ICTを使った教育に必要なものは? 導入校を取材

ICTを使った教育に必要なものは? 導入校を取材

2017.02.14

現在、教育現場に大きな2つの変革が訪れている。ひとつは大学入試改革を2021年に控え、それまでの詰め込み型教育から思考力や判断力、表現力を育てる教育に向かうこと。そしてもうひとつがICTを利活用した教育現場の構築だ。

このほかにも、さまざまな課題が教育現場にはあるのだろうが、目下のところ、以上の2点がタスクといえるだろう。だが、ともに大きな問題をはらんでいる。それは、教える側、つまり教諭がこの変化に対応できるのかどうかということだ。

問われる思考力・判断力・表現力

まず、大学入試改革についてだが、これまでの詰め込み型教育が有利とされる試験内容から、思考力や判断力が問われる試験内容に変わる。表現力も問われるようになるので、机上のテストペーパーの問題を解ければいいという風潮はなくなる。こうした試験に向かっていくのに対し、教諭がどのように生徒たちに教育をしていくのか。

これが、まず、第一の課題。生徒たちが能動的に学び、思考力を養ういわゆる「アクティブ・ラーニング」が、こういった試験に有効だとされている。ただ、教える側、つまり教師の技量も問われる。単純に、黒板に記した問題・解答を、生徒たちがノートに写すこれまでの学習ではアクティブ・ラーニングとはならない。

iPadを使った数学の授業。この日は図形の断面についてだった

一方、ICTを利活用した教育も求められ始めている。昨年、文科省は2020年を目標に、小中学校の教育において、タブレットやPCの一人一台を目指すよう答申した。

こちらは、予算さえつけばハードウェアを取りそろえることができる。だが、ただ単にハードウェアを用意すればいいというわけではない。一人一台に手渡した端末を使ってどのように授業に生かすか。

以前、ある教育関係者に話をうかがったところ、失敗談を語り出した。「生徒各一人ひとりにタブレットを配布した授業をしましたが、最初は教諭が用意した問題と答えをタブレットに送って表示するだけでした」。結局はICTを使ってのコミュニケーションは生まれず、つまり、生徒の人数分の電子黒板を用意しただけの状態になったといってよい。

では、ICTを教育に有効に利活用するにはどうするのか。これは、最初に提言したアクティブ・ラーニングとICT機器を連携させた授業をいかに行えるかにかかるだろう。

埼玉県・飯能市にある聖望学園では、昨年からiPadの一人一台体制を採り入れた。その際にあたり、ハードウェアの選定およびデジタル教材の精査だけではなく、授業支援アプリ「MetaMoJi ClassRoom」の導入も決めた。これにより、個人個人によるiPadを使った学習のほか、生徒同士あるいは生徒対先生によるコミュニケーションを生かしたアクティブ・ラーニングが可能となった。

まず、聖望学園で見学させていただいたのは、中学1年生の数学の授業。数学の授業といえば、先生が黒板に“式”を書き、それを生徒個人個人が机に向かいノートに写すという、無機質な現場を想像する。だが、iPadを使った聖望学園の数学の授業はかなり違った。

まず、すべての生徒が先生に向かって座る“スクール形式”の授業スタイルは早々に破棄。生徒たちが机を寄せ合って向かえあわせに座る。授業というよりも“給食”の時間のようだ。ただ異なるのは、机の上にあるのが給食や弁当ではなく、iPadであるということ。

対面方式で数学を学ぶ生徒。先生は手元の端末で生徒たちの進捗状況を確認できるほか、黒板にその情報を投影できる

先生に出された課題をiPadで確認し、それを解く方法を正面の友達や隣の仲間とディスカッションし答えを導き出す。友達同士で同じ答えを導き出しても、異なる答えになっても、考えをすりあわせるという意味ではアクティブ・ラーニングの基本といえよう。

続いて、理科の授業も見学させていただいた。理科も無機質な授業になりそうなイメージが強い。こちらは、生徒同士で机を向かえあわせることはなかったが、先生と生徒の対話が活発な授業だった。私が小中学生の頃は、先生からの一方通行の授業がほとんどだったが、iPadを要所要所で絡め、生徒たちに“考えさせる”あるいは“調べさせる”時間を作っていた。

いかにICTを利活用した授業のノウハウを蓄積するか

前述したとおり、聖望学園がICT端末を一人一台体制に移行したのは昨年からだ。つまり、まだノウハウを蓄積し始めた序盤にすぎない。今後とも、より一層の研究、そして授業での活用法を磨かなくてはならない。

だが、ある生徒が筆者の問いに答えてくれたのだが、「iPadを使い始めて、授業が楽しくなった」と目を輝かせた。授業を楽しいと感じてくれることこそ、アクティブ・ラーニングの基本中の基本だ。

iPadのようなハードウェアを生徒の人数分そろえることは、資金面を解決できればクリアできるだろう。やはり資金面次第で通信環境や給電設備なども乗り越えられる。だが、一番の課題は、そうしたICT設備を使って生徒たちにいかに楽しく学んでもらうかだ。そのためには先生、そして学校がいかにそうした教育のノウハウを積めるかにかかっている。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu