ついに「ゴルフ」のEVが上陸! 日本の電気自動車市場に弾みはつくか

ついに「ゴルフ」のEVが上陸! 日本の電気自動車市場に弾みはつくか

2017.02.09

独フォルクスワーゲン「ゴルフ」の電気自動車(EV)が、2017年中にも国内で発売される予定となった。「e-Golf(イー・ゴルフ)」と名付けられるEVのゴルフは、2015年の半ばに日本国内で導入される予定だった。ところが、国内で展開されるチャデモ(CHAdeMO)方式の急速充電器のうち、機種によっては充電できないことが判明したことから、販売が延期されていたのである。いよいよ発売となるe-Golfは、EV普及の追い風となるのだろうか。

2017年1月、コンパクトSUV「ティグアン」の発表会に登壇したフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長のティル・シェア氏は、「e-Golf」の投入を含む日本市場での商品戦略を発表した

販売延期の背景は

e-Golfが販売延期となった2年前も、充電プラグの差込口の形状や、充電の仕組み自体には問題なかった。では、なぜ延期しなくてはならなかったか。それは、高電圧の電流を流す急速充電で重要となる、安全確保の仕組みで適合性に課題があったからだ。

急速充電を行う際にはまず、車両側バッテリーの充電残量がどれほどであるかなど、急速充電器と車両とで通信し、状況を確認したあとで充電が始まる仕組みとなっている。その相互通信の仕方については急速充電器の機種によって違いがあるのだが、その適合が十分でなかったため、機種によってe-Golfは充電できないことが判明したのだった。

この点は、国内の自動車メーカーである三菱自動車や日産自動車は承知しており、また、独BMWは「i3」の導入前に「ミニ」を改造し、実証実験車で日本国内を走り回って充電の可否を調査していたので、i3市販の段階で通信の問題は解決していた。

フォルクスワーゲンと同様のことは、アダプターを取り付けることでCHAdeMO対応する米テスラでも起きたが、テスラは急速充電を含めて専用の充電器で充電するのが基本であり、また1回の充電で走行できる距離も長いため、販売を続けながらCHAdeMOの通信問題への対応を進めていった。フォルクスワーゲンは、販売延期で一度仕切り直し、万全を期して準備を整えてきたというわけである。

もはや普及の壁ではなくなりつつある航続距離の問題

今回、フォルクスワーゲンがいよいよ発売するe-Golfは、現行「ゴルフ7(セブン:7世代目)」のビッグマイナーチェンジを機に導入されることになる。ちなみに、同時にクリーンディーゼル車もラインアップに加わるようだ。

フォルクスワーゲン「ゴルフ7」

フォルクスワーゲンの、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)への対応の基本的な考えは、パワーユニットが何であろうと、ゴルフはゴルフであり、ゴルフの良さは不変であるとする。2年前に導入予定だったe-Golfは、JC08モードで1充電当たり215キロメートルの走行距離を備えていたが、延期された間にバッテリーが改良され、今年導入される段階では300キロに達するとみられる。

現在、日産「リーフ」が280キロを可能にし、BMWのi3は390キロに達するまでとなっている。また、日本へは2018年に納車が開始される予定のテスラ「モデル3」も345キロの走行距離を目指している。そのようにバッテリー性能の向上は日進月歩であり、日産の次のEVは、リーフの車体にそのまま収まる寸法で、500~600キロの走行が可能な技術的潜在力を持つバッテリーが搭載される予定だ。

EVの走行距離が短く、実用には向かないといった価値観は、数年のうちに完全に払拭されるだろう。

e-GolfとはどのようなEVか

では、e-GolfとはどのようなEVであるのか。かつて、実証実験段階にあったe-Golfを試乗した印象を紹介すると、まさしくフォルクスワーゲンが狙いとする通り、特にEVだという印象は薄く、いつも通りゴルフを運転している感触であった。

それほど、ゴルフというクルマは、ゴルフとしての価値が確立しており、パワーユニットが何であっても、ゴルフを購入した満足感を得られるものになっている。そこに、約300キロという1充電走行距離が加われば、もはや消費者は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、PHV、そしてEVのどれを選んでも、納得のいくゴルフの性能を手に入れられることになる。

ゴルフのEVに乗ると、それほどゴルフの偉大さを実感させられるのだ。

EVの普及を阻む日本特有の課題

こうしたEVの躍進の前に、日本特有の課題が待ち構えている。

三菱自「i-MiEV」と日産リーフが発売されて間もなくのころ、国内の多くのメディアは走行距離の短さと、急速充電施設が足りないという課題を大きく取り上げた。だが、経済産業省の1,005億円に及ぶ予算と、トヨタ自動車、日産、本田技研工業、三菱自の4社協議会による資金支援によって、現在、国内には7,000カ所近い急速充電器が整備されている。200Vの普通充電も加えると2万カ所を超える。それは、約3万件というガソリンスタンドの数に迫る勢いだ。したがって、現状のEVの走行距離でも何ら不安はなく、どこへでも遠出することができるようになっている。

三菱自「i-MiEV」(左側)と日産「リーフ」

一方で、これまでメディアがほとんど伝えてこなかった、より重大な課題が残されてもいる。それは、家庭で充電を行う200Vの普通充電についてである。

世間が心配した遠出の際の急速充電設備の整備は、必ずしもEVの所有者全てに日々必要なものではない。一部を除き、週末や休暇などに、普段とは違って遠くまでEVで出かけようとしたとき、はじめて問題になることだ。

一方、自宅で行う200Vでの普通充電は、必ずしも毎日ではないとしても日常的に必要な充電であり、これが、集合住宅ではなかなか実現できない現状がある。

集合住宅でEVを持つのは至難の業?

集合住宅の場合、自宅以外のエレベーターや駐車場など、住民全員が利用の機会を持つ設備や場所の管理・運営については、住民代表が交代で担う管理組合によって運営される場合が多い。そして、この公共部分の駐車場にEV用の充電設備を設置しようとする際に、管理組合のなかで反対者が出ると、コンセントを設けられないことになってしまうのである。

反対の理由は、「自分に関係ないから」というのが大勢を占めるようだ。たとえEVを購入する人が自費でコンセントを設置したいと申し出ても、上記の理由で却下されてしまう例が実際に起きている。

戸建て住宅に住む人はまったく問題ないのだが、集合住宅に住む人にはEVの選択肢を外されてしまうことになる。結果、EV販売の実績は9割が戸建てに住む人で、集合住宅に住む人のEV購入実績は1割に満たないといった状況である。

もちろん、近隣に急速充電設備があればそこで充電することはできる。だが、EVを使う最大の利点の1つは、エンジン車のようにガソリンスタンドへ立ち寄る必要がないことであり、急速充電設備に立ち寄って30分近くも時間を潰さなければならないとなると、面倒だと感じる人もいるだろう。

自宅での充電は、そのような無駄な時間、つまり、例えガソリンスタンドなら5分で給油を終えられるとしても、スタンドまでの往復と、その給油時間という無駄をなくすことができるのが、大きな特徴である。

この問題はPHVでも起こる。PHVは自宅で充電し、1日の利用距離が数十キロほどであれば、ガソリンスタンドへ行かずに、日々電気だけでクルマを走らせられるところに最大の利点がある。だが、集合住宅に住む人がPHVを購入しても、結局、ガソリンスタンドで給油した燃料で走るしかなくなってしまうことになる。それではPHVを購入する意味は薄れ、より安価な普通のハイブリッド車(HV)で十分に事足りる。

この問題について、まもなく「プリウスPHV」を発売するトヨタも、まだ集合住宅で200Vの普通充電ができない多くの人が居ることに気づいていないようだ。いずれにしても、この問題を解決しなければ日本でEVやPHVが普及するのは難しい。

プリウスPHVのCONCEPT MODELLISTAバージョン

いかにすれば集合住宅の管理組合の人たちに理解してもらい、充電コンセントの設置に合意してもらえるか。ここを解決しないと日本は、せっかくEVの発売や、急速充電器の整備で世界に先んじたにもかかわらず、どれほど優れたEVやPHVがこの先登場しようとも、普及においては後進国となってしまいかねないのである。

災害時にも役立つEV

現在、まだ、これといって解決の糸口がつかめているわけではない。だが、EVやPHVが、将来有望な次世代車であるという認知度を一層高める努力を、自動車メーカーや輸入車のインポーターが一致協力して行う必要がある。日本自動車工業会(JAMA)や日本輸入車組合(JAIA)などが牽引すべきではないだろうか。

また、集合住宅に住む人たちにはEVの特徴である公共性を訴求する必要があるだろう。停電などの際、そこにEVがあると、セキュリティ機能を持つドアが開きっぱなしになってしまわずに防犯が守られるというような、ヴィークル・トゥ・ホームのシステムも設置できる。

クルマには乗らない、自分には関係ないとの意見に対し、EV用のコンセントを設けることで生まれる住民共通の利益について、電力会社、充電器メーカー、そしてエネルギーマネージメントをサービスする企業などが一致協力し、認知を高め、営業を行うなどの活動も積極的に展開すべきだと考える。そこに、ビジネスチャンスはあるはずだ。それが、ひいては地域の防災にもつながることになる。

大規模災害に至らなくても、気候変動の影響で、従来なかった異常気象が全国規模で広がりを見せ、それが一時的なものではなく、毎年のように起こりかねない事態となっている。50年に一度、100年に一度と思っていた災害が明日、起こるかもしれないのである。そうした地域防災の視点を入れれば、EVの普及は民間企業のみならず、自治体など行政と一体の取り組みにもできるはずだ。実際、三菱自の「アウトランダーPHEV」の所有者が、熊本地震の際に、クルマに搭載されたバッテリーの電気を使って地域住民へ炊き出しの支援をした話もある。

三菱自「アウトランダーPHEV」

自分たちの生活を自分たちで災害から守ることもできるという、従来のエンジン車ではかなわなかったそうした社会性を備える点も含め、EVやPHVの有用性を広める広報活動は、個別のメーカーや企業の利益を超えて強く主張する必要があるのではないだろうか。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。