MVNOが警戒する「UQ mobile」のポテンシャルの高さ

MVNOが警戒する「UQ mobile」のポテンシャルの高さ

2017.02.13

KDDI傘下のUQコミュニケーションズがMVNOとして展開する通信サービス「UQ mobile」。その契約数はまだ30万に満たず、既に100万近い契約数を獲得するMVNO大手と比べ多いとは言い難い規模なのだが、他のMVNOは"脅威"ととらえているようだ。なぜUQ mobileが、そこまで多くのMVNOに警戒されているのだろうか。

注目度は急上昇だが契約数はまだ多くない

ここ最近、女優の深田恭子さんや多部未華子さんらが出演するテレビCMで注目度が高まっている「UQ mobile」。KDDI傘下のUQコミュニケーションズが、KDDI(au)のMVNOとなって提供するスマートフォン向けの通信サービスであり、昨年から今年にかけて急速に存在感を高めているMVNOの1つだ。

その理由はテレビCMだけではない。auのネットワークを利用するため対応するSIMフリースマートフォンがほとんど存在しないという圧倒的不利な状況下にありながら、音声通話を重視した「ぴったりプラン」を他のMVNOに先駆けて展開したり、型落ちながらも「iPhone 5s」を正規に取り扱ったりするなど、他のMVNOとは一線を画す施策を次々と打ち出すことで急速に人気が高まり、注目されるようになったのだ。

そして昨年には、大きな弱点だったSIMフリースマートフォンのラインアップを大幅に増強。今年に入ってからも「DIGNO W」「DIGNO Phone」などUQ mobileオリジナルのスマートフォンを拡充したり、大手キャリア同様、学生向けの割引キャンペーン「UQ学割」を打ち出したりするなどして、低価格ニーズの拡大に合わせる形で攻めの姿勢をとり続けている。

UQ mobileの契約数はテレビCM展開を開始した10月以降急速に伸びているそうで、MVNOの新規市場の30%獲得が見えてきたとのこと

UQ mobileに勢いがあるのは確かだが、先行する他のMVNOと比べると人気が出た時期が遅く、実は契約数はそれほど多いわけではない。KDDIは2月2日に決算説明会を実施しており、その場で同社の連結子会社が提供するMVNOの契約数が、昨年の12月末時点で35.7万契約であることを公表している。

昨年末時点でKDDIの連結子会社が展開しているMVNOは、大きく分けてUQコミュニケーションズや、沖縄地域のみでサービスを提供している「UQモバイル沖縄」が展開する「UQ mobile」、そしてケーブルテレビ利用者に向けてMVNOとしてサービスを提供している、ジュピターテレコムの「J:COM MOBILE」の2つに分かれており、その合計数が35.7万契約と見られる。ただJ:COM MOBILEは、今年の2月1日に契約数が10万を超えたと発表していることから、UQ mobileの契約数は昨年末時点で20~25万程度ではないかと推測される。

KDDIは2月2日の決算で、連結子会社のMVNOの契約数は35.7万であることを公表した

UQ mobile躍進の要因はKDDIの危機感

20~25万というUQ mobileの契約数が、MVNO市場の中で現在どのようなポジションにあるのかは、他のMVNOと比較すると見えてくる。例えばMVNO大手の一角を占めると言われるインターネットイニシアティブ(IIJ)の場合、2月8日に発表した決算の中で、自社が直接提供する個人向け通信サービス「IIJmioモバイル」の回線数が91.2万、MVNEとして他社に提供している回線数は50.1万で、法人向けサービスの契約数と合わせて約171万回線に達したとしている。

それ以外のMVNOを見ても、ケイ・オプティコムの「mineo」は1月に50万契約を突破しているほか、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」は、1月31日に38万契約を獲得していることを明らかにしている(ただし通信量500MBまで料金がかからない「0 SIM」の契約数は除く)。また、KDDIが今年買収を完了したビッグローブも、買収を発表した昨年末時点で、契約数は約40万とされていた。

主要MVNOの1つ「mineo」の契約数は1月で50万を突破。そのうちauのネットワークを用いた「Aプラン」の契約数だけでも28万と、UQ mobileより多いと見られる

他にも契約数は公開していないが、NTTコミュニケーションズの「OCNモバイル」や楽天の「楽天モバイル」などがMVNO大手として知られており、いずれもUQ mobileより多くの契約数を獲得しているのは明らかだ。それゆえ現状、UQ mobileの市場における存在感は決して高いとは言えない状況にあるのだが、多くのMVNOはUQ mobileを“脅威”と見ており、強い警戒心を抱いている。その理由はMVNOでありながら、ソフトバンクの低価格ブランド「ワイモバイルブランド」同様、大手キャリアであるKDDIのサブブランドに近い存在となっていることだ。

UQ mobileは元々KDDIの子会社が2015年に開始したサービスだが、この時点ではKDDIも、auユーザー流出の恐れがあることから低価格ユーザー層の開拓には消極的で、UQ mobileのサービス内容もMVNOとしては平凡なものであったことから、存在感を示すことができなかった。だがその後急速に低価格市場が拡大し、NTTドコモの回線を用いたMVNOや、ワイモバイルにauの顧客が奪われるようになってきたことから、KDDIも方針を大きく転換。子会社をUQコミュニケーションズと合併することで、UQ mobileを軸に低価格ユーザーの獲得に力を入れるようになり、iPhone 5sの販売や量販店でのauスタッフとの販売協力など、KDDIがテコ入れを図ることで急速に契約が伸びてきたのである。

ネットワーク面での優遇はどこまで許される?

企業体力があり、大手キャリアの一角を占めるKDDIがテコ入れを図ったことで、UQ mobileは端末調達やプロモーション、販売面などで優位になったことから、他のMVNOが脅威を抱くのは確かだ。しかしながらMVNOにとって、そうした部分より一層UQ mobileを警戒しているのは、同じMVNOという立場でありながら、ネットワーク面でKDDIがUQ mobileを優遇している部分があることだ。

そのことを象徴しているのが「おしゃべりプラン」である。UQ mobileは2月22日より、5分間の通話定額が可能な「おしゃべりプラン」を提供するとしているが、このプランは通常の音声通話の仕組みを用いて5分間の通話定額を実現している。

UQ mobileが2月22日より提供開始予定の「おしゃべりプラン」は、IP電話などを用いることなく5分間通話定額を実現。それゆえVoLTEでの高音質通話が可能だ

実は日本のMVNOは、契約上音声通話に関して自由なサービス設計をするのが難しい。それゆえIP電話やプレフィックスコールなど、特殊な仕組みを用いることで通話定額を実現していることから、定額通話を利用するとVoLTEによる高音質での通話ができないという弱点がある。だがUQ mobileはKDDIの協力もあってか、そうした特殊な仕組みを使うことなく通話定額を実現しており、VoLTEの高音質通話で定額通話ができる。

また、auのネットワークを用いたMVNOのSIM(mineoの「Aプラン」やIIJmioモバイルの「タイプA」など)では通常、iPhone 6s/6s Plus以降のSIMフリー版iOS端末で利用すると、テザリングが利用できないという問題を抱えている。だがUQ mobileのSIMは、同じauのネットワークを用いてるにもかかわらず、これらの端末でのテザリングが可能だという。こうした点も、UQ mobileとそれ以外のMVNOとで、KDDI側の対応に差が見られるポイントといえるだろう。

1月29日の「IIJmio meeting 14」より。auのネットワークを用いたMVNOのSIMでは通常、テザリングを許可するサーバーにアクセスできず、iPhone 6s以降のiOS端末でテザリングが利用できないという

UQ mobileは低価格サービスで先行するワイモバイルに追いつくことを明確な目標としており、打ち出す施策もワイモバイルの施策を後追いするものが多い。それゆえKDDIも、ライバルキャリアのサブブランドであるワイモバイルに劣らない環境を作り上げるべく、UQ mobileに対しネットワーク面でも改良を図っていると考えられる。だがそうした改良策が、他のMVNOに向けては反映されていないことから、対MVNOという視点で見た場合、UQ mobileへの優遇になってしまっていると考えられそうだ。

だがUQ mobileはサブブランドに限りなく近い存在でありながらも、ワイモバイルとは異なり別会社で運営されているMVNOであることに変わりはない。それゆえUQ mobile、ひいてはKDDI傘下のMVNOの優遇を続けていると、キャリアと特定のMVNOが密接につながることを快く思わない総務省が、何らかの措置を打ち出してくる可能性が十分考えられる。少なくともネットワークに関しては、他社系列のMVNOに対しても公平な環境を提供することが求められるところだ。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。