【吉野家HD】寿司、ステーキ…買収後の業績は「はなまる」には遠く

【吉野家HD】寿司、ステーキ…買収後の業績は「はなまる」には遠く

2017.02.15

【吉野家HD】寿司、ステーキ…買収後の業績は「はなまる」には遠く

 吉野家ホールディングス<9861>がM&Aを通じて事業の多角化に取り組んでいる。かつては牛丼の一本勝負だったが、2004年に発生したBSE(牛海綿状脳症)問題を機にうどんやステーキなど複数の収益の柱を建てようとしている。しかし、取り組みは道半ばで、全社の業績を大きく押し上げるには至っていない。吉野家HDのM&Aの特徴と課題を検証する。

【企業概要】牛丼を軸に寿司、うどん、ステーキも展開 

 吉野家HDは、牛丼の「吉野家」を傘下に持つ持株会社である。傘下には「吉野家」のほか、鮨のテイクアウト及び回転寿司を展開する「京樽」、うどんの「はなまる」、ステーキ及びしゃぶしゃぶレストランの「アークミール(旧社名:どん)」などがある。2016年6月にはラーメン店を展開する「せたが屋」を買収(議決権は66.5%)し、大きな話題となった。

Photo by Zengame

 吉野家は1899年に東京の魚河岸に個人商店として誕生したのが始まりである。チェーン展開で拡大するも、1980年には業績不振のため会社更生法の適用申請を行い、1983年にセゾングループの傘下に入る。しかし、1987年には上記更生計画も終わり(債務の完済)、1990年には株式公開まで漕ぎつけた。1999年には、会社更生法の適用を受けた京樽の再生支援に乗り出したのち、2000年には東証一部に上場。2005年には、再生支援を行っていた京樽をジャスダック市場へ上場させるまでに至った。

【経営陣】2代連続でアルバイトから社長に

 2012年、吉野家としては20年ぶりの社長交代を行った。安部修仁氏(当時62歳)が会長に、河村泰貴氏(当時43歳)が社長に就任。両名とも吉野家のアルバイトからそのまま入社し、生え抜きで社長まで上り詰めた経歴を持つ。

【株主構成】個人が70%超を保有

吉野家HDの大株主
株主名 所有株式数(千株) 持ち株比率(%)
日本トラスティ・サービス信託銀行 7,192 11.04
日本マスタートラスト信託銀行 2,099 3.22
吉翔会 867 1.33
三井生命保険 550 0.84
JP MORGAN CHASE BANK 385151 463 0.71
資産管理サービス信託銀行 394 0.6
ハンナン 327 0.5
サントリー酒類 278 0.42
キユーピー 270 0.41
三菱UFJ信託銀行 250 0.38
合計 12,690 19.45
2016年8月末時点

 金融機関での持株数が16.4%、その他の法人持株数が5.3%、外国人持株数が5.2%で、残りの70%超を個人が保有している。これは、個人投資家にとって吉野家の株主優待が魅力的であるためであろう。

【M&A戦略】再生型、自社にない事業を買収

吉野家HDの沿革と主なM&A
年月      内容
1994年12月 大東産業(現・沖縄吉野家)の株式を127百万円で取得(現・連結子会社)
1996年10月 コモコフード(現・グリーンズプラネット)の株式51%を552百万円にて取得(現・連結子会社)
1997年3月 不動産の賃貸を行う丹波屋の株式100%を26百万円にて取得
1997年5月 千葉県で回転ずしを展開するハミータコーポレーションの株式65%を487百万円にて取得
1999年4月 富士防災の株式を15百万円で取得
1999年4月 築地屋の株式を11百万円で取得
1999年10月 更生会社京樽の再建支援に伴い、増資により50%の株式を1,500百万円で取得
2000年11月 東京証券取引所市場第一部に上場
2004年6月 セルフ方式のうどん店「まんまるはなまるうどん」を展開するはなまるの株式33.4%を取得し持ち分法適用会社(金額不明)
2005年4月 九州吉野家(現・西日本吉野家)の 株式取得 (現・連結子会社)
2006年5月 はなまるの株式17.6%を追加取得し、51%とする(現・連結子会社)
2007年9月 牛繁ドリームの 議決権 22.7%を取得し 議決権 の所有割合を33.3%に。
2007年11月 四国吉野家(現・西日本吉野家)の株式を636百万円にて取得(現・連結子会社)。
2008年2月 どん(現・アークミール)の株式を 第三者割当増資 の引受けにより取得により、 議決権 の所有割合が35.1%に
2008年8月 どん(現・アークミール)の株式を公開買付により 議決権 の16.4%を2,853百万円にて追加取得(現・連結子会社)。 議決権 51.5%に。
2009年3月 上海エクスプレスの全株式を、各種料理の宅配サービスを行う㈱ベネフィットディバリーに1円で譲渡
2011年7月 京樽を 株式交換 により完全子会社化(現・連結子会社)。
吉野家株式1株に対し、京樽0.5株の割合で割当交付。金額は1,764百万円となる。
2012年1月 どん(現・アークミール)の 債務超過 及び有利子負債の圧縮を目的に株主割当増資( デットエクイティスワップ )を行い、
持ち分比率を79.6%とする。(現・連結子会社)。債権の額面総額が2,952百万円、債権に対する貸倒引当金が2,341百万円であるため、取得原価は611百万円となる。
2012年12月 はなまるの株式40%を1,984百万円で取得し完全子会社化(現・連結子会社)
2015年3月 Sushi Kin Sdn.Bhd.の株式を取得(現・持分法適用会社)
2015年9月 アークミール(どんから商号変更)を 株式交換 により完全子会社化(現・連結子会社)。
アークミール株式1株に対し、吉野家の株式0.04株を割当交付。金額は1,715百万円。
2016年6月 「せたが屋」、「ひるがお」などのブランドでラーメン店を展開するせたが屋の株式66.5%を取得し子会社化(金額非公表)

 吉野家がM&Aを積極的に始めたのは、1999年の京樽の買収からである。2004年には、BSE(牛海綿状脳症)問題の影響で本業が大きなダメージを受けるも、M&Aは止めずに同年、はなまるうどん運営のはなまると資本業務提携(議決権比率33.4%)を行った。その後、はなまる、アークミール(旧どん)、京樽の株式を100%取得し、それぞれを完全子会社化とした。上記の通り、事業の多角化を目的としたM&Aをする一方で、1997年に買収したハミータコーポレーションからは撤退、2001年に買収した上海エクスプレスは売却、2007年に買収したラーメン一番本舗からは撤退などシナジーを見いだせなかった業種もある。

 吉野家のM&Aの特徴は、「自社にない事業」の買収であり、再生型のM&Aが多い。再生型のM&A合わせて100%の買収をすぐには行わず、まずは議決権の一部を取得するパターンが目立つ。自社の成功実績(会社更生法適用後に再生)のノウハウを対象会社に組み入れ、改善できたうえで議決権100%の取得を狙ったかたちであろう。

【財務分析】買収後業績伸び悩む、相乗効果薄く

 しかしながら、財務数値を見る限り、吉野家のM&Aは成功しているとは言い難い。

 はなまるに関しては、売上、営業利益ともに伸長が見られるものの、京樽及びアークミールは、営業利益は出ているものの、売上は直近で横ばいを推移している。






 上の円グラフは2012年2月期と2016年2月期を比較した売上構成比を示しているが、5年前と大きな変化は見て取れない。それぞれ出退店を流動的に行っているものの順調に推移しているセグメントは、はなまるのみとなっている。

 吉野家のM&Aは、ゼンショーのM&Aと比較される。それぞれ同じ牛丼を商材に積極的にM&Aを展開しているためだ。しかし、その明暗は大きく分かれ、ゼンショーはM&A巧者と言われている。

 ゼンショーのM&Aの特徴は、自社の商流に買収した企業を乗せ、ゼンショーと買収先の双方にメリットのある買収を取っている。一方で吉野家は自社にない商材を持つ企業の買収といった単純なものが多いように見受けられる。

 直近で買収したラーメン店のせたが屋もそうであろう。せたが屋の買収は、吉野家の持つ海外とのネットワークを用いて、海外進出を加速することを目的に買収を行ったものである。しかしながら海外事業が売上構成の9%程度であることを考えると、海外進出を積極的に行っても、業績に反映されるのはまだまだ先であろう。

【株価】吉野家の売り上げ復調で上昇気流

 株価は一進一退の展開だったが、2016年後半以降、上昇基調に入っている。これは吉野家の2016年12月、2017年1月の既存店売上高が2ヶ月連続でプラスとなるなど、主力の牛丼事業の売り上げが回復基調に転じたこと、外食業界の人手不足感が強まる中で店舗にロボットを導入して作業負荷を軽減するなどしてコスト削減が進展していることが支援材料となっている。

 ただ今期の予想PER(株価収益率)は56倍とゼンショーホールディングスの約42倍、松屋フーズの37倍と高く、株価に割安感は乏しい。買い一巡後は上値が重くなる可能性もありそうだ。

【まとめ】商材を増やすのが目的に?問われる成長戦略 

 吉野家の今までのM&Aは、ただ単に商材を増やすことが目的になってしまっていたように見受けられる。釈迦に説法ではあるが、「M&Aは買収すること」が目的ではなく、「買収した企業とどのような未来が描けるか」が重要となる。

 一般的にM&Aの成功率は30%程度とも言われ、その中でどれだけ成功を収められるかは企業の成長に大きく寄与する。今後吉野家のM&Aが業界にどのような変化をもたらしてくれるかを期待したい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○「食べる」をつくる科学と心理
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
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○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu