目指すは“情報製造小売業”、ユニクロが挑む新たなビジネスモデルとは

目指すは“情報製造小売業”、ユニクロが挑む新たなビジネスモデルとは

2017.03.17

今までのアパレルの製造小売業から“情報製造小売業”へ――。ユニクロが進める抜本的なビジネスモデルの変革を、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏はこのように表現した。新生ユニクロは何を作り、どのように売るのか。

“情報製造小売業”への転換を図るという柳井氏

顧客の求めるものだけを作る

ファーストリテイリングが「有明プロジェクト」と銘打って進める全社的な改革。これを総括するグループ執行役員の田中大氏によると、ユニクロは「作ったものを売る」企業から、顧客が求めているものをリアルタイムで把握・商品化し、素早く手元に届ける企業へと変貌を遂げようとしている。その原動力となるのはデジタルイノベーションだ。

肝となるのは、ファーストリテイリングが構築を進めるAIを駆使した情報プラットフォームの存在だ。このプラットフォームに顧客の声を集約し、どんな商品が、どこで、どのくらい求められているのかを割り出す。この情報をもとに商品の企画、生産、販売を行うのが情報製造小売業としてのユニクロが目指すビジネスモデルだ。「服を着る人と作る人の境目をなくす」と田中氏は語る。

情報プラットフォームを活用した新たなビジネスモデルについて話す田中氏

スピードを追求

顧客のニーズを素早く商品に落とし込むにはスピードが不可欠となる。ファーストリテイリングでは商品を作る際、企画、生産、販売という流れでリレー方式に仕事を進めていたが、これからは各社員が同じ情報を共有し、連動して動くような仕事の進め方を目指すという。

サプライチェーンのスピードアップに向けては、まずは商品の情報を全てデジタル化し、ライブラリーに集約することで、素早い企画立案を実現する。これまでの進め方では、例えば春物であれば春が来る前に企画を完了し、シーズンに合わせて新商品を投入していたのだが、企画立案のスピードが上がれば、今後はリアルタイムで顧客の求めるものを企画・商品化し、シーズン中に新商品を投入することが可能になる。

発表会に駆けつけた佐々木希さんも、スマホサイトの使い心地は気に入った様子だった

生産面の改革としては、新商品の投入サイクルを短くする。これまでは月ごとに新商品を作っていた工場でも、今後は週ごとの新商品に対応可能な体制とし、シーズン中に新商品を生産する比率を上げていく。物流面では空輸の活用や倉庫の自動化などでスピードを追求する。

販売面ではオンラインストアの商品を充実させ、スマートフォンサイトには直感的に商品を探せるような仕組みを導入した。商品はセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの店舗(計4万3,000店)で受け取れる体制が整っている。

これら全ての取り組みが噛み合えば、顧客は自分の望んだ商品を、いつでも、どこでも買うことができるようになり、店舗に出向かなくてもコンビニで受け取れるようになる。

それでは、製造小売業から情報製造小売業へと変革を遂げた後のユニクロはどんな商品を売るのか。柳井氏に質問する機会があったので聞いてみた。

どんな商品を作るのか

作ったものを売る企業から、顧客が求めているものを理解して「それだけを売る」(田中氏)企業へと変貌を遂げるユニクロ。まず気になったのは、多くの顧客が求める最大公約数的な商品が増えるのか、求める顧客は少数でも面白い商品であれば作るのか、というポイントだ。これについて柳井氏は「両方ともできると思う」と即答。顧客の声が工場に届く仕組みを作れば、ロットに関係なく、求められている商品を作ることが可能との考え方を示した。

では、顧客が求めるものが、ユニクロとしては作りたくない商品だった場合はどうか。例えば、3回着ればダメになってしまうようなシャツでもいいので、100円くらいで売って欲しいというような要望が多かった場合だ。それについて柳井氏は、「(ユニクロが掲げる)LifeWearというコンセプトは変わらない。ベーシックで、トラディショナルで、今の流行を取り入れた商品という範疇は変えられない」と回答。顧客の声に応えることと、アパレルメーカーとして商品の質を担保していくことは両立できるというのが同氏の見立てだ。

ユニクロが有明に建設したオフィス兼物流センター「UNIQLO CITY TOKYO」は、同社が進める改革を象徴する存在。5,000坪のオフィスには商品づくり、マーケティング、物流など、上流から下流までの様々な行程に関わる社員が勤務する。新商品の投入サイクルを上げるには、部署横断の仕事を進められる体制が不可欠だ

顧客本位のビジネスが深化

筆者は以前、ユニクロが始めた「セミオーダージャケット」の取り組みを取材したことがあるが、その際に見たのは、マスブランドであるユニクロが、一人一人の顧客に寄り添ったビジネスを展開しようと方法を模索する姿だった。有明プロジェクトの説明を聞いて、同社が顧客本位のビジネスモデルを深化させようとしていることが確認できた。

情報製造小売業への転換。壮大な構想ではあるが、うまくいけばユニクロは大量生産、大量消費のファストファッションから脱却し、何か新しい小売業の姿を提示してくれる存在になるかもしれないと感じた。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。