株主総会で質問集中、AIナンバーワン企業を目指すLINEの勝算

株主総会で質問集中、AIナンバーワン企業を目指すLINEの勝算

2017.03.31

LINEが30日都内で開催した株主総会では、クラウドAIプラットフォーム「Clova」の事業展開について質問が集中した。既存事業と並行しながら、中長期的にAIナンバーワン企業を目指すというLINE。グーグルなど世界のIT業界のジャイアントがライバルになるが勝算はあるのか。

LINE株主総会の様子。報道向けにモニターを通じて公開

AIナンバーワン企業を目指すLINE

Clovaは、2月末にスペインバルセロナで開催されたモバイル関連の展示会「MWC 2017」でLINEが公表した新たな事業・サービスだ。現在、AIを活用した音声アシスタントサービスがポストスマホ的な存在として世界で注目されているなかで、LINEもこの分野に参入する。

LINEの出澤剛CEOは、近い将来の生活スタイルとして、「自宅の空調を声でコントロールして温度設定をする、冷蔵庫を開けてビールがなくなりそうだったら、追加注文を声でする。あらゆるデバイスがネットワークにつながる、IoTの時代が来つつある」とし、AI、引いては音声アシスタントの存在感が大きなものになっていくと見ている。

同氏の発言どおり、事業としての位置づけも重要だ。中長期的には、大きな柱になる事業としており、出澤氏は「スマホナンバーワン企業からAIナンバーワン企業へ」を今回の株主総会で標榜、現行のLINE事業を拡大しながら、新たな収益源になることに期待しているのである。

今初夏にはデバイスを国内発売

では、どういったスケジュールで、同社は何を行っていくのか。

LINEはまず、2017年初夏にClova搭載の音声アシスタントデバイスを「WAVE」、冬に「FACE」をリリースする。このデバイスでは、音声での自然な会話や、ニュース、天気・占い、コマース、カレンダー、翻訳などのコンテンツやサービス、電気のオン/オフなどを行うホームコントロールなどが行える。「簡単に言えば、24時間、何でもこたえてくれる秘書のような存在」と出澤氏は話す。

初夏に日本・韓国で発売予定のWAVE(画像:LINEプレスリリースより)

2018年には、ソニーモバイルコミュニケーションズやLGエレクトロニクス、タカラトミー、バーチャルホームロボット「Gatebox」で注目を浴びるウィンクル(3月2日に連結子会社化を発表)といったパートナーが手がけるデバイスに展開していく。Clova事業を担当する舛田淳CSMOはさらに「Clovaをオープン化して、メーカーや開発者が直接自由につなぎ込めるようなことを考えている」としており、多種多様なデバイスにClovaを搭載していく方針だ。

初期はデバイスの販売も手がけるものの、LINEが注力するのはAIプラットフォームの開発・運営の部分。現段階において、どうマネタイズを図るのかはわからないが、コミュニケーションプラットフォームのLINEがこれまでの事業で示してきたように、プラットフォームの掌握は多様なマネタイズ化のとっかかりとも言える。それだけに、非常に注目される事業になるといえるだろう。

LINEの強みとは

しかし、LINEの取り組みを世界的な観点から見れば後発とも言える。日本では現在サービス展開されていないものの、アマゾンが「Amazon Echo」、グーグルが「Google Home」といったAI搭載の音声アシスタントデバイスをすでに販売しているからだ。

LINEのWAVEが持つ機能は、Amazon Echo、Google Homeもだいたい同じ。これらのデバイスが日本に上陸れば、LINEの優位性が保てなくなり、「AIへの期待は絵に描いた餅に終わってしまうのではないか」とも考えられる。当然、株主としてもこの部分は心配するわけで、株主総会では差別化について質問が集中した。LINEは世界の巨人とどう戦っていくのかが注目されているわけだ。

その点について出澤氏が強調するのはローカライズ化とデータだ。音声スピーカーは日々の生活に溶け込むデバイスであり、その土地、国の言語の取り扱いに長けていることが必須であって、ローカルの会社が強い領域になると話す。

たとえば、日本でサービス展開するにも、「自然に日本語を返せるのか、日本語の能力が重要。(中略)ユーザーが自然に感じてもらえるようなセンスが必要で現地の文化を理解している会社でなければ気持ちのいいサービスが作れない」と話す。この辺りは、日本、タイ、台湾、インドネシアといった同じアジア圏でも、画一的なサービスにはできないというLINEのこれまでの経験に裏打ちされた発言と見えるがどうなのだろうか。

差別化で個人的に注目したいのは、データについてだ。AIの開発・発達に不可欠な一要素にデータがある。多ければ多いほど、有用なAIの開発に結びつけることが可能だ。出澤氏は「アマゾンが持っているのは、基本的には買い物のデータ。我々はコミュニケーションという非常に重要なデータを持っている。様々なサービスもある。データには強みがある」と話す。

LINEのコミュニケーション技術、NAVERの検索技術、両社の持つコンテンツやサービス、ユーザーベースとビッグデータの活用が可能(画像:LINEプレスリリースより)

本来、音声アシスタントに期待したいのは、困ったときに何でも的確な答えやサポートを行ってくれるような存在だ。ピザの宅配や音楽のリモートコントロールなど、現状の機能でも生活は多少便利にはなるが、それでは足りない。もっと"個"に寄り添い、趣味・嗜好、考え方などをAIが理解して、困ったときに的確なアドバイスをくれるような存在を多くの人が求めているはずだ。「姪っ子が一番喜ぶプレゼントは何か」「友達のAさんとトラブルになってけれどどうしたら仲直りできるか」など、個別具体的なアドバイスだ。

こうしたアドバイスの実現に近づくには、出澤氏の指摘どおり、買い物を基本としたアマゾンより、そしてグーグルよりも、LINEのほうに分がありそうだ。LINEはその利用動向から多くの人の生活に欠かせないツールになっており、個人の趣味嗜好、考え方などを含んだコミュニケーション情報を取扱っている。LINEが活用しうるデータには奥深さがあり、優秀なAIを開発しうる可能性があるように思える。そうした観点から見ると、LINEには世界の巨人と戦える武器が現時点であると見ていいのではないだろうか。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。