レノボ傘下となったモトローラ、日本のスマホ市場で復活できるか

レノボ傘下となったモトローラ、日本のスマホ市場で復活できるか

2017.03.21

専用のモジュールで機能を追加できる「Moto Z」シリーズなど、特徴のあるSIMフリースマートフォンを次々投入しているモトローラ・モビリティ。かつては世界最大の携帯電話メーカーだったが、レノボ傘下となった現在、国内ではどのような戦略をもって再び存在感を高めようとしているのだろうか。

かつては世界一の携帯電話メーカーだった

安価な通信サービスをSIMのみで提供するMVNOの急拡大によって、参入メーカーが増え競争が激しくなってきたSIMフリースマートフォン。その成長著しいSIMフリースマートフォン市場に参入し、注目企業の1つとして挙げられるのが、米モトローラ・モビリティだ。

モトローラといえば、携帯電話の黎明期ともいえるアナログ携帯電話(第1世代、1G)の頃、高い無線技術を武器として携帯電話の小型化を進め、絶大な人気を誇った携帯電話メーカーの1つとして知られている。日本でも黎明期から携帯電話市場に参入しており、1G、2Gの時代に「MicroTAC」シリーズなど“名機”と呼ばれる携帯電話をいくつか投入し、人気を得てきた。

モトローラは1G、2Gの時代に、優れた無線技術を活用し端末の小型化を進め、トップシェアを獲得していた。写真はモトローラの"名機"と呼ばれる端末の1つ「StarTAC」

携帯電話のデジタル化が進んだ第2世代(2G)、そしてデータ通信の利用が拡大した第3世代(3G)の頃にはノキアやサムスンといった新興勢力にシェアを奪われるものの、それでも世界的には高い人気を維持し続けてきた。中でも2004年に投入した、薄型の折り畳み型携帯電話「RAZR」シリーズは世界的に大ヒットを記録。日本でもNTTドコモから投入され、ドルチェ&ガッバーナとのコラボレーションモデルが提供されるなどしたことで注目を集めた。

だがiPhoneの登場によるスマートフォンシフトでアップルとサムスンの2強体制が進むと、モトローラの市場シェアは急低下し、業績も大幅に悪化。その結果、モトローラは自治体や官公庁などに向けた無線機器やシステムを提供するモトローラ・ソリューションズと、コンシューマー向けの携帯電話事業などを手掛けるモトローラ・モビリティに分社化。その上で、アップルとの訴訟合戦に備えるべく携帯電話に関する特許を欲していたグーグルが、2011年にモトローラ・モビリティを買収したのである。

だがグーグル傘下でも、モトローラはスマートフォンで大きな成果を出すことができず低迷が続いていた。そこで2014年、グーグルはモトローラ・モビリティを中国のPC大手であるレノボに売却。現在モトローラ・モビリティは、レノボ傘下の企業となっている。

スマートフォン時代に入り、モトローラはAndroidスマートフォンを投入したものの販売は低迷した。写真はauから発売された、「RAZR」ブランドを冠したスマートフォン「 IS12M」

日本ではキャリア向けからSIMフリー市場にシフト

先の歴史にもある通り、モトローラはかつて世界的に強いブランド力を持ち、先進国でも知名度が高い。そこでレノボは、自社が強いブランド力を持つ中国や新興国などではレノボブランドでスマートフォンを投入しているが、欧米などでは既に知名度があるモトローラブランドを活用するなど、市場に合わせてブランドを使い分ける戦略をとっている。

日本でも、かつてモトローラブランドで携帯電話やスマートフォンがいくつか投入されてきたことから、モトローラブランドを主体として、市場開拓を進めていく方針のようだ。実際レノボブランドの端末投入は、法人向けのものや、グーグルのAR技術「Tango」を搭載したスマートフォン「Phab2 Pro」などごく一部にとどまっている。

レノボは日本でも、モトローラブランドを主軸に置いた販売戦略を実施。レノボブランドの端末はグーグルのAR技術「Tango」を搭載した「Phab2 Pro」などごく一部にとどまる

だがかつてモトローラが端末を供給していた大手キャリアは、現在iPhoneを主軸とした販売戦略を採っており、Androidスマートフォンの数は大幅に減らす傾向にある。しかも現在、日本におけるモトローラの知名度は決して高いとは言えないことから、キャリア向けのビジネスに再び入り込んで販売を伸ばすことは容易ではない。

そこでレノボは、急激に成長しており、しかも自社ブランドでの製品投入がしやすい、SIMフリースマートフォン市場にターゲットを絞り、モトローラブランドでのスマートフォン事業再構築を進めている。実は、モトローラ・モビリティがSIMフリースマートフォンを市場に投入したのは2014年からであり、比較的早い段階からこの市場に参入しているのだ。

とはいえ、最初に日本で発売されたSIMフリースマートフォン「Nexus 6」は、販路がグーグルやワイモバイル経由と限られていたし、2015年に発売された普及モデル「Moto G」の第3世代モデルや、2016年発売の「Moto X Play」も、販路を一部のECサイトやMVNOなどに限定していたことから、あまり目立つ存在とは言えなかった。日本におけるモトローラブランドでのスマートフォン展開を本格化したのは、昨年7月に発売した「Moto G4 Plus」からといっていいだろう。

SIMフリー市場への参入は後発に見えるモトローラだが、実は2014年より参入しており、「Moto G」の第3世代モデルなどを継続的に投入している

個性とラインアップは充実、今後の課題は販路

モトローラ・モビリティは、日本市場においては非常に特色のあるスマートフォンを積極投入し、他社との差異化を図る取り組みを進めてきた。実際Moto G4 Plusでは、他社に先駆けて3G・4Gの同時待ち受けが可能な「デュアルSIM・デュアルスタンバイ」(DSDS)に対応させ、日本で初めて実用的なデュアルSIM機構を実現したことから高い評価を受けた。同社の説明によると、Moto G4 PlusはSIMフリースマートフォン市場において、発売後8週連続で1位の販売シェアを獲得したとしている。

また、昨年10月に発売された同社のフラッグシップモデル「Moto Z」と、その低価格モデル「Moto Z Play」は、背面に「Moto Mods」と呼ばれる拡張モジュールを装着することで、スマートフォンにさまざまな機能を付与できるというコンセプトを導入。スマートフォンをハードウェアで拡張するという新しいアイデアをもたらしたことから、こちらも大きな注目を集めることとなった。

モトローラのフラッグシップ「Moto Z」は、背面に専用のモジュール「Moto Mods」を装着して機能を拡張できるのが特徴だ

そして3月16日には、新たに「Moto G」シリーズの最新モデル「Moto G5」「Moto G5 Plus」の2機種を、3月末に投入することを発表している。Moto G5は5インチ、Moto G5 Plusは5.2インチと手ごろなサイズで、価格的にも入手しやすいモデルとなっているが、Moto G5 Plusは撮像素子が位相差オートフォーカスも兼ねる「デュアルピクセルオートフォーカス」対応の、約1200万画素のカメラセンサーを搭載。より高速なオートフォーカスを実現しているのが、大きな特徴となっている。

3月発売の新機種「Moto G5」(右)と「Moto G5 Plus」(左)。Moto G5 Plusはデュアルピクセルオートフォーカスによって、メインカメラの高速オートフォーカスを実現している

レノボグループならではの事業規模を生かしつつ、Moto Modsのような独自性のある取り組みも進めることによって、モトローラ・モビリティは日本でもようやく復活ののろしを上げることができたといえよう。5~8万円台のMoto Zシリーズに加え、Moto G5シリーズの投入によって2~3万円台の価格レンジもカバーしたことで、ラインアップの充実度も大幅に高まり、他社と対等に戦う体制も整ったといえる。

同社にとって今後大きな課題となってくるのは販路だ。モトローラ・モビリティの端末は、大手家電量販店での取り扱いは進んでいるものの、SIMフリースマートフォンにとって重要な販路の1つとなる、MVNO経由での販路は他のメーカーと比べるとまだあまり進んでいない印象を受ける。SIMフリースマートフォンメーカー同士の競争も非常に激しくなっているだけに、ラインアップが他社に追いついてきた今後は、販売拡大のための戦略が大きく問われるところだ。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。