nuroモバイルは激戦のMVNO市場でどう戦うか

nuroモバイルは激戦のMVNO市場でどう戦うか

2017.02.02

ソニーネットワークコミュニケーションズは2016年10月よりMVNOサービス「nuroモバイル」を展開している。そんな同社が1月31日に新サービスを発表したが、これらをもとに、どう戦い、どう勝ち抜こうとしているのか。

「nuroモバイル」は激戦のMVNO市場でどう戦うのか

古くからMVNOに取り組むnuroモバイル

ソニーネットワークコミュニケーションズは、プロバイダー事業「So-net」を展開するソニーグループの一員だ。モバイル事業としては2003年にウィルコム(当時はDDIポケット)、2008年にイーモバイルから回線を借りたMVNO事業「bitWarp」を、2011年からは「So-netモバイル 3G」の名前でドコモ回線の3GのMVNOを開始するなど、意外と歴史は古い。

その後、ドコモ回線の「So-netモバイル LTE」とUQコミュニケーションズ回線の「WiMAX」、さらに「PLAY SIM」や「So-net MILEAGE SIM」など複数のブランドを展開していた。こうしたブランドのうち「So-netモバイル LTE」と「PLAY SIM」を統合して登場したのが「nuroモバイル」ブランドだ。「nuro」ブランド自体は世界最高速を謳う光回線サービスで利用しており、ここに統合されることになる。

固定回線向けプロバイダーとしてから数えると20年以上の歴史を持つ。モバイルサービスのスタートも比較的古くから行なっている

「nuroモバイル」は2GB~10GBまで1GB刻みのプランが用意されており、プランによっては業界最安水準になっているほか、目玉サービスとして「0 SIM」がある。これは月額の基本料金が不要なSIMサービスであり、毎月500MBまでであれば無料で利用できる。なお0 SIMは配給量が限られており、毎月7777枚ずつの販売となっている。

2GBプランは業界でも最安クラスの料金となる。100円刻みという料金プラン全体はわかりやすい

様々な取り組みを進め、同社のユーザー数は38万契約(0 SIMを除く)と中堅クラスのMVNOとなっている。そんな中、「50万契約を獲得する」という目標のもと発表されたのが今回の新サービスだ。

従来の穴を埋める新サービス

新サービスの内容は、

1.1日5時間だけ高速通信が可能な「5時間プラン」を追加
2.通話プラン「nuroモバイルでんわ」に5分かけ放題オプションを追加
3.ユーザー間でパケットをプレゼントできる「パケットギフト」
4.バースト機能を採用
5.新端末として「ZenFone 3 Max」と「AQUOSケータイ SH-N01」を追加

となる。

最大の特長が1つめの「5時間プラン」だ。これは毎日ユーザーは5時間のタイマーを持っており、通信していると、その通信がある程度の速度を必要としていると判断されたとき、タイマーの残り時間が減っていく。そうやってタイマーがなくなるまでは通常通りの高速通信が可能で、タイマーがなくなったら200kbps程度まで速度が落ちることになる。

5時間プランは毎月2,500円と、10GBプラン(2,300円)より高いため、どちらかといえばヘビーユーザー向けのサービスだが、たとえば毎日ストリーミングで映画を1本見たい場合など、容量区切りのサービスでは数本見るのが限界でも、時間で区切るなら毎日でも見られる。利用する内容にもよるが、ユーザーにとっての快適度は高く感じられそうだ。

タイマーの切り替えは自動で行われるそうだが、テキスト中心のコンテンツではタイマーはほとんど動作しないとのことなので、動画など、ある程度連続してデータ転送が継続する際に作動するようになっているようだ

2つめのかけ放題オプション「nuroモバイルでんわ」は、これまでのnuroモバイルに欠けていた穴を埋めるサービスで、業界の水準に合わせて話し放題オプションを提供することになる。申し込み不要・無料のオプションとして利用できるサービスで、電話番号の前に専用のプリフィックスをつけることで、30秒あたり10円(通常は30秒あたり20円)で通話できる。

0 SIMでも利用できる音声プランと話し放題オプション。iOSおよびAndroid用にダイヤルアプリも提供されるので、通話時の面倒くささはある程度解消される

3つめのパケットギフトは、mineoなど一部のMVNOで導入されているが、nuroモバイルでは10MBから1MB単位でやりとりできるため、パケットを無駄なく最後まで使いきれるのが特長だ。

家族以外とでもパケットをやり取りできる。友人などにあまりパケットを融通する場合などに便利そうだ

4つめのバースト機能は、他社でも導入済みのところがあるが、転送開始直後だけ高速で転送を開始し、その後低速モードに切り替えるというもの。nuroモバイルでは「初速バースト」と表現している。通信の開始が素早く行われ、小さいコンテンツならその段階で読み終えるので、低速モードになっていてもストレスを感じにくくなるというメリットがある。

初速が速いため、サーバーへの接続やネゴシエーション、最初のデータ転送が素早く行われることになり、体感速度はかなり変わるはずだ

5つめの新端末については他社で販売されているものでもあり割愛するが、基本的には折りたたみ端末も含めて他社並みのラインナップを揃えたことで競争力の向上を目指す方向だ。

新たなビジネス像は未だ見えず

今回導入された施策はどれもnuroモバイルのこれまでの弱点を解消し、さらなる魅力を持たせる内容となっているが、問題はそれがユーザーにどこまで伝わるか、だろう。これまでnuroモバイルは大掛かりなCMなどを打っておらず、今回の発表でもnuroモバイルがどんなMVNOとして展開していこうというのかが見えないままだった。

nuro光は「世界最速」というキャッチフレーズがあるのでわかりやすいが、nuroモバイルには一部の料金設定を除いて世界一、業界一といったサービスが見出せない。料金体系こそシンプルでわかりやすいが、一方で直営店や申し込みカウンターがあるわけでもなく、自力で端末の調達や設定を行う必要もある。新しい5時間プランなどもどちらかといえば玄人好みなサービスだ。

何より、ソニーという大看板が後ろ盾にありながら、それを有効活用しようという動きが今は見えない。ソニーネットワークコミュニケーションズの社長は、スマートフォンを製造販売するソニーモバイルコミュニケーションズの十時裕樹社長が兼任しているが、日本では大きなブランド力を持つXperiaシリーズの端末がSIMフリー端末のラインナップに入っていない。

今後IoTが普及するにあたり、家電大手であり、ゲーム機でも支配的プラットフォームであるPlayStation 4を擁するソニーにとって、ソニーならではの差別化を実現するためにも、モバイル回線サービスは重要な役割を示すはずだ。既存サービスをわざわざリブランドしたのもそのためだろう。ソニーにはソニーなりの計画があり、思惑があるのだろうが、ここはスピード感を持って、あっと驚くような施策を見せてほしいところだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。