業務用冷蔵庫で攻勢をかけるパナソニック、ハスマンという重要カードの意味

業務用冷蔵庫で攻勢をかけるパナソニック、ハスマンという重要カードの意味

2017.03.21

パナソニックが、2016年4月に、米ハスマンを買収してから、まもなく1年を経過しようとしている。ハスマンは、スーパーやコンビニエンスストアなどに導入されている業務用ショーケースメーカーとしては、世界最大市場となる米国で、1、2位を争う企業だ。

パナソニックが高成長事業に位置づける「食品流通」の中核企業の1社であるとともに、2018年度までの戦略投資として計上している1兆円の2割弱となる1854億円を投資して買収。同社が成長戦略のひとつに掲げる「非連続投資による成長」の象徴的存在ともいえ、同時に、「グローバル経営を加速させるトリガー」とも位置づける。

CES 2017のパソナニックブースに展示されたハスマンのショーケース

日本における食品流通での実績に加えて、ハスマンの北米、中南米での取り組みによって、世界ナンバーワンのショーケースメーカーを目指す姿勢を示すパナソニック。ハスマンの買収はまさに戦略的買収であったといえるのだ。この米ハスマンとはどのような企業なのだろうか。

パナソニックの食品流通事業とは

パナソニックは、創業100周年を迎える2018年度に向けた中期経営計画のなかで、すべての事業を、「高成長事業」、「安定成長事業」、「収益改善事業」の3つに分類している。そのなかで高成長事業は、「積極的な非連続投資を行い、グローバルでの成長を目指す」事業と位置づけ、「リソースを大胆に拡充し、商品・営業力を強化する」方針を打ち出している。

そこに含まれる事業のひとつに「食品流通」がある。2016年度の事業規模は約3000億円。ショーケース、厨房機器、自動販売機、ディスペンサーなどを取り扱い、食品を産地から食卓まで、安定した温度管理のもとで安全に届けることを目指すコールドチェーン全体を網羅する事業体となっている。

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長は、「食品流通は市場成長率が高く、業界平均利益率が高い、好立地にあるビジネス」と位置づける。

食品を産地から、物流、小売店、食卓まで安全に届けることを目的とするコールドチェーン事業を軸に、食品スーパー、コンビニ、外食産業、飲料・食品加工・運輸(倉庫・物流)の5つの領域に展開。

パナソニックが買収した三洋電機が長年の実績を持つショーケース事業に、パナソニックの自動販売機事業のノウハウを融合。さらに、他のカンパニーが持つ空調機器や調理機器、決済端末、太陽光発電、蓄電設備、監視カメラなどを組み合わせることで、トータルソリューションとして提供しているのが特徴だ。

現在も、コールドチェーン事業の本社機能は、三洋電機東京製作所があった、群馬県大泉市のパナソニック アプライアンス社大泉地区事業所のなかにある。

群馬県大泉市のパナソニック アプライアンス社大泉地区事業所
大泉地区事業所でのショーケースの製造ラインの様子

日本における食品流通の実績では、ローソンと提携した取り組みが代表的だ。

大阪府守口市のローソンパナソニック前店では、CO2冷媒冷蔵ショーケースの導入や、太陽光発電や蓄電システムの導入、店頭および店内サイネージの導入のほか、2016年12月には、完全自動セルフレジ機「レジロボ」の実証実験を開始している。また、日本全国のコンビニに設置されている電子レンジは、ほとんどがパナソニック製だといえる。

コンビニに導入されているパナソニック製の電子レンジ。見た人ことがある人も多いだろう

パナソニックでは、「電子レンジなどの開発においては、コンビニやコーヒーショップとの連携だけでなく、食品メーカーとの連携による三位一体の製品開発体制を取ることで、コンビニに最適化した製品を提供できる」とする。

あるコーヒーショップに導入した電子レンジの場合、食品メーカーとの連携で、電子レンジに入れると薫りが立つバターに変えるといったことを行ったり、コンビニ向けのおでんウォーマーでは、IHの制御技術を生かして、食材に適した温度に対し、±5度の温度に制御できるという安定性を実現し、安全な環境と、おいしいおでんの提供に寄与している。

今後は、ネットショッピングなどの増加にあわせて、運送会社との連携により、食材を最適な環境で自宅まで配送できるコールドロールボックスの需要への対応にも力を注ぐという。

パナソニックは、日本では、ショーケース市場においてトップシェアを持つほか、中国、アジアでもトップシェアを獲得。「日中の事業基盤、幅広い商品群、多様な技術資産によって、市場をリードしている」(パナソニック)とする。

こうした日本、中国、アジアでの実績に加えて、米ハスマンの買収により、パナソニックが手つかずであった北米、中南米市場にも足がかりができ、世界トップのショーケースメーカーを目指す地盤が整ったともいえる。

ハスマンの強みとは

ハスマンは、1906年の創業以来、111年の歴史を持つ。パナソニックは、2016年4月に、100%子会社として買収。だが、法人格を維持し、経営陣もそのまま登用。約6000人の従業員も維持している。

2015年度実績で、ハスマンの売上高は約11億ドル。ここ5年で16%の成長を遂げている。売上げ構成比はショーケース事業が39%、施工およびサービスが30%、食品流通業界向けその他商材が18%、冷凍機が10%、後付部品が3%となる。

「創業以来、常に冷凍、冷蔵機器の市場をリードしてきた。我々のミッションは、市場にポジティブなインパクトを与え、食品小売業の未来を変えることにある」と語るのは、ハスマンのティム・フィギィCEO。「顧客を第一に考えること、常に挑戦し、顧客に正直であること、顧客ニーズに応えるために企業全体で取り組むこと、一人一人が経営者としての姿勢を持つことなど、パナソニックの経営理念に通じる方針を持っている」と続ける。

ハスマンのティム・フィギィCEO

ハスマンは、1917年に、氷と塩で冷やすことができる最初の肉用ショーケースを発売。1935年には、初のセルフサービス型冷凍食品用ショーケースを発売した。その後も、1947年の日配品向け多段ショーケース、1960年の冷凍食品用多段ショーケース、1973年の発泡材利用ハイバックの食肉用多段ショーケースの発売など、新たな製品を投入しつづけてきた。2000年にはインガーソールランドの傘下に入り、2011年にはクレイトンデュプリエ&ライスが資本参加。2016年にパナソニックの傘下に入った。

現在、米国に21拠点、カナダに2拠点、中南米が4拠点、アジアパシフィックなどに10拠点を持つ。さらに、R&D拠点として8拠点を有しているという。

ハスマンのフィギィCEOは、「ハスマンの強みは、冷蔵ショーケースを中心とした機器の提供だけでなく、店舗デザイン、施工、保守までをトータルに提供できる点にある。北米および中南米市場を中心に、顧客との緊密な関係を持っているのも強みであり、社員のなかには、小売店舗での勤務経験者も多く、現場の悩みや課題を理解している」と説明。

さらに、「我々は、ハスマンというブランドに誇りを持っている。そして、パナソニックグループとなったことで、シナジー効果が大きいと期待している。お互いの冷蔵・冷凍装置の技術を組み合わせることで、さらに優れた製品を開発できるだけでなく、太陽光発電やIoT技術など、ハスマンが持っていなかった商材を活用した提案ができるようになる。これにより、ハスマンは持続的な成長を遂げることができると確信している」と語った。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu