ホンダとGMが米国で燃料電池合弁に踏み込んだ真意

ホンダとGMが米国で燃料電池合弁に踏み込んだ真意

2017.02.14

本田技研工業と米ゼネラル・モーターズ(GM)が、米国における燃料電池の合弁生産を決めた。なかなか進まない燃料電池自動車(FCV)の普及に追い風となりそうな今回の動き。合従連衡が進む業界において、孤立しているように見えたホンダの立ち位置も変わるかもしれない。

ホンダの立ち位置に変化は

更なる関係強化の契機に

ホンダとGMは2017年1月30日(米現地時間)、2020年をめどに米国で燃料電池システムの量産を行なう合弁会社を設立すると発表した。両社は総額8,500万ドル(約97億円)を折半出資し、合弁でミシガン州ブラウンストーン工場に製造施設を立ち上げ、新規に約100人を雇用するというものだ。

両社は2013年7月にFCVの技術提携を発表して以来、協業を進めてきた。今回は自動車業界初となる水素燃料電池システムの量産を米国で行なうことで、その提携関係を更に深化させることになった。

日本の自動車業界は、メーカーの構図がトヨタ自動車グループと日産自動車・三菱自動車連合に二分された観がある。ホンダの孤立が問われていただけに、今回のGMとの合弁が、両社の更なる関係強化に結びつくかが注目される。

一方で、今回のホンダ・GMの米国合弁主産の発表は、トランプ大統領の「米国に工場を、雇用拡大を」との主張や日米自動車貿易批判に対応し、ホンダとしては改めて、米国との関係強化に動いたともいえよう。

ホンダとGMは90年代後半からの付き合い

ホンダといえば、米国への工場進出は日本メーカーで最も早く決断(1980年)している。また、ホンダ内部でも「アメホン」と昔から呼ぶアメリカン・ホンダ・モーターは、自前で米国のホンダ販売網を築き上げた海外営業の花形であった。

ホンダの連結業績についていえば、同社はかつて、米国への利益依存度の高さから「ホンダの米国一本足打法」と揶揄されたこともあったほどだ。逆にいえば、それだけホンダは、米国で生産・販売両面での現地化をいち早く進めてきたのである。一時は、ホンダが日本の青山から本社を米国に移すという話が聞こえてきたこともある。

GMとの関係は、GMサイドがホンダのエンジン技術を高く評価したことで始まった。1999年にはパワートレーンの相互供給で提携。ホンダはGM「サターン」にV6エンジンを供給する一方で、当時はGMグループだったいすゞ自動車から欧州向けディーゼルエンジンの供給を受けたこともある。これ以来、ホンダとGMの関係は続いている。

業界再編の一因となった究極のエコカー

FCVは、水素と空気中の酸素の化学反応で生まれる電気で走るクルマだ。エンジンとガソリン燃料タンクの代わりに、燃料電池スタックと水素貯蔵タンクを搭載する。走行時にCO2を出さず、水を排出するだけなので「究極のエコカー」と呼ばれる。

1990年代末から2000年代初頭にかけて進んだ「自動車世界大再編」の動き。「環境対応」を大テーマとする自動車メーカー同士の合従連衡は、FCV実用化に向けての技術開発を巡るメーカー間の連携という側面もあった。

電動車ということでは電気自動車(EV)もFCVも同じ範疇だが、EVは充電に時間がかかり、1充電あたりの走行距離も短い。FCVは5分ほどで水素を満タンにでき、1充電あたりの走行距離も600~700キロメートルと利便性が高い。ただ、その普及に向けては、燃料電池システムのコストダウンと水素ステーションなどのインフラ整備が課題となっている。

「次世代エコカーの本命はEVか、FCVか」ということでは結論が出ておらず、世界の各国・地域で強まる環境規制を背景に、自動車大手メーカーの間では両面作戦で開発費や生産コストを抑えるための合従連衡が進んでいるのだ。

ホンダ・GMは今回、量産化へ燃料電池システムの合弁生産に踏み込んだが、トヨタは独BMWと2020年の実用化を目指し基本システムを共同開発し、水素ステーションの整備でも協力する提携関係にある。

また、EVのリーディングメーカーを自負するゴーン日産も、このFCVに関して米フォードと独ダイムラーとの共同開発で提携している。さらに、サトウキビなどの植物から作るバイオエタノールを使った燃料電池を開発し、商用版などに搭載する計画も発表している。

GMのFCV研究は1960年代から、ホンダはリーディング企業を自負

FCVに関しては、かつて米ビッグ3として、また世界のビッグワンとして世界の自動車産業をリードしていた旧体制のGMが1960年代から研究に着手した経緯がある。2000年代前半には、市場化テストに向けて「シボレー・エクイノックスFO燃料電池車」を製造している。

一方のホンダは、1980年代後半からFCVの開発を進め、2002年には限定リース販売だったが先代の「クラリティFCV」を世界に先駆けて投入している。2016年3月の「クラリティ フューエルセル」発表会でも、「ホンダはFCVのリーディングカンパニーの自負がある」と八郷社長は胸を張って会見に臨んでいる。

ホンダが2014年に公開したFCVのコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」

その両社が、FCVに関する技術・開発提携を発表したのが2013年7月。リーマンショックで経営破綻し、米国政府による救済から復活した新GMとホンダの提携だった。

今回、この提携が米国での基幹システム合弁生産に踏み込んだのは、GMのFCV普及への本気度を示すものであり、ホンダも世界のビッグ3に復活したGMとの連携を深めることで、FCV量産・量販の方向を明確に示したことになる。

FCVのグローバルスタンダードに?

「FCVは、サスティナブルなモビリティ社会に貢献する究極のエコカーとして高いポテンシャルがある」とはホンダ首脳の言である。

そもそも水素社会実現の意義とは、石油への依存度を軽減することと、エネルギー・セキュリティー(安全)を向上させることにある。多様な一次エネルギーで製造可能な水素を二次エネルギーとして貯蔵し、必要に応じて電気に変えてエネルギー源を支えることで、水素社会の実現を目指そうというものだ。「Well to Wheel」(井戸から車輪まで)の概念でいくと、製造段階からCO2をゼロにできるのは水素エネルギーである。

GMは燃料電池関連の特許総数において世界一を誇る。一方のホンダは特許総数で3位だが、世界で初めてFCVを市販化したということで、両社が知見を持ち寄って燃料電池システムの性能を進化させ、スケールメリットや共同購買によってリソースの効率化を図ることはグローバルスタンダードに近づくものでもある。

ホンダのFCV「クラリティ フューエルセル」

ビッグ3に復活したGMの底力とホンダの高い技術力の連携拡大

リーマンショックによる経営破綻を受けて米国政府が救済に動き、世界の自動車ビッグ3の座からは陥落したGMだったが、ここへきて一気に復活してきた。母国市場での回復に加え、中国ではVWとともにトップシェアを競い、グローバル1,000万台規模を確立することで世界のトップ自動車メーカーに返り咲き、世界ビッグ3の一角として再び地歩を固めつつある。

GMは、この燃料電池テクノロジーにおいても長い研究と開発投資を進め、自動車だけでなく、あらゆる産業で広く利用されるものとして米海軍や米陸軍との協力を深めている。米海軍とは燃料電池(FC)ドローン潜水艇を開発、陸軍とはFC軍用トラックのテストを行なっているという。

ホンダの米国進出は2輪車からで、1958年にアメリカ・ホンダ・モーターを設立。1977年に2輪車工場で進出を発表し、次いで1980年には日本車で最初の米国への生産進出を決めた。1982年にはオハイオ工場で4輪車生産を開始している。かつて、米国の厳しい排ガス規制「マスキー法」をホンダがCVCCエンジンでクリアしたことは米国でも高い評価を受けた。

「需要のあるところでつくる」というホンダの経営思想は米国で徹底しており、現在は米国内に5工場と日本車で最も進んだ現地生産体制を確立している。GMと燃料電池システムで現地合弁生産に踏み込んだのも、トランプ政権の要求に呼応し、GMと連携して米国での市民権をより高めようという狙いがあったのだろう。また、2016年12月にはグーグル系の米ウェイモと自動運転の共同研究の検討開始を発表している。

GMとの提携関係についてもFCVに限らず、環境技術全般への拡大から自動運転やコネクテッドカー関連の技術にまで広がる可能性がある。ホンダ孤立化といわれる日本国内とは異なる、同社の新たなグローバル戦略につながることにもなりそうだ。

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。