実現すれば、世界中の小売店を制覇!? パナソニックの戦略とは

実現すれば、世界中の小売店を制覇!? パナソニックの戦略とは

2017.03.22

パナソニックが、2016年4月に、米ハスマンを買収してから、まもなく1年を経過しようとしている。ハスマンは、スーパーやコンビニエンスストアなどに導入されている業務用ショーケースメーカーとしては、世界最大市場となる米国で、1、2位を争う企業だ。

パナソニックが高成長事業に位置づける「食品流通」の中核企業の1社であるとともに、2018年度までの戦略投資として計上している1兆円の2割弱となる1854億円を投資して買収。同社が成長戦略のひとつに掲げる「非連続投資による成長」の象徴的存在ともいえ、同時に、「グローバル経営を加速させるトリガー」とも位置づける。

CES 2017のパソナニックブースに展示されたハスマンのショーケース

そして、日本における食品流通での実績に加えて、ハスマンの北米、中南米での取り組みによって、世界ナンバーワンのショーケースメーカーを目指す姿勢を示す。パナソニックにとっても、まさに戦略的買収であったといえるものだ。このハスマンとはどのような企業なのかは、先に述べたとおりだ。今回は、米国市場でのハスマンの取り組みを追った。

店舗設計からの密着したサポート

米国で、アジア系食材を中心に取り扱う食品スーパーの「99ランチマーケット」は、ハスマンのショーケースを導入している。

99ランチマーケット

全米に43店舗を展開している同店は、米ネバダ州ラスベガスにも3店舗を出店。2015年10月に出店した最新の店舗は、近隣にベストバイなどが出店するエリアにあり、開店時からハスマンを導入している。

約2800平方メートルの店内は、生鮮食品、魚介、精肉、野菜、デリカ、ベーカリーなどのコーナーにわかれ、1万品目以上を取り扱っている。これらのほとんどのコーナーに、ハスマンの冷蔵ショーケースや冷凍ショーケースを導入。店舗全体では、約70台規模になるという。また、冷凍食品などを保存するウォークインフリーザーと呼ばれる倉庫にもハスマンの製品を利用している。

魚介コーナーでは、鮮度を高く保った状態で店頭に並べることができ、野菜コーナーの温度も最適に管理できるように

2階のコントロールルームから、店舗内全体の空調やショーケースを管理。ウォークインフリーザーやショーケースなどでは、自動温度調整機能が働いているが、万が一、不具合が発生した場合にはアラームが発生し、すぐに対応できるようになっている。

温度管理を行っている。不具合が発生するとアラームが出る

「店舗内は日々柔軟にレイアウトを変更するようにしている。そうした時にも柔軟に移動させられるショーケースが必要。その点でもハスマンのショーケースは適した設計になっている」と、99ランチマーケットを運営するTAWAスーパーマーケット(大華超級市場服務有限公司)のジョンソン・チェン副会長は語る。

TAWAスーパーマーケットのジョンソン・チェン副会長

だが、チェン副会長は、「ハスマンの製品は、温度管理に優れていたり、省エネ効果があったり、あるいは環境にも優しい製品である点が特徴だが、なによりも密着した形でサポートしてくれる点を評価している」と強調する。

新店舗の建設計画を立案する段階からハスマンも参加。「グランドオープン時まで一緒に仕事をしてくれるのがハスマンの体制。その後の保守、メンテナンス体制にも評価をしている」と続ける。故障が発生した場合には、サービス拠点から直接駆けつけられる体制も整備している。

さらに、チェン副会長は、「設計段階から一緒に仕事を開始できることから、それぞれの店舗にあったショーケースづくりのために、柔軟なカスタマイズにも対応してもらえるメリットがある。各売り場のショーケースも、様々な種類の食材を置けるように工夫を凝らすことができている」とする。

たとえば、同店の精肉コーナーに導入した冷蔵ショーケースでは、ショーケース内の肉を店員が取り分けて販売できる構造とともに、袋に入れられたお買い得の肉は、来店客が自ら取れるような構造も取り入れたものになっている。こうしたカスタマイズも、緊密な関係によって実現したものだという。

精肉コーナーで手前に来店客が自由に取れるスペースも用意

ハスマンが北米市場で受け入れられている理由のひとつが、こうした顧客との緊密な関係づくりに力を注いでいる点だといえそうだ。

カギとなる3つのポイント

では、パナソニックは、今後の食品流通への取り組みをどう描いているのか。

ひとつは、パナソニックとハスマンとのさらなる連携の強化である。

ハスマンのフィギィCEOは、「パナソニックの傘下に入ったことで生まれるシナジー効果は大きい。IoT技術の活用やサービス連携など、パナソニックが持つ技術を活用することで、これまでにない提案ができる。新たな扉を開くことができる」とする。

フィギィCEOは、現在、パナソニックと共同で、CO2冷媒を使用した冷蔵ショーケースを開発し、これを遠隔地から管理するシステムと組み合わせて、北米市場に向けた新製品を投入する計画を明らかにした。

「これは新たな冷蔵システムであり、今後24カ月以内に発売する予定だ」と語る。

「日本の小売店は小規模店舗が多い。北米市場の規模にあわせた大型化が必要であり、パナソニックの技術を活用して、北米市場に最適化した製品として投入する。だが、北米にも小型店舗がないわけではない。そのあたりにもパナソニックのノウハウを活用したい」とする。

ハスマンのティム・フィギィCEO

パナソニックでは、店舗向け遠隔データサービス「s-cubo」を活用し、設備管理やメンテナンス、予防保全などのサービスを提供している。同様のサービスを米国でも展開する予定であり、「日本での実績を学び、商品化を進めたい」としている。

2つめはソリューションの強化である。これまでは機器の販売を中心となっていたが、食品流通のトータルソリューションとしての提案を加速する。

たとえば、小売店向けの場合、先の記事にて触れたローソンの事例のように、冷蔵ショーケースのほかに、太陽光発電や蓄電システム、サイネージ、セルフレジなどの導入を図っているが、こうした動きはこれから加速しそうだ。パナソニックが持つ商材を組み合わせることは、競合他社にはできない提案にもつながる。

そのためには、アプライアンス社以外のカンパニーを超えた連携も鍵になってくる。また、国内のコンビニでは、年間の出店数が多いため、その動きにあわせた事業スピードを持つ必要がある。そうした体制づくりが、今後の課題といえそうだ。

そして、3つめは、新たな冷媒技術の活用である。

冷蔵ショーケースなどには、これまで特定フロンや代替フロンが使用されてきた歴史があり、オゾン層破壊や温室効果といった環境への負担が課題となっていた。

周知の通り、世界的にフロン撲滅の動きがあり、先進国においては、2020年までに特定フロンを全廃。2036年までに代替フロンを85%減とすることが決められている。パナソニックでは、新たな環境規制を見越してCO2冷媒に対応した製品を2011年から製品化。ラインアップを拡大しており、2017年も、コンビニなどでの平置きショーケースに対応した12馬力モデルを投入。制度に先駆ける形で、地球温暖化防止に向けた対応を図っている。

パナソニックが、ハスマンと共同開発している北米市場向けの冷蔵ショーケースもCO2冷媒を使用したものであり、ハスマンとしては初のCO2冷媒の製品。パナソニック全体として、こうした動きを加速する考えだ。

さらに、IOTやクラウドを活用したサービス提案にも力を注ぐ考えだ。

日本では、ECHONET Liteを業務用に展開。ERMOS(エレモス)による遠隔運用サービスにより、ショーケースの温度を時間ごとに管理をしており、安定的な運用を実現するとともに、予防保守などにも活用していく考えだ。現在、ERMOSは、国内では約2000店舗で導入されており、アジアや中国などにも展開を開始している。ハスマンでは、温度管理のサービスは提供していないが、今後、同様のサービスを開始することになる。

パナソニックの津賀一宏社長は、「食品流通事業を、BtoBソリューションの柱にしたい」と語り、2018年度以降には、約4000億円の売上高を目指す方針を示している。

ハスマンのティム・フィギィCEOも、「パナソニックとの連携により、未来を作ることができる。食品・流通分野における世界ナンバーワン企業を目指す」と意気込む。

成長事業としてのポジションや、世界ナンバーワンシェアを実現するためには、世界最大のショーケース市場である米国におけるハスマンの事業成長が目標達成を左右するのは明らかだ。

実際、食品流通の設備事業は全世界で7兆円の市場規模があるとされ、そのうち、2兆円強が北米に集中する。

パナソニックの技術やノウハウが、ハスマンにとって、成長に向けたアクセルとなるのかがこれから注目される。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。