fiなどで操作するホビー系ドローンの存在だ。自動管制システムはドローン側にGPSなど一定の精度を持ったハードウェアが必要になると考えられるため、これがない古いハードウェアの場合、精度が保証できない。ある程度は操作するスマートフォンなどのソフトウェア側をアップデートすることで対応できるかもしれないが、現在すでにドローンを導入済みの場合、予定よりも早めにアップデートする必要が出てくるかもしれない。

またホビー系のドローンはそもそも自律操縦できないものもあり、こうしたドローンが管制下にあるドローンのルートを邪魔するといった可能性もある。このような問題が起きないためにも、古いドローンに対する改修措置や、ホビー系にも管制システム下に加わるような規制が必要になるだろう。いずれにしても安全なシステムが採用されることを期待したい。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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