ついに「ゴルフ」のEVが上陸! 日本の電気自動車市場に弾みはつくか

ついに「ゴルフ」のEVが上陸! 日本の電気自動車市場に弾みはつくか

2017.02.09

独フォルクスワーゲン「ゴルフ」の電気自動車(EV)が、2017年中にも国内で発売される予定となった。「e-Golf(イー・ゴルフ)」と名付けられるEVのゴルフは、2015年の半ばに日本国内で導入される予定だった。ところが、国内で展開されるチャデモ(CHAdeMO)方式の急速充電器のうち、機種によっては充電できないことが判明したことから、販売が延期されていたのである。いよいよ発売となるe-Golfは、EV普及の追い風となるのだろうか。

2017年1月、コンパクトSUV「ティグアン」の発表会に登壇したフォルクスワーゲン グループ ジャパン代表取締役社長のティル・シェア氏は、「e-Golf」の投入を含む日本市場での商品戦略を発表した

販売延期の背景は

e-Golfが販売延期となった2年前も、充電プラグの差込口の形状や、充電の仕組み自体には問題なかった。では、なぜ延期しなくてはならなかったか。それは、高電圧の電流を流す急速充電で重要となる、安全確保の仕組みで適合性に課題があったからだ。

急速充電を行う際にはまず、車両側バッテリーの充電残量がどれほどであるかなど、急速充電器と車両とで通信し、状況を確認したあとで充電が始まる仕組みとなっている。その相互通信の仕方については急速充電器の機種によって違いがあるのだが、その適合が十分でなかったため、機種によってe-Golfは充電できないことが判明したのだった。

この点は、国内の自動車メーカーである三菱自動車や日産自動車は承知しており、また、独BMWは「i3」の導入前に「ミニ」を改造し、実証実験車で日本国内を走り回って充電の可否を調査していたので、i3市販の段階で通信の問題は解決していた。

フォルクスワーゲンと同様のことは、アダプターを取り付けることでCHAdeMO対応する米テスラでも起きたが、テスラは急速充電を含めて専用の充電器で充電するのが基本であり、また1回の充電で走行できる距離も長いため、販売を続けながらCHAdeMOの通信問題への対応を進めていった。フォルクスワーゲンは、販売延期で一度仕切り直し、万全を期して準備を整えてきたというわけである。

もはや普及の壁ではなくなりつつある航続距離の問題

今回、フォルクスワーゲンがいよいよ発売するe-Golfは、現行「ゴルフ7(セブン:7世代目)」のビッグマイナーチェンジを機に導入されることになる。ちなみに、同時にクリーンディーゼル車もラインアップに加わるようだ。

フォルクスワーゲン「ゴルフ7」

フォルクスワーゲンの、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)への対応の基本的な考えは、パワーユニットが何であろうと、ゴルフはゴルフであり、ゴルフの良さは不変であるとする。2年前に導入予定だったe-Golfは、JC08モードで1充電当たり215キロメートルの走行距離を備えていたが、延期された間にバッテリーが改良され、今年導入される段階では300キロに達するとみられる。

現在、日産「リーフ」が280キロを可能にし、BMWのi3は390キロに達するまでとなっている。また、日本へは2018年に納車が開始される予定のテスラ「モデル3」も345キロの走行距離を目指している。そのようにバッテリー性能の向上は日進月歩であり、日産の次のEVは、リーフの車体にそのまま収まる寸法で、500~600キロの走行が可能な技術的潜在力を持つバッテリーが搭載される予定だ。

EVの走行距離が短く、実用には向かないといった価値観は、数年のうちに完全に払拭されるだろう。

e-GolfとはどのようなEVか

では、e-GolfとはどのようなEVであるのか。かつて、実証実験段階にあったe-Golfを試乗した印象を紹介すると、まさしくフォルクスワーゲンが狙いとする通り、特にEVだという印象は薄く、いつも通りゴルフを運転している感触であった。

それほど、ゴルフというクルマは、ゴルフとしての価値が確立しており、パワーユニットが何であっても、ゴルフを購入した満足感を得られるものになっている。そこに、約300キロという1充電走行距離が加われば、もはや消費者は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、PHV、そしてEVのどれを選んでも、納得のいくゴルフの性能を手に入れられることになる。

ゴルフのEVに乗ると、それほどゴルフの偉大さを実感させられるのだ。

EVの普及を阻む日本特有の課題

こうしたEVの躍進の前に、日本特有の課題が待ち構えている。

三菱自「i-MiEV」と日産リーフが発売されて間もなくのころ、国内の多くのメディアは走行距離の短さと、急速充電施設が足りないという課題を大きく取り上げた。だが、経済産業省の1,005億円に及ぶ予算と、トヨタ自動車、日産、本田技研工業、三菱自の4社協議会による資金支援によって、現在、国内には7,000カ所近い急速充電器が整備されている。200Vの普通充電も加えると2万カ所を超える。それは、約3万件というガソリンスタンドの数に迫る勢いだ。したがって、現状のEVの走行距離でも何ら不安はなく、どこへでも遠出することができるようになっている。

三菱自「i-MiEV」(左側)と日産「リーフ」

一方で、これまでメディアがほとんど伝えてこなかった、より重大な課題が残されてもいる。それは、家庭で充電を行う200Vの普通充電についてである。

世間が心配した遠出の際の急速充電設備の整備は、必ずしもEVの所有者全てに日々必要なものではない。一部を除き、週末や休暇などに、普段とは違って遠くまでEVで出かけようとしたとき、はじめて問題になることだ。

一方、自宅で行う200Vでの普通充電は、必ずしも毎日ではないとしても日常的に必要な充電であり、これが、集合住宅ではなかなか実現できない現状がある。

集合住宅でEVを持つのは至難の業?

集合住宅の場合、自宅以外のエレベーターや駐車場など、住民全員が利用の機会を持つ設備や場所の管理・運営については、住民代表が交代で担う管理組合によって運営される場合が多い。そして、この公共部分の駐車場にEV用の充電設備を設置しようとする際に、管理組合のなかで反対者が出ると、コンセントを設けられないことになってしまうのである。

反対の理由は、「自分に関係ないから」というのが大勢を占めるようだ。たとえEVを購入する人が自費でコンセントを設置したいと申し出ても、上記の理由で却下されてしまう例が実際に起きている。

戸建て住宅に住む人はまったく問題ないのだが、集合住宅に住む人にはEVの選択肢を外されてしまうことになる。結果、EV販売の実績は9割が戸建てに住む人で、集合住宅に住む人のEV購入実績は1割に満たないといった状況である。

もちろん、近隣に急速充電設備があればそこで充電することはできる。だが、EVを使う最大の利点の1つは、エンジン車のようにガソリンスタンドへ立ち寄る必要がないことであり、急速充電設備に立ち寄って30分近くも時間を潰さなければならないとなると、面倒だと感じる人もいるだろう。

自宅での充電は、そのような無駄な時間、つまり、例えガソリンスタンドなら5分で給油を終えられるとしても、スタンドまでの往復と、その給油時間という無駄をなくすことができるのが、大きな特徴である。

この問題はPHVでも起こる。PHVは自宅で充電し、1日の利用距離が数十キロほどであれば、ガソリンスタンドへ行かずに、日々電気だけでクルマを走らせられるところに最大の利点がある。だが、集合住宅に住む人がPHVを購入しても、結局、ガソリンスタンドで給油した燃料で走るしかなくなってしまうことになる。それではPHVを購入する意味は薄れ、より安価な普通のハイブリッド車(HV)で十分に事足りる。

この問題について、まもなく「プリウスPHV」を発売するトヨタも、まだ集合住宅で200Vの普通充電ができない多くの人が居ることに気づいていないようだ。いずれにしても、この問題を解決しなければ日本でEVやPHVが普及するのは難しい。

プリウスPHVのCONCEPT MODELLISTAバージョン

いかにすれば集合住宅の管理組合の人たちに理解してもらい、充電コンセントの設置に合意してもらえるか。ここを解決しないと日本は、せっかくEVの発売や、急速充電器の整備で世界に先んじたにもかかわらず、どれほど優れたEVやPHVがこの先登場しようとも、普及においては後進国となってしまいかねないのである。

災害時にも役立つEV

現在、まだ、これといって解決の糸口がつかめているわけではない。だが、EVやPHVが、将来有望な次世代車であるという認知度を一層高める努力を、自動車メーカーや輸入車のインポーターが一致協力して行う必要がある。日本自動車工業会(JAMA)や日本輸入車組合(JAIA)などが牽引すべきではないだろうか。

また、集合住宅に住む人たちにはEVの特徴である公共性を訴求する必要があるだろう。停電などの際、そこにEVがあると、セキュリティ機能を持つドアが開きっぱなしになってしまわずに防犯が守られるというような、ヴィークル・トゥ・ホームのシステムも設置できる。

クルマには乗らない、自分には関係ないとの意見に対し、EV用のコンセントを設けることで生まれる住民共通の利益について、電力会社、充電器メーカー、そしてエネルギーマネージメントをサービスする企業などが一致協力し、認知を高め、営業を行うなどの活動も積極的に展開すべきだと考える。そこに、ビジネスチャンスはあるはずだ。それが、ひいては地域の防災にもつながることになる。

大規模災害に至らなくても、気候変動の影響で、従来なかった異常気象が全国規模で広がりを見せ、それが一時的なものではなく、毎年のように起こりかねない事態となっている。50年に一度、100年に一度と思っていた災害が明日、起こるかもしれないのである。そうした地域防災の視点を入れれば、EVの普及は民間企業のみならず、自治体など行政と一体の取り組みにもできるはずだ。実際、三菱自の「アウトランダーPHEV」の所有者が、熊本地震の際に、クルマに搭載されたバッテリーの電気を使って地域住民へ炊き出しの支援をした話もある。

三菱自「アウトランダーPHEV」

自分たちの生活を自分たちで災害から守ることもできるという、従来のエンジン車ではかなわなかったそうした社会性を備える点も含め、EVやPHVの有用性を広める広報活動は、個別のメーカーや企業の利益を超えて強く主張する必要があるのではないだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。