シャープ業績回復の原動力、鴻海流経営の中身

シャープ業績回復の原動力、鴻海流経営の中身

2017.03.22

シャープが2017年3月13日に大阪府堺市の同社本社で行った社長会見は、シャープの業績回復が順調に進んでいることを裏付けるとともに、鴻海流による改革が、その原動力となっていることを示すものになった。

シャープは、2016年度業績見通しが、営業利益および経常利益で黒字化する見通しを明らかにしている。通期の最終黒字化は来年度以降になるが、それでも第3四半期(2016年10~12月)は、最終黒字化し、着実に成果をあげている。

シャープの戴正呉社長

シャープの戴正呉社長は、「業績の数字は問題にはしていない。株価も気にしていない。内部統制と、構造改革の推進を重視している。構造改革においては、経営資源の最適化、責任ある事業推進体制、成果に報いる信賞必罰の人事制度の3点から取り組んだ」と、成果の要因を示すが、数字はしっかりとついてきている。

シャープは2015年度には、448億円の営業赤字と、2223億円の最終赤字を計上していた。そのシャープが、ここまで回復した理由はなにか。

それはひとことでいえば、鴻海流ともいえる経営手法が浸透してきたことに尽きるだろう。

鴻海流投資への考え方

鴻海流といえる手法のひとつは、投資に対する考え方の浸透だ。

戴社長は、「私は300万円以上のものはすべて決済する。この半年間に、2000件を決裁してきた」とする。

判断のポイントは、この投資が必要なのか、それに至るプロセスはどうなっているのかという点だという。「最初の2カ月の合格率は20%以下。いまでは、7~8割に合格率が高まっている」と戴社長。それまでの投資への提案内容が甘かったこと、そしてこの半年間で、投資に対する社員の意識が変化してきていることを示唆する。

「私は、かつての経営陣のように150億円もの減損が発生するような案件を、精査をせずに決済はしない。カンパニー長にも任せない。そこが以前の経営とは異なる」と語る。

今回の会見は、新たに設置した「集会室」を初めて外部に公開したが、これは、シャープの独立経営時代には、車寄せだった部分。戴社長は、「クルマが2台止まる車寄せだった部分を改装したものであり、そこにガラス窓とカーペットを張っただけで、大きなイベントを行えるスペースを、低コストで作ることができた。今後、記者会見や株主総会にも使える」などと、同じ話を数回繰り返した。これが鴻海流の考え方なのだろう。

会見が行われた「集会室」車寄せだったとは……

そして、こんな言い方もする。

「3月12日に、サウジアラビアの国王が来日したが、専用機から降りる際のタラップがエスカレータになっていた」と前置きし、「本社入口に2階に通じるエスカレータがある。ここにエスカレータが必要なのか。ここは、シャープであって、サウジアラビアではない。この場所に、エスカレータは必要ない」と、冗談混じりに不要な投資が多いことを指摘する。

投資に対する鴻海流ともいえる考え方は、こんなところからうかがい知れる。こうした考え方が全社に浸透しようとしているわけだ。

鴻海とのシナジー効果

2つめは、鴻海とのシナジー効果だ。これも鴻海傘下だからこその成果が生まれている。

すでに、鴻海の拠点を活用した、シャープブランド製品の生産はいくつか開始されている。たとえば、超軽量のスティック掃除機として国内で話題を集めているラクティブエアも鴻海の拠点で生産されたものだ。

さらに、物流面でも鴻海のグローバルネットワークを活用することでのコストダウン効果もある。今後、中国や欧州市場への販売拡大においても、シャープにとっては、メリットになるだろう。

それ以外にも、鴻海との連携によって、いくつかの成果があがっている。

たとえば、かつての経営体制下において、経営不振の打開策として、スロバキアのUMCに、シャープブランドをライセンス供与する契約を締結。欧州市場からは事実上撤退をしていたが、鴻海傘下に入ってから、UMCの株式を56.7%取得して、逆に子会社化するという大鉈を振るい、UMCを通じて、シャープ製品を直接販売できる体制を作り上げた。

「今後、欧州市場においては、テレビだけでなく、様々なシャープブランドの製品を出していきたい」とする。

さらに、ビジネスソリューション事業では、スイスの複写機販売会社「フリッツ・シューマッハー」を買収。欧州での複写機販売も弾みをつける考えだ。こうした買収戦略も、シャープの独立経営時代にはなかった、鴻海傘下ならではの成果である。

また、戴社長は、こんなことも指摘する。

「かつてのシャープには、資金がなかったため、取引先が心配して取引価格を値上げしていた。だが、それが解消したため、コストダウンが図れた。また、シャープは外部の情報が入りにくく、取引先に言われるままの価格で契約をしていたことがあった。こうした取引も改善できた」

シャープには、不平等な契約が数多く存在すると戴社長は語る。

なかでも、太陽光事業におけるポリシリコン材料調達の契約の不平等さを指摘する。「この契約によって、シャープの太陽光発電は赤字になっている。技術や製品のすばらしさや、社員のがんばりとは関係がないところで赤字になっている」とする。

鴻海の力をバックに、不平等な契約も見直しを迫っているのが現状であり、シャープの野村勝明代表取締役副社長は、「過去には不平等な契約もあり、体質として回収ができず、赤字となっていた部分もあった。この半年でしっかりと見直し、コストダウン効果が生まれており、これが収益改善に寄与している」と述べる。

中国市場で反転攻勢へ

戴社長は、太陽光事業におけるポリシリコンの調達などにおける契約を指しながら、「大規模な減損を出さなくてならないような契約を結んだ人たちには責任がないのはおかしい。サインはルールではなく、責任である。私は簡単には契約をしない」などと、過去の経営陣の責任について、厳しい口調で迫る。

戴社長は、いまから5年前に、鴻海がSDPに9%を出資した当時を振り返りながら、「そのときに、私たちは経営管理委員会を設置しようと提案した。これによって、シャープを改造できていれば、いまのようにはなっていなかった。その時からアドバイスができたはずだ」と悔やむ。そして、「過去7年の業績悪化の責任は社長にあった」と断言。過去の経営陣のやり方を強烈に批判してみせた。

堺工場のあるグリーンフロント堺

一方で、今後も中国市場などにおいて、鴻海の生産体制や販売網を生かして、事業拡大に乗り出す考えを示す。これも鴻海流ならではの仕掛けだ。

「昨年2月24日に、シャープは約3500億円の偶発債務が判明したことを発表したが、私がチェックをしたら、そのうちの半分の要因が中国であった。これは、リベートや税金、コストなどによるもの」とし、「日本と中国は文化が違う。だが、鴻海は中国市場に強い。中国市場は鴻海にサポートしてもらいたいと考えており、コンシューマ向け製品の製造、販売を鴻海に任せることができる」などと語った。

戴社長は、「昨年4月2日の記者会見では、2~4年で黒字化するという目標を掲げたが、9月13日までの1カ月間にチェックをした結果、いろいろと手を打てば、黒字化できると考えた」と、シャープの体質の甘さを指摘。これまでの経営革新によって、投資削減で300億円、鴻海とのシナジー効果を含む費用削減で370億円、和解金や事業譲渡などの一過性収益で183億円の効果があることをあげてみせた。

「信賞必罰」の人事制度の中身

そして、もうひとつ、鴻海流として見逃せないのが、戴社長が掲げる「信賞必罰」の人事制度だ。

戴社長が、「普遍な経営ポリシー」とするこの制度は、「成果をあげた人にしっかりと報いる」のが基本方針。さらに、「優秀な人材や若手人材の活躍を後押しする仕組みへと改革し、年齢構成を是正する」という考えを打ち出す。

新たに発表した信賞必罰をベースにした賞与改革では、2017年度の賞与として、年間4カ月分を原資に設定。業績貢献に応じて、最大8カ月から最低1カ月で分配。8倍の格差をつけたメリハリがある賞与を支給する。まさに、「成果をあげた人にしっかりと報いる」制度だ。

さらに、特別な貢献が認められる社員には、社長特別賞を支給。「1、2万円程度のレベルのものではない。もらってびっくりする額」(戴社長)とする。

3月24日には、2回目となる社長特別賞を支給する予定であり、「約500人が対象になる」という。つまり、500人の社員にびっくりするほどの金額が支払われることになる。

そして、「入社まもない新入社員にも、やりがいがある仕事に挑戦する機会を提供し、優秀者には入社半年後でも大幅な給与引き上げを行う」とし、能力と責任、貢献次第では、5万円も昇給する場合があるという。

成果をあげていない人、そして年齢を重ねた社員には、厳しい人事制度であるが、戴社長は、意に介さない。

「去っていく人はかまわない。いまの経営陣と一緒にやりたいと思う人が残ればいい。シャープには白髪まじりの人が多かったが、シャープの平均年齢を45~46歳程度に是正したい」と述べた。

さらに採用戦略として、通年採用や第2新卒の採用を拡大。2018年4月の採用者は、2017年4月に比べて倍増を計画しているという。加えて、「シャープは3年間に渡って、研修を行ってこなかった。これからは細かくやっていきたい」と述べた。

IoTの企業を目指す

一方で、シャープそのものの変革にも言及する。

「これまでのシャープは家電メーカー。私は、シャープをIoTの企業にしたいと考えている」とし、「目指しているのは、『人に寄り添うIoT企業』。この実現は私の使命である」とコメントする。

「日本のすべての電機メーカーが、家電メーカーと呼ばれることが似合わなくなっている。シャープも、これからは、IoTの企業に転換しなくてはならない」とし、「人に寄り添うというのは、我々が市場に送り出す製品が、人がすぐに使え、より緊密な関係を持ちたいという意味がある」と位置づけ、「IoTのビジネスは、中核になるのは家電だが、それだけでビジネスをするのではなく、エコシステムとしてビジネスを捉えたい。ソフトウェア、コンテンツ、AI、ビッグデータなどを組み合わせたエコシステムによって、新たなビジネスモデルを作り上げたい」と語る。

しかし、その推進役を果たす拠点は中国に置く。

「日本の市場は、IoTでは遅れている。日本はITの活用においては先進国ではないということを認識しなくてはいけない」とし、中国・深センに商品開発センターを新設。この拠点を核にした取り組みを進める考えだ。

「IoTを原動力とし、スマートホーム、スマートオフィス、スマートファクトリー、スマートシティを対象にビジネスを成長させる。ここでは、鴻海との連携が重要になる」とし、「商品開発ばかりのビジネスモデルから転換し、事業という観点から全体のビジネスを考え、会社の将来、事業の将来までを考えるビジネスモデルにしていく」というのが、今後のシャープの姿と位置づける。

国内は合格、海外は不合格

戴社長に、これまでの7カ月間の経営について、自己採点の結果を聞いてみた。

「10点満点中6点」と戴社長は語り、「国内は合格点だが、海外は不合格」とする。

4月から始まる2017年度には、欧州市場におけるシャープブランド製品の展開強化、ASEANでのラインアップ拡大、中国市場での鴻海との連携による体制強化、そして、米国市場での体制の立て直しなどにも挑む考えを示す。

とくに、米国では、前経営体制下において、米国市場におけるシャープブランドのテレビ販売のライセンスを中国ハイセンスに供与。「私は、いまはなにもできない状況にある」(戴社長)とする。

だが、戴社長は、この改革にも意欲的だ。

「経営は難しいことにチャレンジするものである。ハイセンスとの話し合いも、ネゴシエーションが大切。がんばればできるといった気持ちを持っている」とする。

米国では、液晶パネル工場建設計画も浮上しており、これを最大限生かすためにも、米国市場において、自らがシャープブランドを販売できる地盤づくりは急務といえる。

シャープといえば世界の亀山工場

「ここ2~3年のシャープは、守りが多かったが、これからは攻めの戦略へと転換する。そのためには、既存領域に留まらず、技術への積極投資、グローバルでのブランド強化、新規事業の加速という3点から取り組むことになる。詳細については、5月中旬に発表予定の中期経営計画において説明する」と、戴社長は述べる。

シャープが回復基調にあるのは明らかだ。だが、過去には、黒字化しては赤字に陥るという事態に陥ったこともあり、外野からみれば、将来の業績に対する不信感はいまだ払拭しにくい。しかし、鴻海流の経営手法の導入で、シャープの企業体質が変化しているのは明らかだといえるだろう。

その上で描かれる5月中旬に発表予定の中期経営計画の内容はどうなるのか。次は、鴻海流の攻めの戦略の描き方が注目される。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。

AIを活用したVTuberアプリ「GooMe」デビュー! スマホ1台で配信可能に

AIを活用したVTuberアプリ「GooMe」デビュー! スマホ1台で配信可能に

2018.11.14

バーチャルタレントのライブ配信アプリ「GooMe」

先行体験版の募集を11月13日に開始した

独自のAIによって、スマホ1台でモーションキャプチャーが可能に

最近、バーチャルYouTuber(VTuber)の動画を目にする機会が増えた。毎日とまではいかないにしても、かなりの高頻度で更新している人もいる。現実的に考えると、モーションキャプチャーセンサーやVRデバイスなどで動きをつける必要があるので、1本の動画を制作するにしても、そこそこの作業負担が発生しそうだ。

え、VTuberはあくまでVTuberであって、“中の人”なんて存在しない?

もちろんそうだ。

だが、その話はいったん置いておいて、今や一般ユーザーがバーチャルタレントとして動画を投稿できる時代。センサーなどが必要だと、個人はなかなか手を出せなくなってしまう。

そんななか、スマートフォンアプリなどの開発を手掛けるトライフォートは、11月13日、バーチャルタレントライブ配信アプリ「GooMe」の先行体験版募集を開始すると発表した。本稿では、GooMeの概要を説明するとともに、記者発表会の様子をお伝えする。

センサーなしでバーチャルアバターを思いのままに操作

GooMeは、バーチャルキャラクターの動画配信と視聴を1つのアプリで楽しめるというサービス。モーションキャプチャーのセンサーやVRデバイスといった大がかりな設備がなくても、「スマホのインカメラで撮った映像をAIがリアルタイムに解析する技術」によって、バーチャルキャラクターの表情や体の動きをiPhone1台で操作することができる。

具体的には、アプリを起動させたスマホの前でポーズを取れば、AIが画像解析を行い、自動でそのポーズのモーションデータを作成してくれるというわけだ。

視聴者は、配信動画を観て楽しむだけでなく、配信者に対してギフティングやコメントをすることができる。サービスのローンチ初期は、スタンプを送るといった簡単なギフトを想定しているが、将来的にはアバターが触れられるようにギフトを3D化する予定。例えば「ボールをバーチャルの空間内で投げ合う」といった新しい体験を提供できるようにするという。なお、ギフティング収益の一部は配信者に還元される。 

GooMeのサービスイメージ

アバターのカスタマイズでは、顔、髪型、コスチュームそれぞれ5種類のなかから選ぶことができるが、今回の先行体験版ではランダムにアバターが生成される。

トライフォート 取締役 スマートフォンアプリ事業本部 本部長の安川昌平氏は「VRMという、ドワンゴさんが提唱している統一フォーマットに対応することで、他社サービスのアバターも使えるようにするつもりです。さらに、我々は凸機能と呼んでいるのですが、同じバーチャル空間にほかの配信者が参加できるような機能も検討しています」と、今後実装予定の機能を紹介した。

トライフォート 取締役 スマートフォンアプリ事業本部 本部長の安川昌平氏

先行体験版アプリは、同社のHPで申し込み可能。配信はまだできないが、AIを活用したリアルタイムのモーションキャプチャーを体感することができる。先行体験版アプリを利用できるのは、iPhone X、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XR(iOS 11.2以上)だ。

11月下旬にリリース予定のβ版では、iOS 11.2以上のiPhone X、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XRで配信機能を利用でき、iOS11以上のiPhone6、iPhone6plus、iPhone6S、iPhone6S plus、iPhone7、iPhone7plus、iPhone8、iPhone8plus、iPhone X、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XR、iPad Air2、iPad mini3、iPad mini4、iPad pro、iPad(5th)で視聴機能を利用できる。

安川氏は「現状はiPhoneのフェイストラッキング機能で表情をとらえているため、配信機能の対応端末はiPhone X以降です。ただし、できるだけ早くそれ以外の端末にも対応できるようにしたいと考えています」と、配信機能がiPhone X以降のみに対応している理由を説明した。

先行体験版でモーションキャプチャーを体験

発表会では、先行体験版に触れられるデモ機が用意されていた。実際にカメラの前に立ってポーズを取ったり、ウィンクしてみたりすると、スマホのなかのキャラクターはその通りに動いてくれた。しかも、目の開き具合までしっかりと再現。幅広い表現ができそうだ。

若干動きがカクカクしているように感じたが、安川氏は「現状、キャラクターの動作は30FPS(フレームレート。1秒あたりの表示静止画枚数のこと)ほどですね。ただ、正式版のリリースまでにさらなる性能向上を目指します。また、ネットワークを介さず、スマホのGPUで解析しているので、端末の性能にも大きく依存します」と、説明した。

公式バーチャルタレント「慧桜ココロ」もVTuberデビュー

今回の発表会では、GooMe公式バーチャルタレントに慧桜ココロ(あすかココロ)さんが就任することも発表された。

発表会であいさつしてくれた慧桜ココロさん

「GooMeでは、皆さんと仲良くなれるように、歌ったり踊ったりする、ライブ配信をしていきたいと考えています。また、YouTubeでは自分のことを知ってもらえるような動画を投稿していきたいですね。実はちょうどいま、YouTubeに1回目の動画をアップするところなんです。自己紹介や大好きなゲームをプレイしているのでぜひ観てください」(ココロさん)

慧桜ココロさんのデビュー動画。「よいしょー」が定番のあいさつなのだろうか

「動画をアップしてみたいものの、自分の顔を公開することに抵抗感がある……」という人も、まだまだ多いのではないだろうか。そんな人こそ、スマホだけでバーチャルキャラクターを操作して動画を配信できるGooMeで、一度バーチャルタレント体験をしてみてはいかがだろうか。