「スープラ」も復活? スポーツカーに注力するトヨタが変えたいもの

「スープラ」も復活? スポーツカーに注力するトヨタが変えたいもの

2017.03.29

一時は衰退の兆候が顕著だった国産スポーツカーだが、車種は徐々に増えつつあり、本田技研工業の「NSX」やモデルチェンジしたマツダ「ロードスター」が話題を呼ぶなど、ここ最近は近年まれに見る充実ぶりだ。中でも、レクサスを含むトヨタ自動車の力の入れ具合は注目に値する。しばらくは“走り”で売るようなクルマから遠ざかっていた印象の同社だが、なぜ今、スポーツカーに力を入れるのか。

レクサス「LC500h」

話題が尽きないスポーツカー業界

ピークだったバブル末期から徐々に衰退し、2002年8月に日産自動車「スカイラインGT-R」やマツダ「RX-7」、トヨタ「スープラ」といった280ps勢や日産「シルビア」が一気に終焉を迎えるなどして、しばし停滞期に入った日本のスポーツカー業界。そんな中でも、かねてからしのぎを削っていた三菱自動車工業「ランサーエボリューション」とスバル「インプレッサWRX」や、マツダ「RX-8」のようなユニークなニューモデルの登場など、興味深い話題がなかったわけではない。

センセーショナルだったのは、やはり2007年に相次いで登場した「GT-R」とレクサス「IS F」だろう。さらに翌2008年には日産「フェアレディZ」がモデルチェンジし、2010年には価格3,750万円、限定500台のレクサス「LFA」が発売された。

2012年にはトヨタ/スバル「86/BRZ」が発売。手頃な価格とパワーでとっつきやすいFR車に多くのスポーツカーファンが色めきだった。その後、2014年にはレクサス「RC」、2015年にはホンダ「S660」の登場と「ロードスター」のモデルチェンジ、2016年には「GT-R」のビッグマイナーチェンジや「NSX」の復活とスポーツカーのニュースがつづき、2017年春にはレクサス「LC」の発売を迎えた。

マツダ「ロードスターRF」(左)とホンダ「NSX」

レクサスが充実、高まるトヨタの存在感

本稿執筆時点において、「NSX」、「LC」、「GT-R」、「RC」、「フェアレディZ」、「86」および「BRZ」、「ロードスター」、「S660」、ダイハツ工業「コペン」があり、ほかにスバル「WRX」やスズキ「スイフトスポーツ」など、実用車ベースのスポーティモデルも入れると、国産スポーツカーはここしばらくなかったほどの充実ぶりとなっている。そして、まだ車名は断定できないが、トヨタは「スープラ」を復活させると見られる。2017年秋の東京モーターショーあたりでなんらかの大きな発表がありそうだ。

ところで、今の国産スポーツカーのラインアップを見渡して印象的なのが、レクサスを含むトヨタの力の入れ具合だ。長らくスポーツカーらしいスポーツカーなど皆無だったトヨタが、なぜ一転して注力するようになったのだろうか。

あらためて考える、スポーツカーを作る意味

あらためて考えてみると、自動車メーカーがビジネスを展開する上で、どのような商品を作って売るかはメーカーの自由だ。利益を確保したいのなら、なにも手間をかけてスポーツカーを作る必要などない。本来、スポーツカーは実用車よりも圧倒的に市場規模が小さい上に、税金や保険が割高となっている地域は世界でも少なくない。好きでも手に入れられる人が限られるのがスポーツカーという商品だ。

とはいえ、それでもスポーツカーを好む層は確実に存在する。購入には至らなくても、多くの人にとって興味や憧れの対象となるので、数は売れなくても話題性が高い点にも価値があるし、そもそもメーカー自身にも、開発や商品企画に携わる中でスポーツカーを作りたがっている人が大勢いるのだ。

そして、自社のラインアップにどんなスポーツカーを持っているかというのは、そのメーカーの器量を表す目安になると筆者は考える。

イメージで欧州列強に対抗?

それでは、なぜトヨタはスポーツカーに注力するのか。すでに世界屈指の規模になって久しい同社だが、イメージでは欧州列強に及んでいない現状を打破するため、良質なスポーツカーを持つことが不可欠と考え始めた、という見立ては大きく外れていないだろう。

昨年、スバル版の姉妹車BRZとともにビッグマイナーチェンジを実施した86は、手頃な価格とパワーのFR車というマーケットが今でも確実に存在することを知らしめた。一方、レクサスにはRCやLC、毛色は少し違うが「GS F」などがあり、ほかに大半の車種にFスポーツというスポーティグレードが設定されている。

“とっつきやすい”スポーツカーの市場が確実にあることを示したトヨタ「86」

そしてスープラは、レクサスブランドではなく、あくまでトヨタブランドのフラッグシップスポーツとして、2011年に「戦略的な協力関係」を結ぶべく覚書に調印したBMWとの協業により開発中であり、開発責任者が足しげくドイツに通っているという。

トヨタのスポーツカーを代表する存在になりうる次期スープラ。情報は少ないが、このクルマの先行きと、トヨタにとっての存在意義を考えてみたい。

BMWとの共同開発はいいことづくめ?

思えば過去2世代のスープラはそれなりに人気を獲得したが、同世代に強力なライバルが並み居る中で、やや見劣りする感じの存在だったのは否めない。スポーツカーというのは、ただラインアップしていればよいわけではなく、いかに優れたものであるかも大いに問われる存在に違いない。ましてやトヨタやレクサスは、北米ではかなり高く支持されているが、欧州での評判は正直に言っていまひとつだ。その要因は、走行性能でドイツ列強に及んでいないと見られていることや、得意のハイブリッドがあまり好まれない欧州の市場性にあるといえる。

スープラ「3.0GT TURBO」

スープラについても、1年たらず前に欧州で商標登録されたとの情報があり、おそらく投入するものと思われるが、その使命は、トヨタがまだ満足な評価を得ることができていない“走り”の部分をしっかり訴求することを相当に重視しているはずだ。その点で、BMWというパートナーは非常に頼もしい。

スープラ「GZ」

実車の仕上がりにも大いに期待できるのはもちろん、イメージ的にも、BMWと共同開発したスポーツカーと聞いて購買層やスポーツカーファンに悪く受け取られることはない。どこまでBMWの商品と差別化が図れるのかはわからないが、いずれにしても、トヨタにとってはいいことづくめな話ではないかと思う。

ただし日本では、たとえ新型スープラの完成度がどんなに高くても、市場の特性や傾向からして、それほど数が売れることは期待できないだろう。とはいうものの、ここ最近はだいぶイメージが変わってきたとはいえ、なんとなく「つまらない」とか「スポーツカーに力を入れていない」というイメージの根強いトヨタにとって、同社が変わったことを印象づけるには、スープラの復活はなかなか効果的なのではないかと思う。はたしてどんなクルマが現れるのか、大いに期待して待つことにしたい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu