H.I.Sグループはなぜロボットに力を入れるのか

H.I.Sグループはなぜロボットに力を入れるのか

2017.02.01

エイチ・アイ・エス(H.I.S)グループでロボット事業を手がける「hapi-robo st」が昨年7月の準備会社設立を経て2017年より本格的に活動を開始した。H.I.Sといえば旅行会社。そのグループ企業とはいえ、畑違いにしか見えない事業になぜ取り組んでいるのか。

写真左:澤田秀雄hapi-robo st会長、写真右:富田直美hapi-robo st社長

旅行会社とロボットをつなぐもの

H.I.Sグループとロボットをつなぐもの。それはH.I.Sの子会社となるハウステンボスが運営する「変なホテル」だ。変なホテルは、ロボットにできるうることをすべてロボットに任せ、人間の応対を極力減らしたホテルだ。フロントのチェックイン・チェックアウト手続き、宿泊者の荷物運び、施設内の窓拭きや芝刈りなどもロボットが対応する。

変なホテルフロントイメージ(写真提供:ハウステンボス)

変なホテルは現在、ハウステンボス内の1棟のみだが、今年3月には千葉県舞浜に2棟目がサービスインの予定で、その後も続々と出店が計画されている。

そもそも、テーマパーク運営のハウステンボスでのロボット活用は、H.I.S会長兼社長であり、ハウステンボス社長の澤田秀雄氏の着想から始まっている。そして、そのアイデアは、ロボット事業を担うhapi-robo stの設立にもつながっているのだ。

さかのぼること5年ほど前。ハウステンボスの事業再生にあたり、澤田氏は園内のホテルヨーロッパに宿泊・滞在していたことがあった。そこで同氏が注目したのは、ホテル運営における人件費の高さだった。ロボットを導入すれば、人件費が減るのではないかと考え、その発想を生かしたわけである。その目論見は当たった。2015年7月に30人のスタッフで変なホテルの運営を始めつつ、順次ロボットを導入していき、今では8人でホテルの運営が可能になっている。

変なホテルの従業員数の推移

結果として、「ロボットに任せられる仕事はロボットに」という方針を実践したことで、運営コストを大幅にカットした。コスト削減はホテル運営だけではなく、他の業界・業種にも転用可能であり、長期目線でみれば、日本は少子高齢化により働き手が減少する。そうした課題を解消する一手段としてロボットは有効になると見込んだ。

hapi-robo stはどんな会社か

こうした経緯を踏まえて誕生したのがhapi-robo stだ。30日に行われた設立記者会見でも、経済産業省・NEDOの調査資料をもとに、サービスロボットの市場拡大余地が多分に残されていることを強調する。

サービスロボットの市場拡大が予測されている

同調査では、2035年におけるロボット産業は10兆円の市場規模と見込んでいる。注目すべきはその中身だ。日本では製造分野で数多くのロボットが導入されており、2015年段階では製造分野におけるロボットの活用が大半を占めていた。しかし、2035年には、サービス分野の市場拡大が予測されており、この部分だけも5兆円規模とされている。ここに先手を打とうというのが、hapi-robo stである。

同社の事業領域は大きく分けて3つ。ロボット事業開発、実証実験・研究開発、そして市場開拓がある。事業運営にあたっては、他社のロボットも活用して事業展開を図り、他社製ではニーズが満たせないような場合には、hapi-robo.stが自ら設計し、部品の供給元、製造能力などを精査しながら製造委託を行うこととなる。

hapi-robo stの事業領域
発表会ではシャープ製の多数の「ロボホン」にオーケストラ演奏させる動作を披露。ニーズに合致すれば他社製のロボットを活用した事業展開も

一連の事業領域において、変なホテルの運営で培ったノウハウをもとに、顧客へのロボットの導入や運用支援に活用でき、またハウステンボスを壮大な実験施設として見立て、実証実験を行うことも可能だ。実際、ハウステンボス内の「ZERO Labo」などを通じて実証実験を行っていくという。このあたりは同社にとって大きな強みになりそうだ。

始まったばかりだが夢は膨らむ

現時点におけるhapi-robo stは、事業運営に伴うプロフェッショナル性を備えた社員14人を集め、事業領域を定めたにすぎない。澤田氏は「5-10年かけて世界に夢と幸せをあたえるようなロボットカンパニーにしたい。世界有数の会社にしたい」とし、長期目線で大きく活躍できる会社にしたいようだ。

これだけでは、夢物語のように聞こえてしまうが、澤田氏の構想を聞くと具体性が増す。同氏が思い描くもののひとつに、H.I.Sの店舗カウンターでのロボットによる接客がある。「(AIのトレーニングも必要になるため)H.I.Sでのフロントロボットは1年くらいかかるんじゃないかな」(澤田氏)とするが、何年も先のことではないのは確か。同氏の頭の中にはロボットが旅行会社のカウンターで接客をする姿が描かれているのだ。

もちろん「全部ロボットでやろうとすると大変。ロボットが担当するのは8割でいい。それ以外は人間のスタッフがケアすればいい」(同氏)としており、人間が介在する余地も残されているし、人間のように柔軟に対応するアンドロイドによる接客をイメージすると面食らうかもしれない。勝手ながら、会話の導入をロボットで、その後はタブレットを有効活用する、などといった感じも想像できてしまうからだ。

仮にそうであったとしても、、"生産性の向上"に焦点をあてると、どんな形態であろうと、ロボットによる接客の実現は大きな意味を持つ。澤田氏がこだわっているのは、生産性の向上だからだ。

hapi-robo stはまだ始まったばかりであり、現時点では計画的なことは示されていないが、今後提示される取り組み、そしてサービスや設備の導入効果の如何によっては、"世界規模の企業へ"という言葉にも現実味が帯びてくるかもしれない。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu