法人市場に本格参入するLINE、新サービスがもたらす変化と課題

法人市場に本格参入するLINE、新サービスがもたらす変化と課題

2017.02.15

LINEがワークスモバイルと共同で取り組む「LINE WORKS」は、LINE初の法人向けサービスだ。B2Bに舵を取りつつあるLINEにとっては大きな飛躍の可能性も秘めたサービスとなるが、一方で、法人向けには様々なハードルも考えられる。LINEにとってのチャンスと課題はどのようなものになるだろうか。

「LINE WORKS」はビジネスシーンに何をもたらすか

ビジネス向けLINE=LINE WORKS

スマートフォンの普及率が50%を超え、今や携帯電話は音声通話よりも、メールやSMSによる連絡のほうが上回っている。中でも、メッセンジャーアプリである、LINEはここ数年で急成長を遂げた存在だ。LINE自身、個人間のコミュニケーションを便利にしたと自負しており、実質上コミュニケーションインフラとして電話などと並ぶ存在に成長している。

LINEのアクティブユーザー数は日本だけでも6600万と、人口のほぼ半分以上を占めるに至っている

企業でもLINEを重要視して活用するようになっており、「LINE@」や「LINEビジネスコネクト」といったサービスを採用する企業が急速に増えている。こうした企業では単なる顧客とのコミュニケーション窓口としてだけでなく、マーケティングやペイメントといった分野にまでその利用は拡大している。LINE自身も現在売上の約4割を法人ビジネスが占めるに至っており、今後もB2Bに積極的にフォーカスしていくとしている。

ヤマト運輸はBotを使った配達通知など、ローソンは公式アカウントにAIを活用するなど、LINEを活用する企業の例は日に日に増えている

一方、LINEは個人間のコミュニケーションと異なり、ビジネスシーンでのコミュニケーションはまだまだ旧来の方式が幅を利かせていると指摘する。紙の書類に押印する必要があるせいだとも言えるが、手紙や電話、FAX、電子メールが未だに主流なのが実情だ。進んでいる会社であれば、ここにビデオ会議や社内向けのメッセージングサービスが加わるだろうか。いずれにしても普及率は低く、またPCでしか利用できないサービスも多い。

そこでLINEがワークスコミュニケーションズと提携し、ビジネスコミュニケーションにおいてメッセンジャーの活用とモバイルへのシフトを図るサービスとして発表したのが「LINE WORKS」だ。昨年1月に「Works Mobile」という名前で企業向けメッセンジャーサービスの提供を開始してきたが、今バージョンで、すでに浸透しているLINEというサービスとの関係性を強調する「LINE WORKS」にリブランドする。

LINE WORKSの3つの強み

LINE WORKS自体は企業向けのコミュニケーションサービスであり、トーク、メール、アドレス帳、カレンダー、ファイル共有といった諸機能を1つのアプリに集約して提供する、一種のグループウェアだ。音声通話やビデオ通話も無料で利用できる(後述する外部との連携機能には非対応)。これらの機能はすでに多くのグループウェアが実現済みではあるが、後発であるLINE WORKSの強みは大きく3つ。1つめがLINEと共通のUI、UXを持つ点。2つめが個人向けのLINEとの連携が取れる点。3つめが、PCだけでなくスマートフォンからもフル機能が使える点だ。

1つめについては特に大きく取り上げるまでもないが、トークなどの基本的な画面は従来のLINEと基本的に変わらず、トーク内ではスタンプも利用できる。普段使い慣れたLINEの使い勝手を踏襲することで、すでにLINEを使っているユーザーを教育する手間が省ける。トーク内から予定を作成してすばやく参加者に追加したり、参加者間で予定を合わせるといったことが簡単に行えるようになっているなど、機能間の連携を強化してあり、使いやすさについてもかなり力を入れている。

2つめはLINE WORKSのアカウントで、個人向けLINEのアカウントとトークなどが直接行えることを指す。LINEがビジネス市場に乗り出したきっかけの一つに、「仕事でLINEを使いたくない」という声があったという。システム管理者側の視点では、社員が顧客との連絡にLINEを使っていると、情報漏洩などの管理ができないという問題があった。一方で社員側としては、プライベートなLINEのアカウントを会社に教えたくない。両者の思惑の妥協点として、LINE WORKSを会社が導入し、社員がそのアカウントを使うことで、社員のプライバシーを守りつつ、情報管理も行える点をアピールポイントにするわけだ。また、近年は派遣社員や外部の協力社員など、非正規でメールなどのアカウントを作りにくい勤務形態のスタッフもいる。LINE WORKSであればこうしたスタッフの個人LINEアカウントと連携すればいい。

3つめは、PCに頼らずともフル機能が使えるという点だ。グループウェアでスマートフォン対応しているものの中にはフル機能が使えないものがしばしばあるが、LINE WORKSは最初からスマートフォンでの利用を前提としているため、ユーザーはスマートフォンだけで業務上の連絡をすべてこなせる。

また、LINEといえば既読機能が有名だが、ビジネスにおいて誰がチェックしたかは重要な問題だ。LINE WORKSでは既読機能を使って確認の有無を個人レベルでチェックできるようになっている点をひとつのセールスポイントとしている。また、トークとカレンダー、アドレス帳などが内部で相互に連携していることを活用し、簡単に予定を作成したり、スケジュール調整などが行えるようになっている。

ビジネス向けにセキュリティを重視

これまでスマートフォンやグループウェアを導入してこなかった、あるいはうまく活用できていなかった企業において、相互コミュニケーションのためにLINE WORKSを採用するというのは、決して悪い選択肢ではないだろう。LINEを使ったマーケティングを行なっている企業も多く、LINEが目論むとおり、顧客へのアピールから取引、サポートに至るまでLINEで統一して管理できるという強みも生かしやすくなる。

スタンプなどで集客し、LINE@やLINE公式アカウントでコミュニケーションをとる。LINE WORKSとの連携により、さらにその奥までカバーできるようになる

ただし、LINEにはセキュリティ絡みでのトラブルが何度か発生したことがあり、ビジネス用として使う場合、不安が残るという人もいるだろう。その点はLINE WORKSとしても重視しており、やりとりするデータの暗号化やトークの会話ログの取得、過去データを最長10年ぶんアーカイブできる機能など、企業のコンプライアンスを重視した管理体制が取れるようになっている。また、サービスはすべて日本国内のデータセンターから提供されることになっており、サーバー側の運用体制も厳格に行われているとのこと。サービスレベル保証(SLA)やカスタマーサポートについても十分な体制を準備しているという。

サポート体制は後述する認定パートナーからも受けられるはずだ

実際、過去にLINEで発生したセキュリティ問題には、スマートフォンにパスコードを設定していなかったり、わかりやすいパスワードの使用といった、LINEに起因しない一般的なセキュリティ意識の欠如から起きたものが多い。指紋認証などを適切にセットアップした端末を使うという大前提は必要だが、きちんとしたセキュリティ体制を整えておけば、LINE WORKSでのセキュリティはさほど問題にならないと思われる。個人的には個人LINEの感覚でスタンプなど、今の常識としてはあまりビジネスの場に相応しくないものを多用する社員が出てくるほうが気がかりだ。

ビジネス的な成功はあるか

LINE WORKSは無料サービスではなく、アカウント単位で利用料金の月額/年額プランが用意される(最初の1カ月はお試し期間ということで無料で利用できる)。また、利用可能なサービスによって3つのコースが提供される。提供は認定パートナーを通じての販売となり、これらのパートナー企業が得意とするサービスが付加価値として付くことになる。無償ではない代わりに、高度なセキュリティやサポート体制が用意されていると考えれば、妥当な線だろう。

価格は3コース2パターンの6通り。ストレージ容量の拡張などはできないという
NTTデータ、au、ソフトバンクなどをはじめ30社近いパートナーが提供を行う

LINEという強力なブランドを武器にするLINE WORKSだが、メッセージングアプリとしてはともかく、グループウェアとして考えると、主機能をメッセージングによるコミュニケーションに大きく寄せてあることもあり、それ以外の機能はさほど強力だとは言い難い。

たとえば稟議書などをカスタムフォームとして用意してチェックさせたり、グループで画面共有して作業するといった機能は用意されていない。また、いわゆる会議室や掲示板的な機能もほとんどないため、一定のグループ内で複数の話題を効率よく扱うのはなかなか困難だ。WORKS MOBILEとしてデビューから約1年を経過しているわけだが、まだまだ法人内での需要を完全に把握できているとは言い難いという印象だ。

こうした指摘に対し、LINE側は一部の業務処理について、Botを使うことを推奨している。たとえば退勤管理などはカスタムフォームを使うより、Botに話しかけることで処理すればいいという考え方なのだが、クライアントの位置情報などは記録していないため、退勤処理の不正も行えてしまう。

このあたり、発想自体はノマドワーカーやROWEといった最近のワークスタイルの変化などを反映しているとも言えるが、多少ツメの甘さを感じてしまわなくもない。また、ユーザーごと、あるいは全体でのストレージ容量も今の所増強する手段がないため、企業規模や業種によってはあっという間にストレージを使い潰してしまいそうだ。LINE WORKS側の仕様が強化されるまではメッセージング中心と割り切り、業務面では従来のシステムを使いつづける、といった割り切りが必要になるだろう。

LINEというブランドのネームバリューと導入しやすさを武器にビジネス市場に乗り込むLINE WORKSだが、上記のような短所もあり、会社だけでなく、ユーザーからどの程度受け入れられるか、かなり未知数な部分はある。

とはいえ、これを機会に世の中のワークスタイルがPC中心からスマートフォン中心へと変わるきっかけになるかもしれない。少なくとも、ビジネス界においてメール処理にかかる時間は一種の「必要悪」となりつつあるので、これを解消する動きになるだけでも歓迎したい。LINE WORKSがどこまで日本の固定化したワークスタイルに影響を与えられるかは興味深い。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。