IoT時代に合わせた「多接続」を実現する5G、ビジネスでの課題とは

IoT時代に合わせた「多接続」を実現する5G、ビジネスでの課題とは

2017.03.22

次世代のモバイル通信方式「5G」で、従来と異なる進化を見せているのが、1つの基地局に同時接続するデバイスを大幅に増やすことだ。IoTの広まりを受けて求められるようになった5Gの同時接続数だが、5Gではこれをどのような方法で実現しようとしているのだろうか。また5Gの通信をIoTのビジネスに結び付ける上で、課題はどのような点にあるだろうか。

IoT時代を迎え、5Gでは100倍の同時接続数を実現

携帯電話に用いられるモバイル通信の進化を振り返ると、第1世代(1G)から第2世代(2G)までは音声通話の品質向上、第3世代(3G)から第4世代(4G)まではデータ通信の高速・大容量化が大きなテーマとなっていた。だが第5世代となる「5G」では、4Gまでの高速・大容量だけでなく、新たな進化の方向性も求められている。

それが「同時接続数」だ。同時接続数とは、要するに1つの携帯電話基地局に対し、いくつのデバイスを同時に接続できるかということ。これまでの進化では同時接続性を求められることはなかったのだが、5Gではこの同時接続数を、LTEの100倍以上になることを目指すとしている。

なぜ、5Gでそれだけの同時接続数を実現する必要があるのかといえば、それはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の広まりにある。あらゆる機器がインターネットに接続することで新しい価値が生み出されるとして、大きな注目を集めているIoTだが、当然のことながら、インターネットに接続するためには何らかのネットワークが必要になる。

現在、IoT向けのネットワークとしてはWi-Fiのほか、通常の携帯電話網が用いられていることが多い。だがWi-Fiでは利用できるエリアが限られることから、日本や欧州などでは携帯電話網や、そこから派生した通信規格がIoT向けネットワークの利用の中心になると考えられているのだ。

しかしながら現在の携帯電話網は、あくまで携帯電話やスマートフォンで利用することを想定しているため、多数のデバイスを同時に接続する設計とはなっておらず、IoT機器が急増した場合は対応に限界がある。それゆえ5Gではあらかじめ、IoTで携帯電話ネットワークが多く利用されることを想定し、LTEの100倍以上の同時接続数を実現するという仕様設計がなされているのだ。

ソフトバンクによると、LTEの基地局当たり同時デバイス接続数は1000程度で、10万基地局でも同時に1億デバイスしか接続できないとのこと。1兆接続を超えるIoT時代には対応できないという

同時接続数拡大の基礎となる「NB-IoT」

では一体、5Gではどうやってそれだけ多くの接続数を実現しようとしているのだろうか。その方法は、現在の4Gに向けて導入が進められている、IoT向けの通信方式から見て取ることができる。

そもそもIoT機器は、スマートフォンのように頻繁に通信したり、動画のような大容量コンテンツをストリーミング視聴したりするなど、高速・大容量通信が求められることがほとんどない。既に存在する、自動販売機や電気・ガスなどのスマートメーターに導入されている通信モジュールの例を挙げると、これらは1日に1~数回程度、売上や使用量などを送信するだけでよく、通信する容量や時間が非常に短くて済むのだ。

そうしたことから5Gでは、スマートフォン向けの高速・大容量通信環境だけでなく、IoT機器向けの低速・小容量の通信環境も提供することにより、同時接続数を増やそうとしているのだ。そうしたIoT向けの通信規格として、昨年モバイル通信の標準化団体「3GPP」で仕様が定められたのが「NB-IoT」であり、5GでもこのNB-IoTをベースとしてIoT向けの環境作りが進められると見られている。

NB-IoTはLTEのネットワークを使いながらも、あえて200kHz程度という非常に狭い周波数帯域を用い、通信速度は最大で下り26kbps、上り62kbps程度と非常に低速な、IoT専用の規格だ。通信速度こそ遅いが、使用する帯域幅が狭ければ、それだけ多くの機器に帯域を割り当てられ、同時に多数の機器を接続できるようになるわけだ。

他にもNB-IoTは、既存のLTEネットワークでも利用できる仕組みであることから、全国くまなく広いエリアをカバーできるメリットがある。しかも通信間隔を長くすることで消費電力も抑えることが可能で、バッテリーを充電することなく10年程度は通信ができるなど、IoT機器での利用に向けた多くのメリットを持つ。それゆえ今年以降、NB-IoTの導入は世界的に進むと見られている。

ソフトバンクは、5Gの技術を先取りして活用する「5G Project」の一環として、NB-IoTなどLTE向けのIoT通信規格を、今年の夏より順次導入することを打ち出している

コスト圧力が強いIoT向け通信で高収益を得る環境を作り上げられるか

IoT向けに同時接続数を増やす上では、NB-IoTのような無線通信部分の技術だけでなく、携帯電話のネットワーク全体を制御する、コアネットワークに関しても新技術の導入も検討されている。その一例となるのが、サービスによって求められる要求条件に応じて、ネットワークを仮想的に分割して用いる「ネットワークスライシング」という技術だ。

例を挙げて説明すると、従来はスマートフォン向けの高速・大容量通信と、IoT向けの低速・多接続通信を1つのネットワークで処理していたが、ネットワークスライシングによってそれを仮想的に分離した別々のネットワークで処理する。これによってスマートフォンとIoT、それぞれに適したネットワークのカスタマイズが可能になり、より効率よく快適な通信が実現できるようになるわけだ。

コアネットワーク側には「ネットワークスライシング」という技術を導入し、IoT向けの通信を分離して、IoTに適したカスタマイズを施すことも検討されている

こうした技術の導入によって、5GではIoTの利用に適した同時接続数を実現しようとしているが、コンシューマー向けのIoT機器はまだそれほど多く出回っているわけではないことから、その利活用は法人向けが主体になってくると考えられる。特にシンプルな情報を送信するメーターやセンサー系デバイスなどには、5Gの通信モジュール導入が急速に進む可能性がありそうだ。

だが実際に普及が進む上では、ビジネス面でいくつかの課題あるようにも感じる。中でも大きいのは、IoT向け通信モジュールの価格や、通信サービスの料金設計など、料金に関する課題だ。というのもIoTでは非常に多くの機器で通信を利用することから、導入・運用コストが従来よりはるかに安い価格でないと利用は広まらないため、導入する企業側からのコスト圧力が強くなると考えられる。

一方でモジュールを提供する企業や、通信事業者としては、コストが安いと利益が出しにくく、利用するデバイスが増えても収益面でのメリットがあまり得られない。それだけに、5GでIoTの利活用を進める上では、通信環境やモジュールの整備に加え、付加価値となるデバイスやサービスなどで売上を高められる仕組みを構築するなど、IoTでいかに高い収益を上げるかという、仕組み作りも求められることになりそうだ。

IoT機器向け通信には低コストが求められる傾向が強い。実際、NB-IoT向けの通信モジュールは1つ当たり5ドル程度のコストが要求されているという
新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。