“BtoC”を意識した街づくりで「六本木」をイメチェン! 東京ミッドタウンの10年

“BtoC”を意識した街づくりで「六本木」をイメチェン! 東京ミッドタウンの10年

2017.03.27

東京・六本木。その由来は6本の木が並んでいたからとも、「上杉」「朽木」「片桐」といった“木”のつく大名・武家の屋敷が集まっていたからともいわれている。その六本木のランドマーク「東京ミッドタウン」が3月30日、10周年を迎える。

1980~90年のころの六本木は、東京を代表する歓楽街だった。ネオンがまぶしい、いわゆる“飲み屋”が軒を連ね、電話ボックスやガードレールには怪しげなチラシがあちこちに貼られていた。そのチラシは風や人の手ではがされ、歩道に散らかっていた。まさに“わい雑”という言葉がシックリとくる街並みだった。また、六本木を訪れる人々も、ある意味、前衛的なファッションで身を包み、歓楽を求め飲食店やクラブ(ディスコ)に集まってきた。

東京ミッドタウン

だが、2000年台に入ると六本木の様相が、少しずつ変わり始める。そのきっかけのひとつになったのが、2003年に開業した「六本木ヒルズ」だろう。広大なオフィスフロア、ホテル、レジデンス(住宅)、映画館、そしてレストランやショップが入居し、歓楽から「ビジネス」「レジャー」「ファッション」を連想させる街へと変わっていった。

そして2007年、東京ミッドタウンがグランドオープンした。オフィス311,200平方メートル、住宅96,500平方メートル、ホテル43,800平方メートル、商業71,000平方メートルといった巨大な“街”が現れた。

巨額な資金で土地を落札

もともと東京ミッドタウンの敷地は、防衛庁檜町庁舎があった土地だ。それを三井不動産が中心となり、全国共済農業協同組合連合会、安田生命保険、積水ハウス、富国生命保険、大同生命保険といった企業、団体が2001年に落札。落札額は約1,800億円、坪単価にすると759万円となる。

三井不動産 東京ミッドタウン事業部長 兼 東京ミッドタウンマネジメント 代表取締役社長 中村康浩氏

落札後、東京ミッドタウンの事業計画には葛藤があったようだ。

三井不動産 東京ミッドタウン事業部長 兼 東京ミッドタウンマネジメント 代表取締役社長 中村康浩氏は、敷地落札後の当時を振り返る。

「オフィス、住宅、ホテルなどからなる複合施設を目指しましたが、特に重視したのがファッションを中心とした“BtoC”向け商業施設を手厚くすることでした。ですが、こうした商業重視の施設が成り立つのかという不安がありました」。

確かにそうだろう。2000年台に入り、様相が変わり始めたとはいえ、“夜の街”の顔が色濃く残る六本木だ。ブランド商品を求めてやってくる人々がどのくらいいるのか、当時は未知数といわざるをえない。

さらに中村氏はこうも続けた。

「新たに広大な面積のオフィスフロアを設置するわけですが、すでに六本木ヒルズさんが開業したあとです。すでにオフィス需要はヒルズさんのほうに吸収され、新設された東京ミッドタウンにどれだけ企業が入居してくれるのか……」と語る。

さらに、オフィス需要だけでなく、レジデンスについても不安材料はあった。東京ミッドタウンでは、高級賃貸住宅の供給を計画していたが、はたして成立するのか。「高級住宅賃貸というマーケットが存在するのか、懐疑的にもなりました」(中村氏)。

BtoCを意識した商業施設、すでに需要が吸収されてしまったかもしれないオフィス、はたして成立するのかどうかわからない高級賃貸住宅……。不安だらけの事業計画だったが、これが「こうしたマーケットを我々がつくっていくんだ」(中村氏)という意識に変わっていったという。

そして東京ミッドタウン開業から10年。中村氏は「この10年間、複合施設として相応しい運営が行えたと思います」と、自信に満ちた表情で力強く語った。

周辺の店舗も営業スタイルを変える

周辺の店舗も変わってきた。ポール・スミスやバーニーズ ニューヨーク、メルセデスベンツといったファッション、高級店が集まり出したうえ、飲食店も夜だけではなく日中に営業するところが増えた。

「東京ミッドタウン建設当時はランチを提供する店舗はごくわずかでした。建設作業員からは『食べるところがない』という不満が噴出していました(笑)。ですが、いまは周辺店舗のランチ営業は当たり前になりました」(中村氏)。

それはそうだろう。東京ミッドタウンの誕生は、1万数千人のビジネスパーソンを呼び込んだ。当然、施設内の飲食店だけではランチ需要をさばききれず、お昼時には多くのビジネスパーソンが昼食を求めて街へ散っていく。このビジネスチャンスを周辺の飲食店が見逃すはずはない。

この地に六本木ヒルズや東京ミッドタウンができたことは、オフィス供給や商業施設の賑わい以外にもメリットを生んだ。それは緑地の提供だ。

六本木はその地名とは裏腹に、“緑”つまり樹木が少ないといわれてきた。だが六本木ヒルズには「毛利庭園」が、東京ミッドタウンには「港区立檜町公園」が隣接されており、周辺住人の憩いの場としてその役目を務めているほか、緑化による温度上昇抑制にも一役買っている。千葉大学が2007年に行った調査によると、東京ミッドタウン付近は、周辺よりも昼間で3度、夜間で1度低いのだという。

港区立檜町公園(左)。ミッドタウンガーデンに登場した「江戸富士」

多様化する六本木の来客者

結果、六本木を訪れる人々の顔ぶれが変わった。

まず、親子連れが増えた。歓楽街だったこの地に、子どもの手を引いて歩く人々の姿が数多くみられるようになった。これはショッピングに訪れるだけでなく、周辺にタワーマンションが増えたことも一因だろう。そして若い女性が増えた。筆者が取材のために東京ミッドタウンを訪れたのは3月中旬。卒業式帰りであろう、艶やかな袴に身を包んだ数多くの女性が東京ミッドタウンに吸い込まれていくのを確認した。

そして、外国人の姿が目立つ。インバウンド観光客の増加によるということもあるだろうが、ベビーカーを押している外国人がチラホラ散見できることを考えると、定住している人も少なくないのだろう。以前、森ビルの記者会見で、外資系企業が港区に集中していること、大使館が80カ国超も集まっていることを知った。生活基盤が港区にある以上、六本木に訪れる機会が多いのだろう。

新たに新設された礼拝スペースと、インフォメーションに用意されたベビーカー。多様化する客層に対応した設備を投入している

いずれにせよ、六本木は大きく変わった。飲み屋街という顔は、今なお色濃く残っているが、ファッション、飲食、そしてファミリーが楽しめる街に変わってきた。今後の10年、いや20年、どのように変化していくのか見極めたい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。