エコカー時代の“マツダらしさ”とは? 藤原専務に聞く電動化戦略

エコカー時代の“マツダらしさ”とは? 藤原専務に聞く電動化戦略

2017.03.22

SKYACTIVエンジンで飛躍的に内燃機関(エンジン)の燃費性能を向上させ、ガソリンのみならずディーゼルターボエンジンを市場に投入し、マツダは好評を得てきた。では、電動車両への取り組みはどうかというと、トヨタ自動車のハイブリッドシステムを活用した「アクセラ」のハイブリッド仕様はあるものの、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)の準備はない。

アクセラハイブリッド HYBRID-S L Package

米国カリフォルニア州では、メーカーに電動車両の販売を促す「Zero Emission Vehicle(ZEV)規制」の強化が2018年に迫っているが、2018年モデルとは、実は今秋から発売される新車を指す。マツダはどのようにZEV規制を乗り切ろうとしているのか。

米国で目前に迫る環境規制、マツダはどうする

2018年から、米国カリフォルニア州でZEV規制が強化される。それまでは大手自動車メーカー中心であった規制対象が、マツダや富士重工業(スバル)といった中堅自動車メーカーにも広がる。また、従来はZEVの一部に加えられてきたハイブリッド車(HV)が外され、適合車の対象となるのはEV、FCV、そしてPHVに限られることになった。昨今、ドイツ車をはじめとする欧州車にPHVが増えてきたのは、その対処のためである。

マツダが2007年に表明した「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」にはモーター駆動技術について記されている。すでにその時点で、マツダは電動化技術を将来的に導入していくことを伺わせている。しかし、SKYACTIVの新世代技術を全面的に採り入れた、第6世代商品群の第1弾となる「CX-5」が2012年に発売され、その2世代目が登場するまで時を経た今日に至ってもなお、電動車両への取り組みについては小飼雅道社長の表明のみで、現車はない。

2018年への対処が年内に迫る中、研究開発の取締役で専務執行役員の藤原清志氏に問うと、「2019年にEVを出します」との答えが返ってきた。「しかし2018年には間に合わないので、貯まっているクレジットや台数の先送りで対処します」と言う。

研究開発を担当する藤原専務

ここで少しZEV規制について解説しておく。

カリフォルニアの大気汚染対策を発端とする環境規制

ZEV規制は1990年代初頭にカリフォルニア州で法案として生まれ、それが修正を経ながら今日に至る。当初はカリフォルニア州の大気汚染を改善するための排ガス規制が目的だった。そこで排ガスゼロ、すなわちゼロエミッションという言葉が使われた。

当時のカリフォルニア州には公共交通機関の鉄道がなく、移動はほとんどが自家用車で、ほかにバスがある程度だった。そして、東に控えるシエラネバダ山脈によって海風が抑えられ、大気が平野部の市街地に滞留する地形である。クルマの排ガスはそこに停滞し、カリフォルニアの強い日差しによって光化学スモッグを起こす。1990年代初頭、カリフォルニア州で夜間に霧かと思った靄が排ガスによる光化学スモッグで、それが地上に降りてきていたり、海の上にスモッグが停滞していたりする状況を私は体験している。それほど大気汚染は身近だった。

そもそも、エンジンの排ガス対策を促す1970年代の「マスキー法」誕生も、カリフォルニア州の大気汚染を発端としている。

相次いでEV開発に乗り出した自動車メーカー

ZEV法案が出された段階で、米国ビッグ3はもちろん、トヨタ、日産自動車、本田技研工業が相次いでEVの開発に乗り出した。しかし、当時のバッテリー技術では実用に適した走行距離を達成したEVを市販するまでに至らず、規制内容はHVも受け入れるなど、たびたび修正を受けながら、徐々に規制強化の動きとなってきているのである。

販売台数を数値目標に定めるZEV規制の厳しさを語る藤原氏

そして、当初は販売台数の多い大手自動車メーカーのみが対象だったが、中堅以下の自動車メーカーも対象とするように強化され、今日を迎えている。排ガスゼロは、気候変動を抑制するための二酸化炭素(CO2)排出ゼロにも通じることになる。

2018年には販売する新車の4.5%をZEVとし、翌2019年には7%に、以後は毎年その台数が増えて、2025年には22%にまで比率を高めなければならないというのが、ZEV規制の行程だ。「その数字は自動車メーカーが生産すればいいというのではなく、販売台数であるところが厳しい」と、藤原氏も表情を引き締める。

また、このZEV規制はカリフォルニア州だけではなく、米国東海岸の7つの州(コネチカット州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州)にも広がる動きになっているのである。

規制対策ではなく、大義のための電動化

マツダの具体的な取り組みについて藤原氏は、「マツダは、そうした規制のためにEVなどの開発をしているわけではありません」と切り出した。「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言のときから、企業がなすべきは、地球温暖化(気候変動)をいかに抑制するかです。それが、大義です」と言うのである。

続けて、「まず世界にもっとも台数の多い内燃機関(エンジン)から解決していくのが、マツダの優先順位です。その燃料として石油を精製すれば、ガソリンだけでなく軽油も生まれます。軽油を、日本ではあまり使われないからと海外へ出せば、そこでCO2排出量を余計に増やすことになります。ですから、国内でもそれをきちんと消費できるように、ディーゼルエンジンの市場も育てていかなければならないと考えました」と藤原氏は語った。

それが、マツダのクリーンディーゼルエンジン車である。実際、マツダは日本市場においても、「デミオ」から2017年2月に発売した「CX-5」まで、5車種にわたってクリーンディーゼルエンジンを設定している。

「地域によってエネルギー事情が違い、たとえば北欧のノルウェーでは電力の100%を水力で賄っています。そうした地域では、効率の良い内燃機関よりEVの方がCO2排出量は少なくなります。その地域の市場からは、早くEVを出してほしいと催促されています。また、北欧諸国ではZEVに対する関税がゼロになる政策もとられています。カリフォルニア州であるとか、原子力発電のある国や地域では、EVの方が地球温暖化の抑制になります。そういう地域のために電動化をしていくというのが、次の順序です」というのが藤原氏の考えだ。

エコカー時代に脚光を浴びる「ロータリーエンジン」

2019年にEVを発売後、2021年以降にはPHVも追加していくことになるという。EVについては、車載バッテリーのみで走る仕様に加え、エンジンで発電し、それを駆動に使うレンジエクステンダーの車種も考えているそうだ。「BMWのi3と同じやり方です」と藤原氏。このレンジエクステンダー用の発電エンジンとして、世界で唯一、マツダが量産市販してきたロータリーエンジンを活用したいと話す。

BMW「i3」はEVだが2輪車用のエンジンも搭載しており、そこで発電した電力を走行に使うことで航続距離を伸ばす。これがレンジエクステンダーの仕組みだ

ロータリーエンジンによるレンジエクステンダーは、2013年の暮れに試作車によって公開された。それに私は試乗したが、騒音・振動が他のレンジエクステンダーエンジンに比べ明らかに小さく、後席に座ると多少エンジン音が耳に届く程度という完成度の高さだった。

藤原氏は、「マツダはロータリーエンジンを量産してきましたから、そのあたりの出来は他と違います」と胸を張る。そして、数多くの知見を持つ世界で唯一の企業であるマツダとして、ロータリーエンジンをいかしていけないかと期待を寄せる。

そこには、別の思いもあるという。

多様な燃料を使えるロータリーエンジンの可能性

ロータリーエンジンは、燃焼室が一般的なレシプロエンジンの丸いピストンと違い、四角い形状となるため完全燃焼が難しい。なおかつ、ローターの回転によって燃焼室が移動していくため、燃焼室の温度は冷えやすい傾向にある。そのため排ガス浄化においては、燃焼温度が低いことにより窒素酸化物(NOx)の排出は少ないが、炭化水素(HC)の排出量が多く、それはすなわち燃費がよくないという弱点にもつながっていた。

一方で、過去に発表された水素ロータリーエンジンは、水素でもガソリンでも稼動する。この開発で見えてきたのは、多様な燃料でエンジンを動かせる適応力の高さだ。藤原氏はクルマを走らせるだけではないロータリーエンジンの可能性を語る。

「地方自治体などの話を聞いてみると、災害に備え自前で発電機を準備するのは、日常的な維持管理を含め、費用負担や労力が大きすぎ、なかなかできないと言います。その点、燃料に多様性のあるロータリーエンジンを発電に使うEVのレンジエクステンダーがあれば、通常は業務にクルマとして利用でき、万一の際にはガス燃料でもロータリーエンジンは稼働させられるので、たとえば、地方はプロパンガスの需要が多いと思うので、災害時の短期間であればそれで発電し、電力を得られます」

ロータリーエンジンが今、新たな使命を帯びる

「コンビニエンスストアなども地方ではプロパンガスが設置されているでしょうから、日常的な配達などでレンジエクステンダー付きのEVを利用してもらえば、災害時には冷蔵庫などの電力を、プロパンガスを燃料に維持することができるので、数日間は救済の拠点などにできるでしょう」という藤原氏の言葉には説得力がある。

社会貢献につながるマツダのEV

従来、クルマの性能や機能を考えるときは走行性能にばかり目がいきがちだが、マツダの独自性にもつながるロータリーエンジンを発電用に活用し、EVとしての走行距離を伸ばしながら、万一の際には災害拠点の電力を賄うという発想は、電動車両ならではである。そこまでの広い視野で、藤原氏はマツダ車の電動化の道のりを考えているのだ。

実は国の行政でも、災害時の拠点として道の駅を1つの重点候補と考えている。というのは従来、災害時の拠点としての役割は役所や学校などが担ってきたが、大規模災害が発生したとき、そうした施設が幹線道路から離れているため、救援車両の出入りに不自由したという反省があり、幹線道路に面した道の駅が注目されるようになったのだ。そして現在、道の駅への急速充電器の設置が進んでおり、同時に、EVなどから施設への給電を可能にする設備の設置も検討・実施されつつある。

EVを導入すれば、このように、従来のエンジン車では考えられなかった社会貢献の可能性を広げることができる。気候変動の抑制を含め、社会や地域に貢献する大義がクルマに備わることになる。

中国で動き出す「NEV規制」

マツダの電動車両の開発は、やや遅ればせながらという状況もなきにしもあらずだが着実に進められ、あと1年ほどすれば、その全容が明らかになってくるのではないかと期待が高まる。

そんな中、電動車両への欲求は、米国だけでなく中国でも起こりはじめている。カリフォルニア州のZEV規制とほぼ内容を同じにする「New Energy Vehicle(NEV)規制」が、中国でも動き出そうとしているのである。

中国では2016年に40万台のEVが販売された。例えば日産・ルノーアライアンスが、2010年の「リーフ」発売から積み上げてきた累計35万台(2016年9月時点)という実績を、軽く超える台数をたった1年で達成したのである。

藤原氏も、「マツダはもちろん、世界の自動車メーカーが主力と考える市場は、米国と中国です」と述べる。自動車市場の1位中国と2位米国であり、EVは巨大自動車市場に不可欠な商品となっていく運命にある。

世界中の自動車メーカーが重要市場に位置づける中国。マツダは「CX-4」で「2017中国カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞している

小規模メーカーこそ電動化が急務

なぜ、中国がそこまでEVに熱心になるのか。それは、以前のカリフォルニア州と同じように、北京をはじめ中国国内で発展する都市の多くが、大気汚染による健康被害に悩まされているからである。

大気汚染の原因は、必ずしもクルマの排ガスだけではない。国民生活を支える電力の発電に、石炭火力が使われていることも大きい。経済をさらに発展させ、国を繁栄させ、国民生活の文明化を国全体に拡大するには、石炭火力からの脱却が不可欠なのである。そこで注目されているのが原子力発電だ。400基という膨大な原子力発電所の建設計画とEVの導入は、中国が発展を成し遂げるうえで中核事業に据えるものだ。

また米国も、1979年に起きたスリーマイル島の事故以来中断してきた原子力発電所の建設に動き出している。それが、いま問題となっている東芝のウェスティングハウス買収と、それによる不採算にも関わっている。

これまで京都議定書に調印してこなかった世界最大のCO2排出国である中国と、2位の米国。両国がパリ協定に調印できたのも、そうした原子力発電事業の見通しがあるからだ。

いま、世界のほとんどのクルマはエンジンで走っている。だが、米国と中国でEVが普及し始めたら、他の市場でもEV化を進めなければ、自動車メーカーはエンジンとモーターという2つの生産体制を持ち続けなければならなくなる。それは、小規模な自動車メーカーにこそ難しい話であろう。EVへの転換をいかにうまく進めるか。マツダを含め、世界の自動車メーカーの正念場は目前に迫っている。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。